「なあ見出生(ミテオ)、枕やるよ」
突然、父の根手未流蔵(ネテ ミルゾウ)からの枕の話になる。
「いや~~別にいらない」
見出生は即断った。
「それがな、この枕、不思議な枕なんだそうだ」
既にその枕がありポンポンしてみせる父の未流蔵。
「不思議って?」
「この枕で寝て起きた時の寝癖でその日の運? だったか? 性格? が決まる……とか言っていたな」
はあ!? 寝癖で……!
「何でオレなんだよ、父さんが試してみればいいじゃんよ」
「俺は髪の毛がない! だから寝癖にならんからだ!」
未流蔵がしゅう恥を捨てながら言い放つ。
そんなことを本人が言うから、つい見出生は吹き出して大笑いしてしまった!
未流蔵はイラッとしてその枕を見出生の顔に投げつける。
「何すんだよ!」と見出生。
「うるせえ、笑い過ぎだ」と父の未流蔵。
「何でそんな枕持ってんだよ!?」
怒り気味に言う見出生。
「……親切にしたら貰ったんだ」
唐突な答えが返ってきた。
「はあ? 親切? どんな?」
途端、興味を持つ見出生。
「それが……自販機で老人が小銭を下に落としてさ、で更に転がっちまってさ、あげくは取れなくなっていたから150円やった」
ええ~~!? それだけで~~!!
「でこの枕を……」
「同じ道を通るだろうと張られていてさ、この枕をお礼にって、まあ…」
「押し付けられたってことかよ!」
「てことで騙されたと思って使ってみろ!」
デターー! よく言うやつ~~~~!
「そうだ、箱もあったんだ、ほらよ」
父の未流蔵は箱まで投げてきた。
おい~~、箱から出して別々によこすな~~。
てことでほぼ押し付けられてしまった謎の枕……
見出生は結局、持ち帰ることにした。
見出生は27歳独身、彼女なし。
仕事の関係上、ひとり暮らし中。
休みなのでたまに実家に帰ったら、何だかいきなりわけの判らない枕を押し付けられてしまった。
まー今の枕はとりたててフツーの枕だ。
不も可もなく……
「合わないなら使わなければいいんだ」
見出生はひとりごとを言うと、試しに寝てみると。
何と! なかなかなフィット感があり、ピターと見出生の頭におさまった。
なんとそのまま寝てしまう見出生だった。
そして起きると、何と朝になっていて……!
「ええ、朝までしっかり寝ちまった~~」
慌てて見出生は起きて鏡を見ると、
「わ~~何これ、メッチャ髪の毛サラサラ~~!」
なんとボサボサではなく、髪の毛が妙にサラサラななんと言うかイケメン!? 的な寝癖というよりヘアーセットされていた!
その髪の毛はなぜかヘアークリームをつけても元に戻らず、仕方ないので出勤すると女性社員から妙にちやほやされる1日になり……
どうやらあの父から譲られた変な……不思議な枕のせいだとやっと気づく見出生だった。
続き