昨日は一年間楽しみにしていた推しの生誕祭「ういたんさん2023」だった。
生誕祭は普通のイベントよりも年に一回しかないプレミア感があって常に楽しいものだけど、それが推しの生誕となると格別ってなわけで、終わるのが寂しくなるほど楽しかった。
イベント終了後は楽しい時間から帰宅するのも惜しく、余韻に浸りたいこともあって、数名のヲタさんたちと打ち上げに、とあるチェーン店に食事に行った。
たまたまそのチェーン店が、いくらとサーモンの海鮮丼をメニューに出していた。
一緒にいた方が「いくらとサーモンが東雲さんお好きだったよ」と助言をしてくれたことで海鮮丼ををオーダーし、チェキと一緒に撮影して、おいしくいただいた。
んで、ヲタさんたちと別れ、帰りに車を運転しながら、ふと考えた。
ぼくはういたんさいのあとじゃなかったら、この海鮮丼を食べていただろうか?
たしかにおいしかった。
ただ、また食べたいかと言われたらどうだろうと。
そのお店はチェーン店らしく、多彩なメニューでとんかつや唐揚げ、ハンバーグも置いているようなお店だった。なんでもあるけど、これを食べたいというのが思い浮かぶお店でもない。
逆に世の中には海鮮丼だけで行列のできるようなお店もある。
この違いはなんだろうと。
そこで更に思い出したのは、その食事中になぜか盛り上がった焼肉の話である。
それも「あそこの焼肉は安いんだけどタレがおいしくない」などという、ひどいヲタクの世間話だった。
ただ、それを思い出して考えた。
逆を言えば、タレがおいしいだけで焼肉屋に行くきっかけになる。そして焼肉のタレは大体のお店が製造方法が秘伝で、そういうお店のタレはニンニクがきつかったり、逆に果物の甘みが強かったりと、市販の焼肉のタレよりもずっと癖の強いのが多い。
結局、人の心を射止めるには、普通においしいだけではだめで、焼肉のタレのように、ちょっと癖のある特色が必要なのだ。
15年ほど前、秋元康は「ファンの人は音楽よりもイベントの方が好きでしょ」と発言し、CDに握手券を付けた。その癖の強い発言ら世間からは否定されたものの、その流れが現在のアイドルブームを作ったと言っても過言ではないだろう。毎週のように我々の生活の中にアイドルのイベントが存在しているのは、秋元康が「会いに行けるアイドル」の文化を作った功績だ。
それから15年。ご当地アイドルブームなんてのもあったが、少子化で弱るこの国の国内経済と同様に、アイドルも供給過多になりつつある。
そんな中、10年ほど前に「ポストアイドル」と呼ばれたももいろクローバーを始めとする、癖の強い、これまでのアイドルにない形のアイドルが生まれた。これまでの焼肉にはない癖の強いタレを生み出すように、アイドルやそれを取り囲む大人たちが試行錯誤を続けた結果であろう。それらのグループは場合によっては、正統派のアイドルよりもその個性の強さで多くのファンに受け入れられた。
アイドルのもっともファンを増やす要素はビジュアルだとは思うが、かわいいだけではだめなのである。そこにプラスアルファがないと、ファンにとってアイドルが特別な存在にならないのだ。そういう意味で、ポストアイドル的なアイドルは、正統派アイドルとは違うことをやることで、プラスアルファがわかりやすかったため、受け入れられているのだと思う。
昨今、その傾向は強くなっている気がする。
最近では、老人のぼくにはアイドルヲタクであっても「ついていけない」と思う過激なパフォーマンスをするジャンクなアイドルグループもたくさん生まれているし、そういうグループがこれまでにない癖の強さから多くのファンに支持されているという話も聞く。
そんななか、Re:fiveはコンサバティブとも言えるほどの正統派のアイドルグループだ。これには理由があって、前身のMONECCO5が「天草市唯一のアイドル」という特色を持っていたので、ジャンクな方向に傾倒する必要がなかったのが要因だと思う。
