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藤巻隆(ふじまき・たかし)オフィシャルブログ

私のテーマは6つあります。
(1)ビジネス書の紹介(2)医療問題 (3)自分ブランド力
(4)名言 (5)ランキング (6)ICT(情報通信技術)
このブログでは、主に(1)~(4)を扱っています。
(5)と(6)はそれぞれ別のタイトルで運営しています。

課題解決をするのが仕事
水は低きに流れるもの
現場を見て理論で考える


本山 和夫(もとやま・かずお)氏
[アサヒ飲料前社長 東京理科大学理事]





今週の言葉


 「本山さんのご専門は何ですか」。

 いろんな仕事をしてきたので、こう聞かれると本当に

 困るのですが、私は自分を「課題解決屋」と思って

 きました。

 あらゆる仕事の本質は課題解決にあります。

 課題解決の視点を持つかどうかで、どんな仕事でも

 がぜんとオモシロさが違ってくるのです。


 「水は低きに流れる」──。

 これは若い頃、上司からよく言われたのですが、

 課題解決の視点からも示唆に富んでいる言葉だと

 思います。

 複雑で入り組んだ現象があったとしても、

 これは人々が、水が低きに流れるように「自然」に

 反応した結果である。

 それが問題だとするならば、それは環境のせいです。

 だから、本来水が流れるべき方向へ向かうように

 障害を取り除き、新しい流れをつくっていく。

 これこそが課題解決の本質だと私は思っています。


 最近では「情報化すれば生産性が上がる、

 コストが削減できる」と誰もが口にするようになって

 きました。

 確かに、これまで数々の管理システムを完成させた

 ことで百億円単位のコスト削減を実現してきたことは

 事実です。

 しかし、今は過度の情報化が現場の力を落としている

 気がしてなりません。

 今こそ「当たり前」と思っていることを見直すことが大事

 です。


 大きなプロジェクトであっても、最初のアプローチは現場の

 小さな改善から始まります。

 こうした小さな改善の積み重ねを、10年も続ければ立派な

 改革になる。 私はそう確信しています。


                   (2015.05.25 号から) 

 




アサヒ飲料前社長 東京理科大学理事 本山 和夫 氏

アサヒ飲料前社長 東京理科大学理事 本山 和夫 氏

「日経ビジネス」 2015.05.25 号 P.001
「日経ビジネスDigital」 2015.05.25 号





キーワード

キーワードは、 課題解決 です。



課題(問題と言い換えてもよいですが)は、
何をおいても現場に行かなければ見つかりません。
いわゆる、三現主義(現場・現物・現実)の実践です。


現場に足を運び、現物を見て、現実を認識する――
そこから問題の本質が透けて見えてきます。


現場に行かず、頭で考えただけでは問題の本質は
発見できません。 頭の善し悪しではないのです。


現場からの報告を読んでも、現象しか分かりません。
「作文」しているかもしれません。
カッコつけて報告書を提出している可能性もあります。


現象は本質的な問題ではありません。
現象を解決したとしても、新たな現象が発生します。
「モグラたたき」や「対症療法」では解決できません。


本質的な問題は1つなのか、それとも複数あるのか。
大概は複数ありますが、1つずつ取り組んでいけば
すべて解決するのか。それとも同時並行に取り組ま
なければ解決できないのか。


正解は前もって用意されてはいません。
試行錯誤の連続かもしれませんね。


賢明な経営者なら、現場からの報告書を読んで、
その内容を真に受けることはないと思いますが、
中には問題の本質に気づかず、「よく出来た報告書だ」
と思い込んでしまう経営者もいます。


深刻度が増してから手を打っても手遅れとなるのは、
そうしたケースです。




ポイント

ポイントは、 当たり前をおろそかにしない です。


本山さんは、

「今こそ『当たり前』と思っていることを見直すことが

 大事です」

と述べています。


当たり前のことを、当たり前のこととして、当たり前にやる
ことが大切です。 それだけでかなりのことができます。
なぜなら、多くの人がしていないからです。


さらに言えば、当たり前のことを、当たり前のこととして、
はるかに抜きん出た方法で行えば、素晴らしい結果を
もたらすことでしょう。


「当たり前」を軽視してはいけません。





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本当に役に立つビジネス書
『サラリーマン再起動マニュアル』(46)


大前研一さんは、私にとってメンターでもあり、
グールー(思想的指導者)の存在でもあります。


大前さんの著作を読んでいつも感じるのは、
物事の本質を捉えるずば抜けた能力です。


凡人である私は大前さんの足元にも及びませんが、
不断の努力を怠らず、一歩でも彼に近づきたい、
と思っています。




サラリーマン再起動マニュアル
2008年10月4日 初版第1刷発行 小学館
ISBN978-4-09-379454-1






 

目次
 [イントロダクション]志のあるサラリーマンは、
            きつい仕事を厭わない

 第1章[現状認識]なぜ今「再起動」が必要か?

