泉佐野市が、ふるさと納税訴訟で、最高裁判所において逆転勝訴しました。

 

泉佐野市は、ふるさと納税制度において、地場産品以外の返礼品を提供したり、寄付金に対する返礼品の金額の割合が多いとして、いったんは、ふるさと納税制度から除外されました(総務大臣から、ふるさと納税の対象に指定されなかった)。

 

※ふるさと納税のいらすと。いらすとやってなんでもありますね。

 

しかし、泉佐野市は、指定されなかったことを不服として、裁判で争い、大阪高等裁判所では敗訴したのですが、最高裁判所において、逆転勝訴判決を得ました。

 

これによって、泉佐野市はふるさと納税制度に復帰することができました。

なぜ、逆転勝訴できたのか。動画で解説します。

 

 

なお、動画が視聴できない方のために、文字でも簡単に記載します。

 

1、問題の本質

 

問題の本質は「過去の悪行をもって、不利益に扱えるか」です。

刑事法の世界では「遡及処罰の禁止」というものがあります。
例えば、来年からタバコを吸ったら処罰されるとしましょう。
来年になって、「あなた2年前に煙草すってましたよね」と処罰はできない。
過去にさかのぼって処罰はできないというものです。

しかし、これが行政法や税金の話では必ずしも妥当しない。
そんな本質に着目して解説していきます。

 

2、ふるさと納税制度とは

 

ふるさと納税制度とは、自分の好きな自治体に寄付をすれば、自分の所得税や住民税が安くなる制度のことを言います。

 例えば、東京都港区に住んでいる人は、国に所得税を、東京都と港区に住民税を納める必要があります。
 しかし、泉佐野市に寄付をすれば、所得税と住民税が安くなるのです。

 つまり、東京都と港区の住民税の税収が減って、泉佐野市の住民税の税収が増える。あたかも納税者が住民税の納付先を変えられるような制度に、結果的にはなっています。
 都会に住んでるけど、自分のふるさとにも税金を納めたい、そんな人の願いをかなえる制度なので「ふるさと納税」という名前が付いたのでしょう。

 そして、ふるさと納税をすれば、自治体から返礼品が送られることが多いですが、ふるさと納税と返礼品は、「法律上」は結びついておりません。あくまで、ふるさと納税は、自治体に寄付をすれば、自分の税金が安くなる制度となります。

 

3、返礼品競争

 ふるさと納税制度が浸透するにつれ、地方自治体の中には、寄付をすれば、返礼品を贈る(もちろん寄付額の一部ですが)として、寄付を集めるようになものも現れました。

 野菜や海産物などの地方の特産品を返礼品とする自治体もあれば、クオカードとかポイントとか、現金に近いものを返礼品とする自治体もかつてはありました。

 返戻品競争が過剰になってきたので、国が規制に乗り出します。

 

4、国の助言による規制

 

 まずは、国は、法改正によらずに、「助言」による規制をしようと考えました。

 

平成27年4月1日には、総務大臣が技術的な助言として、換金性の高い物、高額なもの、返戻割合の高いものの送付を行わないよう求めました。この「助言」は、法律的には「行政指導」と言いまして、法的には従う義務はないものになります。

平成29年4月1日には、返戻割合(寄付額に対する返礼品の金額の割合)を3割以内にするよう求めてます。

平成30年4月1日には、さらに、返礼品を地場産品に限るよう求めました。

 

ふるさと納税の返礼品を地場産品に限ることにより、確かに過激な競争を防げますし、また、地域振興にも役立ちます。ただし、これは農作物や海産物が豊富な地方自治体に有利なのではないか、という批判もあります。
 

5、地方自治法の改正

 

そして、平成31年3月27日、ついに地方税法37条の2と314条の7が改正されました。(施行は令和元年6月1日から)
 簡単に言うと、総務大臣の「指定」した地方団体に対する寄付にのみ、「ふるさと納税制度」が適用されるということになりました。


