昨年末、クリスマスの三連休はセミナーをして過ごした。
例年、「クリスマスにセミナーなんかして、人が来るの？」と思いながら企画するのだが、毎回、非常にたくさん、ご参加いただく。
「来年はお会いしないようにしましょうね」といつも言うのであるが、3分の2はご常連様なのである。
セミナー後の打ち上げは、関西の場合、『敦煌』か『ぢどり亭』とだいたい決まっている。その日は『ぢどり亭』で飲んで食って騒ぎ、気持ちよくホテルに帰って寝たのである。
そして、翌朝、チェックアウトして車に乗ろうとしたとき、気づいたのである。
「おや？ カード入れがない‥‥」
よくあるのである、こういうこと。
とりいそぎ、カバンをクルマに積み込み、フロントにUターンして事情を話し、部屋を捜索させてもらったが出てこない。
手提げカバンをひっくり返し、ありとあらゆるところを探したけれども、出てこないのである。
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
こういうときは、カレーではないが、私はいつも一晩寝かせる。意外なところから、ひょっこりと出てくることが多いからである。
が、次の日‥‥、まったく出てこないのである。
うちの奥さまに相談したところ、「カード入れには、なにが入っていたの？」と尋問された。
言いたくないのである。まったく言いたくないのである‥‥が答えた。
「よく使うクレジットカードが2枚、免許証、1万円を入金したばかりのSuica、買ったばかりのコーヒー用の1万円のプリペイドカード‥‥」
「せめて、クレジットカードは止めておいたほうがいいわよ」
わかっているのである。
しかし、クレジットカードをいったん止めると、新しいカードが再発行されるまでの間、使えなくなる。
期待があるのである。どこからかひょっこりと、ひょっこりはんのように出てくるのではないかと‥‥。
で、とりあえず、警察に落とし物の届出だけはしておいたが、こうなると、いちばん困るのが免許証なのである。ほぼ毎日、運転するのであるが、不携帯はいかがなものであろう‥‥。
警察に問い合わせてみると、免許証の再発行は2時間程度ですぐできるというので、すぐに再発行の手続きに行った。
そして、いよいよ、クレジットカード会社に電話したのである。
私のクレジットカードは、JALのマイレージ付きのJCBカードである。これがないと、出張の多い私はとても困るので、再発行をお願いしたのである。
通常、再発行まで約2週間。その間に落としたカードが見つかっても無効になっている。
「その2週間が不便だなぁ‥‥」
と、思っていたところ、カード会社から電話がかかってきたのである。
「誠に申しわけございませんが、平様のカードの再発行には1カ月ほどかかります」
「え、なぜ！？ いつもは2週間程度なのに」
「そう、その“いつも”なのでございます‥‥。今回は記念すべき10回目の紛失でございます。10回目となりますと、カード番号の下一桁が入れ替わりましたので、頭からすべて新しい番号に変わるのです。よって1カ月、お時間を頂戴いたします」
たしかに、ちょくちょく落としてきた。紛失もした。が、しかし、いつひょっこりと帰ってきたではないか。
だから、聞いたのである。
「ほんとうに、ほんとうに、10回目ですか？」
すると、丁寧に、ものすごく丁寧に、お答えいただいたのであります。
「ほんとうに、ほんとうに、10回目でございます」
いちおう、私の名誉のために、これだけは書かせていただきたい。10回は多いと思う人が多いかもしれないが、JCBカードを作って35年の間に、なのである。
さて、こんな恥をかきつつ、手続きも終わったころ、出張カバンの靴のケースの中から、なぜかひょっこりとカード入れが出てきたのであります。
なぜ、靴入れに‥‥？！
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