 第2章[基礎編]「再起動」のための準備運動

 第3章[実践編]「中年総合力」を身につける

 第4章[事業分析編]“新大陸エクセレントカンパニー”の条件

 第5章[メディア編]「ウェブ2.0」時代のシー・チェンジ

 [エピローグ]新大陸の“メシの種”はここにある






第5章[メディア編]「ウェブ2.0」時代のシー・チェンジ





 私にいわせれば、電波行政を司っている総務省自身が

 電波の世界で起こっていることを全くわかっていない。

 総務省は「放送と通信の融合」といい、

 放送が通信を取り込むと想定しているが、

 現実はその逆で、放送は通信のワン・オブ・ゼムにな

 ってしまっているのだ。

 重ねていうが、地デジの象徴となる「東京スカイツリー」は、

 おそらく既存テレビ局の衰退を後世に伝える“バベルの塔”

 となるだろう。



  
                      (今日の名言 46  493)





東京スカイツリーの開業が来週16日に迫り、
マスコミ報道が加熱しています。


個人的には東京スカイツリーにはあまり興味が
ありません。


634メートルという電波塔として世界一、
あるいは最先端技術の粋を結集して出来上がった
といったところで、「それが何なの?」という感じ
です。


もちろん、興味がある方はどんどん訪問してください。


360度パノラマ展望台からの見晴らしがいい、
とさかんに盛り上げますが、眼下に見下ろす街は
ビルや民家が密集し、とても美しいとは言えません。


むしろ、先の東日本大震災同等あるいはそれ以上の
大災害(活断層による地震や富士山の噴火の可能性
など)が発生した場合、建物が密集し通行路が狭い
ために緊急車両は被災地に入ることを遮られ、
為す術なしとなる可能性が高いと思います。


日本国民は東京スカイツリー開業で浮かれていて
いいのだろうか、と心配になります
(2012年5月13日 記)。



追記

東京スカイツリーが開業してから3年が経ちました。
最近の報道で、訪問客が減少しているそうです。


私見ですが、東京スカイツリーは何度も行くところ
ではない、と思います。


一度建設したらリニューアルするわけではありま
せん。


展望台に上がって眼下を見下ろしたところで、
感動するほどの光景が広がっているわけでもありま
せん。


たまたま天気に恵まれて、富士山を見ることができた
ところで、また来たいとは思う人がどれだけいる
でしょうか?


5年後の東京オリンピック開催までに、
東京の密集した街の整備や、狭い道路の拡張工事等
が完成するとは考えられません。


スマートシティプロジェクトは、コンセプトとしては大変
優れたものですが、自然破壊を伴わなず、景観を配慮し、
長期的な視点で捉えるべきだ、と考えています。


機能性のみの追求では失敗すると思います。










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『サラリーマン再起動マニュアル』(45)


大前研一さんは、私にとってメンターでもあり、
グールー(思想的指導者)の存在でもあります。


大前さんの著作を読んでいつも感じるのは、
物事の本質を捉えるずば抜けた能力です。


凡人である私は大前さんの足元にも及びませんが、
不断の努力を怠らず、一歩でも彼に近づきたい、
と思っています。




サラリーマン再起動マニュアル
2008年10月4日 初版第1刷発行 小学館
ISBN978-4-09-379454-1








目次
 [イントロダクション]志のあるサラリーマンは、
            きつい仕事を厭わない

 第1章[現状認識]なぜ今「再起動」が必要か?

