関カヲルは2択の内のどらちかを迫られていた。
「今すぐ返すか、過去に入って貸しを作らないって……」
カヲルは迷う。
しかも……過去に入った場合、貸しを作らないってことは、それってわたしが1番前になるってことじゃないの!
そんなの……
「どうしたの? 過去を修正するより今すぐ返すことにする?」
魔女は腕を組みながら問う。
「それはどうやって返したらいいの?」
カヲルは念の為、魔女に聞いてみた。
「……それはこちらからランダムに選ばせてもらうわよ、簡単に言うと臓器提供みたいなものだと思っていたらいいと思うわ」
大したことを事も無げに言いのけてきて……!
「はあ……? 臓器提供! 冗談じゃない! 過去に入って借りを作らないことにする!」
カヲルはゾォ~~となり、そちらを選んだ。
すると、
「簡単に終わらせないところが気に入ったわ、そうこなくっちゃね、せいぜい頑張ってわたしを喜ばせてちょうだい」
魔女は人差し指を目の前に突き出すと……
魔女が突如、遠くなり後ろに吹っ飛ばされたような感覚を一瞬感じると、
「あれ?」
カヲルが気づいた時には、自分自身は既に席に座っており、服装も当時の服装になっていた。
……そして、
「班ごとに分かれて席替え~~」
先生が声をかける。
まさにあの席替えの瞬間に自分は引き戻されていて……
再び、席の1番を誰にするかの話し合いに突入する。
実際、その当時になると、1番前の席はどうしても抵抗を感じていた。
やっぱり何年経っても嫌で……
ここは公平にジャンケン? いや、負ける可能性もある。
ダメだ!
「誰が1番前になる?」
カヲルでもない間地菜乃でもない、もうひとりの同じ班の女子の静観カヨが言った。
ここは仕方ない……
「静観さんが1番前にならない?」
まさかのカヲルは思いきって、静観カヨを1番前に座らせようとした。
「何で? それ言うなら関さんが1番前になればいいでしょう?」
「わたしはいいんだって、目も悪くないし!」とカヲルは言った。
「それ言うなら私だってメガネかけてないけど!」
カヨもなかなか妥協しない面倒な女子だった。
菜乃はメガネをかけているので、そのやりとりに肩身が狭くなる。
そして、
「……そんなにふたりとも1番前になりたくないのなら、私が1番前の席に座るよ」
間地菜乃はそう言うと自ら1番前の席に移動して座った。
すると、カヲルのまわりは突然、漆黒の闇に早変わりすると……
「残念だったわね、過去はそう簡単に変えられなかったしほぼ同じ運命だったわね。
だから約束通りあなたから返して貰うわ」
「待って、待って、待って! でも、今回は私が強制的に席に行けって言ってないからセーフでしょう?」
「セーフじゃないわね、借りは借りよ、では関カヲルさん、あなたから娘の菜乃へのおとしまえを頂くわね」
「おとしまえって!」
途端、次にカヲルが気づいた時には、自分の部屋でいつの間にか眠っていた朝が来ていた。
「なーんだ、夢か……」
妙に夢にしてはリアルだった。
そう思いながら、いつものように朝ごはんを食べて着替えて、仕事へ向かう。
そして道を歩いていると、後ろの方からキャーと声が聞こえて……!?
何? と思った時には、すぐ背後に通り魔が刃物を持っており、人をどんどん刺していく!
カヲルも逃げようとしたが既に真後ろにいて……
「あ……!」
次の瞬間、つい後ろを向いたと同時にカヲルの両目を通り魔の刃物が真横にスッパリ切り裂いていった!
途端、目の前は赤い画面になるとやがて真っ暗になり何も見えなくなる!
その様子を遥か上空から見つめる者が。
「これで関カヲルと間地菜乃との貸し借りは終わりっと……」
あの魔女だ。
その右手の中には血だらけになった2つの目玉を持っていた。
「さて、次に娘に貸しがあるのは誰かしら?」
魔女は不敵に笑む。
はじめから