浅草小学生時代:
【窓の外に見えたもの】
私の小学校は浅草の中でも古い学校で、現在でも時々テレビの取材を受けています。それを観るたびに私は懐かしさを覚えます。テレビで流されるのはお化けのことではありません。学校行事に励む子どもたちの姿です。
でも、昔は不思議な現象によく出くわしたものです。今の子どもたちはどうなんだろう? 現代っ子は見えなくなったのか? 学校での心霊現象は収まったのか? それとも私のように見えても黙っているだけなのか……。
子どもというのは、訳もなくよく跳ねますよね。誰もが経験あるはずだし、街中でもよく見られる光景です。とくに幼児がそうなのですが、小学生でも低学年ほどまだやります。私も1年生の頃はぴょんぴょん跳ねていたものです。
ある日のこと、仲良しのさっちゃんと3階の廊下で跳ねっこをしていました。膝を深く曲げてからジャンプし、窓の外を見るという単純な遊び。それを何度も何度も繰り返していました。
窓の外を見たいのではなく、一緒に飛び跳ねることが楽しかったのです。
「面白~い。今度は5回連続してやろっ」
「うんっ」
1回、2回、3回……そして4回目のときでした。私たちが飛び上がったと同時に、窓の外から男の生首も上がってきたのです。
その瞬間、目と目が合いました……。
「キャッ!」
「今の何?」
私たちは腰を抜かしてしまいました。まだ、無表情な男の生首が目に焼き付いています。
「見えたよね?」
「ここ3階だよ」
立ち上がり、互いの手を取り合って恐る恐る窓の外を見てみました。……当然、そこには何もいません。人が立てるスペースもありません。私たちがジャンプするのと同時に、そこに居た霊も一緒に跳ねてきたのです。
霊は特定のリズムに引き寄せられると言います。そして、楽しい場にも寄ってきます。私とよっちゃんが醸し出した高揚感につられ、さらにジャンプのリズムが霊を引きずり出してしまったのでしょうか……。
それ以来、私たちは廊下でジャンプをしなくなりました。
そして、5年生になったとき、私たちはあのときのことを思い出しました。
「あれは怖かったね」
「二人が見たってことは本物だったかもね」
「もう一回ジャンプしてみる?」
「ええっ~」
私たちはその気になっていました。あんな怖い目をしたのに、まだ懲りていないのかって? それはちょっと違います。高学年になって、あれは幻だったという確証が欲しくなったのです。それを確かめるためにジャンプをリトライしてみたかったのです。
「行くよ」
「うん」
私たちはかがみ、そして……
「せ~の!」
同時にジャンプしました!
何も出てきませんでした。窓の外は校庭しか見えませんでした。ホッと胸を撫で下ろす私。
「良かったね、何もなくて」
よっちゃんにそう声を掛けたのですが、無反応……。見ると、顔がこわばっています。まさか……
「やっぱりいたよ」
よっちゃんには見えたのでした。
「前に見たおじさんの生首が……。いや~っ!」
悲鳴を上げてその場から逃げ出していくよっちゃん。
「待って!」
追いかけようとしましたが、私の足はそこで動けなくなりました。なぜなら、よっちゃんの跡をおじさんの生首が追いかけていたからです。
あれから数十年、あの生首はまだ3階の外にいるのでしょうか? そして、新1年生はジャンプしてそれを見ることになるのでしょうか……。
≪お知らせ≫
過去の『霊感女性が体験した怖い話』と『心霊ライターが取材した霊の話』がYouTube動画で観られます。時間のある方は是非!