藤巻隆(ふじまき・たかし)オフィシャルブログ -16ページ目

藤巻隆(ふじまき・たかし)オフィシャルブログ

私のテーマは6つあります。
(1)ビジネス書の紹介(2)医療問題 (3)自分ブランド力
(4)名言 (5)ランキング (6)ICT(情報通信技術)
このブログでは、主に(1)~(4)を扱っています。
(5)と(6)はそれぞれ別のタイトルで運営しています。

社員の没個性は経営の責任
「良い人生」を送るために
仕事と健全な距離を保て


槍田 松瑩(うつだ・しょうえい)氏
[三井物産顧問]





今週の言葉


 最近の商社マンは、私から見ると、何となく同質化

 していることが気がかりです。

 「モノトーン」とでも言いましょうか。

 三井物産に限らず、大きな会社ほど、昔に比べ、

 社員は上司が要求することに従順に応えてばかりで、

 個性をあまり感じません。


 私たちが若かった頃は、会社はこう言っているけど

 現場はこうだ、と意気込んでいました。

 最近はそういう強い個性を会社が許容しなくなった

 のかもしれません。会社が、社員に機械のような仕事

 の仕方を要求してしまっている。

 若い人が個性を発揮できないのは、むしろ、経営の

 責任です。


 もちろん、コンプライアンスに抵触するような行為は

 決して許されません。実際、私も社長時代に国後島

 発電所の不正入札事件やディーゼル車の排ガス浄化

 装置のデータ捏造事件を経験していますから、

 「コンプライアンスなくして仕事なし」と社内に強くメッセ

 ージを発信し続けてきました。

 しかし、ある意味ではトゥーマッチになってしまっている

 のかもしれません。コンプライアンスと個性を重んじる

 経営は両立できると思いますが、何でも上にお伺いを

 立てなければならない雰囲気が広がりすぎてしまった。


 本質的に大切なことは会社と社員、上司と社員の信頼

 関係です。リスクにいくら備えても、将来のことは結局

 あまり分からない。それならば、最後には社員の熱意を

 信じて現場に任せ、きちっと仕事をしてくれる人を養成

 していくしかないのです。


 効率を少々犠牲にしても、面白い人材を育成しようと

 もっと努力すべきです。社員に個性がないことを嘆く前に、

 まずは会社がリスクを取って、社員を信じて、任せる。

 それをして初めて、社員はその信頼に応えようと成長

 するのです。

 一方、社員の側にも忘れてはならないことがあります。

 それは、仕事との健全な距離感です。

 仕事に燃え上がることも大切ですが、前のめりになり

 すぎては、個性的で面白い人材にはなれません。


 結局のところ、視野を広げ個性を磨くことは、

 良い人生を送る上でも必要です。

 仕事で成功するだけが「良い人生」ではありませんよ。

 私も今、仕事と距離を取れたことで、これからは自分が

 興味のあることに時間を割けると思い、ワクワクして

 いるんです。


                    (2015.06.29 号から) 

 




三井物産顧問 槍田 松瑩 氏

三井物産顧問 槍田 松瑩 氏

「日経ビジネス」 2015.06.29 号 P.001
「日経ビジネスDigital」 2015.06.29





今回登場した人物の名前が読めませんでした。
そこで、インターネットで調べ、ようやく確認できました。


槍田 松瑩氏がうつだ・しょうえい氏とは、知っている人しか
恐らく読めないのではないでしょうか?




キーワード

キーワードは、 没個性 です。



没個性はある程度仕方がない、と考えています。
日本の教育制度が画一化していて、「個性」を
重視しない金太郎飴的な人間を生産してきた
からです。


没個性になった理由には2つある、と考えて
います。


1つ目の理由は、個性的な人は、異星人
あるいは異邦人、時には変人扱いされて
きましたので、多くの人たちも個性を出さ
ないようになってきたからではないか、
ということです。


「個性的である」と見なされることは、損すること
とイコールであるという数式が成り立っていたの
です。


もう一つの理由は、個性がある人間は仲間はずれ
にされたり、いじめの対象となるからです。
集団から孤立することを最も恐れたからです。


「ゆとり教育」は、ただ授業時間や科目を減らした
だけで、各人の個性を磨くための教育ではありま
せんでした。




ポイント

ポイントは、
 良い人生 
です。



槍田さんは、
「仕事で成功するだけが『良い人生』ではありませんよ」
と述べています。


ワーク・ライフ・バランスという言葉をときどき見聞き
します。仕事と生活のバランスをどう取るかということ
です。仕事優先なのか、生活優先なのかということ
です。


家庭を顧みず、仕事優先になれば家族との絆が弱まり、
最悪の場合には切れてしまうこともあるでしょう。
さりとて生活(プライベート)優先となれば、会社はその
人を責任あるポストに就けるわけにはいかないでしょう。


どちらを選択するかは、各人の考え方次第です。
ただし、若いうちは仕事に励むべきだと思います。
後の人生のために、技術やノウハウを身につけるべき
だからです。定年間近になってからでは遅すぎます。


起業することがブームになっています。
大いに結構だと思います。
待遇に不満があり、自分の能力に自信があるので
あれば、思いきって会社を飛び出すのも良いでしょう。
人生は一度しかないのですから、「あの時やっておけば
よかった」と後悔する前に、チャレンジするべきです。


やらずに後悔するよりも、やって後悔するほうがずっと
いいですよね。


成功するか失敗するかは、チャレンジしたかどうかで
決まります。


チャレンジしなければ、失敗しませんが、成功もあり
ません。長いようで短く、短いようで長い人生をどう
生きるかが、問われていると思います。


私はあと1日で還暦を迎えます(全く自覚がありません)。
今までの人生を振り返ってみますと、「あの時、別の道
を選択していたら、もっと良い人生を送れたかもしれない」、
という気持ちは正直あります。


ですが、心身共に健康であれば、これからまだ数十年
生きるわけです。であるならば、若いうちに出来なかった
ことにチャレンジしたい、と考えていますし、現に毎日
チャレンジし続けています。


ブログを毎日投稿することや、自宅で筋トレすることも
チャレンジです。他人の目を気にするチャレンジではなく、
心の中のもう一人の自分へのチャレンジです。
自分との闘いです。
自分の弱さに対するチャレンジと言い換えられます。


心身ともに40代後半よりベターである、と自信を持って
言えます!


あなたはチャレンジしていますか?






藤巻隆(ふじまき・たかし)オフィシャルブログ-
人気のブログランキング



こちらのブログやサイトもご覧ください!

こんなランキング知りたくないですか?

