偏差値について、詳しく知りたい方に。(中学受験を想定)
7年以上前になるのですが、偏差値について、一通り書いています。
6回に分けて書いたものですが、計6,000字です。
ページを開くだけでも面倒になってしまうことと思いますので、
全文、貼り付けてみます。
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今回から、偏差値について、申し上げていきます。
小6生にとっては、模試の偏差値を見ながら、受験校を探っていく、という時期です。
やや細かい内容にもなりますが、気をつけて見て頂きたい点についても触れていきます。
長くなりますが、お付き合いの程、お願い致します。
1.まず、偏差値、というのは何?
偏差値は、
偏差値=50 + (得点-平均点)÷標準偏差 ×10
で、定義されます。
とりあえず、受験者全体の平均点と同じであれば偏差値は50になる、
そして、偏差値は母集団(受験層)に対する相対評価である、という点を御理解下さい。
たとえば、偏差値70の開成合格者であっても、開成中学の中での試験では、
偏差値40になることは十分にありえます。
次のア.イ.ウ.の3点につきましては、偏差値算出式について細かい説明ですので、
読み飛ばして頂いて構いません。
ア.標準偏差の算出式は、シグマを使ったものになりますので、この紙面の上では書けません。すみません。
ウィキペディア等で見られますので、御確認下さい。
標準偏差は、各受験者の得点と平均点との差を2乗したものを足し合わせ、受験者数で割り、
その正の平方根をとったもので、ばらつきの程度を表すものです。偏差値を求める式で、
(得点-平均点)を標準偏差で割っていますが、これにより、テストごとのばらつきの違いを
規格化して、平均点からの乖離の度合いをより正しく表すことができるようになっています。
(例えば、通常、算数と国語を比べると算数の標準偏差の方が明らかに大きいのが普通です。
標準偏差で割らないとすると、算数の偏差値は50から離れた値になりやすく、国語の偏差値は
50から離れた値になりにくい、ということになってしまいます。)
イ.得点分布につきましては、首都圏模試につきましては概ね正規分布に近い状態になっており、
得点分布についての問題はないと考えられます(私の塾では四谷大塚、日能研の模試の受験は
特に推奨していないため、これらについては検証していませんが、特に問題ないと推測されます)。
ウ.平均点(母集団の平均値)と標準偏差(母集団のばらつき)は、母集団属性ですので、
自分でどうにかできる値ではありません。自分でどうにかできるのは、得点だけです。
(ア・イ・ウにつきましては、統計学の知識を思い返して書きました。統計学は、大学時代は、
ほっとーけー、と冗談半分に言われていたのをいいことに、完全にほったらかしでろくに勉強しませんでした。
ダメ学生の代表のようなものでした。大学院では、英語のテキストが指定されて
英語で勉強しなければならなくなり、ほっとけーない統計学、という状態に追い込まれました。以上、余談でした。)
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前回から、テーマが偏差値になりました。
偏差値は、
偏差値=50 + (得点-平均点)÷標準偏差 ×10
で、定義される、というようなことを前回申し上げました。
2.つぎに、A中学の偏差値48、というのはどういう意味?
AKB48のメンバー全員が入れる学校、という意味では、もちろんありません。
(AKB48のメンバーが中学受験の模試を受けて偏差値48取れるか?
AKB48をほとんど知らないのであまりいい加減なことは言えませんが、かなり難しいと思います。。。
中学受験の特に算数はとても特殊で中学校の数学とは別物です。すみません、完全に脱線でした。)
A中学の偏差値48、というのは、
偏差値48であれば、10人中8人が合格すると予想される、という意味です。
80%の可能性で合格が見込まれる、という意味です。
例えば、
偏差値49 10人中9人合格
偏差値48 10人中8人合格
偏差値47 10人中7人合格
偏差値48 10人中8人合格
偏差値47 10人中7人合格
このような場合、この学校の合格可能性80%の偏差値が48となります。
この合格可能性80%のラインの偏差値が最もよく使われるものです。(合格可能性50%の偏差値もしばしば使われます)
80%のラインというは、逆に、20%は不合格がありえるということも意味しますし、
偏差値51でも合格確実ということではなく、合格可能性が80%を超える、ということに過ぎません。
また、偏差値49以下でも80%未満ですが合格可能性がないという意味ではありません。
3.模試のよる偏差値の違い
同じ学校なのに、偏差値表によって偏差値が違うのはなぜか?
