日本サッカー(3)
W杯が終わって、日本サッカーの問題点が
明らかになりました。
代表監督はどうあるべきか
代表選手を選出するポイントはなにか
日本サッカー協会とスタッフのあり方は
など。
これらは一朝一夕に解決する問題ではありません。
ですが、4年後のロシアW杯を見据えた明確な戦略
を立案し、基本からブレずに実行していくことです。
W杯が閉幕後、その後の動向が気になっていました。
そんな時、あるサイトが目に止まり、すべてに目を
通しました。
岡野俊一郎さんと金子勝彦さんの対談でした。
懐かしく感じました。
10代の頃(40年ほど前)、「東京12チャンネル
(現在のテレビ東京)」で、
『三菱ダイヤモンド・サッカー』をよく観ていた
からです。
当時、旧西ドイツが非常に強かった、と印象に
残っています。
センターフォワード(CF)のゲルハルト・
ミュラーは強烈な攻撃力を持った選手だった、
と目に焼き付いています。
『爆撃機』というあだ名がついていました。
また、黒地に白い三本線のサッカーシューズに憧れを
持っていました。
アディダスのサッカーシューズでした。
写真のミュラー選手が履いています。
『三菱ダイヤモンド・サッカー』の解説者は岡野さんで、
アナウンサーは金子さんでした。
岡野俊一郎さんと金子勝彦さんをご紹介します。


3回にわたるテーマで対談が行われていますので、
ブログでも3回に分けて、対談の内容と解説を
お届けします。今回で終了します。
尚、この対談は2014年7月21日に行われました。
ブラジルW杯の決勝が行われた1週間後でした。
サッカーに限定した話ではないことに、
すぐに気づかれると思います。
お二人とも80歳前後ですが、お元気で歯に衣着せぬ
批評をしています。それだけの実績があるからです。
日本サッカーの貴重な「ご意見番」です。
サイトは、
岡野俊一郎と金子勝彦が語る日本サッカー(その3)
TV中継に何が必要で、何が欠けているのか?
(フットボールチャンネル)
です。
TV中継に何が必要で、何が欠けているのか?
解説者について、かなり辛口の批評をしています。
「勉強することの大切さは昔もいまも変わらない」
という言葉は、素直に納得できます。
(岡野俊一郎氏)<註:文中の赤い文字は藤巻 以下同様>
自身の立場を十分に理解していれば、
体験に基づいた解説もまた違ってくる。
僕を含めて、解説者とは権威者ではないんです。
僕は日本のテレビでサッカー放送が始まった
黎明期から解説をさせていただいて、
一人であれこれ考えて、BBCを含めた海外の放送も
見て研究してきました。
同じことをいまの人たちが経験することはできない
けれども、勉強することの大切さは昔もいまも
変わらない。
キャリアを終えたら自動的に解説者になって、
好き勝手なことを言えるというのではやはり
困りますよ。
野球や他の競技を含めて、しっかりと勉強をして
いる人の解説は聞いていてすぐにわかりますからね。
「解説者は一般教養も問われてくる」という
金子さんの指摘があります。
一般教養は、英語でliberal arts(リベラル・アーツ)、
というものです。
歴史、哲学、文学、芸術、数学、物理学などを
徹底的に学ぶものです。
米ハーバード大学にもリベラル・アーツがあり、
リベラル・アーツを学んだ、その先の専門分野
の学問は大学院で行います。
(金子勝彦氏)
今年からJ3が創設されたことに伴い、
中継するスカパー、Jスポーツも視聴者の
新規開拓の狙いを込めて解説者を若手に
シフトしました。
全国で50人くらいいて、中には僕が知らない方
も少なくない。
ただ、非常に申し訳ないんだけれども、
解説を聞いていられないんですね。
解説者は一般教養も問われてくるので、
彼らには時期尚早なのではないかと
担当プロデューサーに苦言を呈したことも
あります。
実際問題として日本サッカー界を貶めて
しまいますよ。
岡野さんは、元日本代表監督、岡田武史さんの
解説が一番上手だ、と指摘しています。
知識(勉強)と経験が必要だ、ということです。
(岡野氏)
今回のW杯でもさまざまな解説者が日本の試合に
登場していましたけれども、
一番上手かったのは岡田武史ですね。
Jリーグも20年を超えて、中継数に比例するように
解説者の数も増えてきた。
各々に個性があり、語り上手な人も多い。
その中でも岡田は圧巻だった。
監督の心情やチームの雰囲気といった点を
実に的確に解説していた。
W杯のベスト16を戦った監督のものの見方の
素晴らしさと言えばいいのか。
本質的な部分を勉強して、経験を積むことで、
成果というものが出てくる。
遠藤保仁選手は、自著で岡田さんについて、
このように書いています。