中高年のためのパソコン入門講座(1)

藤巻隆のアーカイブ

本当に役に立つビジネス書
『マキアヴェッリ語録』 (10)





『マキアヴェッリ語録』 塩野七生 新潮文庫
平成4年11月25日 発行


目次
第1部 君主編
第2部 国家編
第3部 人間編






マキアヴェッリ(日本ではマキャベリと表現されることが多い)
は『君主論』の著者として知られ、「マキャベリズム」が
人口に膾炙しています。


その思想を端的に表現する言葉は、
「目的は手段を正当化する」
です。


目的のためならどんな手段を講じてもかまわない、と解する
ことが多いですね。


実は、私もこの書を読むまではそのように解釈していました。
言葉を文脈の中で解釈せず、言葉が独り歩きすることの怖さは、
風説の流布でも経験することです。


福島第一原発事故以後、周辺にお住まいの方々は風説の流布
に悩まされ続けています。拡散した誤情報はさらに誤情報を加え、
拡大していきます。容易に訂正されることはありません。



話しを戻しますと、マキアヴェッリの実像はどのようなもので
あったのか、そして「目的は手段を正当化する」と言っている
ことの真意は何だったのか、を知りたいと思いました。


先入観を取り払い、大前研一さんが言う、「オールクリア
(電卓のAC)」にしてマキアヴェッリの説くことに耳を傾ける
ことにしました。


マキアヴェッリは、1469年5月3日にイタリアのフィレンツェで
生まれ、1527年6月21日に没しています。15世紀から16世紀
にかけて活躍した思想家です。500年位前の人です。


ニッコロ・マキャヴェッリの肖像画

ニッコロ・マキャヴェッリの肖像画 Wikipedia から
 


塩野七生(しおの・ななみ)さんは、「まえがき」に代えて
「読者に」で次のように記しています。塩野さんが解説
ではなく、また要約でもなく、「抜粋」にした理由を説明
しています。


尚、10ページ以上にわたる説明からポイントとなる言葉を
「抜粋」しました。




 この『マキアヴェッリ語録』は、マキアヴェッリの思想の

 要約ではありません。抜粋です。

 なぜ、私が、完訳ではなく、かといって要約でもなく、

 ましてや解説でもない、抜粋という手段を選んだのかを

 御説明したいと思います。

 第一の理由は、次のことです。

 彼が、作品を遺したということです。


 マキアヴェッリにとって、書くということは、生の証[あか]し、

 であったのです。


 マキアヴェッリは、単なる素材ではない。作品を遺した

 思想家です。つまり、彼にとっての「生の証し」は、今日

 まで残り、しかもただ残っただけではなく、古典という、

 現代でも価値をもちつづけているとされる作品の作者でも

 あるのです。生涯を追うだけで済まされては、当の彼自身

 からして、釈然としないにちがいありません。


 抜粋という方法を選んだのには、「紆曲」どころではない

 マキアヴェッリの文体が与えてくれる快感も、味わって

 ほしいという私の願いもあるのです。そして、エッセンスの

 抜粋ならば、「証例冗漫」とだけは、絶対に言われない

 でしょう。


 しかし、彼の「生の声」をお聴かせすることに成功した

 としても、それだけでは、私の目的は完全に達成された

 とはいえないのです。マキアヴェッリ自身、実際に役に立つ

 ものを書くのが自分の目的だ、と言っています。 

 

  (前掲書 「読者に」から PP.3-5、14)




マキアヴェッリの名言をご覧ください。


第1部 君主編



 優れた指揮官ならば、次のことを実行しなければ

 ならない。

 第一は、敵方が想像すらもできないような新手の

 策を考えだすこと。

 第二は、敵将が考えるであろう策に対して、

 それを見破り、それが無駄[むだ]に終わるよう

 備えを完了しておくこと、である。


                    ―― 『政略論』 ――

                              (P.120)

         (028-1-0-000-505)
 



 


 敵の計略を見ぬくことほど、指揮官にとって重要な

 ことはない。

 だが、このことほど優れた資質を要求される能力も

 ないのだから、これに恵まれた指揮官は、

 いかに賞賛されたとしてもされすぎることはないの

 である。

 そして、敵の行動を予知するよりも、敵の計略を

 見ぬくことのほうが、容易である場合が多い。

 なぜなら、行動ともなると、遠くに離れていては予知

 など不可能なものだが、計略の予知ならば、

 離れているほうがかえって有利なものだからである。

  
                    ―― 『政略論』 ――

                              (PP.120-121)

          (029-1-0-000-506)
 






 金銭で傭[やと]うことによって成り立つ傭兵[ようへい]

 制度が、なぜ役立たないか、の問題だが、その理由は、

 この種の兵士たちを掌握できる基盤が、支払われる

 給金以外にないというところにある。

 これでは、彼れの忠誠を期待するには少なすぎる。

 彼らがその程度のことで、傭い主のために死まで

 いとわないほど働くと期待するほうが、甘いのだ。

 だから、指揮官に心酔し、その下で敵に勇敢に立ち

 向かうほどの戦闘精神は、自前の兵士にしか期待

 できない。 


                    ―― 『政略論』 ――

                              (P.121)
                              
          (030-1-0-000-507)
 








ポイント

「備えあれば憂いなし」ということわざ通りですね。

あるいは、『孫子の兵法』で有名な言葉で、
「彼れを知りて己を知れば、百戦して殆[あや]う
からず」と通底する内容です。


マキアヴェッリ語録の内容は、優れた戦略論の
総集編でもあります。





キーセンテンス

指揮官に心酔し、その下で敵に勇敢に立ち向かう
ほどの戦闘精神は、自前の兵士にしか期待できない



フランスの外人部隊が有名ですね。
グリーンベレーにサングラスをかけた、一見すると
クールな兵士が映画に登場することがあります。
実際の姿かどうかは分かりません。


マキアヴェッリの言葉に従えば、外人部隊は「傭兵」
なので、フランスのために敵に立ち向かうほどの戦闘
精神は期待できないことになります。


実際はどうなのでしょうか?


調べてみました。データが見つかることは、あまり期待
していませんでした。


検索してみたところ、フランス外人部隊に入隊した日本人
の評判についてのレポートが見つかりました。
少々長いですが、抜粋してお伝えします。





 フランス外人部隊と聞けば、さぞ精強で屈強な猛者

 が集まる集団と誰もが思うだろう。

 たしかに各国から集まった命知らずの男たちが集う

 精鋭の軍事組織であることはいまも昔も変わりはない。

 だが、このフランス外人部隊にも時代を経るに連れ、

 緩やかながら変化が起こっているという。

 フランス外人部隊に在籍している日本人・A氏(30代)は

 その実情を次のように明かす。

 フランス外人部隊では、入隊時にフランス語が話せなく

 ても入隊試験はクリアできるという。

 事実、入隊試験は日本語でも実施されているのだ。

 その試験内容は日本の公務員試験同様、数的推理、

 判断推理、空間把握や、地図の把握など基礎的知能

 を問うものだ。

 日本人なら中学校卒業ないし高校1学年修了程度なら、

 まず合格できるレベルだそうだ。

 意外にも入隊へのハードルは低い。


 合格し入隊が決まると、いよいよ“精強部隊”への仲間入り。

 巷で言われる“地獄の訓練”がはじまる。

 この最初の訓練時に脱落する者がもっとも多いという。

 しかし、日本人が脱落する理由は、フランス外人部隊で

 頑張っている現役の日本人兵士をがっかりさせるにあまり

 あるものばかりである。

 「自分が除隊を申し出た日本人兵の通訳を担当した者の

 なかには、『親の家業を継ぐことが決まった』『すぐに戦場に

 行きたいのに、なかなか機会がない』『雑用ばかりで本物の

 男になれなさそうだから』などなど、ナメた理由ばかりです。

 日本人の評判が悪くなるのも頷けますよ」(同)


