河合隼雄著『コンプレックス』③ | 武狼太のブログ

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大学の通信教育過程で心理学を学んでおり、教科書やスクーリングから学んだことをメインに更新しています。忙しくて書けなかった、過去の科目についても遡って更新中です。

 
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【3】コンプレックスの解消と自己実現
■1■死の体験
■2■儀式の意味
■3■夢とコンプレックス
■4■コンプレックスと元型
■5■自己実現の過程
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【3】コンプレックスの解消と自己実現
■1■死の体験
★コンプレックスの「解消」は、何らかの意味で「死の体験」を伴う
 
▼「体験する」とは
・それに伴う外的な刺激、内的な刺激を出来る限り受け止めること
 →それを自我の中に組み込んでいくこと
・人間は生きてゆく上で、外的刺激の全てを体験せず、適切に限定をしている
 →ある外的刺激の全てを体験することは困難
 →我々は、多くのことを見て見ぬふりをしている、と言える
・何かを直接「体験」することは大変なこと
 →なればこそ、自我の成長にとって必要不可欠、と言える
 
▼内面的な「死の体験」
★自我が①②を共に認知し、自我の中に組み込むこと、意味づけること
<ある事象>
①外的な事象
 ・ある関係などが、再来を許さない、完全なる終止の状態となる
②内的な事象
 ・外的事象に伴う苦しみ、悲しみ、淋しさ、厳しさなど
 ・外的事象を補償するものとして、しばしば永続性の感情が生じる
 
<例>
*何となく学校を怠け始め、何となく治って学校に登校した中学生
・母親と対決して爆発行為を行ったのち、事態が好転した
 ①外的な事象
  母親に甘えていられた子ども時代、その完全なる終止
 ②内的な事象
  甘えの関係を断ち切る苦痛と悲しみ
  それらの底に生じる新しい関係の永続性の感情
 ★それら全てが、自我の中に組み込まれるとき
 →ひとつの「死の体験」をした、と言ってもいいのではないか
 
★内面的な「死の体験」が深い程、それは再生へとつながる
 →中途半端に終わると、その人は幽霊のような存在となってしまう
 
◎1人の人間の成長
・何らかの意味の「死の体験」が伴う
<例>
・家族の中で、古い人間関係が壊され、新しい人間関係を再生するとき
 →人間の内面的な「死の体験」を伴っている、と言える
 
 
■2■儀式の意味
◎コンプレックスの解消に伴う「死の体験」
 →危険に満ちたもの
・「死の体験」の内面化を行うには、それに相応しい自我の強さが必要
 →うまくゆかない場合、時として、外面的な自殺や他殺行為が起こる
<例>
*自殺未遂
・「死の体験」を求めてなされたもの、と感じられるものが多い
 →それほどに強い自我の変革が、求められていたのではないか
 
▼儀式
・コンプレックスの内容とエネルギーを、自我へ誘導するための水路づけ
 →儀式とは、直接体験の危険性を防ぐものでもある
 *水路:水を導くものであり、水を防ぐもの
 *儀式:体験を導くものであり、体験から身を守るもの
<例>
*未開人:狩猟や戦闘に向かう前
・必要なエネルギーを水路に引き出すため、儀式が行われる
 
▼儀式の形骸化
・儀式の意味が不明瞭になるとき
 →その中に流れる精神が忘れられ、様式だけが継承されていく
 →生命を持たぬ儀式は、子どもでもすぐ分かる
★問題は、我々に相応しい儀式の創造にある
・現代人に課せられている責務
 ①我々の自我の合理性や同一性などを破壊しない
 ②新しい生命を吹き込んでいく
 そのような儀式を見出だすこと
 
<例>
*卒業旅行
・参加者:前日に事故死する夢を見る者、不吉な虫の報せを感じた者がいた
・旅行は無事に終わり、お告げが当たらなかったことを笑いあった
・現代の固い合理的な精神から見れば、「卒業」は別に大したことではない
 →大学の卒業式は、儀式としてはナンセンスなものだった
・社会人としての新しい出発に際し、一面化した意識の補償が行われたと言える
 →内面的な「死の体験」として、無意識は死の夢や不安感を送ってきた
・「旅」は、死と再生の体験につきもの
 →彼らの卒業旅行は、1つの儀式へと高められた
 
