脳への電気刺激が数学能力を高める?
痛みを感じない程度の電流で脳を刺激すると、数学の能力を活性化できるとする研究結果が示された。“数学の失読症”とも言われる算数障害など、中度から重度の数学的な障害を長期間改善できる可能性がある。 イギリス、オックスフォード大学の神経科学者で今回の研究を率いたロイ・コーエン・カドッシュ氏によると、この学習障害を抱える人は単純な数学的概念さえ理解できないという。「学習障害者の治療がわれわれの目的だ」とコーエン・カドッシュ氏は話す。 電気刺激が特定の知的能力を高める仕組みについては、まだ十分に解明されていない。ただし、一つの可能性として、「神経伝達物質」と呼ぶ脳内化学物質に電流が作用すると考えられる。 いずれにせよ研究チームでは、この発見が算数障害者だけでなく、脳卒中や神経変性疾患のために数学的能力が低下した人の助けになるのではと期待している。 ただしコーエン・カドッシュ氏は、発達障害のない人の脳を定期的に電気刺激すれば、倫理的な問題が生まれかねないと懸念も表明している。例えば、障害のない普通の人が数学的な能力を高めるために自分の脳を刺激すれば、不当な優位性を手に入れることになるかもしれない。「倫理的に見過ごしにできない難問だ」。 今回の研究結果は11月23日、「Current Biology」誌で発表される。