今年の大阪府立高校の受験情勢は、ますます過酷になっている | 作家・土居豊の批評 その他の文章

今年の大阪府立高校の受験情勢は、ますます過酷になっている

今年の大阪府立高校の受験情勢は、ますます過酷になっている

 

 

今年の大阪府立高校の受験、希望調査が新聞に出ていたが、昨年以上にボリュームゾーンの高校で倍率が上がっている感じだ。大阪府肝いりのハイレベル高校である文理学科では、三国丘がなんと2倍以上! 公立の高校受験で、2倍なんてちょっと考えられない。この原因は明らかで、三国丘は文理学科の中で、大阪南部から通学しやすい場所にあるからだ。他の文理学科の高校は、大阪市内、あるいは北部にあり、もっとも南にある岸和田高校は、府全域から通学しやすいとはいいがたい。

大阪府立の高校受験は、橋下教育改革の結果、学区制を撤廃し、高校統廃合を進めたせいで、ますます競争激化している。その反面、大阪府が私立高校授業料無償化を続けているせいで、私立に流れる生徒も増えている。それも、以前なら中間層の生徒が楽に合格できたはずのレベルの高校で、年々倍率が上がっていて、過去に例がない人数で大勢落ちており、それらが併願校の私立に流れているのだ。

これは、税金の使い道が間違っていると言えまいか。

これまで、橋下教育改革で進めてきた公立高校の統廃合が、危機にあった府財政の立て直しのための対策だというなら、一方で私立高校の授業料を無償化して、公立を落ちた生徒が私立に流れるのは、これは公教育の意味からいって本末転倒だ。本来、幅広い層を公立学校で手当するのが公教育のあり方のはずではないか。

例えば、旧第1、2学区で、中間層の生徒の受け皿だった高校をいくつも統廃合したせいで、残った数少ない中堅校である刀根山や山田に受験生が集中する事態となっている。それが、今年の希望調査での倍率にも如実に現れている。

これまで、中堅校は、中学3年時の内申点でほぼ間違いなく合格圏内がわかるものだった。だから中堅校を受けて落ちる生徒は少なかったはずなのだ。なのに、中堅校で受験生がボロボロ落ちている。それが結果的に併願の私立高校に流れるのだ。で、その私立高校の授業料を無償化しているのだが、その財源は府民の税金だ。つまり、わざわざ公立にかける税金を節約して、私立高校の生徒を税金で補助していることになる。結果、得しているのは、一体誰か? まさかと思うが、私立高校の経営を税金で助けているということでは?

こういう現状で、中学校の受験指導も大変になっている。倍率が上がったせいで、かつてのように偏差値で合格できるか判断が難しいからだ。だから、中堅校への進学が難しくなる。

学力がハイレベルにある一部の生徒が、リスクをとって高倍率の難関校に挑む、というのがかつての受験戦争だった。ところが、現状は、多数の中間層の生徒が高倍率に挑む羽目になり、倍率のせいで落ちて併願の私立に流れている。こういう状態は、教育制度の間違いだとしか思えない。これは明らかに、橋下改革の悪い結果だ。競争主義を公教育に持ち込んで、一部のエリート層を引き上げるというのが橋下教育改革の目的だが、その弊害で大多数の中間層に受験戦争を強いることになってしまった。

その一方で、肝心のハイレベル校も、迷走しているように見えるのだ。

大阪府のトップ10校の大学進学実績を、週刊誌などで見れば一目瞭然なのだが、意外にも国公立への進学が伸び悩んでいる。教育費が高くなる一方で、国公立であっても学費が高くなり、地方の国公立に進学する金銭的余裕が失われていることも原因の一つだ。地方の国公立に下宿で進学するのと、実家から私立大学に通うのと大差ないような感じなのだ。

大多数の中間層の生徒を見捨てた挙句、大目的であるエリート育成にも失敗したとすれば、これでは橋下教育改革は、競争主義でも失敗だったといえるのではないか?

 

※高校入試関連の過去の記事

 

近畿の高校入試と大学入試の現状について

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12438929103.html

 

大阪府の公立中学のチャレンジテスト、その後

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12427705365.html