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藤巻隆(ふじまき・たかし)オフィシャルブログ

私のテーマは6つあります。
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(4)名言 (5)ランキング (6)ICT(情報通信技術)
このブログでは、主に(1)~(4)を扱っています。
(5)と(6)はそれぞれ別のタイトルで運営しています。

『マキアヴェッリ語録』 (05)





『マキアヴェッリ語録』 塩野七生 新潮文庫
平成4年11月25日 発行


目次
第1部 君主編
第2部 国家編
第3部 人間編





マキアヴェッリ(日本ではマキャベリと表現されることが多い)
は『君主論』の著者として知られ、「マキャベリズム」が
人口に膾炙しています。


その思想を端的に表現する言葉は、
「目的は手段を正当化する」
です。


目的のためならどんな手段を講じてもかまわない、と解する
ことが多いですね。


実は、私もこの書を読むまではそのように解釈していました。
言葉を文脈の中で解釈せず、言葉が独り歩きすることの怖さは、
風説の流布でも経験することです。


福島第一原発事故以後、周辺にお住まいの方々は風説の流布
に悩まされ続けています。拡散した誤情報はさらに誤情報を加え、
拡大していきます。容易に訂正されることはありません。



話しを戻しますと、マキアヴェッリの実像はどのようなもので
あったのか、そして「目的は手段を正当化する」と言っている
ことの真意は何だったのか、を知りたいと思いました。


先入観を取り払い、大前研一さんが言う、「オールクリア
(電卓のAC)」にしてマキアヴェッリの説くことに耳を傾ける
ことにしました。


マキアヴェッリは、1469年5月3日にイタリアのフィレンツェで
生まれ、1527年6月21日に没しています。15世紀から16世紀
にかけて活躍した思想家です。500年位前の人です。


ニッコロ・マキャヴェッリの肖像画

ニッコロ・マキャヴェッリの肖像画 Wikipedia から
 


塩野七生(しおの・ななみ)さんは、「まえがき」に代えて
「読者に」で次のように記しています。塩野さんが解説
ではなく、また要約でもなく、「抜粋」にした理由を説明
しています。


尚、10ページ以上にわたる説明からポイントとなる言葉を
「抜粋」しました。




 この『マキアヴェッリ語録』は、マキアヴェッリの思想の

 要約ではありません。抜粋です。

 なぜ、私が、完訳ではなく、かといって要約でもなく、

 ましてや解説でもない、抜粋という手段を選んだのかを

 御説明したいと思います。

 第一の理由は、次のことです。

 彼が、作品を遺したということです。


 マキアヴェッリにとって、書くということは、生の証[あか]し、

 であったのです。


 マキアヴェッリは、単なる素材ではない。作品を遺した

 思想家です。つまり、彼にとっての「生の証し」は、今日

 まで残り、しかもただ残っただけではなく、古典という、

 現代でも価値をもちつづけているとされる作品の作者でも

 あるのです。生涯を追うだけで済まされては、当の彼自身

 からして、釈然としないにちがいありません。


 抜粋という方法を選んだのには、「紆曲」どころではない

 マキアヴェッリの文体が与えてくれる快感も、味わって

 ほしいという私の願いもあるのです。そして、エッセンスの

 抜粋ならば、「証例冗漫」とだけは、絶対に言われない

 でしょう。


 しかし、彼の「生の声」をお聴かせすることに成功した

 としても、それだけでは、私の目的は完全に達成された

 とはいえないのです。マキアヴェッリ自身、実際に役に立つ

 ものを書くのが自分の目的だ、と言っています。 

 

  (前掲書 「読者に」から PP.3-5、14)






マキアヴェッリの名言をご覧ください。


第1部 君主編



 君主にとって、厳重のうえにも厳重に警戒しなければ

 ならないことは、軽蔑[けいべつ]されたり見くびられ

 たりすることである。


                    ―― 『君主論』 ――

                              (P.88)

         (013-1-0-000-490)
 



 


 君主にとっての最大の悪徳は、憎しみを買うことと

 軽蔑されることである。

 それゆえに、もしもこの悪徳さえ避けることができれば、

 君主の任務は、相当な程度にまっとうできるであろうし、

 他に悪評が立とうと、なんら怖[おそ]れる必要はなく

 なる。


 古今東西、人間というものは、自分自身のもちものと

 名誉さえ奪われなければ、意外と不満なく生きてきた

 のである。

 一方、軽蔑は、君主の気が変わりやすく、軽薄で、

 女性的で、小心者で、決断力に欠ける場合に、

 国民の心中に芽生えてくる。

 
 自分の行うことが、偉大であり勇敢であり、

 真剣で確固とした意志にもとづいていると見えるよう、

 努めねばならないのだ。 

  
                    ―― 『君主論』 ――
                  
                              (P.89)
                