ただ、だからこそ東雲ういは最高なのだ。
あくまで老害の偏見に満ちた持論であるが、これまでのアイドルにない癖の強さをグループ全体で表現しているポストアイドル的なグループは、アイドル本人のタレント以上に、周りの大人たちがデザインした世界観が強調されることが多いと感じている。少女たちが、中年男性が主流のヲタクのニーズを読み取ることなどむつかしく、それらのニーズを読み取った大人たちがまずクリエイティブにアイドルのスタイルをデザインし、そのデザインを与えられた少女たちが大人たちの理想のアイドルを演じる。もちろん各メンバーごとに特色はあるだろうが、そのひとりひとりの特色の前に、まずは大人がデザインしたグループの方向性が優先されている印象だ。そのデザインが受け入れられなければ「性格が真面目なのでBiSについていけない」とBiSを脱退したテラシマユフのようになってしまうのだ。
それに対して、正統派アイドルというのはアイドル本人のタレントに依存している部分が強い。LinQが第一期生オーディションのときに、上原あさみが「こういう女の子に来てほしい」とばらばらの個性を14個紙に書いて並べたCMを流していたが、正統派アイドルだからこそ、メンバーひとりひとりのばらばらの個性がぶつかりあうことで、癖の強い焼肉のタレのように、癖になるグループになるのである。それがわかっているから、あのようなCMが流れ、LinQがローカルアイドル離れした成功をしたのだとぼくは思う。
正統派のアイドルだからこそ、他とは違う特色が必要。
東雲ういさんは当初からその意識が非常に高かった。
一年半前の研究生お披露目の時からいわゆる「#ういちゃんポーズ」は開発されていた。研究生時代の東雲さんのチェキやデジショでは「#ういちゃんポーズ」で撮られた方も多いはずだ。
昨日の生誕祭では入場者にお菓子と一緒に東雲さんのメッセージカードが配られたけど、そのひとつひとつにはそれぞれダジャレが書かれていた。ダジャレに関しては、去年の生誕祭でもクライマックスで披露されたが、研究生の頃から、かわいい顔しておっさんみたいなダジャレを言うそのキャラが、東雲さんの特色のひとつとなり、たくさんのヲタクを楽しませていた。
そのように他のアイドルにはない武器を開発し、自分の特色にする力が東雲さんは強いのだ。
歌って踊れる正統派アイドル、だけど、15年ほどのアイドルブーム以降、アイドルヲタクの目は大変肥えたものになってしまった。歌えるのも踊れるのも当たり前、アイドルだからかわいいのも当たり前、その中で他のアイドルにはない長けたものを努力して生み出さないと、ファンは楽しんでくれない。だから東雲さんは、自らの特色を開発する。
最低限度の外食レベルの料理を出すチェーン店ではなく、人を虜にするような焼肉のタレのような癖の強さを生み出し、ファンを楽しませる。
アイドルとしてやらなければいけないことだけじゃなく、プラスアルファを加えるアイデアと努力を惜しまない。
だから東雲さんは最高なのである。
去年の年末には、メンバー初のSHOWROOM毎日配信もやり遂げた。
このようにコツコツとチャレンジして、いわゆるアイドルとしての歌やダンス以外のプラスアルファの実績を積み上げているのが東雲ういさんなのである。
もちろんそのような努力を惜しみなくできるの環境も東雲さんは結果的に幸運だったと思う。もしかしたらやらざるを得なかったのかもしれないが、運も実力のうちだ。
東雲さんのいちばんの幸運は、無名の頃の運営サポートから、研究生お披露目、そしてメンバー昇格までまったく同じ日だった同期、西園寺つきさんの存在が大きいと思う。
同期と言っても西園寺さんは東雲さんより四つも年上である。ぼくらみたいな老人ならば四つぐらいの年齢差は全くと言っていいほど感じないが、十代の頃はひとつ年上の先輩でもずいぶん大人に見えるものだ。それが四つも違う。東雲さんにとって西園寺さんは手の届かない大人に見えていたはずだ。
