中島みゆき「歌会VOL.1」、5月31日ファイナル公演(@東京国際フォーラム)に関する記事。2024年6月21日、読売新聞(夕刊)から。

 

「視覚的な演出は控えめで、基本的にバンドの演奏と歌のみという構成。近年の視覚情報過多なコンサートに慣れた身からすると、歌と演奏から物語が形をなして目の前に現れるかのような構成に、ベテランの総合的な力量を見せつけられた気がした。歌を聴くことの意味について、改めて考えさせられる公演だった」(読売新聞記事から)

 

読売新聞記事の下には、私が参加した5月8日東京国際フォーラム公演の所感と、6月6日朝日新聞に掲載された音楽評論家の小倉エージ氏の「歌会」評をリンク。

 

 

[評]中島みゆき 歌と演奏から「物語」

2024年6月21日(金)読売新聞(夕刊)

 

 

 中島みゆきのコンサートは実に4年ぶりだという。中島自身の説明によると、2020年2月、ツアー中の大阪公演当日、政府は多数の観客が集まるイベントの中止、延期を要請。当日は開催できたものの、終演後、その日のうちに「夜逃げのように」帰ってきたそうだ。
 以来、4年。アコースティックギターを抱えて登場した中島が歌い出したのは、「はじめまして」だった。中断を余儀なくされた20年のツアーを収めたライブ盤の最後に収録された曲だ。「続きをやりましょう」という意思だろうか。
 「国内、国外のニュースで病院の絵が増えた」と語って感染症や戦争が多発する世を憂え、「倶(とも)に」「病院童(わらし)」「銀の龍の背に乗って」と医療ドラマのタイアップなど医療関連の曲を3曲連続で歌った。北海道大の近くにあったという、かつてのなじみの喫茶店を描いた「店の名はライフ」をかみしめるように優しく歌い、信頼を寄せるバンマスだった小林信吾が20年のツアー中断後に亡くなったことを報告。無人のピアノにスポットライトを当て、小林が残したピアノソロの音源を流すという泣ける演出もあった。
 他にも、来場者からのお便りをラジオ番組風に読み上げるコーナーあり、中島が主演、演出、脚本、作詞作曲などを手がける「夜会」の「おいしいとこ取り」のメドレーありと、めくるめく展開。おなじみの「地上の星」を圧巻の歌唱で聴かせ、ステージを去った。
 視覚的な演出は控えめで、基本的にバンドの演奏と歌のみという構成。近年の視覚情報過多なコンサートに慣れた身からすると、歌と演奏から物語が形をなして目の前に現れるかのような構成に、ベテランの総合的な力量を見せつけられた気がした。歌を聴くことの意味について、改めて考えさせられる公演だった。(鶴田裕介)
 ――5月31日、東京国際フォーラム 
 ◇写真・田村ヒロ