          (014-1-0-000-491)
 






 人の上に立つ者が尊敬を得るには、どのように行動

 したらよいかについての考察だが、なによりもまず

 第一に、大事業を行い、前任者とはちがう器である

 ということを、人々に示すことであるとわたしは言い

 たい。

 なぜなら、大事業を行えば、しかもそれが次々と

 為されれば、人々は呆気[あっけ]にとられて感嘆

 してしまい、他のことに心を使う暇も気も失ってしまう

 からである。

 第二は、敵に対する態度と味方に対する態度を、

 はっきりと分けて示すことである。人の上に立つ者が

 この種の明快さを示すとき、人々は彼を尊敬するように

 なる。


                    ―― 『君主論』 ――

                              (P.91)
                              
          (015-1-0-000-492)
 








ポイント

時と場合によって、君主(リーダー)たる者は「はったり」を
かますことも必要である、ということです。


ただただ馬鹿正直に発言し、行動していては軽蔑される
だけだ、とマキアヴェッリは教えている、と解釈しました。


マキアヴェッリは直截的にビシッと言い放つため、
不快感よりもむしろ爽快感を与えてくれます。


曖昧な表現を極力避け、ストレートに話す態度は自信の
現れであり、一面、傲慢のように見えますが、その態度を
貫き通すことができれば、尊敬されるようになる、と言えます。




キーセンテンス

「自分の行うことが、偉大であり勇敢であり、

 真剣で確固とした意志にもとづいていると見えるよう、

 努めねばならないのだ。」




キーセンテンス

「敵に対する態度と味方に対する態度を、

 はっきりと分けて示すことである。人の上に立つ者が

 この種の明快さを示すとき、人々は彼を尊敬するように

 なる」



マキアヴェッリは人間の本質的な側面をえぐり出して、
白日の下に晒す類まれな人物だった、と想像できます。


戦略家であり、優秀な参謀であり、心理学者であり、
歴史学者であり、哲学者と言ってもよいくらいです。






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本当に役に立つビジネス書
<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の
概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>



日経ビジネスの特集記事(107)

円安でも儲からない
アベノミクスに乗れないワケ

2015.05.18



テーマ

今週の特集記事のテーマは

2年連続の賃上げ、2万円を付けた日経平均株価、
急増する訪日外国人──。
アベノミクス下で進んだ円安の効果が出始めている。
だが、産業界を見回すと、為替安でも苦戦している企業は
少なくない。
アベノミクスのシナリオは、輸出産業の復活とトリクルダウン効果で、
円安の弊害を相殺して余りある景気回復を実現することだ。
「円安で利益が増えない輸出企業」や「恩恵が及ばない内需企業」
が増えれば、その前提は根底から瓦解しかねない。
なぜ典型的な加工貿易国なのに、円安で苦境に見舞われるのか。

 (『日経ビジネス』 2015.0518 号 P.024)

ということです。

* トリクルダウン効果:


 トリクルダウン理論(トリクルダウンりろん、

 trickle-down effect)とは、

 「富める者が富めば、貧しい者にも自然に

 富が滴り落ちる(トリクルダウンする)」とする

 経済理論または経済思想である。
 

  (トリクルダウン理論 Wikipedia から)


ピケティ教授の最新理論によれば、
「富める者はさらに富み、貧しい者はさらに
貧しくなる」
ということになります。


トリクルダウン理論とは、全く違いますね!





円安でも儲からない<br />アベノミクスに乗れないワケ

円安でも儲からない
アベノミクスに乗れないワケ

(『日経ビジネス』 2015.05.18 号 表紙)
日経ビジネスDigital 2015.05.18 号




今特集のスタートページ

今特集のスタートページ

(『日経ビジネス』 2015.05.18 号 PP.024-025)
日経ビジネスDigital 2015.05.18 号







第1回は、
「序章 アベノミクスが微笑まなかった人々
 『話が違うよ、安倍首相』」
「PART 1 絶対儲かるはずなのに・・・
 円安が効かない4つのパターン」
のうち、1と2のパターン
を取り上げます。


第2回は、
「PART 1 絶対儲かるはずなのに・・・
 円安が効かない4つのパターン」
のうち、3と4のパターン
を取り上げます。


最終回は、
「PART 2 1ドル60~300円でも生き残る
 為替変動に打ち勝つただひとつの方法」
をご紹介します。




今特集のキーワードは次の5つです。

キーワード

 産業構造の転換 
 顧客の不在 
 競争力の欠如 
 価格転嫁の不可 
 為替の行方 




では、本題に入りましょう!