(『信頼する力 ジャパン躍進する真実と課題』
岡田監督は、理想の監督であり、上司だと思う。
厳しいし、妥協を許さない。
でも、人の意見に耳を傾けて、アドバイスを
求めてきたりするなど、門戸をいつも開けて
いてくれる寛容さがある。
それに、自信に溢(あふ)れている。
自分の信念を曲げないし、やろうと思ったことは、
厳しく選手にも求める。しかも、勝つために半端
じゃない努力をしている。選手も監督のことは
よく見ているから、こういう努力や姿勢といった
ものは、すごく大事なことだと思う。
岡田監督を見ていると、良い監督、良くない監督
の基準がハッキリ見えてくる。
チームを強くし、勝つために研究や努力を怠らない。
これは、ワールドカップの前から岡田監督を見て、
痛感したことだった。相手チームのことやトレー
ニング方法など、本当にいろいろ研究していた。
もしかしたら陰で努力しているのかもしれないけど、
チームの為に研究している、勉強しているというのは、
選手に伝わるものだ。
遠藤保仁 角川ONEテーマ21
角川グループパブリッシング
2011年1月10日 初版発行 PP.121-122)
「日本サッカーの父」と呼ばれる、
デッドマール・クラマーさんは、
日本代表コーチに就任し、
日本サッカーの発展に大きく貢献しました。
クラマーさんの、写真入りのサッカー教本が、
当時多数出版されました。
解説におけるクラマーさんの至言、
「センテンスは短く、しゃべりはチャーミングに」
は、簡単のようで、とても難しいことです。
物事を深く、広く理解していないとならない
からです。
(岡野氏)
僕が初めてサッカーの解説を務めたのが
1960年11月28日、国立競技場で行われた
日本とユーゴスラビアの国際親善試合でした。
当時はW杯・チリ大会の予選が変則で、
ユーゴスラビアはソウルで韓国と対戦していて、
デットマール・クラマーに頼み込んで
その帰路に来日してもらった経緯があった。
そのクラマーから試合前にもらったアドバイスは、
いまでも僕の解説における至言なんですよ。
「センテンスは短く、しゃべりはチャーミングに」と。
ここでも、岡野さんは勉強の大切さを訴えています。
(岡野氏)
彼(クラマー)は西ドイツでも解説を務めて
いたからね。半世紀以上も前の話だけれども、
クラマーの言う通りだと心の底から思いますよ。
時代の変遷とともにサッカーを取り巻く環境も
大きく異なったとは言っても、
何よりも重要なのは変化していくものにどう対応
していくか。
そのためには、繰り返しになりますけれども
勉強が必要なんです。
デッドマール・クラマー
デットマール・クラマー(Dettmar Cramer、1925年4月4日 - )
はドイツ・ドルトムント出身のサッカー指導者である。
名前はデトマール・クラマーと表記されることもある。
日本においては、日本代表の基礎を作った事から
「日本サッカーの父」と呼ばれる。
1960年、1964年東京オリンピックを控えた
日本代表を指導するため、コーチとして招聘された。
日本サッカー協会は代表強化のために外国人コーチを
招くことを検討しており、成田十次郎の仲介や、
会長である野津謙の決断で実現した人選だった。
クラマーは、自ら手本となるプレーを見せて
実技指導を行った。
初歩的な練習の繰り返しに対しては批判もあったが、
方針を変えることはなかった。
当時の教え子には釜本邦茂、杉山隆一らがいた。
口は相当悪かったらしく、コーチと兼任でクラマーの
通訳も担当していた岡野俊一郎は度々出るクラマーの
罵言雑言を意訳するのに苦労した経験
(直訳で伝えると、怒鳴られた選手はショックを受け、
その場で泣き出すほど酷かったという)
(デッドマール・クラマー Wikipediaから)
スポーツ中継に芸能人を呼んで、
バラエティ番組化してしまうことに、
以前から不満を抱いていました。
スポーツ中継に芸能人を呼ぶのは、
「視聴率を稼ぐためにやってる」
と思っていましたが、
必ずしも、テレビ局が期待するような視聴率は、
得られないようです。
(岡野氏)
国際試合になるとゲストが呼ばれますよね。
民放の場合は芸能人が多いんですけれども、
それで視聴率が上がるかどうかは別として、
ある局のトップに聞いたら局への苦情の
ほとんどは「芸能人を呼ぶな」というもの
らしいんですね。
スポーツはスポーツとして、
普通に放送して欲しい。
日本のテレビ局が制作する映像だと往々にして
審判団の紹介が遅れます。
キックオフ直前のコイントスの段階などで、
4人の審判団を紹介すべきなんですよ。
審判の国籍によってプレーの質を変える必要が
あるほど、審判団の性格が作戦に大きな影響を
