新興国が動かす世界経済の新ルール
PHP研究所 2011年1月5日 第1版第1刷
<目次>
第1章 超大国「G2」の黄昏
Ⅰアメリカ-「唯一の大国」はいかにして崩壊したか
Ⅱ中国-バブル崩壊はいつやってくるか
第2章 お金の流れが変わった!
Ⅰ「ホームレス・マネー」に翻弄される世界
ⅡEU-帝国拡大から防衛のシナリオ
Ⅲ新興国ー21世紀の世界経済の寵児
第3章 21世紀の新パラダイムと日本
Ⅰマクロ経済政策はもう効かない
Ⅱ市場が日本を見限る日
第4章 新興国市場とホームレス・マネー活用戦略
Ⅰ新興国で成功するための発想
Ⅱ日本経済再成長の処方箋
Ⅰ新興国で成功するための発想
新興国は、かつて日本が通過してきた高度経済成長
をいまやっている。
つまり、そのようなマーケットで何をやればうまく
いくかを知っているのが、日本企業の強みなのである。
言葉を換えればなにもわざわざ最先端技術の分野で
勝負しなくても、「むかしの芸」で十分に戦えると
いうことだ。
新興国で成功を収めたいなら、大きく分けて5つの
攻略ポイントがあることを、日本企業は理解して
おいたほうがいいだろう。
その第1は官公需、つまり公共事業だ。道路、空港、
港湾、ダムなどのインフラ整備に関しては、
自民党政権時代に国内でさんざんやってきたこともあり、
日本がもっとも力を発揮しやすい分野だといえる。
なかでも格別に強いのが鉄道だ。
新興国で成功する第2の道は法人需要である。
工作機械や印刷機械、プラスチックの射出成形機械、
自動化装置、ブルドーザーなどを法人に売る分野では、
すでに世界で実績を上げている日本企業は多い。
売り込み面では伝統的にスイスやドイツが強いが、
日本も決して負けていないといっていいだろう。
(中略)
法人需要のいいところは、台湾や韓国、中国などには、
ライバルとなる企業がいない点だ。
攻略ポイントの残り3つはコンシューマー需要である。
世界の人口は市場構造をもとにすれば、おおよそ3つに
分類することができる。
年間所得2万ドルの富裕層が約1.75億人、
その下に年間所得3000ドルまでの中間所得層が
14億人。
そして残りの40数億人がピラミッドの底辺、
すなわち「ボトム・オブ・ピラミッド(BOP)層」と
呼ばれる。
これまで日本企業の多くは、おもに新興国内の富裕層を
中心顧客に据えて活動してきた。
もちろんそのような利益率の高い市場は、引き続き
日本企業にとってメインターゲットになりうるが、
同時に、今後は新興国を中心とした世界の中間所得層を
いかに取り込むかが、どの企業にとっても重要になって
くるだろう。
一方、中間所得層のさらに下部に位置する貧困層(BOP=
ピラミッドの底辺)となると、現在の日本企業はほとんど
お手上げ状態である。
しかし、この層が40億人という膨大な人口を抱え、
5兆ドルという日本の実質国内総生産に相当するマーケット
であることを考えると、指をくわえて見ているのはじつに
もったいない。
安倍新政権がスタート後、円安、株高が急速に進行
しています。
輸出産業にとって長年の苦しみからようやく開放
される時が来ました。
一方で、円安による原油価格の高騰が影を落として
います。
そうした情勢下、アルジェリアで過激派によるテロが
勃発しました。
アルジェリア政府軍とテロリストとの銃撃戦で、
日揮の多数の従業員が犠牲になりました。
報道によれば、日本人10名が亡くなったそうです。
ご冥福をお祈りします。
日揮がアルジェリアに進出し、事業を行なっている
ことを知っている人は、関係者以外ではあまり
いないのではないでしょうか。
私も今回の事件が発生しなければ、深く知ることは
なかったでしょう。
この本の中で、大前研一氏は日揮についても言及
していました。その箇所をご紹介します。
ワンセットで売り込むやり方に日本人はあまり
慣れていない。そういう感覚がないのである。
だが、日揮や千代田化工建設のように、
中近東などで発電、海水淡水化、石油化学プラント、
ガスプラントなどを、それこそワンセットで受注
している会社もなかにはあるのだ。
彼らのやり方やセンスをお手本にすればいい。
(下線:藤巻)
上記の記事は、2013年1月22日のものです。
アルジェリア人質事件が勃発した際、
日揮の川名社長が記者会見の席上で、
涙を流しながら、「痛恨の極み」と悲痛な表情で
語ったシーンが思い出されます。
日揮をはじめ日本企業は、リスクを負い、
アルジェリアなどのアフリカ諸国や、
新興国の経済発展に多大な貢献をしています。
今回の事件は、企業目的の遂行と、駐在員の身の
安全をどう確保するかとのはざまで、
難問を突きつけられたと言えます。

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