 「訓練や任務についていけないなら、そう正直に話してくれれ

 ばいいんです。それをああだこうだ理屈を並べ立てて……。

 同僚の外国人兵からも、『やっぱり日本は恵まれた国だ』と

 バカにされています」


 いくつかの紛争国に実戦参加経験もあるA氏は、

 「軍隊などどこの国でも日常は雑用ばかり。草むしり、掃除、

 体力練成が続く。自分も実戦に参加するまでは本当にこれが

 実戦に役立つのかといつも疑問を抱えていた。

 しかし最初の実戦に参加してその考えは一変しました。

 雑用ひとつこなせない人間は実戦では何の役にも立たないと」

 (同)


 こう話す彼の目が静かに鋭く光った。フランス外人部隊が、

 “外資系企業”への就職と同列に扱われる日本の実情は、

 フランス外人部隊の現実とはあまりにもかけ離れている。

 

  日本人は馬鹿にされている?
   フランス外人部隊の実情を告白
 から)




この話は、1例にすぎないと思いたいですが・・・
戦場に向かうには、生易しい気持ちでは、
到底、兵士として持続できるはずがありません。
まして、その前段階で除隊するくらいなら、
最初から入隊してはならない、と思いました。


私は、戦争反対の立場ですし、安倍首相の憲法第九条
改正には納得できません。




日本人の除隊理由に他の隊員もびっくり?

日本人の除隊理由に他の隊員もびっくり?








藤巻隆(ふじまき・たかし)オフィシャルブログ-
人気のブログランキング



こちらのブログやサイトもご覧ください!

こんなランキング知りたくないですか?

中高年のためのパソコン入門講座(1)

藤巻隆のアーカイブ

本当に役に立つビジネス書
『「リーダーの条件」が変わった』
「危機の時代」を乗り越える新しい統率力
小学館101新書 2011年9月25日 初版第1刷発行





<目次>
はじめに 能力なきリーダーしかいない日本の不幸

第1章(現状認識)
 東日本大震災でわかった「危機に克つリーダー」の条件
  [スピード]
  1週間でできない「緊急対策」は、1年かけてもできない
  [危機管理力]
  組織のイメージを最小限にする工夫と判断が必要だ
  [行動力と交渉力]
  次世代の国家リーダーに求められる「3つの条件」

第2章(対策)
 組織を元気にするリーダーシップの育て方
  [ビジョナリー・リーダー]
  世界で勝つ企業は人材育成に毎年1000億円かけている
  [中間管理職“再生術”]
  組織を動かすには「“揺らぎ”のシステム」を使いこなせ
  [新・人材教育カリキュラム]
  リーダーシップは“天与”のものではない

第3章(比較研究)
 日本が学ぶべき世界のリーダーシップ
  [イギリス・キャメロン首相①]
  弱冠43歳にしてトップに立ったリーダーはどこが凄いのか?
  [イギリス・キャメロン首相②]
  「グレート・ソサエティ」構想で活かすべき「民の力」
  [ロシア・メドベージェフ大統領]
  「結果を出す指導者」の驚くべき決断力と行動力
  [日本vs中国リーダー比較]
  国民の差ではなくリーダーの差が国家の関係を規定する

第4章(提言)
 私が「リーダー」だったら日本の諸課題をこう乗り越える
  【震災復興】
  「緊急度の掌握」ができなければ非常時のリーダー失格だ
  【電力インフラの再構築】
  原発と送電網は国有化、電力会社は分割して市場開放せよ
  【食料価格の高騰】
世界の農地に日本の農業技術・ノウハウを売り込め
  【水資源争奪戦】
  水道事業を民営化して「水メジャー」並の競争力をつけよ
  【エコカー開発競争】
  劇的な低価格を実現し、世界市場で優位に立つ「新EV革命」
  【財政危機】
  所得税・法人税ゼロの「日本タックスヘイブン化」で経済は蘇る

おわりに 「強いリーダー」は強い反対意見の中から生まれる
  
   
 
はじめに 能力なきリーダーしかいない日本の不幸





 リーダーシップとは、上に立つ者が自分の考えや

 主張を部下に押し付けることではない。

 そもそもリーダーは万能ではないし、

 あらゆる知識を持っているわけではない。

 むしろ自分以上の知識や能力を備えた人材を

 選び抜いて部下としてそばに置き、

 彼らが上司(すなわち自分)の判断に対しても

 異を唱えられるような有機的なチームを作る

 能力こそが求められる。

 それら優秀な部下たちをマネージし、

 彼らの意見を聞いた上で、総合的に判断して

 結論を下す―――それがリーダーのあるべき姿だ

 と思う。


                
(今日の名言 1  通算 520 )



 


 いま求められているのは、よりアグレッシブで、

 よりスピーディーで、より戦闘的なリーダーシップ

 である。日本にはそういう人は育たない、

 という人もいるが、私はそうは思わない。

 歴史的に見れば、戦国時代の武将、明治維新と

 それに続く近代国家建設の時代には、

 「CKD型(注:リの山落盤事故からの

 出、藤巻)」のリーダーが何人も出現している。

 

                
(今日の名言 2  通算 521 )





 逆境や困難に立ち向かって、いかに前へと進

 んでいくのか?

 心が折れそうな人々をいかに励まし、

 新しい未来を提示することができるか?

 そのために率先して動くためのリーダーシップは

 どうあるべきなのか?

