碇久留美(イカリ クルミ)、38歳、入社して以来ずっと同じ総務にいる。
残業も多くて、終始イライラ……
中堅なので影では小局と言われているらしい。
「またここ間違ってるよ! しっかりして!」
また厳しく言い放ってしまった。
「碇さん、もう少し優しく出来ないかな~~?」
課長が間に入るものの……
「何言っているんですか? しょっちゅう、しょっちゅうですよ? さすがに仕事増えて困るんで!」
倍言い返す始末である。
「あ~あ~、また碇さん、イライラ始まったねー」
「イイ歳して彼氏もいないから、ギスギスしちゃうんだよ~」
後輩がひそひそ話をしていると、
「そこ! 何しゃべってんの!? 言いたいことあるなら言ってみなさいよ! しゃべってる暇あるなら手を動かしなさい!」
「は、はい!」
一気に空気が張りつめる。
そして今日も仕事で遅くなり……
すっかり夜。
車を走らせていると自販機が見える。
喉が乾いたと思い近くの駐車場に停めてその自販機へ行く。
すると、
「やだ、何この自販機、何の自販機か判らないじゃない!」
しかも……
「自販機ガチャ?」
……百円以上入れると望みのものが手に入ります。
「わ、怖っ、何出てくるんだろう?」
でも……
百円玉でもいいのならひとつ押してみよう。
久留美はなぜか試してみることにした。
ひとつしかないボタンを押すと……
ゴトン……
取り出し口に手を入れて見てみると、
「チルドリンク?」
久留美はこのドリンクのことを知っていた。
リラクゼーションドリンクだと。
さっそく飲んでみると柑橘系の味だった。
どんどん飲んでいき、最後まで一気に飲み干す久留美。
「はあ~~凄い爽快感、スッキリした~~」
途端、イライラやギスギス、いろんな会社での嫌なことが忘れされてくれた気がした。
そして、そのまま空き缶は捨ててしまい、裏側は読まずじまい……
次の日、全く久留美は怒りを炸裂されることがなく穏やかに仕事をこなしていった。
「今日、どうしたの?」
「ミスしても怒られないけど……」
みんなビックリする。
碇久留美がこんな穏やかになるのは今までなかったので、とうとう彼氏が出来たと噂がまわる事態まで……
とうとうみんな、
「あの……この後、食事に行きませんか?」
珍しく久留美はみんなから食事を誘われることになった。
「ええ!? 行かないから、私は……」
「そんなこと言わずに! たまにはいいでしょう!」
ごり押しされてしまい、みんなで食事へ行くはめになる久留美だった。
続き
はじめから