Monster Factory-怪物生産工場-  山を動かせ! 異色のアイドル | 君が好き

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2020年に世の中を暗くしたコロナ禍は、アイドルにも大きな影響があった。まずイベントが減り、かろうじて開催されたイベントでもライブでの声出し禁止や交流会での握手廃止など、心持ちヲタクは元気を失い、アイドル現場が大きく勢いを失っていた。
そんな時代にメンバーカラーのツナギを着て、オリジナルだからそうなのだが聞いたこともない歌を元気よく歌い踊るグループがMonster Factoryだった。ぼくが彼女たちを初めて見たのは、ユニドルも出演しているようなイベントで、アイドルでもカバー曲でヲタクを引き付けるようなアイドルが多いイベントだったので、なおさらそのツナギという奇抜な衣装と、オリジナル曲の印象が強く、妙に異色のアイドルに映ったのを覚えている。
当時は5人ほどメンバーがいたと記憶しているが、その後メンバーチェンジや、衣装もツナギから黒を基調としたシックなものに代わり、それからメンバーカラーを基調にした私服風になったかと思うと、ツナギ以来のメンバー統一風の衣装に戻ったりと紆余曲折を重ねたようだ。
現在のメンバーはドルフィンエンターテイメント研究生時代からのオリジナルメンバーの優羽美さん、百華さん、美有紀さんの三人。
そんなMonster Factoryを今日見てきた。
つるフェスというお祭りのゲストで、会場はコンサートでも使うような大きなホール。そこでたっぷり30分のステージのセットリストは、「Monster Factory」「Monster Factory Party Night」「Fairy Tail」「革命の時」「地球に生まれた冒険者」のオリジナル曲五曲。
オリジナル曲だから当たり前だが、曲や歌詞にグループ名が入っていることもあり、Monster Factoryでないと成り立たないステージだった。その個性は、やはり初期の頃から感じていた異色の印象が強かったが、むしろそれがいい意味で完成されているように感じた。
いまではYoutubeのチャンネルを2つ運営しているMonster Factoryは、ドルフィンエンターテイメント研究生時代からYoutubeで発信をしていて、初期から力を入れていた。また当初からオリジナル曲を持っていたことも大きく、独自の成長を遂げているグループである。
事務所の先輩に元26時のマスカレイドの江島綾恵梨がいたこともあり既存のアイドルに影響を受けている面も多々あるだろうが、「Monster Factory」や「革命の時」の歌詞を聴くと、これまでのアイドルの概念にないスタイルを打ち出そうと初期から意図していたことが感じられる。
そのため、既存のアイドルとは少し違うアプローチで進化していたようだ。

その進化の経過を現在もっとも感じられるのは、グループも軌道に乗り出した去年に発表された「Monster Factory Party Night」である。

この曲はミドルテンポのなじみやすいメロディーの曲で、サビになるとフロアのファンが右手を上げたり、左手を上げたりする振りがある。
これが本州のアイドルがやるのならば、BiSやBISHなどがよくやるシンプルなフリコピ曲として感じられるのだが、Monster Factoryはフリコピ文化不毛の地・九州のアイドルである。
ではなぜこのような曲が生まれたかというと、ぼくはこれはコロナ禍の中で独自の成長をする上でのたどり着いたひとつの結論なのだと感じている。
つまり、ライブアイドルはファンと一緒にライブを盛り上げることで、ファンにカタルシスを与えるものである。
多くのライブアイドルは曲に入る前に「盛り上がってください」と言うし、ファンだって演者とともに盛り上がることで、何度も聴いたことのある曲でもその場でステージにあおられ興奮することで、一回のライブがかけがえのないものになる。その結果が、毎週同じ曲を聴いてもどっぷりはまってしまうことになる。
ただし、コロナ禍の頃にデビューし、それから二年以上マスクを外すこともできず、ファンは声を出せず、換気の義務づけられた会場では、コロナ以前と同じ盛り上がり方をするのはむつかしい。
そこで、それでもファンと一緒に盛り上がろうと考えた末のアンサーがあの「右手を上げて飛び跳ねろ」なのである。
そこには、たとえ結果としては同じ形に見えても、安易に真似をするのではなく、自らの手でつかみ取ったMonster Factoryのスタイルが確実にある。
そのように真似ではなく、自分たちらしさを確実にオリジナル曲の中で積み重ねてきたからこそ、Monster Factoryのスタイルはアイドルの中では異色に見えてしまうが、素晴らしいのだとぼくは今日、改めて感じた。
独自の進化を遂げているグループなのだ。
それがアイドルとして正しいのかはわからない。
ただ、これまでにない方向で進化することは、なにかを変える力を生んでいるのはたしかである。
そうやって既存のアイドルとは違う形で完成度を高めているMonster Factory。
その力はいつか、まさに怪物のように大きなものを動かす気がぼくはしている。