インスタグラムに、海外(フィリピン)の人から英文のメッセージが届いた。
D・タカラ、と名乗る男性である。
メッセージの交換をしたいというので、半分興味本位で「承認」した。
最初に訊かれたのは、この人を知っていますか? という質問だった。
テレサ・オマンポという女性の名前だ。
これまでにみたこともきいたこともない名前だったので、そういう人は知りませんが、なぜですか? と訊き返した。
すると、こんな返答がきた。
「彼は私の父で、子どものころに別れてからずっと会っていません。彼に会いたいです」
ちょっと首をひねった。
英文が(こっちもそうだけど)あまり上手くないみたいだ。
それから、「彼」とはテレサさんではなくて、Dさんの父親のことかと理解した。
つまり、テレサさんはかつて未婚の母としてDさんを産んだフィリピン人だが、父親のタカラ氏は日本人で、Dさんが子どものころに事情があって行方が知れないのだ。
Dさんが返答を重ねた。
「父の名前は、シゲル・タカラといいます」
びっくりしたぼくは、「たからしげる」は筆名で本名ではないことを説明してから、Dさんの父親は何歳くらいでいま、どこに住んでいるのですかと訊いてみた。
返答がきた。
「彼は1951年生まれです。たぶん九州に住んでいて、エンジニアで、柔道をやっていて、黒帯を締めています。兄弟に医者がいます。私の日本名はクスオです。九州にちなんでつけられたようです」
それから、こう付け加えた。
「いま、私には息子と娘がいます。父が日本で別の家庭を持っているのは知っています。それを壊す気はありません。ただ、こちらにいる孫たちに一目会ってほしいのです」