 遠い過去の記憶と、今の世界を見れば、

 新しい飛躍のためのヒントは山ほどある。


                
(今日の名言 3  通算 522 )





この本は、東日本大震災が起きてから半年後に
出版されたため、このような危機に直面した際の
リーダーには、どのような能力が求められるのか、
が切実なテーマとして取り上げられています。



一言でいえば、平時のリーダーと有事のリーダーと
では資質が違う、ということです。



これは企業経営においても避けて通れない問題です。


倒産の危機に直面している企業の経営トップは
重大な決断を迫られますし、
一刻の猶予も許されない状況に置かれている
かもしれません。


倒産の道を選択するのか、他社との合併を断行し、
生き延びる道を選択するのか。


あるいは、第3の選択(例えば、大型リストラをし、
企業を縮小させたり、金融機関との再交渉など)を
模索するのか。



私自身、企業倒産の経験をしていますので、
経営トップの身近にいて、彼らの苦悩は痛いほど感じ
ましたし、私も無傷ではいられませんでした。


別の企業では、リストラされました。
その企業では、私の親しかった友人がパワハラに会い、
自ら命を絶ちました。


彼は非常に優秀なシステム管理者でしたが、
2社の合併後、窓際族にされた後、ブログを遺書
代わりにして、この世を去りました。


彼のために何もしてやることができなかったことに、
今でも後悔の念が残っています。


恐らく、私が生きている限り、この気持が晴れる
ことはないでしょう。


彼のブログを読んでみたい方は、
まだ生きていられるかな。
をご覧ください。


ただし、最後まで読むと気が滅入ってしまう恐れが
あります。
ご注意ください!


当時の私のコメントが掲載されています。


話が脱線してしまいました。



リーダーの条件が変わった、とはどういうことなのか?


次回以降、大前さんの発言に耳を傾けてみることに
しましょう。
私たち一般人にもできることがあるかもしれません。






以上の記事を投稿したのは、2013年2月22日のことです。


一部加筆修正していますが、思い切ったことを書いて
いたな、と実感しています。


大前研一さんの『「リーダーの条件」が変わった』と、
現在、「言葉の迷宮」というタイトルのブログで連載
している、塩野七生さんの『マキアヴェッリ語録』を
併せて読んでいただきますと、リーダーの本質が浮かび
上がってくると思います。


平時のリーダーと有事のリーダーの違いが理解できます。


マキアヴェッリ語録(1)
マキアヴェッリ語録








藤巻隆(ふじまき・たかし)オフィシャルブログ-
人気のブログランキング



こちらのブログやサイトもご覧ください!

こんなランキング知りたくないですか?

中高年のためのパソコン入門講座(1)

藤巻隆のアーカイブ

本当に役に立つビジネス書
<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の
概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>



日経ビジネスの特集記事(112)

2015 株主騒会
ROEで社長失格になる日

2015.06.22


テーマ

今週の特集記事のテーマは

緊張の面持ちで居並ぶ経営陣に、対峙する株主。
年に1度の株主総会シーズンがやってきた。
今年、その光景がガラリと変わる。
株主はROE(自己資本利益率)や配当などの還元策に
厳しく目を光らせ、満足しなければ容赦なく「社長失格」
の票を投じる。
アベノミクスが演出するこの株主“騒”会を何とか乗り越えようと、
新たな経営計画やROEの目標を打ち出す企業が続出している。
押し寄せる大波にのみ込まれるか、株主との対話を成長に
つなげるか。多くの日本企業がその岐路に立つ。

 (『日経ビジネス』 2015.06.22 号 P.027)

ということです。







2015 株主騒会
ROEで社長失格になる日

(『日経ビジネス』 2015.06.22 号 表紙)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22




今特集のスタートページ

今特集のスタートページ

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 PP.026-027)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22







第1回は、
「PART.1 ROE目標、中期経営計画、株主還元・・・
 企業を揺さぶる 『普通の株主』」
を取り上げました。


第2回は、
「PART.2 アベノミクスが舞台回し
 踊り出す投資家 沸き立つ市場」
「PART.3 本誌独自ROE“分解”ランキング
 持続力を見極めよ」
を取り上げました。


最終回は、
「PART4 圧力を活力に変える
 脱・後ろ向きROE 解は1つじゃない」
をご紹介します。




今特集のキーワードは次の5つです。

キーワード

 ROE 
 持続力 
 株主還元 
 脱・ROE 
 自律 




6月は、2015年3月期決算企業の株主総会が集中する月です。
今年の株主総会は、例年と異なり、「騒動」のある株主総会
ということで、『日経ビジネス』特集班は、株主「騒」会と名付け
ました。


この件について、飯田展久編集長は、「編集長の視点」に
次のように書いています。


 今年は多くの企業で想定問答集の中身に

 変化が見られるのではないでしょうか。

 一般株主の間にも株主還元策に異常な関心が

 集まっているためです。

 ROE(自己資本利益率)の向上に目を光らせ、

 ROEの低い企業には取締役の選任案に「ノー」を

 突き付ける動きも出始めています。

 現実に否決されることはまれですが、否決されない

 案にあらかじめ作り直す例もあるようです。

 こうした状況を本誌は「株主騒会」と名付けてみました。

 総会をめぐる劇的な変化は一種の騒動のようだと見た

 からです。
 

  (P.003)



株主総会と言えば、昔は総会屋対策が重要な課題でした。
決算内容うんぬんよりも、総会屋をどう黙らせるかの方が、
大事だったのです。お金を握らせるという違法行為が公然
と行われてきました。


その後、総会屋の数が減少し、代わって増えてきたのが、
外国人投資家や外資系ファンドです。彼らは株式を買い
増し、株主の要求を経営者に突きつけます。


内部留保が多い企業には、設備投資や株主還元を強く
要求します。株主還元とは、配当金の割増です。
企業価値を高め、株価を上昇させる施策を採ることも、
当然要求します。


最近では、外資の「モノ言う株主」だけでなく、一般投資家
(今まではモノ言わぬ投資家と呼ばれてきました)が、
議決権を行使し、代表取締役の再任に“No!”を突き付ける
ケースが出てきたそうです。


ステークホルダー(利害関係者)には、社員、取引先、得意先、
株主、社会などがありますが、この中で株主の発言力がさらに
強くなってきていることが、今特集で再確認できます。





では、本題に入りましょう!


 PART4 圧力を活力に変える 
 脱・後ろ向きROE 解は1つじゃない 

ROEは経営指標の一つにすぎません。
ですから、他にも多くの経営指標があります。
例えば、EBITDAとかEPS(後述)などがそうです。


経営において何を重視するかによって、
用いる経営指標も異なります。


さらに言えば、ステークホルダー(利害関係者)は
社員、株主、得意先、取引先、社会などがありますが、
株主に力点を置く企業が日本でも多くなってきました。


欧米では、ステークホルダーと言えば株主を指しますが、
今までの日本は、株主はステークホルダーの一つという
捉え方がされてきました。


株式のグローバル化が進み、外国人持株比率が50%を
超える日本企業も珍しくなくなってきました。


必然的に、「モノ言う株主」の要求に応えることが欠かせなく
なりました。設備投資や配当金を支払う、株主還元の要求
が高まったのです。内部留保を厚くして「お金を遊ばせて
おくな!」ということです。


企業が株主の要求に応えていかなくてはならない時代に
なりました。




株主目線で会社を作り直し


 コニカミノルタのケース 


 コニカミノルタが5月に発表した中計には大手企業

 としては珍しい内容が盛り込まれていた。

 これまで見たようにROEは収益性(売上高利益率)と

 効率性(総資産回転率)、財務レバレッジ(総資産/

 自己資本)の3要素を掛け合わせてはじき出される。

 コニカミノルタはこの3要素すべてに数値目標を掲げ、

 具体策を盛り込んでいたからだ。
 

  (P.038)