更に西園寺さんはこれまでのMONECCO5、だけではなく、他のアイドルと比較しても、なかなか見つからないような稀有なカリスマ性の持ち主である。
西園寺さんは去年の生誕祭で「ういちゃんは負けず嫌いでがんばってる」とぼくらの知らない東雲さんの一面を教えてくれたが、そのカリスマ性あふれる西園寺さんに追いつき、追い越そうと、西園寺さんの同期だからこそ東雲さんががんばられていたのも強いのだと思う。自分らしさを磨き、自分のできることをやってきたからこそ、チェーン店に並ぶ無個性な料理ではなく有名店のそこでしか食べられない料理のような、唯一無二の東雲ういができあがったのだ。
そこには切磋琢磨する偉大な同期の存在があったことが幸運だったと思う。
そんな唯一無二の東雲ういさんの世界があるからこそ、昨日は笑いあり涙ありの、一言でいえばいかにも「東雲さんらしい」、楽しさあふれる生誕祭だった。
運営さんも東雲さんの唯一無二の存在感を理解していると感じたのが、ゲストの熊本Flavor、吉川りおさんを交えての「クイズ東雲が正解です」という企画だった。
これはRe:fiveと熊本Flavor、吉川りおさんが「犬に付けたい名前は?」「好きな戦国武将は?」「偉大な総理大臣は?」といった問題に、東雲さんがどう回答するのかを予想するゲームで、なんと柊わかばさんとJunior Flavor熊本のトモカさんが全問正解してしまうぐらい、東雲さんの思考は読まれていたけれど、それだけみんなが東雲さんの考えだけで楽しくなる素晴らしい企画だった。
ステージも普段は落ちサビ前が歌割なのでなかなか見ることができない「This Summer」の落ちサビを東雲さんが歌ったり、アイドル大好きな東雲さんの考えたセットリストらしくカバー曲も四曲と多めに披露され、いつも以上に東雲濃度が高い、東雲ヲタにはたまらないステージだった。
曲や企画、MC、どこでも東雲ういさんらしい東雲濃度の高いライブ。その東雲濃度を感じながら、これこそが東雲さんの特色だよなとぼくが感じたのは、一言でいえば前向きということだと感じた。
とにかく、東雲ういらしいステージを見てると、東雲さんって本当に前向きなんだなと感じる場面が多かったのだ。
東雲さんの考えられた衣装、セットリストといつもと違うステージだったからこそ、段取りの違いなどでメンバーとPAさんで確認を取り合うような場面もあった。だが、そのトラブルさえ楽しむように笑顔を浮かべ、ルンルンで踊る東雲さんを見て、本当に東雲さんらしいなと感じたのだ。
熊本Flavorのステージ中に、ステージ上の壁が倒れる珍しいトラブルがあったのだが、それさえも、「東雲ういの生誕祭だから仕方ない」という空気がフロアに流れているほどだった。
なにか問題が起こっても「ういちゃんらしい」で片付いてしまう空気。それこそが会場で強く流れていた東雲濃度であり、たとえトラブルでも前向きに楽しく処理してしまうことをファンたちが東雲さんらしいと感じてしまうほど、東雲さんの存在の大きさを感じることができた。
実は9月30日が誕生日なので、東雲ういさんにとってはこの「ういたんさい2023」のステージが、14歳最後のステージだった。
百戦錬磨の先輩・柊わかばさん、強い同期・西園寺つきさん、仲良し後輩・空豆かれんさんとともに、Re:fiveはもっともっとたくさんの人に、この楽しさを届ける義務がある。
東雲ういさんという唯一無二のアイドルを知らない人は損をしているので、その人たちにも東雲さんの世界を伝えなければならない。
それが東雲さんにしかできないことだからだ。
そのためには、15歳の東雲さんはこれまでのデビューからの一年半以上に、壁にぶつかられるかもしれない。新たな努力が必要になるかもしれない。
でもきっと、ぼくらの東雲さんなら前向きに笑顔を浮かべ、来年の今頃には更にすごい東雲ういさんを見せてくれるだろうと、ぼくらも前向きになれた生誕祭だった。