成果は出始めている
2015.04.20
平井 一夫(ひらい・かずお) 氏
[ソニー社長兼CEO]
(PP.036-039)
私はいつもソニーの商品やサービスは感動していただく
ことが必要だと申し上げています。感動という軸は2つ
あります。
一つは機能で感動していただくことです。もう一つは感性
に訴えるもの。商品のコンセプトのほか、デザインや質感、
あとは所有の誇りといったところをいかに作り込んでいくか
です。商品力低下という意味では、ある時期から感性価値
が薄れてしまったのかなと感じています。
エレキに限って言えば、まずはお客様に欲しいと思って
いただける商品を作らなければなりません。その上でコスト
をきちんと管理すれば、業績は着実にプラスに転じると思っ
ています。この3年間に構造改革をする過程で、本社や物流
などあらゆるコストを徹底的に見直してきました。強い商品
が効率の良い組織から出ていくという組み合わせを目指して
のことです。
確かに赤字で無配ですし、格付け機関からの評価も投機の
水準です。2012年度からの第1次の中期計画も残念ながら
達成できませんでした。
コストをどうコントロールすべきかを含め、エレキの業績を
回復する方向性はもう見えています。復活したとは言いま
せん。でも方向性は正しいということです。
まず分社化は非常に重要なポイントだと考えています。
ご存じの通り、既にソニーグループの売り上げの7割は本体
から独立した会社が占めていますし、その割合は年々上がっ
てきています。
分社化は経営のスピードを高めることに加え、適度に生まれ
てくる遠心力にも期待ができます。自分たちで道を切り開いて
会社を大きくしようという意欲が生まれてくるからです。
去年のテレビに続き、今度は10月をめどにビデオ&サウンド
事業も分社化します。順次、色々なビジネスを分社化していき
ます。
遠心力が働くことが、イノベーションにつながると私は考えて
います。私の仕事は遠心力と求心力のバランスをいかに
取るかです。
分社化の目的はやはり事業部長ではなく、社長を育てたいと
いうことです。
開発について言えば、確かに構造改革は大切ですが、私を
含めたトップマネジメントは技術に対するリスペクトを強く持っ
ています。
無配や赤字については真摯に受け止めていますし、改善して
いかなければいけないと思っています。
個々のビジネスには既に、強力な経営陣がいます。その中で
ソニーのトップの使命というのはやはり、いかに求心力と遠心力
のバランスをとるかだと思っています。
今、持っている資産を整理すれば、そこから確実に成果が出て
くると思っています。実際に、テレビ事業などはいい方向に進み
出しています。自分たちが資産をうまく使えないから、事業を
やめるということにはならない。議論すべき話でもないと私は
思います。
今後、創業者である井深大さん、盛田昭夫さんがどうしてこの
会社を作ったのかを自分なりに解釈し、夢を実現していきます。

ソニー社長兼CEO 平井 一夫 氏
(『日経ビジネス』 2015.04.20 号 P.036)
「日経ビジネスDigital」 2015.04.20
キーワードは、バランスです。
今週の『日経ビジネス』の特集記事は、
「ソニーが変われぬ10の理由」
です。
そして、その特集のPART 2は編集長インタビューで、
平井社長が登場しました。
戦後生まれの日本を代表するホンダとソニーが、
共に勢いが弱まってきている印象が強いですね。
『日経ビジネス』は3月16日号で
「こんなホンダは要らない 抜け出せ『ミニトヨタ』」
というタイトルでホンダの実態を伝えています。
お時間がありましたら、下記のブログをご覧ください。
日経ビジネスの特集記事(99)
こんなホンダは要らない 抜け出せ「ミニトヨタ」(1)
日経ビジネスの特集記事(99)
こんなホンダは要らない 抜け出せ「ミニトヨタ」(2)
日経ビジネスの特集記事(99)
こんなホンダは要らない 抜け出せ「ミニトヨタ」(3)
ソニーに関してとても残念に思うことは、完成品として
のソニー製品が少なくなったことです。
ことにソニーらしい斬新な、尖った製品が出てこなく
なったことです。
例えば、スマホのカメラに使われている撮像装置は、
確かにソニー独自の技術が使われています。
ですが、あくまでスマホの部品に過ぎません。
スマホ、もっとはっきり言えば、iPhone に匹敵するような
製品を出せませんでした。エリクソンと提携し、Xperia と
いう Android 携帯を世に問いましたが、 iPhone の勢いを
止めることはできませんでした。
現在は、エリクソンとの提携を解消し、ソニーモバイル
コミュニケーションズからスマホを発売しています。
たまたま、新製品の発表(2015.04.20)がありました。

平井さんは、
「今後、創業者である井深大さん、盛田昭夫さんがどうして
この会社を作ったのかを自分なりに解釈し、夢を実現して
いきます」
と語っています。
井深さんと盛田さんは創業した当時から、ソニーは
「世界のソニー」
を標榜していました。
ソニー広報部がまとめた『ソニー自叙伝』(ソニー広報部 著
ワック編集部 編 ワック 2001年7月5日 初版発行)という
本があります。
この本の「はじめに」に次のような記述があります。
(前掲書 PP.2-3)
「世界のソニー」――この言葉こそが、ソニーという
企業グループの特質を端的に物語っている。
しかしなぜ、“世界の”という冠がほかのどの企業
でもなく、ソニーにおいて最もふさわしいのだろうか。
それは、企業サイズや世界中にブランドを認知させた
こと、また、終戦直後の町工場が瞬く間に世界的な
規模になったといった理由だけによるものではない
だろう。それならば、ほかの世界レベルの企業を
思い浮かべることもできるからである。
では、なぜか?
じつのところ、ソニーは設立の当初から「世界のソニー」
だった。日本企業ソニーが発展して世界的企業になった
のではなく、井深大と盛田昭夫によって創られた当時から、
企業の視線は世界に向いていた。「他人のやらないこと
をやる」という技術発想と「世界中を相手に仕事をする」
というビジネス・スタンスは、グローバル・サイズでしか
なかったのである。
ソニーは初めから、世界の中にいた。だからこそ、多くの
人が「世界のソニー」と認知しているに違いないのである。
ソニーにはもう一度、原点に帰って、「世界のソニー」を
目指してほしいと願っています。
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