具体的には、下の表をご覧ください。

3つの方向から経営の中身を変えていく<br />・コニカミノルタのROE改革の想定図

3つの方向から経営の中身を変えていく
・コニカミノルタのROE改革の想定図

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 P.038)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22



「はじめにROEの数値ありき」になっている感は
否めません。
数字をいじくりまわしているだけではないのか、
という印象が拭えません。


前回出てきましたが、もっとシンプルに
「ROEを上げる王道は利益率と売上高を上げること」
の方が、社員にも分かりやすいのではないか、
と思いました。






脱・ROEで事業に落とし込む


 オムロンのケース 


 オムロンは2014年10月、約100億円を投じてブラジルの

 医療機器大手NS社を買収した。ぜんそくなど呼吸器系

 疾患を治療する「吸入器」のブラジル最大手。

 買収でオムロンはオランダのフィリップスを抜き、

 吸入器の世界最大手に躍り出た。ぜんそく患者だけでなく、

 大気汚染が深刻化する新興国の需要も取り込む方針だ。

 このM&Aを裏側で支えたのがROIC(投下資本利益率)と

 呼ばれる経営指標だ。

 ROICは自己資本だけでなく、他人資本(有利子負債)も

 加えた「投下資本」全体でどれだけ効率的に稼いだかを測る

 指標だ。一般的には税引き後の営業利益を投下資本で

 割って算出する。


 オムロンは横軸にROIC、縦軸に売上高成長率を置いた

 「ポートフォリオマネジメントカテゴリ」を経営判断に活用して

 いる。 
 

  (PP.040-041)

 *ROIC=Return On Invested Capital


財務に強く、社員にも説得できる企業であれば、
ROICを活用することができるでしょう。


ただし、一般社員が、ROICの活用でM&Aを実現でき、
成果が上がった、と実感できるかは疑問符がつきます。




では、海外の有力企業はROEを活用しているのでしょうか?
それとも別の指標を用いているのでしょうか?
あるいはまったく指標を用いていないのでしょうか?



海外の有力企業30社のデータがあります。


ROEを目標に掲げる企業はゼロ<br />・海外有力企業の経営目標

ROEを目標に掲げる企業はゼロ
・海外有力企業の経営目標

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 P.042)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22





率直に言いますと、意外でした。
ROEを重視している企業が大半を占める、
と思っていました。


数値目標がない企業が30社中15社、
半数あったことは驚きでした。


さらに言えば、数値目標がある15社全てがROE以外
を使っているという事実は、ROEは重要な指標では
ない、ということなのでしょうか?


少なくとも、データ上はそういうことになります。


数値目標がない企業15社の中には、アップル、インテル、
コカ・コーラが入っています。


コカ・コーラと言えば、世界一の投資家、ウォーレン・
バフェット氏が大株主であることは広く知られています。
バフェット氏が設定したバークシャー・ハサウェイという
ファンドにコカ・コーラを組み込んでいます。


バフェット氏の保有株式銘柄を見てみましょう。
参考になると思いますよ。


残念ながら、日本株は組み入れられていません。
コカ・コーラの組み入れ比率は15.13%で、
ウェルズ・ファーゴ(銀行)に次いで2位です。


ウェルズ・ファーゴは、バフェット氏の一番のお気に入り
です。









 


バフェット氏はROEについてどう考えているのでしょうか?


早速、調べてみました。
世界一の投資家から見て、ROEは重要なのかどうか?


バフェット氏は、徹底的に調査して割安株を見つけると、
投資し、数十年というスパンで長期保有するという運用
をしています。


結論から先にお話ししますと、バフェット氏はROEを重視
しています。ROEの数値が15%以上を投資銘柄として
考慮しています。


 4 - ROEは、継続的に高いか?

 株主資本のROEの平均は、アメリカの場合、12%とされています。

 12%以下は、平均以下で12%以上は、平均以上という事になります。

 バフェットが求めているのは、ROE15%以上との事です。

 例えば、バフェットがコカ・コーラを購入した時のROEは、33%で、

 当時の過去5年間の平均ROEは、25%と基準を満たしていました。

 また、フィリップ・モリスの過去10年間の平均ROEは、30.5%

 (「バフェットロジー」は、1997年出版)でした。

 バフェットが、ROEに継続性を求めるのは、高いROEを継続的に

 維持できるという事は、既存経営陣が事業から利益を出す事が

 できるという事に加え、内部留保した利益を効果的に再投資

 できてさらなる利益を生み出している証拠だという風に考えている

 からだそうです。
 

  (Everything is Learningブログ:海外投資、経済ニュース、
  金融情報など
から)





ここで、ROEについてどう考えるか、3人の経営者の意見を
聞いてみましょう。


『日経ビジネス』は「卒業派」「慎重派」「否定派」に分類しました。


 ROE 私はこう考える 

卒業派

10%の上は目指さない

アサヒビールホールディングス 泉谷 直木 社長兼CEO

アサヒビールホールディングス 泉谷 直木 社長兼CEO

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 P.040)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22



 経営指標にROEを取り入れた理由は2つある。

 一つは国内事業の強化。

 もう一つは、海外での新たな成長エンジンづくりだ。


 事業の成長と企業価値の向上を同時に追求する

 のにROEは有益だった。

 だがこれからは違う。ROEが10%を超えて15%に

 なればさらに良いとは言えず、我々は10%の上は

 目指さない。資本政策ばかりに注力し、本業の業績が

 下がるのは本末転倒だからだ。


 2016年度からの次期中計では、一定の基準として

 ROEを引き続き重視しながら、新たにEBITDA(利払い・

 税金・償却前利益)の採用を検討している。

 結果を数字として示すのではなく、どの事業をどう伸ばし

 ていくかというプロセスを投資家に開示する。

 「ファンダメンタルのROE」から「モメンタムの成長率」へ

 比重を移す。 
 

  (P.040)

 *EBITDA=Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation
         and Amortization  




慎重派

偏重は企業を弱くする

JT 新貝 康司 副社長

JT 新貝 康司 副社長

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 P.041)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22



 日本たばこ産業(JT)のようにグローバル展開している

 企業が資本コストを上回るそれなりに高いROEを目指す

 のは当然だ。


 企業は利益を拡大再生産に回し、利益成長を目指す。

 マーケットは企業に資本を供給するのが本来の姿だ。

 しかし今、企業は投資家の方ばかりを向きがちで、

 ROEが高ければ高いほど良いという風潮があり、

 その他のステークホルダーそっちのけになっていないか。

 マーケットはどちらかと言えば、過度な配当や自社株買い

 を要求して資本を吸い上げようとしていないか。
 

  (P.040)







