Yクルト1000は今や空前のブーム……
どのスーパーへ行ってもほぼ見つからない。
ネットからの注文もお断り状態である。
そんな時、太手将我(フトデ ショウガ)は仕事帰りに今日も食べ物をたくさん買い込んでいた。
「うちまでもたないから、あのベンチで食べちゃおう~~」
将我は35歳、独身、体重95キロの巨体なので大食漢である。
Pヤング2人前以上、菓子パン4個、家路に着く前に空腹を満たす。
一息ついた頃、目の前に見えたのは……
「ん? こんなところにドラッグストアが?」
今まであるはずのないドラッグストアがいつの間にかオープンしていた。
なぜかフラフラ~~と好奇心もあり、つい足が向かってしまい……!
「いらっしゃいませっ!」
「うわっ! ビックリした!」
店員さんがあまりにも阿部寛さん似で、そして低くて大きな声だったので将我はつい驚いた。
「丁度良かった、君!」
いいか東大へ入れっ! ではなく……
「新しい商品が入ったんだ、どうだ! 試して見ないか!」
妙に○ラゴン桜調に語りかけてくる店員で……
しかもいきなりグイグイときた為、
「え、いや……その……」
戸惑い気味に……
「いいからちょっと来い! 君にはこれを勧める!」
阿部似店員は力ずくでレジカウンターに何かを置いた。
「あ、これは!」
Yクルト1000!
「……じゃなくて、はあ? ワクルト5000!?」
しかも容器は青でも赤でもなく……黒かった……
「は?」
「500円ですっ!」
「嫌だよ! いらないよ、買わねーよ!」
「どうして!?」
「500円なんて高けえんだよ!」
とうとう将我はぶちギレた。
「はい!」
しかし店員はひるまず……
何か凄い威圧感があり、なぜなのか突然断れなくなる。
思わず将我は財布をさぐると、まさかの500円玉が1枚出て来てしまい……
「ありがとうございましたっ!」
阿部似店員はやっぱり低い声で言いのけた。
そして、……何で買ったんだろう?
店を出た途端、将我は後悔する。
やっぱり返そうと振り返ると、既にドラッグストアは閉店になり、真っ暗になってしまう!
いつの間にか鍵までかかりドアは閉まっていた。
「嘘だろう!?」
仕方なく将我は帰路へ着く。
うちに帰ってから、
「くそ! 何でこんなもん買わないといけねえんだよ!」
自分に腹が立つ。
そして、ワクルトの蓋をペリリと剥くと何も考えずに一気に飲み干した!
「なーんだ! ただの甘いYクルトと同じ味じゃねーかよ!」
飲み終わった容器をふと眺める将我。
……ワクルト5000は、あなたがワクワクすることから悪どい願望までも悪夢によって叶えることが出来ます。
ただし1日1口が最適です。
なので一気に飲み過ぎると昏睡状態におちいり悪夢も酷くなる為、お気をつけ下さい。
ええええ~~~~‼️
将我は全て飲み干してから、容器の注意書きを読んでしまった!
「嘘……だろう……」
そして、将我の意識は遠のいていき……
気づくと、いつものように焼きそばやら、パンやらご飯やらを食べていると、更にいろんな食べ物が目の前へどんどん積み上げられていく。
焦って食べるものの、さばき切れないぐらいこれでもかと積み上げられてしまい……
「わ~~!」
なんと食べ物の山に埋もれてしまう!
かと思うと、次の時は鶏や豚や牛の大群に追いかけ回されたり、カレーの沼やシチューの沼やビーフシチューの沼まで落ちて……
そんな食べ物の地獄をこれでもかというぐらいさんざん味わった頃……
次に気づいた時には、白い天井が見えた。
「ここは?」
どうやら病院のようで……
点滴やらいろんな線が繋がれていた。
何だか、体が軽く感じて……
腕が……え? 細い?
布団をめくり体を見ると、
え? 細っ……誰?
狙ったかのようにすぐ近くの台に鏡が置いてあり、何とか手にすると、
「わ~~! 誰!? 俺……?」
将我の顔を映した鏡には、顔がほっそりとしたイケメンが見えて……!
ワクルトを飲んで昏睡状態におちいり、将我が目覚めたのはなんと1ヶ月後だった。
〈終わり〉
類似もの、デモスト版です。