【乳幼児にだけ見える古民家に潜むモノ】
(30代男性の我が子の体験談)
赤ちゃんには見えている
純粋無垢な子どもには霊が見えるという。これは実際そうなのだということを我が子で知った。たまたま転居した家が築50年以上という古さもあり、“何か”がいてもおかしくはない。そんな環境で育った息子は、今でこそ霊感のない小学生として成長してくれたが、乳児から幼児期にかけてはその古民家で不思議な言動を繰り返していたものだ。
最初にその兆候を見せたのは、まだハイハイもできない生後6カ月の時だった。夜、寝かしつけようと胸をポンポンと叩いていると、突然天井の一カ所を見つめながらケラケラと笑い出したのである。何かあるのかと思いその方向を見てみるが、その箇所はただの木目の板張りでしかない。
赤ちゃんは気まぐれだからと思い気にはしなかったのだが、毎晩同じ箇所を見つめてはニコニコするということが何度も続いた。
ひょっとしてお化けでも見えるのだろうか? だとしたら、それはそれで怖いが……。幸い、自分には何も見えないので実感が沸かなかった。
仮に“何か”いるとしても、おそらく赤ちゃんである息子を喜ばすような妖怪なり霊が天井の板張りに張り付いていて、毎晩笑わせるようなことでもしていたに違いない。だったら悪い霊ではないのかも。そこで、放っておくことにした。
だが、その得体のしれない“何か”が子ども好きであるとは限らない。今はただおとなしくしているだけなのかも。しかし、こちらとしてはなんの確証もないし、どうしようもないのでただ見守るしかなかった。
だいたい乳幼児は、人間よりも擬人化した動物や妖怪に興味を示すため、そういう姿を見かけて喜んでいただけかもしれないからだ。
そこにいた“何か”は驚かそうとしていたのか、ただ覗いていただけなのか? まぁ、息子にしてみれば楽しい存在として捉えていたのだろうが。
人語以外での会話
それからしばらくは何事もなかったのだが、息子が1歳になった頃のこと。添い寝をしている時に寝室の天井を見ながら何やら指をさしていたのである。以前と同じ場所を。そして、そこに向かって話をしている。赤ちゃん言葉なので何を言っているのかわからないが、まるで会話をしているような感じだった。
それが数回続いた時はさすがに気味が悪くなった。そこで、目に見えない何かがいるのではないかと思いデジカメで撮影をしてみた。デジカメは霊体が写りやすいということを知っていたからだ。
すると、液晶モニターには白くて丸いオーブが写っていた! 目をこすってその箇所を肉眼で見てみるが何も見えない。そこで、再び撮影してみると、やはり同じ所にオーブが浮いていた……。
後日、霊能力者に写真を鑑定してもらったところ、大きさや光り方からして先祖が心配して降りて来たのだろうとのことだった。カメラだと発光体としてしか写らないが、子どもには姿形がはっきり見えているのだという。とりあえず悪い霊ではなくて安心した。
赤ちゃんの目には、大人には見えないものが映っている。もし、あなたの赤ちゃんが同じ箇所を見て笑っていたのなら、そこには“何か”がいるのかもしれない。
霊体を追う幼児の眼
築50年以上の古民家に生まれた息子が2歳になった時のことだった。この頃になると、リビングでテレビに映し出されるアニメ番組を一人で観るようになっていた。だが、ある日のこと、息子はテレビの画面ではなく、テレビの斜め上の方の壁をずっと見ているのである。今度は笑ってはいない。無表情で一箇所を見続けている。
まさかと思ってデジカメを取り出し、息子の見ていた方向を撮影してみると、やはり液晶モニターには白くて丸いオーブが写っていた。
「またか……。また出たのか。というか、まだいたのか……」
悪い霊ではないとはいえ、やはり感じのいいものではない。だいたい赤ちゃんの時と同じ先祖の霊とは限らない。出現している場所も違うし。
しばらくすると、息子は見えない“何か”を追うように顔を動かした。再びその方向を撮影すると、オーブが移動してそこに写っていたのである。
「やっぱり、この子には見えているのだ」
まだ話すことができない幼児の頃は、目に見える“動くモノ”を自然に追ってしまうもの。例えそれが霊体だとしてもお化け自体に対して怖いという概念がないので、好奇心の赴くままに見てしまうのである。
その翌日のこと。今度は再び画面以外の所をせわしなく見るようになった。今までのように一箇所をじっと見ているわけではない。眼球が左右上下に動きまくり、確かに何かを見ている。そこで、早速デジカメで撮影してみると、大きさの異なるオーブがいくつも写っていた。
以前、寝室に出てきた先祖と言われたオーブは一体だけであり、見た目も綺麗な形をしていた。だが、今回出現したオーブは大小様々であり数が多すぎる。それだけで先祖ではないということが予想できた。
そこで、今回も霊能力者に鑑定してもらったところ、たまたま家の中に浮遊していたオーブたちが一箇所に溜まっている状態とのことだった。悪さをするようなものではないが、部屋の中が不浄な環境にあるのが良くないらしかった。そういえば小さな子供がいる部屋の特徴として、おもちゃが散らばっていたり、お菓子の袋や欠片が散乱していたり、使った物が散らかっていたりしている。
「そりゃあ確かに悪い気が溜まりそうだ」
すぐに部屋を片付けて掃除をし、窓を開けて風通しを良くし、水回りや玄関に盛り塩をした。
その後、息子はキョロキョロしなくなったので、いなくなったのかもしれない。やはり汚い部屋は霊が溜まりやすいのでだめだと痛感した。だが、いくら綺麗にしていても、出る時は出るということもわかった。
北向きの寒い部屋に……
息子がしっかり話せるようになった4歳の時のことだ。幼児の目でもはっきりわかるほどの人型の霊を見てしまったのである。
目撃したというその部屋は、客人が来た時に寝床として使用しているだけであり、普段は空き部屋となっている。北向きに位置しており、そのため冬などは底冷えがし、湿気も酷くて壁や窓枠にはカビが発生していた。
ある日、その部屋を何気なく覗いた息子がこんなことを言ってきたのである。
「あそこの部屋にいた白いお姉ちゃんは誰?」
「えっ……?」
驚くのも無理はない。この家に住んでいるのは私たち夫婦と息子の三人家族だけ。空き部屋には普段誰もいないからだ。
「見間違いじゃないの?」
「ちゃんと見たよ。髪が長くて白い服を着てた。知らないお姉ちゃんだったよ」
息子には、それが霊体だとは思えなかったらしい。だが、状況を聞く限り、息子が見たモノは紛れもなく人型の霊体に間違いない。
思い起こしてみると、以前酔っ払った同僚をその部屋に泊めた時、「枕元を何かが這うような音がし、時折掛け布団に誰かが載ったような重みを感じることがあった」と翌朝言っていた。その時は気のせいだと思い気にも留めていなかったのだが……。
そう言えば、両親が田舎から泊まりに来た時も、寝苦しく悪夢にうなされたと言っていた。
「やはり“何か”いるのだ……」
昼でも入るのが怖くなったのに、夜などは絶対立ち入れなくなった。
その後、ビクビクしながら5年ほどその家に住んでいたが、子どもの生育に影響があることを恐れ、転職を契機に出て行くことにした。
折しも古民家ブームとかで、すぐに次の入居者家族が決まったようだが、その人たちも同じような現象を味わっているのかもしれない。幼い子どもがいなければ何も気づくことはないだろうけど……。