否定派

分りにくく、使いにくい

カルビー 松本 晃 会長兼CEO

カルビー 松本 晃 会長兼CEO

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 P.041)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22



 カルビーの会長兼CEO(最高経営責任者)になる前は

 米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)に15年勤務し、

 続いて日本法人の社長を9年間務めた。

 J&J社内で経営指標にROEを使っているという話は

 聞いたことがないし、自分も使うことはない。

 ROEという指標の大きな問題はその分かりにくさにある。

 ROEは「売上高利益率×総資産回転率×財務レバレッジ」

 で計算する。

 これを社員に理解してもらって、それぞれの要素の向上を

 図るというのは簡単ではないと思う。

 そんな難しい指標であるROEより、EPS(1株当たり純利益)

 の方が社員には説明しやすい。


 経営で大事なのは物事をシンプルにすること。

 社員には分かりやすくすることだ。
 

  (P.041)

 *EPS=Earnings Per Share



三人三様ですが、3人の経営者それぞれの言い分は
筋が通っています。


バフェット氏は、ROE15%以上の実績を出し続ける企業
が投資対象の一つの基準を満たすということと、
照らし合わせると、日本企業がバフェット氏のファンドに
組み入れられる可能性は、現時点では低いと言わざるを
得ません。


バフェット氏も高齢になってきましたので(1930年8月30日
生まれ (84歳))、日本株を精査する余裕はないかもしれ
ません。




株主との向き合い方、自分本位で

IR(投資家への広報活動)を担当する部署は、
上場企業であればどこにでもあります。


ただし、それだけで株主と企業が相対して話し
合っているとは言えません。一方通行だからです。


良い情報は使えやすいですが、悪い情報(売上が
激減する、M&Aが失敗した、あるいはTOB<敵対的
買収>を仕掛けられているといったケース)は、
現時点で詳細が把握できていないという理由で、
IRを通じて、投資家に伝えない(伝えられない)ことも
あり得ます。


そこで、株主とどう向き合うのか、というのがここでの
テーマです。



 トヨタ自動車のケース 


 トヨタ自動車も株主との新たな向き合い方を模索している。

 純利益が初めて2兆円を突破した2015年3月期のROEは

 13.9%。ただ、あくまで「ROEは経営を見る上での数ある

 指標の一つ」(小平信因副社長)と位置付ける。

 トヨタはROEどころか、売上高や利益の将来目標も公表

 していない。その一方で、従来とは違う株主を自ら創ろうと

 している。

 6月16日の総会で提案した「AA型種類株式」は、発行済み

 株式数の約5%を上限とし、普通株より2割以上高く株価を

 設定した議決権付きの株式。取得から5年後以降に普通株

 への転換、または発行価格でトヨタに買い取りを求めること

 が可能で、元本保証の意味合いも持つ。

 資金の用途を中長期の研究開発に限定し、今後5年をメドに

 約1兆5000億円を調達したい考えだ。


 トヨタは数年前から株主との関係について議論を重ねてきた。

 現在の株主数は約61万人。

 トヨタ株に投資する目的は多種多様で、どこに何を語りかける

 べきかを測りかねていた。自動車産業の構造転換が起こり

 つつある中、対話の相手としての株主を「見える化」する試み

 と言える。
 

  (P.043)



株主騒会における重要なテーマとなり得るROEについて、
特集で取り上げてきたわけですが、
企業がROEをどう捉えるかという側面と、投資家が考える
ROEには乖離があると思います。


目標値に明らかなズレがありますし、ROEは必要ではない
と考える経営者もいます。


ROEの運用法もさることながら、利益率が低い企業には
魅力がないことは事実です。


利益を伴う売上をどのように向上させていくかは、
どの企業にも共通する課題です。


企業の持続可能性は売上と利益にあることは間違い
ありません。もちろん、「勘定合って銭足らず」では
黒字倒産します。


豊富なキャッシュフローは、企業が存続するための
最低限の条件です。


『日経ビジネス』は今特集を総括して、次のように
述べています。


 ROEなどをツールとして、企業は株主と向き合い、

 経営に規律を埋め込むことを半ば強制された。

 「規律」から「自律」へ。

 今、その分かれ道に立つ。この先の解は1つではない。

 それぞれの企業が進路を決め、自らの意志で前に

 進めるかどうか。

 株主から渡されたボールは、企業の側にある。
 

  (P.043)



大前研一さんは、「前もって正解は用意されていない。
さらに、正解は1つとは限らない。複数あるかも知れない」
というようなことを述べていますが、この言葉は私たちが
物事を考える上で、前提条件とするべきだ、と信じています。





ポイント

ROEは経営指標の一つに過ぎないが、
売上と利益の継続的増大が企業存続の
必須条件である以上、無視するわけには
いかない









今特集のキーワードを確認しておきましょう。

キーワード

 ROE 
 持続力 
 株主還元 
 脱・ROE 
 自律 








藤巻隆(ふじまき・たかし)オフィシャルブログ-
人気のブログランキング



こちらのブログやサイトもご覧ください!

こんなランキング知りたくないですか?

中高年のためのパソコン入門講座(1)

藤巻隆のアーカイブ

本当に役に立つビジネス書
<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の
概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>



日経ビジネスの特集記事(112)

2015 株主騒会
ROEで社長失格になる日

2015.06.22



テーマ

今週の特集記事のテーマは

緊張の面持ちで居並ぶ経営陣に、対峙する株主。
年に1度の株主総会シーズンがやってきた。
今年、その光景がガラリと変わる。
株主はROE(自己資本利益率)や配当などの還元策に
厳しく目を光らせ、満足しなければ容赦なく「社長失格」
の票を投じる。
アベノミクスが演出するこの株主“騒”会を何とか乗り越えようと、
新たな経営計画やROEの目標を打ち出す企業が続出している。
押し寄せる大波にのみ込まれるか、株主との対話を成長に
つなげるか。多くの日本企業がその岐路に立つ。

 (『日経ビジネス』 2015.06.22 号 P.027)

ということです。







2015 株主騒会
ROEで社長失格になる日

(『日経ビジネス』 2015.06.22 号 表紙)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22




今特集のスタートページ

今特集のスタートページ

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 PP.026-027)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22







第1回は、
「PART.1 ROE目標、中期経営計画、株主還元・・・
 企業を揺さぶる 『普通の株主』」
を取り上げました。


第2回は、
「PART.2 アベノミクスが舞台回し
 踊り出す投資家 沸き立つ市場」
「PART.3 本誌独自ROE“分解”ランキング
 持続力を見極めよ」
を取り上げます。


最終回は、
「PART4 圧力を活力に変える
 脱・後ろ向きROE 解は1つじゃない」
をご紹介します。




今特集のキーワードは次の5つです。

キーワード

 ROE 
 持続力 
 株主還元 
 脱・ROE 
 自律 




6月は、2015年3月期決算企業の株主総会が集中する月です。
今年の株主総会は、例年と異なり、「騒動」のある株主総会
ということで、『日経ビジネス』特集班は、株主「騒」会と名付け
ました。


