前回分
「え!」と蛍都は驚く。
すると、同時にえ? と知伊代も動揺して驚いた。
で、
「今、何か言った?」
とつい蛍都は尋ねると、
「何かって? 何も言ってないけど」
知伊代は驚きと同時に蛍都と目を合わせないようにしてきた。
すると、
ーー怖っ!
「え?」と蛍都は声を聞く。
「何、さっきから」
知伊代はなぜか額に汗をかきはじめて……
ーーキモッ、まるでわたしの心を読んでる? まさかね……
やっぱりだ……!
蛍都には知伊代の心が読めてしまうようだ。
「な、何でもない、トイレ行ってくる」
蛍都は席を外す。
ーー変なの。
まただ。
気のせいじゃなかった。
アクセサリーの力なのだろう。
蛍都はみんなに声をかけられつつ、今は知伊代の心の声が聞こえてしまう。
しかも、裏腹な心が……
それが友田知伊代だったからショックが大き過ぎる。
トイレに駆け込む蛍都。
「やだこれ、裏の心の声なんて聞きたくない」
蛍都は思わず呟く。
「どうしたら?」
とにかく落ち着こうとなる。
そしてしばらくしてからやっとトイレから出て仕事場に戻ると、なぜか騒然としており……
あれ?
「何があったの?」
見ると、友田知伊代がしゃがみこみわんわん泣いていた。
「何か、仕事でかなり重要なミスをしてみたいでさっき上司からとがめられて……」
他の女性がそう説明してきて……
え?
蛍都が席を外している間に……? 何?
「大丈夫?」
蛍都が慌てて知伊代に声をかけると、途端、まわりにいた同僚や先輩まで、
「みんなでミスはカバーするから大丈夫だよ」
「手分けしよう」
いきなりさっきまで遠巻きだったのに、知伊代に声を次々とかけ始めた。
もしかして……私の態度でみんなの態度も変わる?
心の声を聞いてしまい、少しでも嫌なことが起こればいいと願ったら、いきなりこんなことに……
そして優しく声をかけたら、みんないきなり手のひらを返すように優しくなり……
蛍都は何だか背筋が寒くなってくる気がしていた。
続き