心霊ライターが取材した霊の話・1『水難の相を侮るな』 |  ライター稼業オフレコトーク

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アイドル記者を皮切りに、心霊関連、医療関連、サプリ関連、
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分野の取材執筆をしてきました。
ここでは当時の面白かった話や貴重な情報、取材で思ったこと、
記事にできなかった裏話などを披露していきます。

心霊ライターが取材した霊の話

 

<プロローグ>

 心霊関連のインタビューライターとして、多く一般人や芸能人を相手に心霊体験を取材してきた。さらに、体験もした。ゆえに創作ではなく本当にあった話だ。

 実は、本当にあった話というのは不思議な内容がほとんどで、戦慄が走るほどの怖さというものは少ない。だが、それだけに真実と言える。

 真実だからこそ、いつあなたがそのような経験をするのか分からないということだ。

 ここでは、私が取材して聞いた話や私自身が体験した不可思議な話を物語風に紹介する。

 

 

【溺れた者だけが体感した恐怖】

(小学生男児の川での恐怖体験)

 

 小学生の達郎(仮名)くんが両親から聞いた話によると、1歳の時に占い師から「この子は水難の相があるので気をつけるように」と予言されたそうである。しかし、小さな子どもに「水遊びをするな」というのは酷な話で、さすがに両親は水遊びを全くさせないということはしなかった。もちろん水辺で遊ぶ時は注意して見ていたが、それは小さな子どもを持つ親ならば誰もがすることだ。

 達郎くん自身も最初こそは注意して遊んでいた。しかし、小学3年生になる頃にはプールの授業で泳ぎを覚え、それまで何も危ないことがなかったことから水難の相についてはすっかり忘れていた。

 

 

 だが、小学3年の夏休みのことだった。父親に連れられて田舎の川で水遊びをしていた時のことだ。

 その川は横幅が長いものの、流れが緩やかで浅いということもあり、達郎くんは先へ先へと入っていった。膝近くまで水が来たら、それ以上は進まないようにしようと自分でも決めていた。しかし、突然深みにはまってしまう!

 川は雨が降って増水したりすると、強い流れによって川底が掘られ「急な深み」ができる場合がある。浅瀬のつもりが、ほんの一歩進んだだけでいっきに30 cmも深くなったりする。その深みは想像以上に急で河原からでは全くわからない。しかも、子どもには簡単に抜け出すことができない。達郎くんはそれにはまってしまったのである。

「うわっ! どうすりゃいいんだ」

 抜け出そうとして必死にもがくが、足が川底に着かないし、流れも速くなっている。

「僕、溺れちゃう? お父さん助けて……」

 達郎くんは河原にいる父親に手を振った。だが、浅瀬にいると思っている父親には、達郎くんが溺れかかっているようには見えなかった。そのため能天気に手を振り返してくるだけ。

「何やってんだよ、お父さん!」

 仕方なく達郎くんは自力での脱出を図り、なんとか深みから抜け出すことができた。

「助かったぁ」

 浅瀬まで這い戻り、体育座りをして一息ついた。

「やばかったなぁ。いきなり深くなるんだもん」

 

 

 達郎くんは腰の辺りで川の水の流れを受けながらしばらく安堵した。だが、ホッとしたのも束の間、いきなり足首に何かが絡みつき、水の流れを受けていた腰の部分は急激な水圧がかかってきたのである。そのため再び深みに戻されそうになってしまう。いや、それはまるで引き込まれそうになると言った方が適切かもしれない。

 よく見ると足元に何かいる。得体のしれない黒い影がある。しかも、目らしきものも見える!

「なんだ? いったいどうなってんの?」

 足に絡みついたものは、ものすごい力で達郎くんを深みに引きずりこもうとする。

「いやだ! 助けて! お父さ~ん!」

 再び手を振って助けを求めた。

 しかし、川の流れる音で声はかき消されてしまう。父親からすれば、達郎くんが浅瀬にお尻を着けたまま手を振っているようにしか見えない。溺れかかっているとは到底思えなかった。

「やめろ! やめろ!」

 だが、黒い影は徐々に大きくなりながら膝から下を完全に包みこんでくる。そのたびに目らしきものが瞬きをしながら達郎くんを見つめる。人間ではないとても冷ややかな目だ。

 ズリ……ズリ……

 体が引きずられるたびに川底の砂が不気味な音を立てていく。踵で踏ん張っても砂の中に埋もれていくばかり。

「このままじゃ僕は……」

 深みに引き込まれて溺れる自分の姿が想像できた。大声を出そうとしたが、そのつど激しい川のしぶきが顔にかかり口の中に入ってくる。

「ゴホッゴホッ」

 周りの人たちは、誰も達郎くんが溺れかかっているとは思わず無邪気に遊び続けている。父親はこちらにカメラを向けながら笑っている。誰も惨状に気づいていない……。

 

 一瞬諦めかけた。だが、最後の最後で必死にあがいた。達郎くんは足をバタバタさせ黒い影を必死に蹴り飛ばそうとした。そして、腰に当たる水圧に対しては両手に力を入れて踏ん張った。

「くっそー!」

 気合を入れて力を出したことで、体が少し浅瀬に戻った。それをチャンスに一気に体をうつ伏せに反転させ、這うようにして深みから脱出した。

 と同時に、急に足が軽くなる。見ると黒い影が離れ川下に流れていく。

「助かった?」

 安堵感から達郎くんは号泣した。

 

 その様子を見て父親が何事かと駆け寄ってくる。そして、達郎くんが一部始終を話すと、父親は一気に青ざめた。水難の相のことを思い出したからだ。

「油断していた。ごめんよ。これからはずっと見ているからね」

 父親はそう言ってくれたが、達郎くんにしてみれば二度と海や川に行く気はなかった。

 

 

 水難の相が出ている者は、膝から上が水面にあっても油断ができない。ただ深みにはまるという物理的要因だけではなく、得体のしれない何かに引きずられたり、川の流れが急変し悪意を後押しするなどして溺れてしまうらしい。あるいは河童がいるのかも……。くれぐれも侮らないことだ。

 

 また、保護者はしっかり我が子を見守ってあげて欲しい。はしゃいでいる姿と溺れている姿は紙一重……まさに天国と地獄の分れ道になる。

 

↓ <父親が撮影した写真> ↓

これが実際に溺れている最中の達郎くん。見た目はどうしても溺れているようには思えない。だから川は怖いし、親も油断する。写真を霊能力者に視てもらったところ、足元に何かいるとのことだった。