この件について、飯田展久編集長は、「編集長の視点」に
次のように書いています。


 今年は多くの企業で想定問答集の中身に

 変化が見られるのではないでしょうか。

 一般株主の間にも株主還元策に異常な関心が

 集まっているためです。

 ROE(自己資本利益率)の向上に目を光らせ、

 ROEの低い企業には取締役の選任案に「ノー」を

 突き付ける動きも出始めています。

 現実に否決されることはまれですが、否決されない

 案にあらかじめ作り直す例もあるようです。

 こうした状況を本誌は「株主騒会」と名付けてみました。

 総会をめぐる劇的な変化は一種の騒動のようだと見た

 からです。
 

  (P.003)



株主総会と言えば、昔は総会屋対策が重要な課題でした。
決算内容うんぬんよりも、総会屋をどう黙らせるかの方が、
大事だったのです。お金を握らせるという違法行為が公然
と行われてきました。


その後、総会屋の数が減少し、代わって増えてきたのが、
外国人投資家や外資系ファンドです。彼らは株式を買い
増し、株主の要求を経営者に突きつけます。


内部留保が多い企業には、設備投資や株主還元を強く
要求します。株主還元とは、配当金の割増です。
企業価値を高め、株価を上昇させる施策を採ることも、
当然要求します。


最近では、外資の「モノ言う株主」だけでなく、一般投資家
(今まではモノ言わぬ投資家と呼ばれてきました)が、
議決権を行使し、代表取締役の再任に“No!”を突き付ける
ケースが出てきたそうです。


ステークホルダー(利害関係者)には、社員、取引先、得意先、
株主、社会などがありますが、この中で株主の発言力がさらに
強くなってきていることが、今特集で再確認できます。





では、本題に入りましょう!


 PART.2 アベノミクスが舞台回し 
 踊り出す投資家 沸き立つ市場 

「ROEは何より大事な指標だ」と指摘するファンド関係者が
います。


 「ROEは何より大事な指標だ」(米ヘッジファンド、

 インダス・キャピタル・アドバイザーズ日本代表、

 ハワード・スミス氏)。

 市場は、「ROE改善」と聞くだけでいきなり熱い視線

 を送る状況なのである。
 

  (P.033)


私を含め、株式投資をしていない(過去にはあります)
人たちにとって「ROEが改善しようがどうしようが関係
ないよ」と言いたいところですね(笑)。


一方で、日経平均が2万円の大台を回復したことで、
今まで株式投資に参加していなかった人たちが、
株式投資になだれ込んでいます。


その人たちにとって、「ROEは大事な指標」です。


ROEが俄然注目されるようになってきた背景には、
アベノミクスがあります。


企業経営に4つの節目がある、と『日経ビジネス』は
指摘しています。


解説を読んでみましょう。
アベノミクスの「3本の矢」が関係しています。


 2012年末、政権の座に就いた安倍晋三首相は、

 「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を

 喚起する成長戦略」の3本の矢をアベノミクスとして掲げ、

 失われた20年からの復活に動き出した。

 アベノミクスによって企業経営は4つの節目を迎えた。

 2013年6月に策定した日本再興戦略はその一つ。

 翌年の改訂版では「経済成長の実現のため、ROE向上

 など稼ぐ力を取り戻す」とROEを前面に押し出した。

 2014年8月には経済産業省の事業で、伊藤邦雄・

 一橋大学教授が座長となったリポートが、ROE8%の

 目標を明示。


 政権は企業に、ため込んだお金を吐き出させる。

 成長投資を促し、それができないのであれば手厚い

 株主還元を迫る。今春の労使交渉で賃上げを強く

 要請したのも同じ流れだ。

 それだけではない。投資家の在り方も変えた。

 長年、「もの言わぬ株主」と揶揄されてきた国内の

 機関投資家が一転、「もの言う株主」に変身し始めた。


 株主に総会での議決権行使をアドバイスする米ISS

 が2014年末、賛否の基準として「ROE 5%」を掲げた

 のも変化に拍車をかけた。


 アベノミクスが投資家を揺さぶり、投資家は企業を

 揺さぶる。その結果、ROE目標や増配、自社株買い

 などを打ち出す企業が続出。安倍政権発足以来の

 株高にはそんな背景もある。 
 

  (PP.033-034)



株主との対話とROE向上を迫る方針が<br />企業と投資家を動かし、株高を演出した

株主との対話とROE向上を迫る方針が
企業と投資家を動かし、株高を演出した

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 PP.032-033)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22



ROEが注目されてきたわけですが、過去にROEが取り沙汰
されたことはなかったのでしょうか?


3回あったそうです。


 日本でROEが取り沙汰されたことは3度ある。

 1度目は1990年代中ごろ。米国のROE経営

 ブームが飛び火した。2度目は米スティール・

 パートナーズなど投資ファンドの買収攻勢が

 猛威を振るった2000年代前半だ。

 アベノミクスが仕掛ける今回の第3次ROEブーム

 は多くの企業、機関投資家を巻き込み、

 広がる一方。そうした中で、かつてアクティビスト

 と恐れられた投資家が復活している。
 

  (P.034)



投資家が求めるROEの水準と現実とはどうなのか、
アンケート調査結果があるそうです。


投資家の求める水準と現実のROEには落差がある

投資家の求める水準と現実のROEには落差がある

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 P.034)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22



この調査結果を見るかぎり、投資家はROEの数値は
10~12%を理想と考える人が37.5%を超えて最も多い
ですが、現実には6%未満が1200社近くあり、
最も多くなっています。



ROEについては、前回ご覧いただいた次の数式を、
もう一度ご覧ください。



ROE(自己資本利益率)

ROE(自己資本利益率)

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 P.029)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22




ROEは3つの要素に分解することができます。
以下の数式で分かります。



ROE

MBA用語集 ROE Globis Management Schoo のサイトから



この式は、今はざっとご覧いただくだけでかまいません。
PART.3でもう一度取り上げますので、その際は、
じっくりこの数式をご覧ください。


そして、『日経ビジネス』の解説をよく読んでください。
そうすれば、この数式はどのような意味を持つのか、
理解できると思います。


ちなみに、「株主資本」とありますが、現在では自己資本
となっています。さらに純資産とも言います。





 PART.3 本誌独自ROE“分解”ランキング 
 持続力を見極めよ 

このパートには多くの表が出てきますが、
ROEを分解し、売上高営業利益率、
総資産回転率、財務レバレッジの3つに分類し、
それぞれをランキングしています。


『日経ビジネス』はランキングを公表する前に、
「“本物”の優良企業とそうでない高ROE企業を
あぶり出した」(P.035)と述べています。


その理由は、「ROEが高いからといって優良企業
とは限らない」(P.035)からです。


『日経ビジネス』は、どのような視点でランキングを
決定したのか説明しています。


 本誌は今回、東証1部上場企業を財務面から

 徹底的に分析した。

 ROEは「売上高利益率×総資産回転率×財務

 レバレッジ」に分解することができる。

 この3要素のどれを改善すれば、ROEが高く、

 体質も強い企業になるのか。あるいは企業規模別

 に見た違いはどうか。

 それらを勘案しながら、“本物”の優良企業とそうで

 ない高ROE企業をあぶり出した。
 

  (P.035)


そこで、もう一度PART.2で取り上げたROEの分解式を
見ておきましょう!



