Yクルト1000、ストレス緩和と睡眠質向上を促すという今話題の飲み物。
売れ過ぎてスーパーでは入手困難。
定期配達も新規はお断りの模様。
ストレスと睡眠の効果は抜群だというものの……
角砂糖3個近くの糖分、そして噂だが悪夢やら淫夢(インム)を見るという……
「あ、やっぱりYクルト1000ないな~~」
スーパーのYクルトのコーナーに来ると、無いと判っていてもついYクルト1000を探してしまう。
「凄い人気だもんな~~……ん?」
その時、視界にチラリと入ったものが……
あ、あ! あったーー!
1本だけYクルト……ではなく、
「……ラクルト……え? 千じゃなくて……い、1万!?」
0を数えるとなぜか0がひとつ多かった。
主婦の水見録与(スイミ トルヨ)は辺りを見回しながらそのラクルト10000を手にした。
大丈夫かな、これ……Yクルトより気持ち量が多いし、まさかの300円って!
新しい商品? 類似もん!? とはいえ何か今買っておかないと、もう買えなそうだし……とかなり迷った末つい買ってしまった。
買ってから、録与はやっぱり後悔してきて……
何で買っちゃったかなーとなる。
よくよく見ると、注意書きが本体に書かれていて……
ーー大変効果が強い為、最初は一口だけお試し下さい。
飲み過ぎると悪夢が酷くなる場合があります、お気をつけ下さい。
「何これ!? 悪夢が酷くなるって……でも、飲み過ぎなければいいのか……」
録与はその夜、寝る前にそのラクルト10000を一口だけ飲む。
「わ、甘っ!」
思っていた以上の甘さで。
「これ飲んだくらいで眠れるの?」
そして、録与は就寝することに……
……あーまた明日起きたら、朝ごはん作ってみんなを起こして、洗濯機回して……
パートへ行って、嫌な上司や怖い先輩と顔を合わせて……
たまに変なお客さんが来て無茶ぶりなことを言われたりして……
あ~~~~明日が来なければいいのに~~!
最近、録与は不眠気味だった。
ほぼストレスらしい。
でも……まもなく録与は効果覿面(テキメン)に眠れるのだった。
……朝起きると、誰もいない家……
みんなを呼ぶものの誰もいない。
1階を探すものの子供達もいなかった。
夫の姿もない。
「みんなどこへ行ったの?」
2階へ向かうと、なぜなのか仕事場の苦手な上司と怖い先輩がいて、
まさかの夫も子供達が全員そこにおり、刃物で滅多刺しにされて血の海に倒れ込んでいた!
「何てことを!」
録与は血の海の中からナイフを見つけると手にして、
「ふざけるなー! 何考えてこんなことするの!」
ボロクソに録与はぶちギレると、なんと家族を殺したであろう上司と先輩に向かって、持っていたナイフでメチャクチャに滅多刺しをした。
気づくと、録与以外はみんな倒れて全てが赤く染まる。
そこで目が覚めた。
「あ、夢……」
録与が気づくと朝だった。
もの凄い悪夢を見る。
何だか、手に感触までまだ生々しく残っているように感じてゾッとした。
そして、
「お母さん、おはよう」
録与が起きると中学生の息子、高校生の娘そして夫が先に起きていて、
「お母さん、今日はよく寝ていたからご飯、みんなで作ったよ~」
目玉焼きやら味噌汁やら、ご飯がテーブルへ並べられていた。
「え~~どうしたの~~ありがと~~」
録与はメチャクチャ感激する。
そして、パートの時間になり仕事場のスーパーへ向かうと、ざわざわといつもより何か雰囲気が違っており……
「どうかしました?」
録与が他のパートさん達に尋ねる。
すると、
「厭名(イヤナ)課長さんと、声稲(コワイナ)さんが突然ふたり同時に亡くなったらしいの……
それで、ちょっとバタバタしているみたいよ」
え?
録与は一瞬、目の前が真っ白になった気がした。
まさかあの悪夢は……!?