 序章 アベノミクスが微笑まなかった人々 
 「話が違うよ、安倍首相」 

アベノミクスによる円安誘導政策によって、
恩恵を受けたのは一部の輸出産業の先頭に
立って活動する大企業でした。


この事実は以前から指摘されていたことです。


ですから、そのこと自体を聞いても目新しいこと
ではなく、再確認したにすぎません。


ところが、ことはそう簡単には終わらないことが、
『日経ビジネス』特集班によって伝えられました。


順を追って見ていくことにしましょう。
日本海側の港湾からロシアへの日本の中古車
輸出がにぎわいを見せている、という話題を何度か
見聞きしたことがあります。


現在ではどうなっているでしょうか?


 2012年12月の政権交代以来、アベノミクス下で

 進んだ円安は、日本の中古車輸出業全体に

 とっては干天の慈雨となった。

 財務省貿易統計によれば、2014年の輸出台数は

 前年比12万台増の128万台。

 1ドル90円台だった2009年の1.9倍に増えた計算だ。

 だが昨年、ロシア向けは逆に2割超も減少。

 君臨してきた輸出先首位の座から陥落した。


 中古車であふれていた新潟東港近くの「ディーラー街」は、

 今年に入り閑古鳥が鳴くようになった。
 

  (P.026)


円安、円安と強調されますが、基本的には、対米ドル、
対ユーロで「円安」ということです。


他国の通貨に対して、同様に円安であるかどうかは
まちまちです。通貨によっては「円高」もあり得るのです。




 2007年に4円超で推移していたルーブルは翌年、

 約2.9円に下落。2009年にはプーチン政権の関税

 引き上げもあって、輸出台数は減少した。


 原因は、1ドル70円台から120円台に円安が進む中

 で超常現象さながらに発生した、ルーブルの独歩安

 にある。

 
 5年にわたって安定してきたルーブル相場が急落した

 のは、2014年10月のこと。1ルーブル約2.7円から、

 2015年2月には約1.8円まで下落した。

 背景の一つは2014年のウクライナ危機。

 もう一つが、2013年から本格化した米国のシェール革命と、

 それに伴う原油価格の下落だ。
 

  (P.027)



このような現象は一部のことと片付けてよいものでしょうか?


ポイント

『日経ビジネス』は「円安局面でも儲からなくなった
産業は広範囲に存在
する」(P.027)と指摘しています。





 PART 1 絶対儲かるはずなのに・・・
 円安が効かない4つのパターン 



苦境パターン1 輸出したくても「客」がいない

苦境パターン2 輸出したくても「競争力」がない

苦境パターン3 原料高を価格転嫁できない

苦境パターン4 事業構造が既に円高モード





今回は、
「苦境パターン1 輸出したくても『客』がいない」
「苦境パターン2 輸出したくても『競争力』がない」
の2つを取り上げます。



苦境パターン1 輸出したくても「客」がいない

『日経ビジネス』は、造船業界について解説しています。
造船業界特有の問題が、将来に暗い影を落としています。


輸出したくても「客」がいない、という理由がよく分かります。


 円安になれば、国内業者の海外での競争力は

 おのずと高まる。だが、市場が消えてしまえば、

 売り上げが増えることはない。


 「円安でメード・イン・ジャパンはお買い得なはず

 なのに、注文がすっかり途切れてしまった」

 「このままだと2018年には干上がってしまう」

 造船所や海運会社などが集積する瀬戸内地方では

 昨年夏頃から、株高・円安で盛り上がるアベノミクス

 の陰でこんな「嘆き節」が漏れるようになった。
 

  (PP.028-029)


これはどういうことなのでしょうか?


ポイント

「船は受注してから完成するまで通常3~4年ほど
かかる」ことです。3~4年後には、世界情勢が大きく
変わっている可能性があるのです。



 船は受注してから完成するまで通常3~4年ほど

 かかるため、呉事業所が現在、建造しているのは、

 2008年秋のリーマンショックから景気が回復する

 局面で注文を受けた船ばかり。

 「2018年以降に着工する船の注文を今、

 どれだけ確保できるかが、これから勝負の分かれ目

 になる」と関田彰・常務執行役員経営企画部長は

 打ち明ける。
 

  (P.029)

