青色LEDノーベル賞受賞に関連した『日経ビジネス』の記事をご紹介  2014.10.27 | 藤巻隆(ふじまき・たかし)オフィシャルブログ

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青色LEDノーベル賞受賞に関連した
『日経ビジネス』の記事をご紹介
2014.10.27



『日経ビジネス』(2014.10.27 号)に、全6ページの記事が
掲載されました。



ノーベル物理学賞を受賞した、中村 修二・米カリフォリニア大学
サンタバーバラ校教授へのインタビュー記事が、最初に見開き
2ページにわたって掲載されています。




米国では半導体レーザーの研究に注力

『日経ビジネス』2014.10.27 号 P.012




そのインタビュー記事に続いて、ノンフィクション作家・山根一眞氏
による、「名古屋はノーベル賞製造工場」という見開き2ページの
取材記事の後に、3人のノーベル賞受賞者と名古屋大学総長へ
のインタビュー記事が掲載されています。



では、順に見ていくことにしましょう。

ノーベル賞は通過点
中村修二が目指すもの



最初にお話しておかなければならないことがあります。
それは、中村修二さんは米国籍を既に取得し、
国籍に限定して言えば、日本人ではない、
という事実です。



ノーベル物理学賞の発表後、日本のマスコミ(特にテレビ局)は、
てんやわんやの大騒ぎをして、3受賞者の出生地や、
大学へ押しかけました。



ですが、2人の日本人研究者と1人の米国籍の研究者が
ノーベル物理学賞を受賞した、と伝えるべきでした。
一部の報道機関では、きちんと伝えているところも
ありましたが。



何を言いたいかといえば、中村さんは頭脳流出だということです。
ノーベル賞受賞者を過去に遡って見ると、頭脳流出は珍しく
ありません。順不同ですが、物理学賞を受賞した、南部 陽一郎・
米シカゴ大学名誉教授、化学賞を受賞した、根岸 英一・
米パデュー大学教授です。



米国で研究を続け、ノーベル賞受賞者となった
人たちを挙げるとかなりいます。
日本人で初めて医学生理学賞を受賞した、利根川 進・マサチュー
セッツ工科大学教授、理化学研究所脳科学総合研究センター
センター長、医学生理学賞を受賞した、山中 伸弥・京都大学
iPS細胞研究所長、化学賞を受賞した、下村 脩(おさむ)・
米ボストン大学名誉教授、名古屋大学特別教授などがいます。



中村さんのは話しに戻ります。
中村さんの受賞後、日本と海外のメディアの取り扱いは
大きく異なりました。



中村さんの言葉を聞いてみましょう。


 「だって、おかしいでしょ。なぜか日本では『中村教授は

 青色LEDの量産化をする技術を開発した』と報道されている。

 ノーベル賞の受賞理由にもそうは書いていないし、

 海外でもそんな報じ方はされていない。

 みな『青色LEDを発明した中村』ですよ」(中村教授)
 

 (『日経ビジネス』2014.10.27 号 P.012 以下同様)



日本と海外のメディアで、ここまで温度差があるのは
なぜでしょうか?
『日経ビジネス』取材班の考えは、次の通りです。



 青色LEDを実現する材料は窒化ガリウム以外にも

 いくつかあり、実際に市販にまでいたっていた

 ものもあった。ただ高価なのに暗く、とても一般

 照明に使えるようなものではなかった。

 窒化ガリウムにインジウムという材料を加え、

 他の色並みに明るく光るLEDを作り出したのは

 中村教授であり、それ故に「青色LEDを発明した

 のは中村氏」と言われていたのだ。
 

 (P.012)



ところが、勤務先であった日亜化学工業との訴訟で
第二審以降、日本のメディアの扱いがガラリと変わった
ということです。
ただ、中村さんはこの件については「思い出したくない」、
とインタビューで答えています。



 「嫌なことばかりだったから裁判のことはあまり

 思い出したくないですね。個人を標的にした攻撃

 を執拗に受けましたから。今はただ、何にも邪魔

 されることなく、自分がやりたいことを思う存分

 やりたいと願うだけ」と中村教授は打ち明ける。
 

 (P.013)



今、中村さんが心血を注いでいるのは、「自らが参画
するベンチャー企業の育成」(P.013)です。



LEDには発光効率に限界があるからだ、ということです。


 「LEDの発光効率は50~60%で、もう限界に

 近い。しかし、半導体レーザーにすれば、100%

 に近づけることができる」と中村教授は説明する。
 

 (P.013)


「ノーベル賞の受賞で、投資家から資金調達が
楽になった」(P.013)と言うことです。



 2008年に設立したLEDの開発に取り組む米Soraaは既に

 米国屈指のVC(ベンチャーキャピタル)などから

 約100億円の資金を調達している。
 

 (P.013)



日米のVCに大きな違いがある、と中村さんは
指摘しています。米国のVCは1時間の説明で、
即座に投資を決めるが、日本のVCはその場で
結論が出せず、会社に持ち帰り、数ヶ月後に
無理でした、というケースが多いそうです。



彼我の差はあまりに大きいですね。


中村さんが会社を辞める引き金になった経緯を
語っています。



 「1999年に会社を辞めることを決めた最大の理由は、

 (日亜化学工業創業者で、資金を提供してくれた)

 小川(信雄)会長が完全に経営から離れてしまったから

 です。もう自分を理解し支援してくれる人はいなくなって

 しまったわけですから」

 

 (P.013)



『日経ビジネス』はこう結んでいます。


 再び、ビジネスのフィールドに立つ彼にとって、

 ノーベル賞は一つの通過点にすぎないのだろう。
 

 (P.013)




ノンフィクション作家 山根一眞氏
名古屋はノーベル賞製造工場



引き続きまして、ノンフィクション作家 山根一眞氏
による取材記事を見てみましょう。
名古屋大学はトヨタ自動車の寄付で建築された、
豊田講堂があるそうです。
世界的建築家、槇文彦さんによる「モダニズム建築」
の代表で、登録有形文化財でもある、ということです。



名古屋大学は「科学研究費はNo.1」という、
一般にあまり知られていない事実があります。
それは具体的にどのようなことを指すのでしょうか?



