1982年のアルバム(その18 Nebraska / Bruce Springsteen)
アルバム The Riverによって、世界のロック・シーンの頂点を極めた
そのように言っても過言ではない、我らが Bossこと・・・
Bruce Springsteen
自分にとっても、The Riverと、その後の John Lennon発言で絶対的存在に
そんなBossだけに、次の行動は・・・何をやっても凄いだろう・・・
そう思っていたのでした。
1982年、The Riverから2年・・・
そんな時に、Bruce Springsteenがニュー・アルバムを発表する
そんなニュースが伝わってきたのですが・・・
それが、どうも自宅で1人で録音した、プライベートな内容のものらしい・・・
・・・ということでした。そして発表されたタイトルは・・・
Nebraska
Bossのホームタウンではないし・・・どういうことなのかな・・・
オンエアーが解禁、初めてラジオでタイトル曲 Nebraskaを聴いたのですが・・・
Bob Dylanを思わせるハーモニカとアコースティック・ギターのイントロから・・・
"I Saw Her Standin' On Her Front Lawn~, And 10 Innocent People Died~"
「何だこの歌は・・・」
1958年にネブラスカで起きた連続殺人事件のことを、Bossは、一人称で歌い・・・
最後は、"I Guess There's Just A Meannness In This World~"
そのように締めていて、これは、プロテスト・ソング・・・そうかも知れない・・・
その他、ラジオで数曲聴きましたが・・・自分の生い立ちというか育った境遇・・・
そういえば、The Riverにもそんなことが歌われていたように思いました。・・・
「これは凄いアルバムに違いない・・・」
そして、日本発売日の1日前(要するに店頭入荷日)に、秋葉原の大手のお店で
この Nebraskaを購入したのでした。
(この時の特典のポスターは、自分の部屋の天井に貼りました。)
レコーディングは、1981年12月17日~1982年1月3日
ニュー・ジャージー州、コルツ・ネックの自宅にて・・・
4トラックのマルチ・トラック・レコーダーで・・・
Bruce Springsteen
ヴォーカル、ギター、ハーモニカ、マンドリン、グロッケンシュピール、タンバリン、ハモンド・オルガン🎹、シンセサイザー他
レコーディング・エンジニアは、Mike Batlan
マスタリングは、Atlantic Studios、Customatrixにて、Dennis King
マスタリング・コンサルタンツは、Bob Ludwig、Steve Marcussen
プロデュースは、Bruce Springsteenです。
アルバム・ジャケット、デザインは Andrea Klein、写真は David Michael Kennedy
勿論、全曲、Bruce Springsteenの作品です。
A面1曲目、ギターとハーモニカで歌い始める Bruce
Nebraskaでスタート、当時この事件を聞いたBruce少年
その衝撃は測り知れないものだったのでしょう。・・・
NebraskaのLincolnから、WyomingのBadlandsへ・・・
ここでは殺人犯の主人公を自ら演じ、物語を語るように歌われていきます。
そして問いかけ・・・これはプロテスト・ソング、静かにハーモニカで締められます。
2曲目、ギターのかき鳴らしと同時にいきなり歌われるのは・・・
Atlantic City、アコースティック・ギターとハーモニカですが、ロック・ナンバー
勿論、New Jersey州の都市のこと、但し決して「良いとこ」と歌っているのでなく・・・
"Everything Dies, Baby, That's A Fact~" 荒れていた若き青春時代・・・
そして、"Meet Me Tonight In Atlantic City~"のリフレインで締められています。
シングル・リリースされた国もあり、カナダ No.49、日本でもシングル・リリースされていました。米国では、シングル・リリースはなかったものの、全米メインストリーム・ロックでは、No.10にチャート・インしました。
1985年の日本公演では、E Street Bandをバックにややスローに歌われ・・・
また The Band等、多くのアーティストにカバーされています。
3曲目、少しスローになって、ハーモニカとギター・・・
Mansion On The Hill、静かに語るように歌われる・・・
子供の頃に憧れた丘の上の豪邸・・・これは、New Jerseyでなくても、日本でも
同じ光景が浮かぶように思います。
成功を治めたBruceが西海岸に住み始めた頃、自分の家のことを・・・
「Mansion On The Hillさ」と言っていたことがありましたが・・・
ここで歌われている思いは、永遠のものでしょう。・・・
4曲目、軽快にハイトーンの雄叫びとアコースティック・ギターのカッティングから・・・
Johnny 99、やはり殺人を犯した労働者階級の若者が主人公
ただNebraskaと違って、Johnnyを現社会のアウトローのように描いて・・・
ギターに合わせて、アップ・テンポでノリよく歌われ、ハーモニカも力強く響き・・・
そして後半、Bruceが語り手から、Johnny自身となっています。
全米メインストリーム・ロックでは、No.50にチャート・イン
こちらも日本公演でも歌われ、ハーモニカが力強かった印象が残っています。
5曲目、静かにアコースティック・ギターの弾き語りといった感じで始まる・・・
Highway Patrolman、そう、Bruceが演じる主人公は、警察官 Joe Roberts
彼が語る恐らくベトナム帰還で傷ついてトラブル・メイカーとなった兄Frankyの物語