* 関田彰氏:
  ジャパンマリンユナイテッド(JMU)役員



さらに、事業構造の転換も見逃せません。



 中国の経済減速や資源安で海上運賃が下落、

 船主が発注を手控えているとの事情もある。

 それ以上に注目すべきなのが、ここ数年で、

 主な荷主であるグローバル企業の事業構造が

 大きく転換したことだ。

 
 自動車メーカーを中心に世界の輸出企業は

 リーマンショック以降、「地産地消型」へのシフトを

 加速させた。従来の「輸出主導型」から、

 市場のある国・地域で設計から製造、販売までを

 手掛けるようになった。

 その結果、企業が国境を越えて運んでいた完成品

 や部品の荷動きは鈍化。

 経済がグローバル化しているにもかかわらず、

 世界の海上輸送量は思ったほど伸びない事態に

 陥った。


 日本船主協会の統計によれば、2008年から2012年

 までの海上荷動き量の増加率は約14%。

 一方、同期間、世界の商船船腹量は約30%も増えて

 いる。荷動きに照らして世界で「船余り」が深刻化し、

 円安でどんなにバーゲンプライスになっても日本の船

 が売れない理由の一つはここにある。
 

  (P.029)




苦境パターン2 輸出したくても「競争力」がない


かつての強みが弱みに転じたことも、苦境に陥っている
理由の一つに挙げられます。


世界的な健康ブームによる日本食への関心が高まり、
和牛も強みになっていました。


ところが、海外では、霜降り肉は脂肪が多いため敬遠され、
赤身肉が好まれています。



ポイント

象徴的な言葉は、「いざ円安になり打って出ようと思ったら、
『グローバルで戦う競争力』が失われていたことだ」(P.031)
というものです。



 美しいサシ(霜降り)が全体に行き渡り、

 熱を加えると香りやうまみが溶け出し、

 舌の上でとろけるような食感が生まれる──。

 米国や豪州産にはもちろん、等級の低い国産牛にもない

 独特の特徴を持つ「和牛」に、世界進出の道が開かれた

 のはここ数年のことだ。

 米国向けに輸出が始まったのは1990年代に遡る。

 90年代中盤には米国に加え東南アジアにも年間約300トン

 を輸出するまでになったが、2000年に日本で口蹄疫が発生。

 各国で輸入禁止措置が取られ、以降、ほとんど輸出できない

 状況に陥った。

 事態が好転したのは2012年のことだ。
 

  (P.031)



牛肉で思い出したことがあります。
大前研一さんが自著の中で語っていたことです。



 本当にオーストラリアやアルゼンチンの牛肉を食べた

 ことがある人は、神戸牛などは脂っぽくて食べられない。

 日本では霜降り肉が珍重されているが、オーストラリア

 ではこのような肉は大理石状の脂肪があることから

 マーブルド・ビーフと呼ばれ、「脂肪の含有量が多すぎて

 健康被害がある」という理由で販売が禁止になっている

 ほどだ。
 

  (『ロウアーミドルの衝撃』)


オージー・ビーフは現地オーストラリアで、20年以上前に
食べたことはあります。


アルゼンチン産牛肉は食べたことはありませんが、
大前さんはアルゼンチン産牛肉が「世界一美味しい」、
と以前語っていました。



ポイント

日本の畜産業界に立ちはだかるのは、
「WAGYU」の存在です。



 足元の統計だけを見ると、和牛の輸出額は4年連続で

 前年を上回り、2014年は前年比42%増の81億7000

 万円に達した。

 だが関係者は「物足りない数字。このままでは政府が

 掲げる目標である『2020年の輸出額250億円』に及ば

 ない。

 今後は輸出のペースが大きく鈍る可能性もある」と顔を

 曇らせる。

 和牛輸出の拡大を阻んでいるのは、「WAGYU」だ。

 1990年代に研究用として米国に渡った黒毛和牛と、

 現地の品種との交配を重ねて誕生した新種。

 和牛の3~5割程度の安さを武器に今では世界中に

 普及した。

 外国のスーパーなどでは精肉売り場に「WAGYU」と書か

 れたポップが躍り、国によっては本家の和牛を圧倒して

 いる。


 中林氏は、いざ輸出を再開し米国の卸業者に売り込んだ

 ところ、「昔と違って今は健康志向から脂身ではなく、

 赤身を好む人が多い。これでは海外でWAGYUに太刀打ち

 できない」と言われ、仰天したという。

 日本食が現在、海外で受け入れられ始めた最大の理由は

 「ヘルシー」。和牛には、そんな日本食の一番の魅力が

 乏しい、というわけだ。
 

  (PP.031-032)