与えるのがサッカーであり、
それを視聴者にしっかりと伝えるべきなんです。
次の話は、サッカー中継における解説に
限った話ではありません。
テレビやラジオのプロ野球中継の実況で、
アナウンサーが初歩的なミスをすることが
よくあります。
放送中に選手の名前を繰り返し間違えたり、
球種やコース、打球方向をライトとレフトを
間違えて伝えたり・・・。
出場選手の過去の記録がデータ集計されている
のに、手元に資料を用意しておかないという、
初歩的なミスをしていることもあります。
解説者に教えてもらったり、訂正されるケース
もあります。
プロのアナウンサーとして恥ずかしいことです。
タレントなら許されるかもしれませんが。
解説者も同様です。
岡野さんが再三再四指摘しているように、
「勉強が必要だ」と痛感させられます。
解説者もアナウンサーもタレント化している
ためかもしれません。
(金子氏)
いま流行っているのがピッチ解説なんです
けれども、今回のW杯でもキックオフ前に
解説者同士が視聴者をそっちのけで放送席と
ピッチでやり取りする映像を見せられました。
一番大事にすべきは誰なのかを、
プロデューサーも理解していない。
放送界全体の凋落とまでは言わないけれども、
伝えるという他者意識がなさすぎる。
アナウンサーも触媒、あるいは無機質な映像
を通して視聴者と熱いスタジアムをつなぐ
リンクマンとしての役割と本分を忘れ、
自分が、自分がという意識が強くなっている。
何歳になっても、貪欲に知識を吸収しようと
する姿勢は見習いたいものですね。
興味があると、他人に言われなくても自ら勉強
するようになるものです。
ただ、学校の勉強と違うのは、テストで100点を
とるためではありません。
答えが最初から1つだけ用意されていて、
それを再現した者が優秀というものではないのです。
ビジネスの世界では、答えが予め用意されて
いなかったり、答えが複数あり、どれを選択する
のがベストかを決めなければならない場面が必ず、
あります。
「戦略はチョイス(選択)である」と言った人が
いますが、選択を誤れば、個人なら死に至り、
企業なら倒産するということがあります。
プロフェッショナルの世界では、これでいいという
限界はありません。
大前研一さんは、『ザ・プロフェッショナル』
(大前研一 ダイヤモンド社 2005年9月29日
第1刷発行)の中で、
プロフェッショナルを次のように定義しています。
(上掲書 PP.36-37)
ルールがあれば、コンピュータに吸収される
仕事ならできるスペシャリストに対して、
道なき道、ルールのない世界でも「洞察」と
「判断」をもって組織を動かしていけるのが
プロフェッショナルです。
これは顧客に関する深い洞察と、
そこに働いている力、つまり
「Forces at Work(フォーシズ・アット・ワーク)」
への理解がなくてはできません。
正しい答えがなくても、いろいろな状況を想定して、
正しい対処をしていくことは可能なのです。
さらに、
(上掲書 P.40)
プロフェッショナルは感情をコントロールし、
理性で行動する人です。専門性の高い知識とスキル、
高い倫理観はもとより、例外なき顧客第一主義、
あくなき好奇心と向上心、そして厳格な規律、
これらをもれなく兼ね備えた人材を、
私はプロフェッショナルと呼びたい。
話を元に戻しましょう。
金子さんの「あくなき好奇心と向上心」
が「若さ」を保つ秘訣かもしれません。
(金子氏)
自戒の意味を込めて、錯覚していると言います。
かつて岡野さんに教えられたことを、
僕はいまでも忘れていません。
主体はあくまでもサッカーであり、
私たちはサッカーを正しい言葉で伝える存在に
すぎないと。
サッカー独特の間の作り方を含めて、
まだまだ研究されるべき点は多い。
今後も、後輩諸兄と一緒に答えを追い求めて
いきたいと思っています。
いかがでしたか?
お二人のかなり厳しい言葉に反発を感じたかも
しれません。
ですが、ダメなところはダメとキチンと指摘
してもらったほうがいいのです。
この対談を踏まえてのことなのかどうかは定か
ではありませんが、日本サッカー協会は次期
日本代表監督に、元メキシコ代表監督の
アギーレ氏を招聘しました。
来月(2014年9月)から強化試合に臨む日本代表
に誰を選ぶのか、そしてアギーレ監督の采配は
どうなのか、とても興味があります。
強化試合は勝敗ではなく、選手の起用法と
戦術を浸透させることが狙いです。
4年後のロシアW杯では、ベスト8以上を
ほぼ確実にする戦力強化を図ってほしい、
と思います。
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