 第2章[基礎編]「再起動」のための準備運動

 第3章[実践編]「中年総合力」を身につける

 第4章[事業分析編]“新大陸エクセレントカンパニー”の条件

 第5章[メディア編]「ウェブ2.0」時代のシー・チェンジ

 [エピローグ]新大陸の“メシの種”はここにある





第4章[事業分析編]“新大陸エクセレントカンパニー”の条件



 リストラを始めた会社は、やたらと仕事が忙しくなる。

 仕事をリストラしないで人をリストラするから、

 残った人の仕事量が倍ぐらいになってしまうからだ。

 しかも、それは全部、「できるひと」に回ってくるので、

 今度は過労死の問題が出てくる。

 本来は不要な仕事をリストラして効率を上げるべき

 なのだが、そんなことをしてくれる気の利いた経営トップ

 は見たことがない。



  
                      (今日の名言 45  492)





リストの本来の意味は、「事業の再構築」でしたが、
日本ではリストラと言ったら、「人員削減」を意味
するようになりました。


事業を再構築しても人員が余剰になった場合、
最終的な手段として「人員削減」が必要になるの
ですが、経営トップは自分の責任を棚にあげて、
従業員を解雇するということが常態化しています。


私も「事業の縮小に伴う人員整理」(会社都合による
退職)で就活を余儀なくされた経験があります。


逆に、従業員は私を除いて全員解雇となり、
残務整理でてんてこ舞いになり、パニック状態になり
そうになったこともありました。


退社する者も、残る者も辛い思いをします。
残った者は、退社した者が担当していた仕事も、
こなさなくてはなりません。


それでも、給料が増えることは、まず、ありません。


それでも、今では、いい経験をさせてもらった、
と思っています。 







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<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の
概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>



日経ビジネスの特集記事(107)

円安でも儲からない
アベノミクスに乗れないワケ

2015.05.18


テーマ

今週の特集記事のテーマは

2年連続の賃上げ、2万円を付けた日経平均株価、
急増する訪日外国人──。
アベノミクス下で進んだ円安の効果が出始めている。
だが、産業界を見回すと、為替安でも苦戦している企業は
少なくない。
アベノミクスのシナリオは、輸出産業の復活とトリクルダウン効果で、
円安の弊害を相殺して余りある景気回復を実現することだ。
「円安で利益が増えない輸出企業」や「恩恵が及ばない内需企業」
が増えれば、その前提は根底から瓦解しかねない。
なぜ典型的な加工貿易国なのに、円安で苦境に見舞われるのか。

 (『日経ビジネス』 2015.0518 号 P.024)

ということです。

* トリクルダウン効果:


 トリクルダウン理論(トリクルダウンりろん、

 trickle-down effect)とは、

 「富める者が富めば、貧しい者にも自然に

 富が滴り落ちる(トリクルダウンする)」とする

 経済理論または経済思想である。
 

  (トリクルダウン理論 Wikipedia から)


ピケティ教授の最新理論によれば、
「富める者はさらに富み、貧しい者はさらに
貧しくなる」
ということになります。


トリクルダウン理論とは、全く違いますね!





円安でも儲からない<br />アベノミクスに乗れないワケ

円安でも儲からない
アベノミクスに乗れないワケ

(『日経ビジネス』 2015.05.18 号 表紙)
日経ビジネスDigital 2015.05.18 号




今特集のスタートページ

今特集のスタートページ

(『日経ビジネス』 2015.05.18 号 PP.024-025)
日経ビジネスDigital 2015.05.18 号







第1回は、
「序章 アベノミクスが微笑まなかった人々
 『話が違うよ、安倍首相』」
「PART 1 絶対儲かるはずなのに・・・
 円安が効かない4つのパターン」
のうち、1と2のパターン
を取り上げました。