ROE

MBA用語集 ROE Globis Management Schoo のサイトから




ランクインしている企業名は有名、無名が混在して
います。もちろん、私が知らない企業が多数含まれ
ています。


まず、「スーパーROE(連続高)企業」のランキングから
見ていくことにしましょう!


スーパーROE(連続高)企業


スーパーROE(連続高)企業

スーパーROE(連続高)企業

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 P.035)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22




先にご覧いただいた「ROEの理想と現実」で、
ROEの理想の数値は10~12%とありましたが、
はるかに上ですね。1位のカカクコムは60%超です。


ベスト10の中で、私が知っている企業は4社(カカクコム、
ソフトバンク、ヤフー、サンリオ)しかありません。


参考までに、米国の高ROE企業はどのような数値が
評価されているか、専門家の話を聞いてみましょう。


 「米国では長期にわたって20%以上の高いROEを

 達成している企業こそ尊敬される」と早稲田大学

 ビジネススクールの入山章栄・准教授は言う。
 

  (PP.035-036)




では、次から3つの要素に分けたランキングをご紹介
していきます。


利益率が高い企業




(『日経ビジネス』 2015.06.22号 P.036)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22




スーパーROE(連続高)企業と、利益率が高い企業を突き
合わせてみますと、6社(カカクコム、スタートトゥデイ、
日本M&Aセンター、日本商業開発、エムスリー、ヤフー)
が重複しています。


ここでは、営業利益率でランキングしています。
営業利益率は、売上高に対してどれだけの営業利益
(本業における儲け)を出したかを示す指標です。
利益率が良い、悪いという指標です。





資産回転率が高い企業


資産回転率が高い企業

資産回転率が高い企業

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 PP.036-037)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22




スーパーROE(連続高)企業と、資産回転率が高い企業を
突き合わせてみますと、1社も重複していません。


総資産回転率は、総資産(負債+純資産)を使って、
どれだけの売上を上げたかを示す指標です。


総資産が少なければ、言い換えますと、設備をあまり必要
としない企業は、資産回転率が高くなる可能性があります。


その点で、巨額な設備投資を必要とするメーカーは、
総資産が巨大になる可能性があります。その結果、
総資産回転率は低くなる可能性が高まります。





利益率が低く、レバレッジが高い企業


利益率が低く、レバレッジが高い企業

利益率が低く、レバレッジが高い企業

(『日経ビジネス』 2015.06.22号 P.037)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.22




利益率が低く、レバレッジが高いということは、負債を使って
(レバレッジを効かせて)経営しているということです。
この数値が大きいということは、安全性が低いことを示して
います。


財務レバレッジとは、総資産(負債+純資産)を純資産で
割った数値ですから、この数値が大きいということは負債
の額が大きいこと示しています。


多額な設備投資を必要とする「装置産業」が相当します。
例えば電力会社や、建設会社などです。


それらの企業は、長期借入金の額が莫大です。


ちなみに、自己資本=純資産となります。


レバレッジとは「てこ」のことです。最小の力で最大の効果
を発揮するための道具です。


数十年前、LBO(Leveraged Buy Out)という手法が多用
されたことがありました。


LBOは、「買収先資産を担保にした、借入による買収」
と日本語に訳されていました。


つまり、買収企業に担保がなくても、被買収企業に担保
となる資産があれば、その資産を担保にして買収しよう
とする、まったくもって一方的にM&A(合併・買収)が
認められた時期があったのです。


米国で始められ、日本にも入ってきました。日本で実際に
行われたかどうかは、記憶していません。




さて、『日経ビジネス』は「ROE“分解”ランキング」を総括して、
次のように述べています。


 「ROEを上げる王道は利益率と売上高を上げること」

 と投資信託会社、レオス・キャピタルワークスの取締役

 でファンドマネジャーの湯浅光裕氏は指摘する。


 利益率が高く、ROEも高い企業のランキングで目立つのは、

 5位に入った日本M&Aセンター。後継者のいない中小企業

 などのM&A(合併・買収)仲介という独特の事業を作り出し、

 ニッチ市場で高い利益率を実現している。

 一方、総資産回転率(売上高/総資産)が高く、ROEも高い

 企業のランキングでは、ユナイテッドアローズが7位に入った。

 2015年3月期は、円安で原材料価格が高騰したことなどから

 営業利益は前期比16.8%の減益となったが、18店の出店が

 効いた。


 今回作成したランキングで最も評価が難しいのが、

 利益率は低いものの、財務レバレッジの高さでROEを押し

 上げている企業だ。上のランキングがそれだが、ぴあ、

 飛島建設などかつて業績悪化に苦しんだ企業も多い。
 

  (P.037)





ポイント

ROEを絶対視してはならないが、
とても重要な指標であることは間違いない


ROEは3つに分解できることは既に述べました。
売上高利益率、総資産回転率、そして財務レバレッジです。


どこに重点を置くかは各企業の経営者の考え方次第ですが、
 「ROEを上げる王道は利益率と売上高を上げること」
にあるのは、間違いないでしょう。


『日経ビジネス』(2015.06.08 号)は、ファナックを特集しました。
ファナックのROEは16%ですが、その理由は売上高当期
利益率が28%で、東証1部の製造業の平均4%の7倍も
あるからです(下図参照)。


ROEは東証1部の製造業の2倍ですが、収益性に重点を
置いていることは間違いありません。


ファナックは、
 「ROEを上げる王道は利益率と売上高を上げること」
を実践しているのです。



効率とレバレッジが低いのにROEが高い

効率とレバレッジが低いのにROEが高い


(『日経ビジネス』 2015.06.08号 P.034)
「日経ビジネスDigital」 2015.06.08







今特集のキーワードを確認しておきましょう。

キーワード

 ROE 
 持続力 
 株主還元 
 脱・ROE 
 自律 




最終回は、
「PART4 圧力を活力に変える
 脱・後ろ向きROE 解は1つじゃない」
をお伝えします。


ご期待下さい!




藤巻隆(ふじまき・たかし)オフィシャルブログ-
人気のブログランキング



こちらのブログやサイトもご覧ください!

こんなランキング知りたくないですか?

中高年のためのパソコン入門講座(1)

藤巻隆のアーカイブ

本当に役に立つビジネス書