前回分
「何で……知ってるんですか?」
兆枝善名(チョウシ ヨイナ)は何もかも知っている間地菜乃(マジ ナノ)の母親に驚愕して……
「だから言ったでしょう? わたしは魔女なのよ。
それより思い出したかしら? このことはかなり菜乃本人からしたら、思い入れがあるみたいね」
やはりな何もかも見通すような目で見つめられてしまい、
「いえ……」
つい善名は目をそらしながら否定した。
「そう、まあいいわ。
高校出てからの付き合いだから仕方ないけれど、菜乃とあなたの住んでるところはかなり遠かったらしいしね……
しかも当時、あなたは遠出出来る程、車の運転が出来なくて……
だから運転が出来る菜乃にかなり甘えていたようね?
菜乃もなるべく運賃を安くする為に、せっかくまだ近い駅まで送ったのに、そんなメッセを送られたら、わたしならもう2度と会いたくないぐらいになるからね」
魔女は痛いところをついてきて……
「私はちょっと……なかなか座れなかったから……辛くて……つい愚痴っただけで……」
つい本音を言ってしまう善名。
「愚痴っただけ、そうなの……乗せてもらった分際で……自分で調べてどこから乗るとか、的確に言えば良かったんじゃないかしら?」
「……それは」
「とにかく、この時の貸しを返してくれるかしら?
つまりこんなメッセを送らないようにすればいいだけなんだから簡単じゃない?」
「ええっ⁉️」
善名は戸惑うしかなく……
「どうする? やるやらない? 他にもかなり菜乃に貸しがあるみたいだけど、
とりあえずこれで失敗しても他のに挑めはいいし、あなたは特別にチャンスをいくつかあげるわ」
「失敗って……もう最初からダメみたいじゃないですか」
思わず善名は憤る。
「調子が良いだけでしょう? それはあなたの力ではなくまわりに何とか助けられたからよ。
だから、たまには口だけではなく行動に出れるってことをわたしに示して見せなさいよ。
そうそう、いくつかチャンスをあげても端から失敗した場合は、
あなたから、それなりの代償を頂くことになるから」
「え、え、代償ってどういうこと? 何を奪う気なの?」
「それは……その時にならないと判らないわ。
命をとられた方がましになるかもしれない、それだけは覚えておいてちょうだい」
「……いくつかあるんですよね?」と善名。
「あなたは特別にね」と魔女。
「判りました、それで貸しを返せるのならそのミッションやらさせて頂きます」
と言わないといつまでもきっとこのままなのだろうと、善名は半ばあきらめていた。
「口だけじゃないといいけれど……」
つい魔女は呟く。
「え、何ですか?」と善名。
魔女は首を振る。
多分、この女も……と思う菜乃の母親で魔女だった。
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