昭和医大や東京医大等で発見された、医学部入試で得点が操作されていた問題がありました。
https://www.asahi.com/articles/ASLBH5K3RLBHUTIL03C.html
報道もいったん落ち着いたので、少しこの問題について触れておきたいと思います。
この問題に関しては、2つのポイントがあって、それが混同されて論じられています。
まず、
1 入試要項に載せないで(受験生に告知せずに)浪人生や女性を不当に不利に扱ってよいか
というポイント。
次に、
2 入試要項に載せたとしても、そもそも浪人生や女性を不当に不利に扱ってよいのか。 国公立大と私大では扱いが違うのか・
というポイントです。
この2つに分けて考えていきましょう。
まずは1つ目のポイントです。
「入試要綱に書いてないのに、女性や高年齢であることで低い配点をしてよいのか」
ということです。
これはどちらかというと民事ルールの問題(契約の問題)に近いです。
つまり、入試要綱に「女性や高年齢であることを理由に低い配点をしますよ」ということを書いていないと
一般の方は「学力検査や面接の結果」で「公正に」、合否が判定されると信じてしまうわけです。
一般の方は「学力検査や面接の結果」で「公正に」、合否が判定されると信じてしまうわけです。
にもかかわらず、女性や高年齢で減点されたら「話が違う」と思いますよね。
そんなんだったら、「入試を受けなかった」という話になってくると思います。
そんなんだったら、「入試を受けなかった」という話になってくると思います。
入学試験代の返金は求められる可能性があるでしょう。
一方で、大学に公正な採点を求められるか否か(つまり公正な採点をされたら入学できた人が入学を求められるか否か)は、難しい問題です。
一方で、大学に公正な採点を求められるか否か(つまり公正な採点をされたら入学できた人が入学を求められるか否か)は、難しい問題です。
追記)東京医大では救済措置が採られたようです(2018年11月7日追記)
2つ目は、そもそも医学部の入試において(入試要綱に明記されていたとしても)女性や高年齢で不利益な扱いをしてよいのか、という問題です。
これは、法律的には国公立大学と私立大学を分けて考える必要があります。
まず、国公立大学は、国や公共団体に準じる団体が経営していますので、原則として、不合理な差別は許されません(憲法14条1項という平等権を定めた規定が直接適用されます)。
ここで、おそらく男性や現役生を有利に扱うのを是とする側は、次のような理由を掲げると思われます。
それは、医者は重労働だから男性が適している、女性は妊娠や出産で退職してしまうので高いコストをかけて医者にするには男性の方がよい、同様の理由で長く稼動できる若い人がいい
それは、医者は重労働だから男性が適している、女性は妊娠や出産で退職してしまうので高いコストをかけて医者にするには男性の方がよい、同様の理由で長く稼動できる若い人がいい
という理由です。
そこで、この理由が合理的か否かという問題が出てきます。
一方で、日本は、医学部を卒業しないと医師にはなれない、という制度を採用していることにも着目する必要があります。
本来、どの職業に就くかは、その人の自由です(憲法22条1項の職業選択の自由から導かれます)。
しかし、医学部を卒業しないと医師になれない、というシステムを法律で採用した以上、誰でも公平に受験できる入試に、医学部入試をしなければならないのです。
本来、どの職業に就くかは、その人の自由です(憲法22条1項の職業選択の自由から導かれます)。
しかし、医学部を卒業しないと医師になれない、というシステムを法律で採用した以上、誰でも公平に受験できる入試に、医学部入試をしなければならないのです。
ここで、女性だから医師の労働ができないというわけでもないですし、
男性も育児休暇等が取れる現代社会においては、妊娠や出産を理由に女性の医者は望ましくないというのは、論理に飛躍があります。
また、長く稼動ができる若い人がいい、というのはわからないでもないですが、
「誰でも公平に受験できる入試」に医学部はしなければならない以上、高年齢者が絶対に合格できない入試制度にするのは問題があるでしょう。
男性も育児休暇等が取れる現代社会においては、妊娠や出産を理由に女性の医者は望ましくないというのは、論理に飛躍があります。
また、長く稼動ができる若い人がいい、というのはわからないでもないですが、
「誰でも公平に受験できる入試」に医学部はしなければならない以上、高年齢者が絶対に合格できない入試制度にするのは問題があるでしょう。
例えば、現役の受験生から○割、その他の受験生から○割、くらいの制度でしたら許される可能性はあります。
一方、私立大学においては、その大学のカラーを出すことが認められています。
ですので、「若い医師を養成する」ことを大学の目的とする場合、若い人に有利な入試にすることは、国公立大学よりは、許される可能性はあります。
ですので、「若い医師を養成する」ことを大学の目的とする場合、若い人に有利な入試にすることは、国公立大学よりは、許される可能性はあります。
しかし、私立大学においても、医学部である以上は、「誰でも公平に受験できる入試」が求められるでしょう。
国公立大学よりは、柔軟な入試システムを採用することができますが、やはり「女性や高年齢を理由に低い配点」をすることは許されないでしょう。
国公立大学よりは、柔軟な入試システムを採用することができますが、やはり「女性や高年齢を理由に低い配点」をすることは許されないでしょう。
私が書いたのは、1つの視点からです(法律家でも別の考え方があると思いますし、法律家以外ならなおさらたくさんの考え方があると思います)。
報道は下火になりましたが、議論していかなければならない問題だと思っています。
新橋虎ノ門法律事務所 共同代表弁護士 武山茂樹
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