* 中林正悦氏:
   中林牧場(三重県伊賀市)オーナー   





 今後も多発する恐れの「円安倒産」 

「円安倒産」が増加していることが報告されています。
この事実は、マスコミで報道されることは少ないですね。



 今年3月19日、スポーツ用品販売のリージェント・

 ファーイースト(兵庫県)が自己破産を申請した。

 同社は阪神タイガースを代表するエース、

 故・村山実氏が設立し、社長を務めていたことで

 知られる。

 野球用品を中心に手掛け、最盛期には年40億円を

 売り上げたが、サッカーなど他のスポーツ人気の

 高まりから徐々に低迷。

 2013年度の売上高は17億円まで落ち込んだ。

 破産の引き金となったのは、円安だった。

 輸入コスト増による採算悪化で資金繰りが行き詰まり、

 連続で赤字を計上。


 帝国データバンクの調査によると、倒産原因に円安の

 影響があった事例は2014年度で401件に上り、

 前の年度の2.3倍に急増。

 特に、日本銀行による追加の金融緩和を受け、

 円安が急速に進んだ昨秋ごろから伸びている。
 

  (P.033)



下のグラフを見ますと、特徴的なこととして、
倒産件数は右肩上がりになっていますが、
負債総額は必ずしも倒産件数に比例して
いないことです。


「小型倒産の増加」を示しています。




追加緩和後に急増<br />・円安原因による月次倒産件数と負債総額

追加緩和後に急増
・円安原因による月次倒産件数と負債総額

(『日経ビジネス』 2015.05.18 号 P.033)
日経ビジネスDigital 2015.05.18 号




業種別倒産ではどの業種が多いのでしょうか。



 業種別では、一時の運送コストの高止まりで

 収益が悪化した運輸業が最も多く、

 輸入原材料の高騰を価格転嫁しづらい繊維・衣料、

 飲食料品、農業・林業・漁業などが続いている。
 

  (P.033)




今後の見通しはどうなのか、専門家に意見を
聞いています。


ポイント

「全体の倒産件数も増加に転じる可能性がある」
(P.033)と専門家は指摘しています。



 「円安倒産」が増える一方で、全体の倒産件数は

 減少傾向にある。

 2014年度は前の年度と比べ10.5%減の9044件。

 2009年度から6年連続で前の年度比マイナスの

 状況が続いている。

 帝国データバンク情報部の内藤修氏は「中小企業

 金融円滑化法の効果が続いている影響が大きい」

 と指摘する。

 
 だが、円滑化法関連の救済効果は永続的ではない。

 内藤氏は今年度以降、円安がきっかけとなった倒産が

 牽引する形で、全体の倒産件数も増加に転じる可能性

 があるとみている。
 

  (P.033)





私見

今後、2020年に開催される東京オリンピックに向けて、
インバウンドの観光客による売り上げ増加の期待感が
高まる一方で、内需型産業はさらに一層厳しい日々を
過ごすことになるかもしれません。





今特集のキーワードを確認しておきましょう。

キーワード

 産業構造の転換 
 顧客の不在 
 競争力の欠如 
 価格転嫁の不可 
 為替の行方 




次回は、
「PART 1 絶対儲かるはずなのに・・・
 円安が効かない4つのパターン」
のうち、3と4のパターン
をお伝えします。


ご期待下さい!




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本当に役に立つビジネス書
ワンストップの強み生かす
2015.05.18

木本 茂 (きもと・しげる) 氏

[高島屋社長]