第2回は、
「PART 1 絶対儲かるはずなのに・・・
 円安が効かない4つのパターン」
のうち、3と4のパターン
を取り上げました。


最終回は、
「PART 2 1ドル60~300円でも生き残る
 為替変動に打ち勝つただひとつの方法」
をご紹介します。




今特集のキーワードは次の5つです。

キーワード

 産業構造の転換 
 顧客の不在 
 競争力の欠如 
 価格転嫁の不可 
 為替の行方 





正直な話、誰にも正確な予想を立てることができない
のが、為替変動です。


私の体験談をお話しします。


10年近く前まで勤務していた、洋書・洋雑誌の輸入卸
会社で、経理業務に約20年間携わっていました。


海外出版社への支払い業務において、為替の変動は
経営にプラスにもマイナスにも大きな影響を与えました。


概算ですが、米ドル、英ポンド、ユーロ他と3種類に
分けますと、それらの支払い比率は6:2:2でした。


その比率は売上比率に比例していました。
決済時に頻繁に為替が変動していては支払い計画
に大きな狂いが生じかねないため、為替予約をして
いました。


米ドルを中心に、3カ月通期で為替予約していました。
6カ月通期での為替予約もあったかもしれません。


外国為替の話が出たついでに、少し外国為替相場
についてご説明します。


下の表をご覧ください。
外国為替相場一覧表です。



表01

外国為替相場一覧表

外国為替相場一覧表





この表の中に「T.T.S」「T.T.B.」があります。
海外送金や海外からの入金(外国小切手の
買い取りなど)にはこの2つのレートを使います。


ニュースや新聞で伝えられるレートがありますね。
「現在、1ドル120円71銭から74銭の間で取引されて
います」
といった表現が使われます。


金融機関同士の通貨取引に使用されているレートで、
T.T.S. 、T.T.B. とは異なります。


さらに、外国為替相場一覧表に示されているレートは、
金融機関によって少しずつ異なっています。


金融機関側から見て、売りと買いを示します。
海外送金の場合は、売りとなるので T.T.S. レート
を適用し、外国小切手の買い取りなどの場合は、
買いとなるので T.T.B. レートを適用します。


T.T.S. と T.T.B. の意味は下記の通りです。


 TTS

 お預入時 TTSは「円」を「外貨」に交換するときの
 レート

 TTS(Telegraphic Transfer Selling)=電信売相場


 TTB

 お引出時 TTBは「外貨」を「円」に交換するときの
 レート

 TTB(Telegraphic Transfer Buying)=電信買相場
 

  (近畿大阪銀行のサイトから)



ちなみに、外国為替相場一覧表には掲載されていませんが、
T.T.M. というレートもあります。これは Telegraphic Transfer
Middle Rate で、T.T.S. と T.T.B の中間にあるため「仲値」と
呼ばれるレートです。



 TTMは、"Telegraphic Transfer Middle Rate"の略で、

 日本語では「「公表仲値」や「電信仲値相場」、

 単に「仲値」とも呼ばれ、顧客が金融機関で外国通貨

 (外貨)を売買する際の基準レートのことをいう。
 

  (金融情報サイト iFinance のサイトから)



2015年5月22日の日経電子版の金融情報一覧を
掲載します。


表02


日経電子版 金融情報一覧(2015.05.22)





さて、前置きが長くなりましたので、
この辺りで本題に入りましょう!


 PART 2 1ドル60~300円でも生き残る
 為替変動に打ち勝つただひとつの方法 



ポイント

「下手な予想をするのでなく、為替変動に合わせ、
迅速に事業構造を最適化していくこと」(PP.40-041)



前回まで、日本企業を中心に話を進めてきましたが、
『日経ビジネス』は、PART2では一転して、
来日する外国人労働者の視点から問題を掘り下げて
います。


 「ベトナムでも、ハノイなどの都市部で人材を

 リクルートするのは既に難しくなってきた」。

 こう話すのはAHPネットワークスの二文字屋修・専務。

 経済連携協定(EPA)に基づき、看護師や介護福祉士

 を目指すベトナム人の来日を支援するNPO法人の

 幹部だ。

 ハノイでは月収500ドルを超えるタクシー運転手が

 出てきた。

 外資系の病院に勤める看護師なら毎月1000ドルは

 稼げるという。

 その結果、「日本に行く価値は無いと考えるベトナム

 人が増えた」と二文字屋氏は話す。
 

  (P.038)



問題はどこにあるのでしょうか?
大きく分けて、2つの問題が取り上げられています。
日本語の習得が難しいことと、介護関連の給与が
高くないことです。


 日本語の習得は難しく、必要な資格取得にも

 時間がかかる。

 首尾よく来日しても介護関連の給与は高くない。

 手取りの月給が15万円程度だとすると、

 1ドル80円の水準なら2000ドル弱を稼げる計算。

 だが、130~150円になれば自国で働いた方が

 むしろ、可処分所得は高くなる可能性がある。
 

  (P.038)