このような疑問があると思います。
三大模試と言われる日能研・四谷大塚・首都圏模試で、それぞれ、各学校の偏差値が違います。
受験者のレベルが違うからです。受験層が、日能研・四谷大塚は概ね同じ、首都圏模試はやや低いです。
ということは、偏差値は、首都圏模試ではやや高めになります。
例えば、中堅付近の学校を幾つか。
佼成学園
四谷大塚38 日能研39 首都圏模試44
日大豊山女子
四谷大塚40 日能研39 首都圏模試52
跡見学園
四谷大塚48 日能研45 首都圏模試54
富士見
四谷大塚54 日能研52 首都圏模試57
東洋英和
四谷大塚56 日能研53 首都圏模試61
早稲田実業
四谷大塚63 日能研64 首都圏模試69
(数値は直近のものではありません。)
四谷大塚38 日能研39 首都圏模試44
日大豊山女子
四谷大塚40 日能研39 首都圏模試52
跡見学園
四谷大塚48 日能研45 首都圏模試54
富士見
四谷大塚54 日能研52 首都圏模試57
東洋英和
四谷大塚56 日能研53 首都圏模試61
早稲田実業
四谷大塚63 日能研64 首都圏模試69
(数値は直近のものではありません。)
四谷と日能研はわずかですが、四谷の方が2ポイントほど、高くなります。
四谷・日能研と首都圏模試との間には大きな違いがあります。
学校によってかなり異なりますが、四谷と比べて大雑把に5ポイントほど、首都圏模試の方が高いです。
ですから、例えば、“偏差値48だった”、といっても、それがどの模試だったのかによって、
意味が違うということです。
つまり、偏差値48、というのが四谷大塚の結果ならば、跡見学園に合格可能性80%になりますが、
それが首都圏模試の結果ならば、日大豊山女子で合格可能性80%に達しない、ということです。
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偏差値とはどのように定義されるものか、学校の偏差値とはどのようなものか、
模試によって偏差値が違うのはなぜか、といった点について言及してきました。
今回は更に偏差値についての理解を深めて頂き、よりよい志望校選択をしていただきたいと思います。
4.どの模試を受けたらいいか?
どの模試を受けたらいいのか?
四谷大塚で絶望的な判定、首都圏模試で合格確実の判定、となった場合、どちらの結果を信用すればいいのか?
このような疑問もあると思います。
模試の結果の信頼性は、模試の問題がその学校の入試問題にどれほど近いか、および、
模試で同等レベルの受験生がどれほどたくさんいるか、この2点に大きく依存します。
四谷大塚・日能研の場合、上位校の出題に近く、中堅~下位校の出題とは大きく異なります。
逆に、首都圏模試の出題は、上位校~中堅校に近く、受験者も中堅校付近志望者が多いです。
これらから、首都圏模試の偏差値で50代後半くらいまでの学校であれば、首都圏模試の結果の方が
より信頼できると考えられます。
但し、どの模試でも、出題の偏りがありますので(特に理科は)、結果については、
1回の結果で決めるのではなく、複数回で判断された方がいいです。
また、公立中高一貫校の場合は、どの3大模試とも問題が大きく異なりますので、あまりあてになりません。
公立中高一貫校(首都圏模試で偏差値50代後半)に合格された生徒さんの模試成績は、
偏差値40代前半も珍しくありません。
ちなみに、中堅~下位校の合格可能性を考える上では、四谷大塚や日能研はもちろんですが、
首都圏模試も信頼しにくくなります。
そのような場合は、もう少し易しい問題をつくっている業者(育伸社)があり、数千名の受験者がいます。
そのようなテストを採用している塾に入る、というのも一つの考え方です。
5.偏差値はあてになるか
偏差値はあてにならない、目安にしか使えない、としばしば言われますが、これについてはどうでしょうか。
一般的に言われている偏差値は合格可能性80%のものです。これは、その偏差値ならば、
80%の確率で合格するというもので、20%の確率で不合格になるということも意味しています。
5人に1人がその偏差値で不合格になる、これをもって“あてにならない”と判断するかどうかは
個人の価値観によるかもしれません。しかし、
合格可能性80%の学校を2つ受けて、どちらかに合格する確率は96%です
(二つとも不合格になる確率は、20%×20%=4%です)。
96%の合格可能性となれば、十分信頼しうるものだと判断されると思います。
それでも心配ならば、合格可能性80%の学校を3つ受けることを想定すればいいと思います。
3つとも不合格になってしまう可能性は、0.8%です。99.2%の確率でいずれかに合格します。
合格可能性を考える上において、偏差値は基本的に信頼できる、と考えてよいと思います。
(但し、偏差値を見る上での注意事項があります。明日もお読みください。)
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前回は、どこの模試を受けたらいいか?、偏差値はあてになるか?、
についてお伝えしました。更に偏差値について、続きます。
6.合格確実校
どこを受ければ合格確実か?という疑問があると思います。
都内の中学入試は2/1~2/5まで5校以上受験できる制度になっています。
合格可能性80%のラインの学校を複数回受験する、という方法で合格確実校を決めて下さい。
1回受けただけでは実力があっても不合格になる可能性があります。
しかし、複数回受ければ、実力があればまず間違いなく受かります。
また、同じ学校を複数回受験する場合は、多くの学校で複数回優遇の措置があり、合格しやすくなります。
7.偏差値についての注意点 1
上の4.5.6.は、小6のこの秋の時期を想定して書きました。
学校の偏差値は、合否判明後の追跡調査を行って求めていますから、