 もともと、免税品の売り上げを110億円と見積もって

 いたのですが、ふたを開けてみたら上期44億円、

 下期96億円の計140億円でした。

 今では、中小型店1店舗分に相当する売り上げを

 インバウンドで稼いでいます。

 中でも新宿店と大阪店の割合が高くて、140億円中

 100億円をこの2店舗で占めています。

 だから我々もあらゆる手を打っている。

 例えば訪日外国人がこの2店舗で免税品を買うと、

 空港まで配送しています。

 新宿店は成田か羽田、大阪店は関空という具合

 にね。 これをやっているのはうちだけですよ。


 インバウンド売り上げの7割が中国、香港、台湾の

 お客様によります。


 そこで活用したいのが上海、台湾、シンガポールの

 海外3店舗です。 現地法人を持っているメリットを

 生かして、ウェブサイトに訪日を促す仕掛けを入れ

 ました。

 また、日本の高島屋で使えるクーポン券を現地で

 発行しています。


 東南アジアでもどんどん知名度を高めていきたい

 ところです。出店に際し、大きな強みになっている

 のが「シンガポールに高島屋がある」ということです。


 シンガポールも最初の10年は本当に青息吐息で、

 10億円規模の赤字を出していた時期がありました。


 でも、やっぱり先行投資したことが今、大きなリターン

 となってきている。 2014年度の営業利益は連結

 ベースで320億円、そのうち約60億円をシンガポール

 が稼いでいます。 もう、超優等生ですよ。


 しんどいですね、上海は。シンガポールと違って、

 2014年度は20億円の赤字です。

 円安元高の影響もあり、前期より2億円近く悪化して

 います。


 2017年に、タイ・バンコクに出す新店は売り場面積が

 3万6000平方メートルなのですが、この規模で資本金

 が36億円です。

 さらに合弁でやっているので、我々の出資分は約18億円

 です。18億円で3万6000平方メートルの百貨店ができて

 しまうのです。日本で同じ規模のものを作ろうと思ったら、

 まず桁が違うでしょう。


 2011年、売り場を1.4倍に増床してリニューアルした大阪・

 なんばの高島屋大阪店には400億円近く投資しました。

 
 極端な話、海外ならば10店舗ぐらい出せちゃう規模の

 お金を、国内では1店舗に投じていかなければならない

 のです。


 今年度は成長に向けた投資を国内事業に800億円、

 海外事業に500億円と見積もっています。

 名目の数字だけ見ると国内の方が額は大きいのですが、

 実際はやっぱり海外の方が投資効率が良いうえ、

 利益を生み出していくポテンシャルが高いだけに、

 それなりに配分しています。


 銀座とか札幌とか、観光客がよく来る地区にたくさん

 店舗を持っている企業はうらやましいですね。

 うちも諦めているわけではないし、色々策を打ってますが、

 観光客の動きがそうなっている以上、結果がなかなか

 出せない。

 例えば横浜店。利益ベースで見ると一番稼いでいる店舗

 ですが、インバウンドの売り上げは7億円しかありません。


 人の流れは、すごく重要だと思います。

 そういう観点から見ると、新宿店は追い風ですね。

 旧国鉄の貨物操車場跡地に建てられただけに、

 新宿駅からぽつんと離れている印象がありました。

 ただ、2016年に南口に新しい駅舎が完成すると、

 これまで駅周辺のあちこちに点在していたバスターミナル

 が(新宿店に近い)新南口辺りに集約されます。

 これは大きいですよ。


 一方で、紀伊国屋書店に近い明治通り周辺のエリアでは、

 三菱地所による再開発計画が進んでいます。

 大きなオフィスビルが建つ予定です。今交渉中ですが、

 うまくいけば紀伊国屋の入り口とつながるでしょう。

 もう、プラスの材料しかありませんね。


 新宿エリアは、競合がみんな悲鳴を上げている中で、

 うちだけはプラスの材料ばかりです。

 新宿店はこれから「収穫期」に入ります。


 一時期は阪急阪神百貨店のエイチ・ツー・オー(H2O)

 リテイリングと経営統合する話もありました(2010年に断念)。

 未来永劫、統合は絶対にないということはありませんが、

 今は、業務提携で実利を得た方がいいという結論に落ち

 着いたのです。


 ここ数年、トレンドの変化が大きい婦人雑貨が好調です。

 制約はありますが、その中で弾力的に売り場作りや品ぞろえ

 を変えている効果が出ています。こういう強いところをどんどん

 強くしていくことに、百貨店の活路を見いだすことができる

 でしょう。

 インバウンドで一番恩恵を受けているのは、コンビニでもなく、

 ショッピングモールでもなく、百貨店です。

 その要因は、やはりワンストップで買い物ができる点にあると

 思っています。今、その強みが顕在化している状況です。
 

  (PP.080-083)




高島屋社長  木本 茂 氏

高島屋社長  木本 茂 氏
(『日経ビジネス』 2015.05.18 号 P.081)
「日経ビジネスDigital」 2015.05.18








キーセンテンスは、

 人の流れは、すごく重要 
です。


人の流れを保つことも、変えることも、
企業努力だけでは限界があります。


木本さんのお話のように、外部要因である、
再開発や交通手段の変更などによって大きく変化
します。


今まで多くの顧客が来店していた店が、
近隣に大型店ができ、交通網が整備された途端に、
客足が減少したというケースはよくあります。


また、その逆も当然あります。
今までほとんど来店客がなかった店に、
交通の便が良くなり、来店客が急増したというケース
もよく耳にします。






ポイントは、

 デパートは長期的視野に立っての経営 
 が肝要 
ということです。


木本さんは新宿店やシンガポール店を例に挙げて、
説明しています。



 新宿店の場合 



 「永遠に利益が出ない」と言われてきましたが、

 ようやく、投資が生き金になってきました。

 1996年の開業以降、毎年100億円以上の賃料を

 払ってきて、それがかなりの負担になっていました。

 しかし、不動産の一部を取得し、自社物件化する

 ことで負担はだいぶ減りましたね。

 