家政婦派遣業の代表が実情を語っています。



 家政婦派遣業、ピナイ家政婦サービスの

 茂木哲也代表取締役は、

 「1ドル150円程度まで円安が進むと日本を

 選ぶ人は減る」と懸念する。

 これまで通り中東諸国などに出稼ぎした方が、

 高給を得られる公算が大きいという。
 

  (PP.038-039)


日本への「出稼ぎ労働者」が、以前ほど日本に
魅力を感じなくなってきているのです。



下の図をご覧ください。
「主要各国の最低賃金を円換算した上で、
2000年と直近を比較したもの」(P.039)
です。


図01

円換算した主要各国の最低賃金(時給)の増加率<br />2000年と2014年の比較

円換算した主要各国の最低賃金(時給)の増加率
2000年と2014年の比較

(『日経ビジネス』 2015.05.18 号 PP.038-039)
日経ビジネスDigital 2015.05.18 号




主要各国で軒並み増加していることが一目で分かります。
増加率は、ベトナム(10.8倍)、インドネシア(6.3倍)、
中国(5.7倍)が突出していますね。


金額ベースでの増加額では、カナダ(596円↑)、
フランス(596円↑)、英国(571円↑)がベスト3です。


日本の増加率は18%で、金額ベースでの増加額は
わずか121円です。


彼我の差は一目瞭然です。


為替とは何を示すものなのか、という基本命題に対し、
コマツの野路國夫会長は次のように語っています。



  「為替が国力の代弁者だとすれば、この20年間で

 日本の競争力は本当に高まったと言えるのか」。

 日本を代表する輸出企業、コマツの野路國夫会長は、

 こんな問題意識とともに一つの経験則を導き出そうと

 している。

 「企業が持続的に発展するために、経営者は目先の

 為替水準に一喜一憂せず、絶え間ない構造改革を

 続けるべきだ」。

 野路会長がここで、あえて「為替に一喜一憂しない姿勢」

 を強調するのは、それだけ為替の先行きが読みづらい

 ことの裏返しでもある。
 

  (P.039)




ポイント

「為替変動を決定する要因の一つは金利差」(P.039)
にある。


ポイント

「為替はインフレ率にも左右されるとも言われる
(購買力平価説)」(P.039)



為替変動に関して、『日経ビジネス』は下記のように
まとめています。


 1.低金利通貨は短期で下落、長期で上昇する

  可能性が高い(高金利通貨は逆)

 2.デフレなら通貨は上昇する(インフレは逆)。

  ただ、金利差の影響により短期的にはその限り

  ではない。
 

  (PP.039-040)



なかなか一筋縄ではいかないことが、この説明からでも
理解できるでしょう。


一般にあまり知られていない事実があります。
「円は今なお世界有数の安全資産とされる」(P.040)
ことです。


その意味から言えば、円がもっと買われていいはず
ですが、円安ということは売られているのです。



 円は今なお世界有数の安全資産とされる。

 欧州危機の再来や中国の不動産バブル崩壊など

 世界経済が変調をきたせば、消去法的な円買い

 を誘発。結果として円高方向に揺り戻しが起きる

 可能性がある。

 もちろん、反アベノミクス派が主張するように、

 日本の財政状況や貿易収支が極端に悪化し国債

 価格が暴落すれば、円の安全性は薄らぐ。

 そうなれば、もはや金利やインフレ率も関係なく、

 問答無用に「1ドル200円超の大円安時代が訪れる」

 (びとうファイナンシャルサービスの尾藤峰男・

 代表取締役)との指摘もある。

 つまり、為替の行方は誰にも分からない。
 

  (P.040)





図02

神のみぞ知る今後の為替の行方<br />・金利平衡説などから導く円相場の見通し

神のみぞ知る今後の為替の行方
・金利平衡説などから導く円相場の見通し

(『日経ビジネス』 2015.05.18 号 P.0)
日経ビジネスDigital 2015.05.18 号





キーセンテンス

「為替の行方は誰にも分からない」(P.040)



では、どうしたらよいのか、というのが次の課題です。



 対策の一つは、世界各地に拠点を構え複数の通貨

 を組み合わせて事業を展開する「為替フリー経営」だ。

 が、それができるのは一部の大企業に限られる。

 こうしたことから企業の中には、金融テクノロジーを

 活用し為替変動のリスクを乗り切ろうとするところも

 少なくない。それは両刃の剣でもある。
 

  (P.040)