▼儀式の著しい欠落
◎社会問題として、真剣に考える必要がある
・全ての儀式を否定した若者
 →再生のためのエネルギーを得るための水路を、自ら断つに等しい
 →著しいエネルギーの沈滞が生じてくる
・水路を失ったエネルギーの暴発
 →自身か他人の血が流され、儀式が1つの事件に成り下がる危険がある
★個人に相応しい儀式を創造してゆく必要がある
 →その人個人の神話や物語を発見する、創造すること、とも言い換えられる
◎心理治療の現場
・個人の事例において、大きい比重を占めていることを痛感する
・従事する者は、個人の儀式の創造に参加してゆく者、と例えることが出来る
 →個人の儀式の準備を手伝ったり、司祭となったり、参列者となったり
 
<例>
*人間の足跡は月にまで届いた
 →月に投影していたイメージの多くの意味が失われた
○科学の進歩は、我々の伝統的な儀式を次々と壊していく
 →儀式を失い無為に過ごすことで、水路を失ったエネルギーの暴発が懸念される
 →科学の進歩を攻撃しても仕方のないことである
★科学の進歩によって失ったものを、回復する手段を講じねばならない
 →伝統的な儀式に再び生命を与えるか
 →新しい儀式を創造するか
 
<例>
*火遊びの儀式:プロメテウス・コンプレックス
○プロメテウス:神話にて、人間のために、神をたぶらかして火を盗みだした英雄
・自立してゆくためには、我々は“火を盗まねばならない”
 →それは「避け難い盗み」である
・火遊びの年齢:主に幼児期、青年期、40歳前後
・子どもは危険を冒して、大人と同じことをやろうとし、秘密を知ろうとする
・火遊びの儀式を通過せずに成人になる人は多い
 →親の言いつけを守る人、エリートとみなされてる人など
*40歳前後になって初めて、心の中にプロメテウスが動き始めるとき
 →避け難い火遊びへの衝動と、今の立場から伴う罪責感との板ばさみとなる
 →その状況から自殺する人は多い
 →中年男性の理由なき自殺の背景として考えられる
 
 
■3■夢とコンプレックス
◎夢の持つ意味は広い
 →コンプレックスとの関係について触れる
・睡眠中は、自我の力が弱まり、コンプレックスの動きが活発となる
 →コンプレックスの動きを夢として、自我は把握してゆく
★コンプレックスは、現実に起きた事象の「裏面」を見逃さない
 →時に、夢の中で、裏面にある真実を強烈な形で突きつけてくる
 
▼自我と夢の相補的な関係
・夢の多くが、コンプレックスから自我へのメッセージとして出現する
 →夢の現象を探索すると、多くの示唆が得られることが多い
・自我が「体験」の限定を極端に行い、その一面のみを取り上げるとき
 →「体験」の取り上げなかった部分が、コンプレックスをつくりあげてゆく
・コンプレックスは夢を通じて、自我に「再体験」を要求する
 ★コンプレックス内に留まる感情を「体験」することが、その解消につながる
 
▼夢の特徴
◎不明確さ
・夢は、明確に言語化できない内容を含んでいる
 →自我は、未だ完全には統合されていない内容を、イメージとして把握する
 →イメージを言語化することで、その意味を明確にすることができる
 →自我は、その内容を整理し、統合してゆくことができる
★意味が明確であること=自我によって完全に把握された状態
 
◎多義性
・夢の解釈は1つではない
・自我を変革に導くもの、自己実現を進めるもの、に注目する
 ★痛い真実に直面し、考え方を変革しようとする解釈が大きな意味を持つ
・個人の体験からは、連想することが難しく不可解な内容
 ★コンプレックスよりも、さらに心の深い層からのメッセージと考えられる
 
◎コンプレックスの人格化
・如実に経験できるのが、夢での体験である
 →心の底深くに存在する「元型」が現れることもある
・夢に登場する人物
 →その人物の実像や関係性よりも、自身が抱く印象が重視されることがある
 →コンプレックスの内容のイメージに最も合う人が、何度も登場したりする
 
