某専門学校で広告の文面を作る依頼を受け、そこの新人広報のE氏と仲良くなった。感性が合い、住居も近かったことからお互い意気投合したのだ。そんな彼からこんなエピソードを聞いた。
「風邪をひいたので学校に休むと電話をしたら、折り返し学長自らが電話をかけてきたよ」と。
お見舞い電話かと思ったらそうではない。しかも、わざわざ組織のトップが一職員に電話してくるとは何事かと思う。
「てめぇ! なに休んでるんだ! 気合が足りねぇんだよ! さっさと出てこい! この野郎!」
E氏は唖然としたという。そりゃそうだろう。それ以来、学長に対しては不信感が募り、1年も経たないうちに退職した。
彼とはその後も親交があったが、転職を機に疎遠となってしまい長く会うことはなかった。
それから10年後、突然E氏から電話があった。
「今朝の新聞見たか? ざまーみろだぜ!」
10年ぶりの第一声がそれだった。
実はその日、学長が強制わいせつで逮捕されたという記事が新聞に出ていたからだ。あの学長なら何かしらやりかねないと思ったが、福祉の学校のトップに立つ者がわいせつ容疑とは恐れ入る。
E氏は恨みを忘れずにいて、逮捕が嬉しくて嬉しくてわざわざ電話をしてきたのである。私だけでなく、E氏と学長の関係を知っている人たちすべてに電話しまくっていたらしい。ちなみにE氏からはそれ以来また音信がなくなった。
その学長は実刑判決を受けて出所したのち、元の学校法人の総長をはじめとするトップの座に返り咲いた。そのことを受け、当時の萩生田光一文科相は迷いながらこう述べている。
「過去に強制わいせつで実刑判決を受けた創立者が理事長・学長に就任したというのは、私もちょっと驚いています」と。
まさに創業者ともなるとやりたい放題。
そもそも末端の職員に、風邪をひいて休んだからと言って電話で罵詈雑言を浴びせるトップがいるか! 人間として問題がある。強制わいせつで服役した者が福祉の学校を経営しているとはなんという皮肉であろうか。また、学生にしても母校の総長がそんな人物であることをどう思うのだろうか。
[編集後記]
昨年末、学校のホームページには「前理事長・学長の辞任および本学の管理運営体制について」という告知がなされた。トップである先の人物が辞任したのだという。だが、忘れた頃に復帰するんだろうなぁ。