本日行われた第48期棋王戦予選8組の決勝で、先手となった里見女流四冠が古森五段を99手で下し、女流棋士として初めて挑戦者決定トーナメント(本戦)へと駒を進めました。同時に一般棋戦の最近の成績が10勝4敗となり、プロ棋士編入試験の受験資格を取得されました。編入試験を受けるかどうかを決めるには1か月の申し込み猶予期間がありますが、御本人はこれから考えるとのことでした。
一言で言えば、里見さん強すぎるんだが...。一応、私なりの感想をいくつか。
1)序盤戦のリード
振り駒で「と金3枚」、先手となった里見さんは迷わずに中飛車とすると、基本はたぶん振り飛車党?の古森さんは三間飛車の相振り飛車戦となりました。このパターンは、対西山女流二冠戦などで何度も実戦経験を積んでおり、特に去年くらいから、ほぼ中飛車一本で極めよう(+独自の指し手を楽しみつつ)ということで、そこからの変化パターンは今や男性棋士を含めても一番詳しいのではないでしょうか?そのため、序盤の局面は均衡していたのかもしれませんが、古森さんの方が早く消費時間を注ぎ込み、一方の里見さんは今日は5筋に位を張って居飛車に戻す作戦としましたが、比較的スムーズな進行で、その差が後々に響いてきたのではないかと。ちなみに、この里見さんの対相振り戦を含めた中飛車の研究は、中飛車の可能性を追求した功績で、その全体像を含めていずれは升田幸三賞に値するのではないかと思っています。
2)中盤戦
駒がぶつかってからの中盤の折衝が勝負の分かれ目だったと思いますが、一進一退でどちらが優位に立つかまったく予断を許さない状況に。連盟のモバイル中継のコメントでは、古森さんが上手く指したのではないかという論調でした。ただ、その後、里見さんが飛車先に打った▲5二歩の叩きが通り、そこで形勢が崩れたようです。
今日の対局は負けでした。ご観戦ありがとうございました。
— 古森悠太 (@komosuke8) May 27, 2022
終盤の入り口まで難解な将棋だったようですが、52歩のタタキを通してしまいダメにしてしまいました。結果はともかく熱戦にできず情けなかったです。
3)中終盤
もう、ここ最近はデジャブのように、里見さんが優勢になると一直線にAIグラフが傾いていくという...。ただ、家のPCでちょっと前のソフトだと評価値は+1000前後(80%勝率のあたり)で、ちょっと間違えたらすぐ追いつかれるか、逆転されるような点差ではありましたが、最後はきっちり時間を残して完全に読み切ったという感じで指していたように見えました。
感想戦終了後に、記者会見がありました。編入試験についてはさておき、棋王戦本戦出場も予想外に勝てたという感想でした。周りから見ると、この1年くらいでうんと強くなってるように思いますが、御本人はそういう感触でもなさそうです。ただ、これで本戦に行けばまた強い人(まだ誰が相手か分かりませんが)と当たれることを純粋に喜んでいるようでした。あと、女性としての快挙という点では、意識はしてないかもしれませんが、囲碁の藤沢里菜女流名人との対談などで知らず知らずに良い刺激を受けていた面もあるのかなと。
今日も里見さんの活躍に酔いしれました。もう、ありがとうとしか言えない。
それから忘れてはいけない、中2日の30日(月)には東京将棋会館でマイナビの第4局があります。里見さん必勝祈願