結論として、『日経ビジネス』は次のように述べています。
「当たり前のことを実践」することだ、と。



 下手な予想をするのでなく、為替変動に合わせ、

 迅速に事業構造を最適化していくことだ。

 PART1に登場した“円安で儲からない企業”も、

 結局、それができていれば、結果は違っていた。

  「そんな当たり前の結論では何の参考にもならない」

 と憤慨する読者もいるだろう。

 だが、一流と呼ばれる経営者は、まさにその当たり前

 のことを実践し、事業を拡大してきた。
 

  (P.041)




私見

当たり前のことを当たり前に実践すれば、
かなりのことができる、という証明でもあります。


当たり前のことだ、と頭では理解していても、
当たり前に実践できていないから現在、
思わしい結果が得られていないのも事実です。


何も経営に限った話ではありません。
いろいろなことに当てはまることです。


基本あるいは原理原則に外れたことをしては
いけないということです。


「守破離」を考えるのは、その後でも、
決して遅くはない、と固く信じています。


基本がしっかり身についていないのに、
基本や原理原則に反したことばかりやっていては、
仮にまぐれで上手くいったとしても、
長続きしません。


自分の実体験からも断言できます。




『日経ビジネス』は今特集の最後で、
次のように述べています。
「経営者の反射神経一つにかかっている」と。


 グローバル化の流れは加速し、経営に対する為替変動

 の影響は高まる一方だ。

 今後も多くの企業が円安、円高双方の苦難に立ち向かわ

 ざるを得ない。

 その時、傷を最小限に抑え、なおかつ危機を好機に変え

 られるかどうか ──。

 結局のところ、それは、経営者の反射神経一つにかかって

 いる。
 

  (P.041)







今特集のキーワードを確認しておきましょう。

キーワード

 産業構造の転換 
 顧客の不在 
 競争力の欠如 
 価格転嫁の不可 
 為替の行方 





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概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>



日経ビジネスの特集記事(107)

円安でも儲からない
アベノミクスに乗れないワケ

2015.05.18



テーマ

今週の特集記事のテーマは

2年連続の賃上げ、2万円を付けた日経平均株価、
急増する訪日外国人──。
アベノミクス下で進んだ円安の効果が出始めている。
だが、産業界を見回すと、為替安でも苦戦している企業は
少なくない。
アベノミクスのシナリオは、輸出産業の復活とトリクルダウン効果で、
円安の弊害を相殺して余りある景気回復を実現することだ。
「円安で利益が増えない輸出企業」や「恩恵が及ばない内需企業」
が増えれば、その前提は根底から瓦解しかねない。
なぜ典型的な加工貿易国なのに、円安で苦境に見舞われるのか。

 (『日経ビジネス』 2015.05.18 号 P.024)

ということです。

* トリクルダウン効果:


 トリクルダウン理論(トリクルダウンりろん、

 trickle-down effect)とは、

 「富める者が富めば、貧しい者にも自然に

 富が滴り落ちる(トリクルダウンする)」とする

 経済理論または経済思想である。
 

  (トリクルダウン理論 Wikipedia から)


ピケティ教授の最新理論によれば、
「富める者はさらに富み、貧しい者はさらに
貧しくなる」
ということになります。


トリクルダウン理論とは、全く違いますね!





円安でも儲からない<br />アベノミクスに乗れないワケ

円安でも儲からない
アベノミクスに乗れないワケ

(『日経ビジネス』 2015.05.18 号 表紙)
日経ビジネスDigital 2015.05.18 号




今特集のスタートページ

今特集のスタートページ

(『日経ビジネス』 2015.05.18 号 PP.024-025)
日経ビジネスDigital 2015.05.18 号







第1回は、
「序章 アベノミクスが微笑まなかった人々
 『話が違うよ、安倍首相』」
「PART 1 絶対儲かるはずなのに・・・
 円安が効かない4つのパターン」
のうち、1と2のパターン
を取り上げました。


第2回は、
「PART 1 絶対儲かるはずなのに・・・
 円安が効かない4つのパターン」
のうち、3と4のパターン
を取り上げます。


最終回は、
「PART 2 1ドル60~300円でも生き残る
 為替変動に打ち勝つただひとつの方法」
をご紹介します。




今特集のキーワードは次の5つです。

キーワード

 産業構造の転換 
 顧客の不在 
 競争力の欠如 
 価格転嫁の不可 
 為替の行方 




では、本題に入りましょう!


