手もとに余分なお金があるとき、それをなにに使うかは、人それぞれの価値観によって違うようである。
ちなみに、5万円ほど、棚からぼた餅のお金が手に入ったと思っていただきたい。
夢がふくらむのである。
なにかうまいものでも食う
キャットタワーなど新調してみる
派手なシャツを4枚ほど買う
25万円ほどあったらすべての夢は叶うのであるが、5万円しかないのである。
しかしながら、サラリーマンのおとうさんにしてみれば、月に5万円もお小遣いをもらえていないかもしれないので、これは大金なのであります。
このようなとき、私のようなアヤしい仕事をしている者は、例の“アレ”を使うのであります。
これはなにかというと、「しばらくなにもしないで、状況を見守っておく」ということであります。
そうすると、まるで宇宙から「それをしなさい」と教わるようなことが必ず起こるというアヤしい考え方であります。
たとえば、道を歩いているとき、うっかりバナナの皮を踏んで滑って転び、手をついたところに温泉旅館のパンフレットが落ちていたとするならば、これは「温泉旅行に行け」ということなのであります。
というわけで、この、奥さまにも税務署にも内緒で入った5万円、なにに使おうかとウキウキしながら宇宙の啓示を待っていたのであります。
そして、そんなことを頭の隅っこに置きながら、その日は田舎の日常業務である草刈りに精を出していたところ、なにやら草刈り機が異常な振動を起こすではありませんか。
草刈り機というのは先端に円盤が付いており、その円盤が高速回転しながら、草をなぎ倒していくというアヤしい武器であります。
そのようなアブナイものが異常振動を起こすわけですから、危険きわまりないのであります。
すぐさま、いつもお世話になっている、近所の（といっても、うちの家から8kmほどある）農機具屋さんに駆け込んだわけであります。
すると、草刈り機の柄の部分とエンジンを固定する3本のネジのうち、2本がなくなっているということが判明。これが振動の理由だったのであります。
ネジ2本を取り替えて、ネジ代60円、工賃2,000円。この割の悪い修理を終えたところ、店のオヤジが私の耳もとで囁くのです。
「平さん、草刈り機も排ガス規制のあおりを受け、新スペックのものはパワーがダウンするんですよ。うちに排ガス規制前の製品があと4台残ってるんですが、どうでしょう？」
この提案、私の耳にはじつに心地よく聞こえたのであります。
なぜなら‥‥
その1）いま、使っている草刈り機がだいぶ古くなってきている。
その2）そろそろ農家の跡とりとして、息子にも草刈りを教えたい。
その3）今年になって、NPO法人に貸していた田畑を2枚返却され草刈りすべき農地が大幅に増え、困っている。
以上の理由で、「新しい草刈り機を変え」というプロセスが示されましたので、わが家に新しい草刈り機が1台増えたのであります。
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