 
▼夢分析
◎夢の解釈の仕事
・一般的に、人に夢のことを尋ねても、ほとんど何も解らない
 →意識して夢を記憶し、記録を始めると、夢への認識が強まっていく
・忍耐力を要する困難な仕事
 ①相談者の意識状態を知る
 ②夢の内容についての連想を聞く
 ③相談者と頭を悩ましながら、意味を掴んでゆく
 (*夢占いとは異なるもの)
・根気よく続け、いくつもの夢から、段々と意味を明らかにしてゆく
 →しかし、苦労をしても、何も解らないこともよくある
 
◎時に、夢は強烈なイメージを見せる
・自分自身の「体験」として、一つの事実を突きつける
 →そうした「体験」には、強い感情が伴う
 →それと直面してゆくには、強い自我が必要となる
 →その過程は、コンプレックスの解消の過程に繋がってゆく
・自我は常に、体験を限定し、自らの安定を図っている
 →イメージは、概念による自我の防衛機制を突き破る
★自我に対し、直接的な「体験」をさせるところが、夢の大きな意義である
 
▼夢の中の「私」
◎疑問
・一体、夢の中の「私」は何を表わしているのか
 →覚醒時にはしないこと、考えないことを、夢の中ではしたり考えたりする
 →夢の中で「私」の姿を見たりする
 ★二重人格や二重身、という特異な現象を体験しているとも言える
 
◎「夢の中の私」とは
・単なる想像ではなく、行動し体験するものとして現れる
・主体でもあり、客体でもあり、生き生きとした自我像となる
 →将来の可能な体験を先取りする
 →コンプレックスとの関係を、より生々しく体験する
★自我の発展の可能性を示すもの、と言える
・「夢の中の私」が過去の私である場合
 →自我によって忘れられていた、「私の側面」かもしれない
★「潜在的な自我」や「可能性としての自我」の像、と言える
 
▼夢の中での二重身の現象
・自分が自分と会う、自分が2人いる、などの現象
 
<例>
*ある女子大学生
・母と喧嘩が絶えず、母は娘の欠点を何かにつけて指摘し叱責する
★母子一体感(母と子の無意識的な結合)を背景としている
 →互いに「甘え」があるため、情況改変を行う努力が生じない
 →互いに分離せねばならないと感づいているため、争いが烈しくなる
★「母子一体感」が背景にある口論
 →延々と同じようなことが繰り返される
 →真の対決ではないため、親子関係に破壊も再構築も起こらない
○娘の見た夢
・家で棚の整理をしていた母が、突然倒れて死ぬ
・私は取りすがって泣くが、隣室にいるもう一人の私はホウキで掃除をしている
○夢分析
 ①「私」は、母親の突然の死を悲しんでいる
 ②「もう一人の私」は、何かが片付いたと言わんばかりにホウキで掃いている
・どちらの感情も大切なもの
 →①が強すぎると、娘は親から独立できないだろう
 →②が強すぎると、人間的な感情を欠いた孤立した人間となるだろう
・①が自我に近く、②が補償する傾向を示すものと考えられる
・その後、母との意義深い戦いを成し遂げ、娘は自立の方向へと進んだ
★子どもが親から自立してゆこうとするとき
 →心の中の“両親像”の急激な変化により、親の死の夢を見ることは多い
 →この悲しみと孤独に耐えられぬ人は、親から独立してゆくことが出来ない
 
 
■4■コンプレックスと元型
▼元型とは
・生命力の源
・人間の心の底深くに存在するもの
・人間の無意識の奥深くに存在するもの
・個人的なコンプレックスを超えた普遍的な存在
・ある個人の体験を超えた、人類共通に基本的なパターン
・言語表現によって明確化することはできない
・その存在を知ることは出来ないが、イメージとして把握できるもの
・無限の可能性を秘めた「普遍的無意識」の層から送られてくる表象
・あくまでも仮説的な概念
 
▼ユング 
・世界各地の「神話」や「おとぎ話」を研究
・人間の心の奥深くに、全人類に共通に、普遍的な表象が存在する可能性を仮定
 →ある程度、類型化して把握できるため、その基となる「元型」の存在を仮定
 →その元型的なイメージを、自我は把握し認知することができる
★コンプレックスは、個人的体験と関連し、自我によって抑圧された内容が多い
★元型は、コンプレックスよりも心の奥深く、「普遍的無意識」の層に属している
・普遍的無意識とは
 →個人的ではなく、人類に、動物にさえ普遍的と言えるもの
 →個人の心の真の基礎
 