  (P.083)


 シンガポール店の場合 



 シンガポールも最初の10年は本当に青息吐息で、

 10億円規模の赤字を出していた時期がありました。

 

  (P.080)





ポイントは、

 国内外で投資効率に大きな差がある 
ということです。


「18億円で3万6000平方メートルの百貨店ができて
しまう」のに対し、「売り場を1.4倍に増床してリニュー
アルした大阪・なんばの高島屋大阪店には400億円
近く投資」が必要だったそうです。


物価や人件費、土地の価格に内外価格差がある
からです。


高島屋は現在、海外に3店舗を持っていて、
今後さらに出店していこうとしています。





インバウンドを当てにしているだけでは大きな成長
は見込めないからです。


リスクを負い、成長著しい新興国に打って出て、
その増益分で国内をカバーするという構図が出来
上がりつつある、と見ています。


私はめったにデパートで買い物はしませんが、
高島屋横浜店は横浜駅に隣接していて、
立地条件に恵まれていますが、
インバウンド客が訪れるかと言われると、
木本さんが指摘されたように少ない、と言わざるを
得ません。


確かに、横浜中華街や横浜スタジアム、山下公園、
ランドマークタワー、横浜アリーナなどの観光地は
あります。


ですが、国内のお客様は増加しても、
海外からお客様を呼び込むことに尽力しているとは、
とても思えないからです。


新宿地区では、伊勢丹との競争が激化することでしょう。
百貨店利用者(私は違います!)にとってはありがたい
ことです。


新宿コマ劇場跡地に、新宿東宝ビルが完成し、
歌舞伎町は浄化されつつあるので、さらに集客力を
高めることでしょう。




歌舞伎町にできた新名所 新宿東宝ビル

歌舞伎町にできた新名所 新宿東宝ビル 
(『日経ビジネス』 2015.05.11 号 PP.050-51)
「日経ビジネスDigital」 2015.05.11







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本当に役に立つビジネス書
何度も繰り返し鍛錬する
そうして初めて
何が問題か見えてくる


小松 節子(こまつ・せつこ)氏
[小松ばね工業会長]






今週の言葉


 「何ごともやると決めたらとことんやる」。

 これに尽きるのではないでしょうか。

 小さい頃からバレエが好きで、

 結婚後もバレエ教室を開いて近所の

 子供たちにバレエを教えていた私が突然、

 当社の社長になったのは、創業者の養父が

 急逝したからでした。

 訳も分からぬまま担ぎ出されて、

 当初は本当に大変でした。

 それでも以来30年間、今日に至るまでやって

 こられたのは、これを徹底してきたからでは

 ないかと思います。


 何度も失敗しながらも繰り返し練習する中で、

 初めて何が悪いかが見えてくる。

 そうした鍛錬を経て技術が身に付いていく

 わけです。


 当社は、IC検査機や医療機器向けに、

 髪の毛より細い30マイクロメートル(マイクロは

 100万分の1)で巻くといった極めて小さなバネを

 強みとしています。

 それだけに「ほかでできないからやってくれ」

 という依頼も舞い込んできます。


 100個、1000個、1万個巻いても、

 すべてが完璧でなくてはいけません。

 でなければ製品とは呼べないからです。

 100個作った時にもし不良品が出たら、

 どこが悪かったのか、作る過程を繰り返し見直し、

 徹底して問題を見つけ、解決していく。

 そうしたやり抜く粘り強さが不可欠です。


 経営も同じです。モノ作りを手掛ける中小企業を

 取り巻く環境は厳しくなる一方ですが、

 すべての企業がだめになっているわけではない。

 確実に成長している企業はあります。

 ですから売上高が下がれば、それはどこかに

 原因があるということです。問題がどこにあるのか

 繰り返し問い続け、改善を重ねていくしかありません。

 こうした「頑張り抜く」企業体質を育んでいくには、

 人作りが欠かせません。それには経営者は、

 まず社員との信頼関係をいかに築いていくかが

 問われていると思います。


 中小企業の場合、会社と社員は家族のようなもの。

 いかに信頼関係に基づいた一体感を築けるかが

 企業の力そのものです。



                   (2015.05.18 号から)   

 