 PART 1 絶対儲かるはずなのに・・・
 円安が効かない4つのパターン 



苦境パターン1 輸出したくても「客」がいない

苦境パターン2 輸出したくても「競争力」がない

苦境パターン3 原料高を価格転嫁できない

苦境パターン4 事業構造が既に円高モード





今回は、
「苦境パターン3 原料高を価格転嫁できない」
「苦境パターン4 事業構造が既に円高モード」
の2つを取り上げます。


苦境パターン3 原料高を価格転嫁できない


円安は輸出する外需型産業にとっては追い風ですが、
輸入に依存する内需型産業にとっては向かい風です。


内需型産業には、輸入原価高・コスト高となります。
価格転嫁がスムーズにできればよいのですが、
必ずしも希望通りにはいきません。


小売業者との力関係で、納入価格に価格転嫁が
できにくい構造になっているからです。


具体的なケースを見てくことにしましょう。


 「このままでは豆腐屋は、アベノミクスで逆に全滅だ。

 需給逼迫により国産大豆が値上がりした上に、

 輸入大豆価格も円安により高止まり。

 燃料費も資材費も上がっている。

 深刻なのは、コスト増を販売価格に全く転嫁できない

 こと」。

 全国豆腐連合会の齊藤靖弘・代表理事はこう話す。


 豆腐の原料となる食用大豆は約8割を輸入に頼り、

 主に北米から調達する。

 その値段の基となるシカゴ市場の先物相場は、

 2005年頃の1ブッシェル6ドル程度から現在、

 同10ドル前後へ上昇。

 中国が大豆の「爆食」を始めたことなどが原因とされる。

 ここに追い打ちをかけたのが、アベノミクス下で進んだ

 円安だ。

 2015年2月の海上コンテナによる大豆輸入価格は、

 2012年末と比べて約4割高騰した。
 

  (P.034)



中国の「爆食」といえば、健康ブームに乗って
マグロの爆食も話題になりましたね。
これが原因で、マグロが高騰しているそうです。


近畿大学は「マグロの養殖」で有名になり、
受験者数が急増したという話題も耳新しい
ことです。



価格転嫁が思うように進まない理由について、
『日経ビジネス』は次のように指摘しています。



 かつては豆腐業界も、原材料高騰を価格に転嫁

 できていた時期もあった。

 例えば1996年から97年の円安局面では値上げに

 成功。

 豆腐1丁の平均価格は100円を超えた(総務省

 家計調査)。今よりも30円程度高い水準だ。

 だがそれ以降は、右肩下がりが続いている。

 背景には、この20年で小売業者の発言力が高ま

 ったことがある。


  「今や大手と取引している豆腐メーカーは、

 価格から納期までスーパー側の言いなりになら

 ざるを得ない状況にある」(齊藤代表理事)。

 ここ数年、ドラッグストアなど流通業界の新勢力が、

 豆腐の取り扱いを増やしたこともデフレ傾向に拍車を

 掛けた。

 こうした店では豆腐は、医薬品など利幅の大きい商品

 を売るための「客寄せパンダ」。

 20円や30円といった原価ギリギリの価格で販売する店

 が多く、メーカー側が値上げ交渉で成功する確率はゼロ

 に近い。
 

  (P.034)


上記のように小売業者の力が強くなり、
完全に「いいなり」になっています。


それだけではありません。
円安が豆腐業界の苦境に拍車をかけて
います。



 販売価格は上がらない一方で、原材料高は止まらない。

 「2014年に続き今年も中小メーカーが相次いで倒産しか

 ねない」と齊藤代表理事は唇をかむ。
 

  (P.034)




