久しぶりに近所の劇場に行ってきた。
公開直後ですが平日だからか
観客はがらーんとしている。
原爆の父と呼ばれた科学者を扱う映画というのはさておき、
(主題がどこにあるかが重要)
日本で話題になったのは
『オッペンハイマー』と『バービー』の
上映開始日が同じだったことから
「バーベンハイマー(Barbenheimer)」とか、
ふざけたコンセプトの宣伝が流行したこと。
これは駄目だ。
気分が悪い。
(バービーは見てない)
アメリカ人は核について無知というか、
脅威や悲惨さを感じていない。
同様に
枯葉剤やナパーム弾や劣化ウラン弾についても
単なる兵器や科学であるという考えじゃないのか。
ノーラン作品で、
オスカー作品です。
主要部門含む7部門受賞。
米公開 2023年7月21日
日公開 2024年3月29日
上映時間 180分
監督 クリストファー・ノーラン
出演 キリアン・マーフィー
ロバート・ダウニー・jr
マット・デイモン
マンハッタン計画の中心にいた
オッペンハイマーの成功と苦悩、みたいな感じだと
公開前の宣伝記事で見ていたんすけど
なんとなんと
構成がサスペンス作品だった。
※原作あるらしい。
そんでそんで
アマデウスでいうところの
モーツァルトとサリエリのポジションそっくり。笑。
こういっちゃなんだけど
ノーランにしては直球というか、
まともな優秀作を出してきたという嬉しいサプライズ!
三時間ありますが
飽きないし、構成も音楽も編集もよく出来ている。
(久しぶりに映画を見たからではなく)
進行する過程と時間軸が
未来に進むものではなく、
過去・現在・未来と
場面が前後する展開つーか
幾つかパート分けがあるので、
事前に把握してから観に行く方がわかりやすいかもしれん。
・オッペンハイマーの疑惑に関する聴聞会
・公聴会
・国家の原子力委員会で原爆を作ってゆく
予備知識がなく見始めたから
最初はあんま理解できないまま
シーンを記憶していき、
(西暦とか記載されてないから)
白黒とカラーの演出が年代が違うので
場面を振り分けましょう。
カラー 閉塞的な空間
白黒 公的な空間
ドラマパートのメインとなる
各キャラとの関係や
オッペンハイマーの原爆を制作する人生を見つつ、
あれ、これサスペンスなんだ?
と気づいたのが映画後半、
ラストできちんと収束した時に
「おほほー!」と心の中で喝采。パチパチ
オッペンハイマーはもちろん、
ストローズもオスカー獲ったのは納得しました。
まあ、
受賞式には人種差別問題で話題になったけども。
(あれは最低)
そういえば
アイアンマンの試写会で
ロバート・ダウニー・jrを見たなあ……。
(遠い目)
芝居はみんな良かったんすけど
上記のふたりを除けばテラーが良かった。
あと出番は短いけど
めっちゃおいしい役のヒルね。
あ、嫌な検察官も。笑。
一応アインシュタインも見せ場があったり、
トルーマンも出てきたり
ケネディも名前だけ出てきたよ。
(有名どころ)
現実の写真
アインシュタイン 隣がストローズ
オッペンハイマーの女癖についても
ちらちら出てくるんすけど、
それよりも
男同士の敵対や同調や水面下での探り合いや
お互い、
相手に気取られないやり方で対峙してたりとか、
そっちの関係が面白かった。
あんなん誰を信用して引き入れるか
誰を排除していくかなんて
決めることができない。
けれどスパイを引き込むことは許されない。
(スパイは欺く)
オッペンハイマー
「誰ひとり欠けさせない」
とテラーを追いかけた時に、やるもんだなと感心したけど
この二人の関係が書かれた著作も読んでみたいな。
(原爆 / 水爆)
オッペンハイマー、人間個人としては
ジーンについては
あんなに震えて怯えて心が動いているのに、
原爆を兵器として作り上げることで
何が起こるかは、アホだって想像がつくだろ。
そう、もちろん彼もわかってる。
だから、
「我々は作るだけだ」
「使用するかどうかの決定権はない」
という詭弁を吐いた。
ふざけるなよ?
実験が成功した段階で被害がわかるだろ?
戦時中だぞ。
使うに決まってんだろ。
科学者があれだけお膳立てされて
理論が成立するかの実験をやらずにいられないのは
わかります。
冒頭では
あんなに実験が苦手だったのにな!?
オッペンハイマー
「両手が血塗られている気がするんです」
トルーマン
「思いあがるな。
誰が兵器を使って手を汚したか?
歴史に残るのはトルーマンの名だ」
責任を分散すれば呵責も分散するか?