小松ばね工業会長 小松 節子 氏

小松ばね工業会長 小松 節子 氏

「日経ビジネス」 2015.05.18 号 P.001
「日経ビジネスDigital」 2015.05.18 号





キーワード

キーワードは、 問題の発見 です。



問題はどこにあるのか、問題は一つなのか、
それとも複数あるのか。


それは本質的な問題なのか、それとも現象に
過ぎないのか。


どんなに現象を見つけて解決を試みようとしても、
本質的な問題は解決できません。
いわば、もぐらたたきゲームのようなものです。


もぐらを叩いても叩いても、次から次へと出てくる。
そのうちに疲弊してしまいます。


それでも、一向に問題の解決に至りません。


「なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ」と5回問うて
みることが大切です。


本質的な問題が発見できなければ、
解決できません。
本質的な問題は、自分の経験では、たいがい
2~3つでした。




ポイント

ポイントは、 改善を重ねていく です。


改善を重ねていくうちに、本質的な問題が
見えてきます。


失敗を繰り返すのは、問題がどこにあるのか、
本質的な問題を発見し、解決しようと何度も
試みたのか、という極めて重要な手続きを
ないがしろにしたからです。


以上のことは、私自身が何度も経験したこと
です。自戒の念を持ってお伝えしています。


小松さんのように、一つのことをしっかり身に
つけた人は、他のことでも成し遂げることが
できるのでしょう。


徹底して一つのことを掘り下げる、徹底的に
自分を磨く、徹底的に考える、徹底的に調べる、
徹底的に・・・・・


自分を客観視して言えることは、「徹底的にやる」
という気持ちが欠けていたことです。


小松さんの言葉によって、もう一度自分を見つめ
直すことが大切だ、と気づかされました。


「これを徹底的にやりました!」と、他人にも、
自分にも言えることはありますか?


私はまだまだですね。






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本当に役に立つビジネス書
『サラリーマン再起動マニュアル』(44)


大前研一さんは、私にとってメンターでもあり、
グールー(思想的指導者)の存在でもあります。


大前さんの著作を読んでいつも感じるのは、
物事の本質を捉えるずば抜けた能力です。


凡人である私は大前さんの足元にも及びませんが、
不断の努力を怠らず、一歩でも彼に近づきたい、
と思っています。




サラリーマン再起動マニュアル
2008年10月4日 初版第1刷発行 小学館
ISBN978-4-09-379454-1






 

目次
 [イントロダクション]志のあるサラリーマンは、
            きつい仕事を厭わない

 第1章[現状認識]なぜ今「再起動」が必要か?

 第2章[基礎編]「再起動」のための準備運動

 第3章[実践編]「中年総合力」を身につける

 第4章[事業分析編]“新大陸エクセレントカンパニー”の条件

 第5章[メディア編]「ウェブ2.0」時代のシー・チェンジ

 [エピローグ]新大陸の“メシの種”はここにある





第4章[事業分析編]“新大陸エクセレントカンパニー”の条件




 毎年の大幅な人員削減は、会社にとっても

 残った人にとっても非常に大きなプラス効果がある。

 まず、コストが下がる。そして残った人は切られたく

 ないから一所懸命に働く。

 人が減れば減るほど仕事の権限がどんどん増え、

 給料もどんどん上がる。

 だからみんないっそう一所懸命に働いて、

 個人の能力も会社の業績も上がっていく。

 ウェルチ前会長(GE=ジェネラル・エレクトリック)は、

 こうもいっていた。

 「考えることがなくなったら人を削れ。緊張するから」と。

 人を削れば、残る人も出る人も自分も緊張するという理屈だ。



  
                      (今日の名言 44  491)





業種業態を問わず、人件費が大きなコストであることに、
違いはありません。


ただし、コストカットして企業業績が向上すればいいの
ですが、うまく機能しない会社が多いのです。


そこで、どうしてなのか考えてみました。


リストラ策を断行しようとしたところ、残って欲しい人が
先に辞めてしまい、辞めて欲しい人が残る、という事態に
遭遇するからではないか、と思いました。


自分の能力に自信のある人は、他でも生きていけます。
しかし、この会社しかないという人はしがみつくしか、
生きていくすべがないのです。


以前読んだ本の中に、次のようなことが書かれていました。


「優秀な人材が2割、普通の人が6割、残りの2割は劣る人
という経験則がある。ならば上位2割を残して残りの8割を
解雇してみた。結果は、残した2割の優秀な人材と思われた
人たちが、2:6:2に分かれた」


この話から、リストラを繰り返してもしても2:6:2に
分かれるようです。


であるならば、一番ボリュームが大きい6割の人たちの
底上げが必須であるということです。







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