<2024.02.10>公式音源挿入

<2019.08.28>起稿

 

実家の山形に帰省していた妻と長男がお土産に「米沢名物牛丼弁当 牛肉どまん中」を買ってきてくれた。新発売のしお味も。

 

 

 

 

この「牛肉どまん中」、2019年3月に更新(当時)された「全国の絶品駅弁ランキング14!日本一美味しい人気駅弁は何処?」で全国1位になっているKING of 駅弁。

 

 

特製のタレで味付けした牛そぼろと牛肉を煮込んだ牛丼風の弁当。まさにタレの味付けが特製。

長男は帰りの新幹線の中で加熱式の牛タン駅弁を食べたらしく、帰宅してから夜は一緒に「牛肉どまん中」を食べていた。若いゆえ…。

 


駅弁の話題になると(厳密には駅弁ではないが)必ず思い出すシーンがある。

松山千春が著した自伝「足寄より」(74㌻)にあるそのシーンは、私が中学1年の頃に読んで、深く感動した。だから今も覚えているのだろう、とにかく強く記憶に残っている。

 

極貧だった松山千春の家庭。松山千春が中学校の修学旅行、釧路本線で富良野辺りを走っていた頃に車中で昼食になった。

 

「みんな、包みをほどく。しゃれたハンカチなんかに包んで、色とりどりのおいしそうなやつ。俺のは新聞紙に包んである。ごついおにぎりが三個。おやじが朝早く起きて、武骨な手でつくってくれたんだ。それでも、一個一個に、シャケ、タラコ、梅干しと、違ったやつがはいっていた。おやじの精いっぱいの工夫なだよね。

 でっかいおにぎり。やっぱり新聞紙の包みが格好悪くて、なんとなく窓のほうを向いて食った。すぐに満腹よ。(…)せっかくおやじがつくってくれたんだ。食わなくちゃ。食ったよ。うまかった。うまいと思わなくちゃ。食いながら、涙が出たよ。

(…)新聞を読むおやじの声。そして修学旅行のでっかい三個のおにぎり。これは俺の宝だ」
 
23歳(推定)の松山千春が書いたのだから荒削りで赤裸々な表現だけど、底流にある同じ純粋さを今も見る。

 

 

 

このシーンは、同じく松山千春の楽曲「走れ夜汽車」を必ず呼び起こす。


1978年リリースのセカンドアルバム『こんな夜は』のA面4曲目。

 

 

 

デビュー前、STVラジオで「千春のひとり唄」出演のために札幌に通っていた頃、足寄が近くなって来た時の情景を歌ったと、同書に残している。

 

(足寄/2022年9月30日筆者撮影)

2019年8月25日NHKで放映された矢沢永吉さんの特番。

 

そのインタビューの中で「広島から夜汽車に乗って出てきた。”夜汽車って今でもあるんですか?”(という話しになる)」と語っていた。

 

東京に向かったあの時の情景を語っても、まず「夜汽車」という言葉自体が現在では通じないことを言っているのだろう。

現在の若い人たちにはまったく馴染みがないだろう。私が中学時代「走れ夜汽車」と聞いて、矢沢永吉さんや松山千春が語り、歌う「夜汽車」と自分のイメージが合っていたかどうかは分からないが、私は夜中に走る蒸気機関車がけん引する列車(夜行列車)をイメージしていた。夜汽車と言えば夜中に汽笛が響き煙が上がる絵。

 

矢沢永吉さんが上京した1970年前後はもう蒸気機関車ではなかったと思うが、定かではない。

 

松山千春の「走れ夜汽車」の前奏には、蒸気機関車らしき汽笛と、それが走る音が効果音として入っているが、歌詞や実際のシーンとの関係は分からない。この曲のアレンジは松井忠重氏。


「夜汽車」と聞けば、世代によっては、どこかノスタルジックで詩的、思いがたくさん詰まった響きのある言葉である。


「走れ夜汽車」を聴くと、学生時代、帰省する時に東京から中央本線・各駅停車で山梨に向かったあの時を思い出す。

 

東京の高尾を越え、神奈川の一角を抜けると山梨の山々が見えてくる。山々しか見えてこない。長い笹子トンネルを抜け少し走ると眼下に見えるふるさと。18歳まで過ごした街。

 

いつもあの瞬間、目の前が明るくなった気がした。

 

 


夜汽車は行くよ はるかな道を
我があこがれの 北国の空

月影 青く 心をてらし

数える星は 輝き
あてない 心はさわぎ

明日を夢見て

走れ夜汽車

町にともし灯 窓を飛びかう
我があこがれは 都を忘れ

夜汽車は行くよ 野山を越えて
昇る朝日を めざして

あてない 心はさわぎ

明日を夢見て
走れ夜汽車 走れ夜汽車

 

 

余談だが―


(2019年)8月25日の松山千春のラジオ番組で、秋のツアーの選曲について「今回はコンサート、楽しみにした方がいいぞ。こんな曲を歌っていいんだろうか、っていう曲を選んでいます」と語った。 

デビュー初期の頃の曲も何曲か入るとして、「あたい」「帰郷」「初恋」「時のいたずら」…歌唱頻度が高いこれらの曲が来るのだったら、「ためらい」「今日限り」「走れ夜汽車」「雨上がりの街」「寒い夜」「夜明け」、弾き語りでの「雪化粧」…このあたりが来ると嬉しいのだが。

 

 

 

(関連拙稿)

松山千春「走れ夜汽車」―明日を夢見て、夜汽車はふるさと目指して東へ向かう。

 

記憶をたどる、松山千春コンサートツアー1983「今、失われたものを求めて」(山梨県民文化ホール)