 国立総合大学の科学研究費の受入総額では

 東京大学が圧倒的だが、実は名古屋大学

 は1人当たりの科研費採択件数では1位。

 1人当たりの科研費受入金額でも2位なの

 だ(2013年度)。研究者にとって「小さな」

 田舎の大学」が理想の場であることをうかが

 わせるデータだ。

 これまで「名古屋大学出身」のノーベル賞

 受賞者は6人になる。
 

 (PP.014-015)


名古屋大学は、「新たな土壌作りに猛然と
向かっている」(P.015)と山根さんは書いています。



 世界の200を超える大学と提携関係を結び、

 アジア各国に「サテライト名古屋大学」を

 設置しているのはその一例だ。


 世界の大学との提携数は東大のおよそ10倍、

 しかもアジアに重点を置いていることは、

 名古屋の製造業のアジア展開でも将来、

 良い効果をもたらすだろう。
 

 (P.015)



この度のノーベル物理学賞で、2人の名古屋大学出身
の研究者(大学教授)が受賞したことで、名古屋大学の評価が
相当高くなることが予想されます。




山根一眞氏が聞く


山根さんは、3人のノーベル賞受賞者と名古屋大学総長に
インタビューしました。それぞれの概要をご紹介します。



理化学研究所理事長、2001年ノーベル化学賞受賞
野依 良治氏


独創的であるほど孤立無援になる


 「独創性」という言葉は、「独り創造的である」

 という漢字を使います。だから、設定テーマが

 独創的であればありほど孤立無援になります。


 競争は厳しく、苦しいものです。心の拠り所は、

 アイデアがユニークであること。あるいは、

 自分は人にはマネできない技術力を持っている

 と思うことです。
 

 (P.016)



京都産業大学教授、2008年ノーベル物理学賞受賞
益川 敏英氏


教授も「先生」ではなく「さん」で呼ぶ


 名古屋大学での私の師は、素粒子物理学分野の 

 巨人であった坂田昌一先生です。


 坂田先生は自分のことを「先生」ではなく「さん」

 で呼ぶように言っていました。

 理論物理学の世界は、堂々と議論をするためには

 対等でなければいけないからです。
 

 (P.016)



高エネルギー加速器研究機構(KEK)特別栄誉教授、
2008年ノーベル物理学賞受賞
小林 誠氏


基礎研究は死屍累々 見守る度胸を


 基礎研究の世界は、まさしく死屍累々です。
 
 失敗する人がたくさんいて、その中から、
 
 いくつか成果が出ればいいわけです。

 
 基礎研究は、成功確率の低い厳しい世界。
 
 だからこそ、見守る度胸が必要です。
 
 それこそが本当の先進国であり、科学技術

 立国ということだと思います。
 

 (P.018)



名古屋大学総長
濱口 道成氏


受賞者に必ず信頼する師匠の存在


 ノーベル賞受賞者にとっての環境とは、師匠の
 
 存在にほかなりません。環境に恵まれなければ、
 
 「隠れた才能」で終わってしまいます。

 
 師匠は「お前ならできる」と励まします。
 
 師匠は暴れ回る若いエネルギーを一点に集中させる
 
 力を持っています。イノベーションに取り組む
 
 勇気を、師匠が弟子に与えるのです。
 

 (P.018)




最後に、2010年にノーベル化学賞を受賞した、根岸英一・
パデュー大学教授の『夢を持ち続けよう!』
(根岸英一 共同通信社 2010年12月10日 第1刷発行)
から次の言葉をご紹介します。濱口さんが語ったことと、
共通する内容です。



 (ハーバート・)ブラウン先生(1979年ノーベル
 
 化学賞受賞)から習った一番のポイントは、

 発見の芽が出てきたとき、どうやってそれを
 
 大木に育てるかということです。
 
 ああでもないこうでもないと、その芽から
 
 出てくるいろいろな可能性を網羅的かつシステマ
 
 チックに追究する、その姿勢が非常にロジカルで
 
 ヤマ勘みたいなものは入れません。
 
 わたしも実践していますが、そういう手法はブラウン
 
 先生から学んだことです。
 
 「重要なのは What's going on?、つまり、いま何が
 
 起こっているのかを正確に調べることだ」
 
 これは耳にたこができるくらい聞かされました。
 

  (上掲書 P.69)



この本は、日本の若者たちを対象にしたものですが、
私たちにも大いに刺激を与えてくれるになる本です。



長い文章を最後まで読んでいただき、本当にありがとう
ございました。少しでも、参考になる箇所があれば、幸いです。



『日経ビジネス』2014.10.27 号 PP.012-018(P.017は広告ページ)
の概要に、コメントとWikipediaの記事を加え、ご紹介しました。






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