1、はじめに
 
カルロス・ゴーン氏の勾留延長却下というニュースが流れました。

https://www.msn.com/ja-jp/news/national/ゴーン容疑者の勾留延長認めない決定への準抗告も棄却/ar-BBRdlhF?li=BBfTvMA&ocid=spartanntp

これによって、ゴーン氏は保釈される可能性も出てきました。

これはどういうことなのでしょうか。

順に見ていきましょう。

 

 
2、カルロス・ゴーン氏の逮捕容疑
カルロス・ゴーン氏は、有価証券報告書虚偽記載の罪で逮捕されました。
有価証券報告書は、企業の経営状況を伝える書類であり、投資家がその会社に投資してよいか判断する有力な材料です。
有価証券報告書の中には、損益計算書や貸借対照表などの財務諸表も含まれます。
その中に、当然役員報酬の記載もあります。
役員報酬を過少に記載することは、有価証券報告書虚偽記載(正確に言うと提出)になるわけです。
以下、金融商品取引法の該当条文を(かなり省略した形で)載せました。
まともに読まなくてよいですよ。
赤字だけ読んでください。

(有価証券報告書の提出)
第二十四条 有価証券の発行者である会社は、その会社が発行者である有価証券...が次に掲げる有価証券のいずれかに該当する場合には、内閣府令で定めるところにより、事業年度ごとに、当該会社の商号、当該会社の属する企業集団及び当該会社の経理の状況その他事業の内容に関する重要な事項その他の公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定める事項を記載した報告書(以下「有価証券報告書」という。)内国会社にあつては当該事業年度経過後三月以内...に、内閣総理大臣に提出しなければならない...
一 金融商品取引所に上場されている有価証券(特定上場有価証券を除く。)

第百九十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 ...第二十四条第一項若しくは第三項(これらの規定を同条第五項(第二十七条において準用する場合を含む。)及び第二十七条において準用する場合を含む。)若しくは第二十四条の二第一項(第二十七条において準用する場合を含む。)の規定による有価証券報告書若しくはその訂正報告書であつて、重要な事項につき虚偽の記載のあるものを提出した者
 
頭が痛くなりますね。
金融商品取引法は本当に条文が複雑です。
なお、金融商品取引法は昔は証券取引法と呼ばれていたもので、株式の発行に関する事柄や、他の金融商品の規制をしております。
 
3、事件1
 私は逮捕状も起訴状も見ていないので、ニュース等からの情報になりますが、
カルロス・ゴーン氏は「有価証券報告書に記載すべき報酬が二〇一五年期までの五年間で約五十億円少なかった」として起訴されたようです。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018121102000138.html
おそらく同様の事実で逮捕・勾留されたのでしょう。
なお、ゴーン氏は、「退任後に支払いを約束された報酬を記載しなかった」と主張しているようで、
それが虚偽記載にあたるのか、また、当たったとしても「重要な事項につき」と言えるのか疑問がありますが、そこは横に置いておきましょう。
 
 逮捕は3日間、勾留は最大20日間(延長も含む)で、起訴まで23日間身柄を拘束することができます。
 なお、起訴後は保釈(逃げたら没収される保証金を納めて身柄が解放される)が原則的に認められますので、ゴーン氏は起訴後の保釈を考えていたでしょう。
 
3、事件2
 しかし、起訴とほぼ同時にゴーン氏は再逮捕されました。
それは、「一八年期までの三年間でも約四十億円を過少記載した疑い」です。
事件1と事件2は法律的には別事件ですので、事件1の逮捕勾留が終わった後も、事件2で逮捕することは可能です。
そして、事件1で保釈が認められていても、事件2で逮捕勾留されている間は、事件2の身柄拘束の効果によって、釈放されません。
ゴーン氏は、事件2で逮捕され、さらに10日間勾留されました。
そして、検察官が10日間の勾留延長請求をしたところ、裁判所が却下したのです。
検察官が準抗告(裁判所の判断がおかしいという不服申し立て)をしても、準抗告も棄却されました。
 
その結果、事件2の身柄拘束がなくなったのです。
事件2の身柄拘束がなくなった結果、事件1の身柄拘束しか現在はありません
事件1の保釈が認められれば、ゴーン氏はとりあえずは釈放される状態になったということです。
(事件2の起訴で勾留される可能性もありますが、起訴後なのでそちらも保釈は認められる可能性があります)。
 
なお、刑事訴訟法上、勾留が認められるためには
 
第六十条 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
一 被告人が定まつた住居を有しないとき。
二 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
 
上記各号のいずれかが必要です(おそらく今回は2号)。
 
そして、勾留延長が認められるためには
 
第二百八条 前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
2 裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。
 
「やむを得ない事由」が必要になります。
 
裁判所は、
・第1事件で起訴された以上、証拠隠滅の疑いは少なくなっている
・有名人なので、逃亡する恐れはそれほどない
・約36日間の身柄拘束で捜査は十分できたはずなので、これ以上拘束すべきでない
 
と判断し、勾留延長を認めなかったのでしょう。
 
おそらく、これから保釈の手続きが取られるはずです。
 

新橋虎ノ門法律事務所 共同代表弁護士 武山茂樹

 

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