○黒糖オリゴ
黒糖オリゴとは黒砂糖中に約0.1~0.3%含まれ、白砂糖の害を防ぐ毒消しの役割を持つ非糖黒色成分をいう。
白砂糖の主成分のショ糖(スクロース)はブドウ糖と果糖の二糖類で、容易に分解されて即席のエネルギー源となり、疲労回復剤となる。また、保水剤として、皮膚や粘膜の乾燥を防ぎ、化粧料、シロップ剤に利用され、その制菌作用で細菌の繁殖を抑制し、砂糖漬け等として広く用いられている。
しかし、砂糖の大量摂取は胃粘膜の潰瘍を促進し、歯や骨を弱化する。また、血中の中性脂肪、血糖値、過酸化脂質を上昇させ、高脂血症、糖尿病、動脈硬化、肥満の引き金となり、アトピー性皮膚炎を促進するといった障害をもたらす。
長寿県として知られる沖縄県には、古くから「白い砂糖は命を縮め、黒い砂糖は命長らえる」ということわざがある。これに注目し、1980年より近畿大学東洋医学研究所と愛媛大学医学部医科学教室との共同で、吸着合成樹脂を用いて黒色成分のみを吸着・分離精製する技術を開発。これにより得られた非糖成分を黒糖オリゴ糖と名づけ、あわせて動物実験も行っている。
それによると、1群5匹のラットを、①白砂糖75%を含む高ショ糖食を与えたコントロール群、②同じ飼料で1日量に黒糖オリゴ1g/kg、及び0.5g/kgを添加したものを投与した群、③普通食で飼育した群の3群に分け、2ヶ月間、自由摂取させて、それぞれの群の血清中の脂質、インスリン量を比較した。その結果は、①のコントロール群は中性脂肪が③の普通食群に比べて2.40倍に増加したのに対し、②の黒糖オリゴ1g/kg、0.5g/kg添加群はそれぞれ62.3%、87.6%にとどまり、黒糖オリゴが中性脂肪の上昇を抑制することがわかった。ここでは過酸化脂質、インスリン量についても同様の抑制結果がみられ、黒糖オリゴがこれらの値を有意に低下させることが明らかになった。
また、ラットに0.5gのグルコースを与える負荷試験では、血漿中のグルコース、インスリン濃度は投与20分後に最大に達するが、このとき、グルコースと共に黒糖オリゴを与えた群は、コントロール群に比べて20分以後のグルコース、インスリン値がともに有意な差を持って減少した。マウスを用いた実験でも同様の結果を得た(薬学雑誌102、1982、医学と薬学57、2007)。
黒糖オリゴは腸管腔灌流法により、グルコースの腸管からの吸収を抑制すると考えられるが、これらの効果はこのことを証明しているといえる。また、これらの効用の有効成分の一つとして、3-4ジメトオキシフェニールβグルコシドが発見されている。
このように、黒糖オリゴは、臨床面でも高脂血症、糖尿病・動脈硬化、肥満等を予防・改善する働きがある。