▼無意識
・「個人的無意識」と「普遍的無意識」とに分けて考えられる
 ①個人的無意識:コンプレックスによって構成されている
 ②普遍的無意識:元型によって満たされている
*文化や地域の差によって、ニュアンスに差が生じてくる
★無意識の層には、細かくいくつかの層があると考えてもよいかもしれない
 ・個人的無意識
 ・家族的無意識
 ・文化的無意識
 ・普遍的無意識
★ある個人、ある家族、ある社会などに特徴的な無意識のパターンが存在する
・それらの共通となるような型が、一番底の方に浮かび上がってくる
 →それを「元型」と仮定する
 
◎コンプレックス
・個人的無意識の中で抑圧された感情の塊
 →コンプレックスは、色々な元型との絡み合いにより成り立っている
 →コンプレックスのもつエネルギーの源は、元型である
・コンプレックスを完全に抑圧し、自我から切り離したとき
 →元型とも切断され、自我は生命力を失っていく
 
◎夢
・個人的無意識と普遍的無意識のどちらの層から生じたか、違いが感じられる
 →個人的無意識の層:ある程度、理解することができる
 →普遍的無意識の層:非常に難解
 
◎家族的無意識
<例>
*寺田寅彦著『腹の立つ元旦』
 →自伝的な内容と思われる
・家族に共通して現れたコンプレックス
・老人:温厚篤実だが、元旦の朝になると不機嫌になり、家族に暗い思いをさせる
・老人の息子:老人が亡くなり、その息子が家族をもったある正月
 →急に不機嫌になり、同時に亡父の元旦の心持ちを理解する
・老人の孫:ある年の正月に不機嫌になる
 →それを発見した父親は驚き、非常に恐ろしく感じる
 
▼神話やおとぎ話
・「人がどうして生まれ、どうして死ぬか」
 →科学的に説明が可能
・「私は一体どこから来て、どこへゆくのか」
 →心の中に納得のゆく答えを得るためには、神話やおとぎ話を必要とする
 
<例>
*世界各地にみられる『太陽神話』
・太陽の運行を単に説明した話ではない
 →人々もそのまま信じていた訳ではない
 →太陽が空に昇る現象を見たときの、内的体験が表現されている
★昇る太陽という外的事象に対し、人間の内界にある元型が作動する
 →太陽と、ある元型が送り込んでくる表象
 →両者の中間に存在する自我が、それらを一つのものとしたイメージを把握
 →神話やおとぎ話が生まれる
 
▼元型の種類
・グレートマザー(太母)
・シャドウ(影)
・トリックスター(道化)
・アニマ&アニムス(女性像&男性像)
・オールドワイズマン(老賢者)
・ペルソナ(仮面)
など
 
▼元型:グレートマザー(太母)
・個人の体験を超えた、深い意味を持つ「母なるもの」と呼ぶべき存在
 ①全てのものを産み養育するもの
 ②あらゆるものを呑み尽くすもの
◎元型そのものを知ることは出来ないが、自我によって把握される心象
 →例:日本···観音様、山姥
 →例:西洋···マリア様、魔女
 →例:世界···地母神
・神話、おとぎ話、夢、精神疾患患者の妄想、未開人の心性など
 →共通して認められる
◎夢の中のグレートマザー像
・母親コンプレックスの人格化
 →グレードマザーのイメージが重複して現れることがある
 
▼元型:シャドウ(影)
・自分にとっては受け入れ難いもの
・取り去ってしまうと、生きた人間として、その人間味を失ってしまう
・人生の別れ道で、自分が選択しなかった道を歩んだ「もう一人の私」の心象
 
<例>
*非行少年
・父母:学校の先生で、周囲からも信頼される立派な人物
 →自分達の子どもに対し、厳しくしつけて養育してきた
・少年:両親が抑圧してきた「影」を無意識に感じ取り、問題行動を引き起こす
 →両親が極端に一面化した体験を、補償する役割を少年が担った、とも言える
 
▼元型:トリックスター(道化)
・世界のはじまりを伝える神話に、しばしば登場する
・いたずら者で、その狡猾さと行動力にはずば抜けたものがある
・余りにもシンプルで、善悪両面を含む存在
・変幻自在で神出鬼没、全く捉えどころがない
・境界を越えて出没し、繋ぐ者でもあり、切る者でもある
・特有のキラキラした輝きを持つ
*低次元:単なるいたずら好きの破壊者、英雄の萌芽が感じられる
*高次元:人類に幸福をもたらす英雄
 