時期が早いものほど信頼性は小さいということになります。
小4、小5の場合、まだまだ受験を迎えるまでに時間があり、成績が変動しますので、
この時期の模試の結果は、小6よりも信頼性がおちると言わざるを得ません。
では、どれほどの信頼性か?、これは手元に統計がないので私にははっきりしたことは言えませんが、
小5になってからの複数回の平均を考えれば、かなり信頼できる(最終的な偏差値とそれほど
違わない)のではないかと考えます。
8.偏差値についての注意点2
試験の度に、偏差値は5ポイント程度は上がったり下がったりします。
受験校を検討する際、1回だけの結果で判断するのではなく、3回以上の平均で考えるようにして下さい。
(厳しめに考えたい場合は、10~12月の最も悪かった結果で受験校を決める、という方法もあります。)
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前回は、偏差値は小6受験生が合格可能性を探るための判断基準として十分使える、
といった点について言及しました。
ただ、注意すべき点もあります。
「志望校選びが死亡校選びになってしまった」というようなことにならないために、
(すみません、コテコテでした(笑))
注意すべき点を十分に踏まえて、偏差値を見て下さい。
9.偏差値についての注意点3
首都圏模試の中堅付近の学校の多くは、2/4、2/5にも入試を設定していますが、募集数が少ないことが多々あります。
そうすると、「偶然優秀な生徒が多く受験した」という偶然の要因が結果に影響を与えやすくなります。
募集数が数十名の場合は、やや合格可能性を低めに見積もる必要があります。
10.偏差値についての注意点4
模擬試験は年内で終わりです。12月中旬に受けたものが最後の結果となります。
しかし、本番の入試は都内なら2月1日からです。1.5カ月もあります。
模擬試験の結果は確かに信頼するに足るものですが、それは、受験直前まで、それまで同様の
ペースで勉強できた場合に限られます。
もし、12月から1月にかけて、大幅に勉強のペースが落ちる場合は、合格可能性を
低く見積もらなければなりません。
以前にも申し上げましたが、12月・1月の直前期の学習は重要です。合否を左右します。
子どものペースが落ちている、維持できているか、という点は、大手進学塾さんでは把握できないと
思いますので、ご家庭で注意して様子をみるようにして下さい
(過去問の出来具合で判断するのもいい方法だと思います。私の塾では、
私が4教科全部見ていますので、授業の様子、宿題の消化具合、過去問の出来具合などを
注意して見ています。)
11.偏差値についての注意点5
偏差値は人間の能力の一部を測る指標にしか過ぎません。
計測されているのは、数的知能、言語知能の一部にしか過ぎません。
対人関係能力、運動能力、芸術的知能、音楽的知能、道徳観倫理観、といったものは
全くはかられていません。
また、偏差値は、現時点での状況を数値化しているに過ぎません。
今後の能力を保証するものではありません。偏差値50の中学に入学しても、
大学受験では、偏差値60の中学に入学した生徒よりも難しい大学に入学することは珍しくない、
という現状が、その証左です。知能検査でさえ、5年、10年程度のスパンでは、
必ずしも安定した結果を示さない、という報告もあります。
偏差値をもって将来にわたる人間の価値が決まるかのような考え方を、お子さんに植え付けないようにしてください。
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前回は、偏差値を見る上での注意点を申し上げました。
今回は、偏差値について、最後の注意点です。
12.偏差値についての注意点6<最後に>
保護者の方々はお子さんの幸せを願っていると思います。
幸せになってほしい、立派な人物になってほしい、みじめな人生を歩んで欲しくない、かわいそうな想いをさせたくない、
だから、高いお金を払って中学受験をさせ、私立中学に通わせるのだと思います。
幸せになってほしい、だから良い成績を取らせたい。偏差値は高い方がいい。
模擬試験の偏差値が40よりも50、50よりも60の方がいい。誰でもそうだと思います。
しかし、偏差値が高ければ、それだけで子どもが幸せかというと、そうではないと思います。
偏差値はお金に似ていているところがあると思います。
お金はないよりあった方がいい。いいに決まっています。
しかし、お金がたくさんあっても不幸な人はたくさんいます。
お金のありがたみがわかっていなければ、また、お金の本当の使い方を知らなければ、
いくらお金があっても幸せになれません。
逆にお金が少ししかなくても幸せな人がいます。
お金のありがたみがわかっていれば、また、お金の賢い使い方を知っていれば、
少しのお金でも幸せになれます。
偏差値は高い方がいい。いいに決まっています。
しかし、偏差値が高くても、人間的な値打ちの低い人もたくさんいます。
逆に、偏差値が低くても、人間的な値打ちの高い人もたくさんいます。
子どもの将来を考えるなら、お金を稼ぐ方法はもちろん教えるべきですが、
もっと大事なことは、お金の有難みを教えることです、
お金が少ないとしても幸せに生きる術を教えることです。
子どもの将来を考えるなら、偏差値を上げる方法をもちろん教えるべきですが、
もっと大事なことは、偏差値が示すことの意味を教えることです、
偏差値が低いとしても幸せに生きる術を教えることです。
(以上、6回にわたり、偏差値について申し上げてきました。長らくお付き合い頂きまして有難う御座いました。)
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7年前に書いたそのままです。
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