指定の要件ですが、法律と告示において定められています。
 地方税法上は、「返礼品の寄付金額に占める割合が3割以下」「返礼品が地場産品であること」などが指定の要件になっています。
 募集適正基準等を定める告示(総務大臣が作成、法律ではない)では、
 「H30.11.1から申出書を提出するまでの間に、趣旨に反するような寄付金の募集をし多額の寄付金を受け取った団体でないこと」

 が要件とされています。

 

 つまり、告示によると、平成30年11月1日以降に、総務大臣の「助言」に従わなかった地方自治体を、ふるさと納税制度から排除できることになっています。

 法律が定められた平成31年3月27日以前の「悪行」(助言に従わなかったという意味ですが)を、考慮できるのかが問題の本質になっています。

 

 法律が決められる前の行動を考慮するのは、「遡及処罰」のような話で許されないという考え方もあれば、総務大臣が平成30年4月1日に助言をしてるのに、それに反しているから仕方ないとの考え方もあるでしょう。

 そして、泉佐野市は、ビールや酎ハイなど、地場産品ではない品物を返戻品として提供し続け、また「100億円還元キャンペーン」としてアマゾンギフト券を贈ったりし、
平成30年度には、寄付額 498億円 を達成しました。

また、平成30年11月1日から平成31年3月31日までの間で、寄付額332億円、返戻割合3割超え、7割超が地場産品ではないとのデータもあります。
 

 もちろん、泉佐野市はふるさと納税の対象として、指定されませんでした。

 

6、最高裁の判断

 

 大阪高等裁判所は、泉佐野市の敗訴判決を言い渡しましたが、最高裁判所は、逆転勝訴判決を言い渡しました。まず、地方税法37条の2第2項は、「指定の基準の策定を総務大臣に委ねている」と規定してますし、地方自治法245条の2 は、「国は法律又はこれに基づく政令によらなければ地方自治体に関与できない」としています。

 そして、指定の根拠となった告示は、ふるさと納税制度の対象自治体を決めると言う意味で、地方自治体に関与するものですので、法律等の根拠が必要ということになります。

 すなわち、告示が、法律の委任の範囲を逸脱すれば(=法律の趣旨等に反すれば)、違法ということになります。

 そして、告示は、本件改正規定施行前の募集実績をもとに、仮に今後は適正な募集がなされるとしても、指定がなされないことを定めたものです。
 しかし、平成30年4月1日までの通知は、あくまで通知であって法律や政令ではありません。
 地方自治法247条の3が「地方自治体が国の助言に従わなかったことをもって不利益扱いをしてはならない」と定めるように、通知に従わなかったことをもって、地方自治体を不利益に取り扱うことは許されません。

 また、過去の実績をもって、不利益取扱できるような告示を定めることができるような趣旨を法律から読み取ることもできません。実際に、地方税法を改正する際の立法過程でもそのような話はありませんでした。


 ※このあたりが判例の核心になり、実際の最高裁の判決では詳しい解説をしております。

専門的な話を知りたい方は、私の司法試験受験生向けのブログをご覧ください。

泉佐野市ふるさと納税訴訟~法律の委任の範囲の問題

 

 



 加えて、泉佐野市が、改正法の施行後も、基準に反するような募集をするとはいえないので、指定しないことは違法だと判断しました。

 ただ、法律上の議論は置いておいて、泉佐野市の態度は「社会通念上節度を欠いていた」と最高裁は述べております。

 

7、その後

 

泉佐野市と同様、指定から除外されていた和歌山県高野町と佐賀県みやき町と併せて、2019年6月まで遡って、ふるさと納税制度への復帰が認められました。

 

なお、ふるさと納税の返礼品で高級なものの代表格に「和牛」があります。

ご興味ある方は、この動画もご覧ください(私武山がここの返礼品をお勧めしているわけではありません)

 

新橋虎ノ門法律事務所 共同代表弁護士 武山茂樹

 

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