"Man Turns His Back On His Family, He Just Ain't No Good~"
これが言いたかったこと、Bruceには男兄弟はいませんが、兄弟愛の歌です。
尚、後になってこの曲に合わせたミュージック・ビデオも作られています。
6曲目、ギターのベース音が刻まれ、そこから歌われる・・・
State Trooper、今回も主人公は逃走中の犯罪者の方、州警察の警部に・・・
"Please Don't You Stop Me~"と・・・後半、雄叫び声も入り・・・
ここでは勢いよく、逃げ回っている様子も感じられますが、曲自体は暗いムード・・・
最後は静かにフェイドアウトしていきます。・・・
B面1曲目、アコースティック・ギターのピッキングで、静かに歌い始まる・・・
Used Car、Bruceの歌には、車がよく出てきますが・・・
ここは父親の、ようやく購入した中古車(Used Car)の話・・・
嬉しい話でもあるのですが・・・これで喜んでいるくらいでは・・・
いつか金持ちになったら、"I Ain't Ever Gonna Ride In No Used Car Again~"
ここでは、ハーモニカが、この気持ちをバックアップしているように効果的です。
2曲目、アコースティック・ギターで始まり、ベース音を響かせ、歌うは・・・
Open All Night、アコースティック・ギターですが、Chuck Berry風
このギターの勢いの通り、New Jerseyの情景がスピーディに展開・・・
まさに休みなく営業しているという躍動感が伝わってきます。
英国等、シングル・リリースされた国もあり、米国ではリリースされませんでしたが、全米メインストリーム・ロックでは、No.22にチャート・インしています。
3曲目、一転して静かなアコースティック・ギターのピッキングで静かに歌う・・・
My Father's House、この曲だけ、1982年5月25日のレコーディング
父親との葛藤の歌・・・最初、夢で見た話から・・・父親のことを思い・・・
会いに行こうと・・・ただそこにはもういない・・・だけど、父親の家は・・・
自分をどこからでも呼んでいる・・・ハーモニカが叙情的に響きます。
Bruceの家族愛を改めて実感、邦題は直訳で「僕の父の家」です。
4曲目、ハーモニカと軽快なギターのカッティングで歌い始める・・・
Reason To Believe、ここまでの9曲は、どれも主人公が居ての物語風・・・
この曲だけは、第三者の光景が歌われています。
"At The End Of Every Hard Day, People Find Some Reason To Believe~"
そう、少し暗く重苦しいムードになった中、最後のこの曲で誰もが救われた・・・
そんな気持ちになると思います。
邦題は「生きる理由」、直訳の「信じる理由」より合っていると思います。
そして最後のこの曲で、現実に引き戻されるでしょう。・・・
ここに登場した通り、全米アルバム・チャート最高位 No.3
プラチナ・ディスク獲得、その他では、カナダ No.3、ゴールド・ディスク獲得、1982年年間 No.32、オーストラリア No.8、プラチナ・ディスク獲得、ニュージーランド No.3、プラチナ・ディスク獲得、オランダ No.7、フランス No.18、西ドイツ No.37、ノルウェー No.3、スウェーデン No.3、アイルランド No.78、全英 No.3、ゴールド・ディスク獲得、1982年年間 No.88・・・世界各国でビッグ・セールスに
そして日本。オリコン・アルバム・チャート No.10
我が国でも初のTOP10入りを果たしたのでした。
Rolling Stone誌は、本作を The 500 Great Albums Of All Timeにおいて、2003年には、No.224、2012年には、No.226、2020年には、No.150に選出、また1989年には、100 Greatest Albums Of The 1980'sのNo.43に
その他、2006年に、Pitchforkでは、1980年代のGreatest AlbumsのNo.60に選出
その他各メディアにおいて非常に高い評価を受けています。
2,000年には多くのアーティストによるトリビュート・アルバム
Badlands:A Tribute To Bruce Springsteen's Nebraskaがリリースされ…
さらに2024年の段階では、2023年にWarren Zanesが書いた Deliver Me From Nowhere:The Making Story Of Bruce Springsteen's Nebraskaを基にした映画が、Scott Cooper監督で製作されると発表されています。
兎に角、本作 Nebraskaには、衝撃を受け、生々しいものを肌で感じ・・・
そう、ちょうど John Lennonの「ジョンの魂」と同じようなもの
そう確信したのでした。
Bruce Springsteen は、うつ病だった時期があったと告白していますが・・・
実は、The River以降もそのような状況に陥っていたのかもしれません。
もしそうなら、そこから、このような作品を作ってしまう・・・
そして、最後には"Reason To Believe"を見つけて・・・本当に凄い人です。
ちょうど日本では、本作リリースと同時期に、Dave Marsh著の Born To Run: The Bruce Springsteen Storyの日本語版「明日なき暴走」が刊行されました。
それを購入して熟読
さらに、超大作The Riverの後に、このNebraskaのような一面を示してくれたことで、Bruce Springsteen の次なる動きにただならぬ期待を抱くようになった
それは、決して自分だけでなく、世界中のファンがそうであった・・・
間違いないでしょう。