雨上がりの散歩道
東京は冷たい雨が降っていた。鞄に必要な本や資料をつめて都留に向かう。立川発10時54分の特急『かいじ』。
ビルの風景がほどなく消えて、電車は山並みを抜けていく。木々の緑が美しくなった。大月に着くころには青空が見える。うれしい。
2時ごろ、生協でうどんを食べた。研究室でゼミ生のノートを見たり、必要文献に目を通したり。
「失礼します!」…。1人、2人、3人、4人…と4年生が登場。学習をするもの、ゼミの合同コンパの相談などを始めるもの…。
私は、少し疲れたので大学の周りを散歩した。山道にすみれが咲いていた。芭蕉の句を思い出す。
『山路来て何やらゆかしすみれ草』
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もう一つ思い出したこと。10年位前、『すみれとあり』という科学絵本が発売されて、絵本を使って授業に取り組んだ。『なぜこんなところにすみれが…』をみんなで討論していく授業を手作りで進めた。子どもたちは夢中になり、討論が楽しかった。おもしろいいい作品だなと思っていたら、数年して、どこかの国語教科書が写真つきでその説明文をとりあげていた。
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今日は『臨床教育学』の授業で、またうれしいことがあった。『子どもの時間』を中心に語りつつ、子どもたちが『未来に売り渡すことのない大切な自分の時間』を過ごすことの意味を語っていたのだが、子どもたちが夢中になって作ったわたしへのプレゼントを見せた。愛知のK先生からいただいたトトロのプレゼントも。
授業が終わったとき、Hさんという学生がやってきて言った。
「そのトトロの人形ですが、父と母が毎年、学年の終わりに作って子どもたちにプレゼントしているのです。わたしは、箱作りをまかされてやるんです」
「それで、先生、愛知にいってお話されたと言いましたよね。母が、先生のお話を聴いたそうです。母も父も愛知の教師です。良い先生に教わってよかったね、と言ってくれました」「ええっ!…」
まさか、そんな偶然というかつながりがあるとは! うれしいやら、びっくりするやら…。