◎心理治療の現場
・トリックスターに出会うことが多い
・邪魔者扱いされたり、悪者と決めつけられたりする人
 →属する人間関係内におけるトリックスターとしての役割を理解する
 →「時」が到るまで、条件を整えながら待つ
 →1人のトリックスターが、英雄に成長するまでの過程を共に歩む
*言うは易く、行うは難し
・誤解する、時を逃す、治療者自身が壊されそうになって逃げる
 →そう簡単にはいかず、多くの失敗が重ねられている
 
◎集団内に現れるトリックスター
・一度出来上がった組織は、なかなか崩れるものではない
 →トリックスターの必要性が高まる
 →破壊的行為を通じて、新しい秩序をもたらす
◎挫折したトリックスター
・これほど惨めなものはない
・破壊と悲惨のみが残り、怒りと嘲笑を一身に受けねばならない
 
<例>
*大きな不和を抱える家庭内にいる子ども
・教師や親から見ると、極端に落ち着きのない子
 →“大役”を背負っている子が、学校で落ち着いていられる筈がない
・心理相談の過程
 →自我が適切な強さに達するまで待つ
 →時が到り、家庭内に“爆発”が生じ、家庭内に新しい人間関係が出来上がる
 →その暖かい関係の媒体者として働き、落ち着きのあるいい子に変わる
○治療者として思うこと
・あのキラキラとした輝きを失い、一抹の淋しさを感じる
 →果たして、相談者にとって害あるもののみを排除したのだろうか
・消失したコンプレックスの内容が、どれほど自我の中に再生しているか
 →我々はそこに満足を得なければならない
 
 
■5■自己実現の過程
▼自己実現
◎「自我」の役割が重要
・コンプレックスを拒否せず、回避せず、対峙していくことが重要
 →コンプレックスとの対決を通して、自我の力を徐々に高めてゆく
 →死と再生の体験を通して、自我にコンプレックスを統合してゆく
・コンプレックスの奥深くで繋がる元型を、自我の中にどう意味づけてゆくか
 →そうして創造的な生活が営まれてゆく
★自我の発展や強化によって、「私」に対する確信が強まってゆく
 →「私」とは何者なのか、大切な部分が見えてくる
 →自己実現への道が見えてくる
 
◎内界と外界の呼応性
 ① 内界:あるコンプレックスが強力となってきたとき
  →外界:それに対応するような外的事象がよく生じる
 ② 外界:ある外的事象が生じたとき
  →内界:それに対応するコンプレックスが強力になることがよく生じる
 
・自身の内界に向かって目を開けば、コンプレックスの存在に気づくはず
 →それは「全て私が悪い」という反省に繋がるものではない
★内界との対決は、外界との対決にも繋がってくる
 →その対決を通じてこそ、人格の発展が生じる =自己実現の過程
 →自我のみにしがみついていては、発展はない
 
◎ユング自身の体験
・無意識の内容と対決していたとき
 →家族のことや仕事に従事する日常の生活が、大きな支えとなったと語った
・我々が自己実現の道を歩み、個性的に生きるためには
 →外界から要請される陳腐な生活をやらねばならない
 
▼自己実現の問題が重視される時代
・外的世界の拡張の凄まじさ
 →今日の情報過多の状態は、コンプレックスが刺激を受ける機会を増加させる
★コンプレックスによる害が、倍加される傾向が強まっている
・自我が弱く、コンプレックスと同一化した人の勢いは強い
 →元型がその背景で作用するとき、その勢いはさらに強大なものとなる
 →現実吟味の力の弱さから、手痛い挫折を味わうことになってしまう
★「私」に対する強い確信がないとき
・情報量の多さに比例して、その人の安定は揺さぶられてしまう
 →自己に根ざした、自己実現の道を歩んでいない人は危険が多い
 
<例>
*お金コンプレックス
・誰かがお金を儲けた話を聞くと、コンプレックスをくすぐられる
 →自分は損をしたのではないか、乗り遅れたのではないか
 →疑い始めると、地に足が着かなくなってくる