2014.08.04
榊原 定征 (さかきばら・さだゆき)氏
[日本経済団体連合会会長]
経済成長を達成する主役は民間企業であり、
我々が牽引役を務めるという意気込みです。
電炉事業はもう国内では稼働できなくなって
いますね。かつてアルミ精錬がすべて日本から
撤退したように、そういった事態は既に起きて
いるわけです。電力多消費型の産業はほとんど
もたない。東レも半分以上の事業は海外に移転
しています。それでいいのかと。
再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度。
一度採択されれば、長期間の拠出が続きます。
今が6000億円程度で、国民1人当たり約5000円
の負担ですが、このままだと1兆円を超える
のは目に見えています。
7月上旬に宮城県を中心に被災地を視察しました。
指摘された人手不足問題が顕在化しており、
復興しようにも人が集まらない。時給1500円の
労賃を出しても応募がない。ある病院の建設計画
がありましたが、当初の見積もりのちょうど倍。
数十億円の建設費が百数十億円になりました。
被災地だけではありません。東レのような化学
産業は工場を3交代のシフトで動かしますが、
要員が集まらなくなっています。
トヨタ自動車の期間工も厳しい。これは2020年
に向けてさらに加速します。
女性や高齢者の活用はもちろんのこと、
思い切った外国人の活用に、
今から真剣に取り組まないといけません。
直前になって慌てても間に合いません。
イノベーションには、企業が主体となる技術革新と、
政治・経済・社会の構造革新という2つの意味が
あります。前者は戦後の経済成長の原動力に
なりましたが、足元では企業の研究開発投資は
リーマンショック前の2割減の12兆円程度に
とどまっています。
新規投資が東南アジアに流れる現象は起きて
いますが、超動くの経済成長は依然として7%台
を維持しています。内陸部はもっと高い。
日本の経済発展にとって、中国の巨大市場は
相当程度組み込まれています。もう中国抜きでは
考えられませんよ。

(『日経ビジネス』 2014.08.04号 P.072)
既に、工場現場や飲食業界では人手不足が深刻さを
増しています。
2020年に東京オリンピックが開催されることが決定し、
現在被災地の作業員をオリンピック関連施設の建設
に振り向けることになります。既にそうなっています。
被災地の復興・復旧は先送りされます。
ザハ・ハディドさんが設計した新・国立競技場は、
予算の関係で設計通りにはできないことが判明
しました。

新・国立競技場の当初のデザイン

新・国立競技場の変更されたデザイン
さらに、新・国立競技場はオリンピック開催前年の
2019年に、ラグビーワールドカップの会場の一つ
として、こけら落としされることが決定しています。
開催期間は、9月6日(予定) – 10月20日(予定)です。
そうしますと、今から5年以内に完成させなければ
なりません。
この案件だけでも、人手不足を増加しかねない状況
です。
ブラジルで開催されたサッカーW杯で、
選手宿舎の建設の完成がギリギリまでかかりました。
日本ではこのようなことは許されません。
それだけに、人手不足の深刻さが進み、
万が一手抜き工事が発覚するようなことが起きたら、
日本の技術の「安全性」と「信頼性」が失われるだけでなく、
日本経済に大打撃を与えます。
そうした事態に陥らないことを、心の底から願っています。
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