あの日のこと Pt.1 | 平準司@神戸メンタルサービス カウンセラー養成・個人カウンセリング・心理学の講演、執筆を行っています!

神戸メンタルサービスの平です。

 

このたびの熊本・大分地方で発生した地震により被災された方々に

心よりお見舞い申し上げます。

 

***

 

20年前の1月、神戸に住む私は阪神・淡路大震災に遭遇した。

 

私の家は、神戸市内から六甲山を越えた山奥にある。それでも、震度は6弱はあったのではないだろうか。

 

すぐに停電してしまい、テレビが観られないのでラジオをつけたのだが、「ただいま、阪神間で大きな地震があった模様。では、次のリクエスト‥‥」と悠長なものであった。

 

で、私はというと、家の近くにある有馬温泉が震源地だと勝手に思い込み、朝も早かったので、そのまま二度寝した。

 

うちの奥さまも奥さまで、その日は神戸大丸に買い物に行くと行っていたのだが、家の中に散乱した食器を片付けねばならず、また、余震も多かったので、とりあえず買い物はやめて、家にいることにしたのである。

 

まもなく、一本の電話がかかってきたのである。この日はこの1回しか電話は鳴らなかったのであるが、オーストラリアからであった。

 

「大丈夫? すごい地震でたいへんなんだろう?」

 

オーストラリアの友だちが、なぜ、今朝の有馬温泉の地震のことなんかを心配してくれるのか理解できなかったのであるが、半分寝ぼけていたこともあり、「とりあえず、大丈夫」と伝え、電話を切った。

 

それからまもなく停電から復旧し、電気がついたのである。

 

そして、テレビをつけて、びっくりした。戦争が始まったのかと思ったのである。

 

どこかの町が燃えている。

 

高速道路が横倒しになっている。

 

まるで、ゴジラが海から上陸し、暴れたあとのような惨状だったからだ。

 

観ているものが神戸の街で、今朝の地震のせいなんだと頭の中で結びつけるのに、しばらく時間が必要であった。

 

幸いなことに、神戸の北の端のわが家ではライフラインには問題がなかった。また、地震当日、神戸から大阪方面や姫路方面へと東西に走る幹線道路は渋滞でたいへんだったらしいのだが、南北に走る道路はなんとガラガラであった。

 

そこで、その日の夕方あたりから、神戸の知人がうちに食事に来たり、お風呂に入りに来たりしはじめた。

 

とにかくあっという間に物資がなくなり、食糧が手に入らなくなったからであるが、農家であるわが家にはものすごい量の食糧が備蓄されている。

 

基本、農家の人はものを捨てない。「ひょっとして、また使える」、「まだまだ使える」と考え、捨てる代わりに蔵や納屋を建て、そこに入れておくのである。

 

わが家にも蔵が2つと大きな納屋が1つある。米、味噌、野菜がたっぷりあり、さらに業務用の冷凍庫があって、そこには冷凍食品も山のように入っている。ちょっとした避難所のような備えである。

 

朝から夜まで、17回、お風呂を焚いたりもした。

 

あの時期の神戸市内は埃まみれで、一日二日お風呂に入らないだけでも真っ黒に汚れてしまったのである。だから、23人が入るとお湯がものすごく汚れてしまい、何度も入れ替えることとなった。

 

一方、食糧はあるものの、カセットコンロのガスボンベはすぐになくなってしまった。

 

煮炊きするのにはカセットコンロがものすごく重宝した。温かい鍋などを提供すると、みなにすごく喜ばれたのである。わが家は田舎なので、カセットコンロ用のガスボンベも56本は備蓄していたはずなのだが、あっという間に消費して、地震から2日目にはもう切らしてしまった。

 

「困ったなぁ」

 

近くのコンビニには食料品の在庫がなくなり、ガソリンスタンドもあと3日もすると給油できるガソリンがなくなると言いはじめていた。

 

が、そのちょうど3日目、朝起きて、びっくりしたのである。

 

ふだん、ほとんど車が通らないわが家の前の道路が、渋滞を起こしていたのである。生まれてはじめて見る光景であった。

 

先ほども書いたように、大阪や姫路へ東西に走る道路は大渋滞になっているため、多分、わが家の近所の南北の道路を使い、救援物資の輸送が行われたということなのだろう。

 

ほとんどがトラックで、見たこともない重機や支援用の食糧らしきものを積んでいた。その車両が延々とつながっていて、ビックリたまげた。日本が非常に豊かな国だということはわかっているものの、これだけの物量を目の当たりにしたことはなかったのである。

 

といっても、被災した神戸は100万人都市。食糧も物資もまだまだ足りない状態であった。

 

しかしながら、その後、私はとんでもない奇跡を体験することになるのである。

 

(来週につづく)