私の週末のスケジュールは基本的に1年半ほど先まで決まっている。平日のスケジュールはほぼ半年先まで決まっている。
さらに、無理やり詰め込むその他の予定が2カ月ほど前に決まり、私のスケジュールは体と同じようにパンパンになるのである。
海外旅行に行ったとき、お土産を買い過ぎて、それをみんなスーツケースに無理やり詰め込んだときなど、「まるでうちのスケジュールのようだなぁ」と思う。それぐらいパンパンなのである。
そして、私の暮らしは、基本、その日暮らしである。
出張は忘れると困るので、前の日になると「明日から出張ですよ」と携帯電話にリマインダーでお知らせが来るようになっている。
夏休みが終わった9月の1日、私は次の週末がどのようなスケジュールになっているか事務所に問合せをした。すると、なにゆえか、「今週末はなにも入っていません」と言われた。
双子の息子と娘が大学生なのである。9月の終わりから10月の頭あたりには後期の授業料を払わねばならぬ。
さらに家の多数いるネコのエサ代のために、おとうさんは働きに働かねばならないと思っている矢先、「仕事がない」と言われたのである。
不安である。
ものすごく不安である。齢57歳、このトシになり、「仕事がない」と言われるのはものすごく不安なのである。
だからして、この大きなストレスを癒すべく温泉に行くことにした。
日本中、いろいろなところに温泉はあるが、今回は近場の温泉に行くことにした。
なんなら、1泊2日で北海道の温泉めぐりをしてもよかったのだが、そのためには飛行機に乗らねばならない。
しかしながら、このようなプライベートな旅行の航空券は、マイレージで取ること以外、平家では許されない。が、しかし、マイレージでは、きょうから4日目以降の航空券しか手配できないのである。
つまり、急に決まったお休みでは航空券を取ることができないので、近場の温泉を勝手気ままに回るという企画をとったのである。
近場といっても、兵庫県の北部を経て日本海側に出て、鳥取県にかけての山陰地方までをめぐるという温泉行脚の旅である。
山陰地方には名湯が目白押しである。兵庫県の北部には“外湯めぐり”で有名な城崎温泉があり、さらに『夢千代日記』で有名になった湯村温泉、ちっちゃな温泉地だが名湯として有名な岩井温泉、さらに鳥取市内からも近い吉岡温泉などよい温泉がズラリと揃っている。
さらにこの時期、梨の産地として有名な鳥取方面では、国道沿いに梨の即売店などが出る。梨好きの私としては、黙って通り過ぎるわけにはいかないのである。
さて、方面が決まったら、まず、お宿を決めねばならない。
私にとって、温泉のお宿選びはお湯の泉質が最優先である。多くのみなさんは、温泉といえば「お湯よりも味覚」とおっしゃるかもしれないが、私の場合、食事はおにぎり3つであってもかまわぬ。よりよい泉質が最大のご馳走となるのである。
そこで、岩井温泉の『岩井屋』に電話してみた。
この温泉は湯船の底からお湯が湧いてくる足元湧出泉の浴槽を持っているのだが、これが“奇跡の温泉”と呼ばれるほど素晴らしい。
42℃ほどの温泉が湧き、湧かすことも、水で埋めることもなく、湧き立ての温泉にそのまま入れるのである。もう、ぜひ、ここに入りたいわけである。
ところが、である。
私が宿泊したかったのは9月3日の土曜日。いつもは平日にしか温泉に行かない私は、週末の温泉事情には疎い。ましてや、温泉宿は一人お泊まりを嫌うことが多い。
案の定、人気の『岩井屋』は全館満室で、この日は泊まることができなかったのである。
そうなると、大型旅館あたりを狙わねばならない。で、リサーチしたところ、湯村温泉の老舗『井筒屋』に空きがあり、そこに泊まることとなったのである。
来週に続く。 
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