組織は上からの指令をやり遂げることにある。
上司に言われたら部下はやるしかない。
やりました。
そして異動する。
もし責任を問われる事態になっても
新任者は「わかりません」と答えるしかない。
前任者は異動したから答える立場にありません。
政治家も霞ヶ関も責任とれよ。
優秀ないい年した大人が恥ずかしくないのか。
更に強力な威力を持つ水爆の開発や増産や
東西冷戦の核戦争を危惧して
オッペンハイマーは反対派になる。
でも日本に二発の原爆が投下される前、
オッペンハイマーは署名しなかったよね。
お前……。
原爆の完成は使用されるぎりぎりだった。
投下する候補地は11に絞られ、
この話し合いでは、すでに東京大空襲も起きて
1日に10万人が焼き殺されている。
これは3月10日だね。
すでに空襲で民間人を大虐殺しておきながら、
新型兵器を投入して終戦を促す?
ふざけるなよ?
というか、劇中の台詞にも
「ポツダムの前までには完成を」つってた。
2月にはヤルタ会談があったんだから、
日本の敗戦はわかってただろうが?
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会談の結果、
第二次世界大戦後の処理についてヤルタ協定を結び、
イギリス・アメリカ・フランス・ソ連の4カ国による
ドイツの分割統治、
ポーランド人民共和国の国境策定、
エストニア・ラトビア・リトアニアのバルト三国の処遇
などの東ヨーロッパ諸国の戦後処理が取り決められた。
併せて、
アメリカとソ連の間でヤルタ秘密協定を締結し、
ドイツ敗戦後90日後の
ソ連対日参戦及び千島列島・樺太・朝鮮半島・台湾などの
日本の領土の処遇も決定し、
2024年現在も続く北方領土問題の端緒となった。
アメリカからソ連に対する対日参戦要請は早く、
日米開戦翌日(アメリカ時間)の
1941年12月8日に
ソ連の駐米大使マクシム・リトヴィノフに
ルーズベルト大統領とハル国務長官から出されている。
このときはソ連のモロトフ外相からリトヴィノフに
独ソ戦への集中と日ソ中立条約の制約から
不可能と回答するよう訓令が送られた。
しかしその10日後には、
スターリンはイギリスのイーデン外相に対し、
将来日本に対する戦争に参加するであろうと表明した
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未だにソ連が単独で条約破棄して
南下してきたと言ってる高齢者が多いが、
英米ソで密約を結んでたの。
制空権を奪われて日本中を空襲されて
民間人が殺され
(空襲だけでも、合わせて45万人くらい)
敗戦がわかっていたのに
講和がうまくいかなくて沖縄戦が始まった。
沖縄の反戦活動やってる人を
パヨクだとか言ってるやつこそ
日本人を軽視している。
オッペンハイマーは
自分の身近な人間がひとり亡くなったら
泣き叫ぶくせに、
遠い異国の敵が何十万死ぬのがわかっていて
想像力に欠けるというか、
「同じ人間」だと認めていない。
こっちも同じ人間だとは思えないよ!
今まさに
ガザでパレスチナ人を虐殺しているイスラエルなんて、
当時のアメリカ人の焼き直しじゃん。
で、
オッペンハイマーを陥れられた切っ掛けについて、
「まさか。何年も前だ」
「執念深い人は周到よ」
つーか、
自分だって毒リンゴやったじゃんか。
幾ら病んでたって、
ふつうの人間ならあんなんやらんぞ?
で、日本は原爆を使われましたが、
アメリカも1000回は核実験やってます。
知らない国民もたくさんいるでしょう。
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公益財団法人第五福竜丸平和協会のまとめによれば、
2023年までに行われた世界の核実験
(爆発を伴うもの。未臨界実験を除く)は
計2063回に及ぶ。
内訳は
米国1030回、
旧ソ連715回、
フランス210回、
英国と中国が各45回、
インド、パキスタン、北朝鮮が各6回だ。
当時の水爆は広島型原爆の1000倍の威力といわれている。
アメリカの地下核実験や恐らく水爆も含めたドキュメンタリーを
日本の監督が作ってます。
予告どぞどぞ。
1950~60年代に米国ネバダ州で実施された
核実験による米大陸の放射能汚染を追ったドキュメンタリー映画。
放射能汚染の実態を調べるため、
女性たちが始めた「乳歯プロジェクト」を中心に取材し、
研究者や被ばく者ら30人にインタビューを敢行。
これまで多くのアメリカ人が知らなかった放射能汚染の現実を伝える。
日本は、世界で唯一の被爆国ではなかった。
アメリカ政府によって大陸に落とされた101個の原子爆弾。
核実験によってアメリカ大陸は強く放射能汚染。
しかし、アメリカ政府は、そのことを国民に隠した。
「このままでは我が子が放射能で殺される」
立ち上がったのは、母親たちだった。
中心となったのは、医師であり母親であるルイーズ・ライス。
放射能汚染はユニークな方法で証明された。
それは、子どもたちの乳歯。
母親たちは子どもの放射能汚染を証明。
そして、その事実はケネディ大統領をも動かした。
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これ……
ケネディじゃなかったら無視されてんぞ。
そんなわけで
脱線しつつオッペンハイマーの感想を書きましたが
ネタバレを避けたらあんま感想を書けんかった。
面白かったよ。見てみて。