ポイント

円安による仕入原価の高騰を、販売価格に転嫁
できないことです。


そのため利益を出せない負のスパイラルに陥って
います。事態は深刻度を増しています。



私見

安倍政権の政策は大企業優先ですから、
「弱小企業は去れ」と言っているのと同じです。





苦境パターン4 事業構造が既に円高モード


円高が長年続き、輸出産業は工場を国内から海外へ
移転する企業がありました。


「産業の空洞化」という言葉が新聞紙面で踊って
いました。


現在、円安になり海外へ工場を移転した企業の国内
回帰が目立ってきました。


為替リスクを極力減らしたい、という意向の表れですが、
国内に製造拠点を新たに建設できる企業はそう多くは
ありません。資金力のある一部の企業だけです。


ソニーも例外ではありません。


 「金融緩和で日本の景気全体が良くなるのはプラスだが、

 (自社の業績にとって)円安はマイナス影響の方が大きい」。

 ソニーの吉田憲一郎CFO(最高財務責任者)はこう話す。

 ソニーは2015年3月期に、テレビの販売会社や本社の

 人員削減、スマートフォン(スマホ)事業の減損損失などで

 3300億円強の構造改革費用を計上。

 「大掛かりなリストラがほぼ終了した」(吉田CFO)ことで、

 2016年3月期の連結最終損益は3期ぶりの黒字に転換

 する見通しだ。


 それでも今期は、円相場が対ドルで1円円安に振れると

 連結営業利益を約70億円押し下げる見込み。


 円高の長期化を見越し、スマートフォンを中国生産に切り

 替えるなど携帯電話やテレビの生産拠点の海外シフトを

 敢行。

 戦略は奏功し、2011~12年度は円ドル相場の損益への

 影響をほぼゼロに抑えることに成功した。

 ただ、企業業績にとって海外生産シフトは劇薬にもなり

 かねない。

 2013年度に入ると急激に円安が進んだことで、

 ソニーもスマホなど海外で生産した製品のコストが想定

 以上に拡大。逆に利益を押し下げる要因となった。
 

  (P.036)



グラフ2をご覧ください。
わずか1円円安ドル高となるだけで、連結営業損益に
大きな影響を及ぼすことが分かります。



グラフ02

ソニーは為替影響を抑える対策に苦心する<br />・1円円安ドル高に進んだ場合の、連結営業損益への影響額

ソニーは為替影響を抑える対策に苦心する
・1円円安ドル高に進んだ場合の、連結営業損益への影響額

(『日経ビジネス』 2015.05.18 号 P.036)
日経ビジネスDigital 2015.05.18 号





為替の変動をマクロで見るとどうなのでしょうか?
シティグループ証券は、次のように指摘しています。



 シティグループ証券によると、2000年時点では10%の

 円安・ドル高は日本の貿易黒字を1.6兆円拡大させた。

 2014年は10%の円安・ドル高は貿易収支を1.5兆円

 悪化させる要因になっている。
 

  (P.036)





ポイント


 足元で円安だからと言って、一方的に恩恵を享受

 できる事業構造とは限らない。

 海外生産シフトを進めた企業ならではの新たな

 課題だ。
 

  (P.037)



「為替フリー経営」という言葉が出てきます。
現地通貨で決済したり、「地産地消」による事業展開
などで為替の影響を極力抑える経営です。



 ソニーは4月、世界シェア首位の画像センサーについて、

 約450億円を投じて国内の生産能力を増強する方針を

 打ち出した。

 オムロンも家庭用血圧計の一部を中国から松阪工場に

 移管。ダイキン工業はエアコン部品を中国から国内に

 戻す。

 だが、各社が目指すのはいずれも目先の円安に乗って

 「輸出主導型」のビジネスモデルに回帰することではない。

 為替変動のリスクを分散させ、本質的な競争力を取り戻

 そうとする動きだ。

 問題は、そうした「為替フリー経営」ができるのが一部の

 大企業に限られることだ。
 

  (P.037)




ポイント


 「円安=日本に有利」が必ずしも絶対でないことや、

 ここ数年の環境変化により円安で逆に不利を被る

 業界が少なからず存在する
 

  (P.037)

  



私見

一つだけ明白なことは、国の政策(国策)に頼って
いては自滅するだけだ、ということです。


自助努力だけでは限界があることは確かですが、
国に頼らずに自立することがなりよりも重要なことだ、
と思います。






今特集のキーワードを確認しておきましょう。

キーワード

 産業構造の転換 
 顧客の不在 
 競争力の欠如 
 価格転嫁の不可 
 為替の行方 




最終回は、
「PART 2 1ドル60~300円でも生き残る
 為替変動に打ち勝つただひとつの方法」
をお伝えします。


ご期待下さい!





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