インボイス制度開始1ヶ月 STOP!インボイス記者会見/学びの重要性 | Tempo rubato

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アニメーター・演出家 平松禎史のブログ

 

*岡田麿里監督作品『アリスとテレスのまぼろし工場』 9月15日より公開中。*

副監督で参加しています。

(旧車や鉄道ファンにも楽しんでいただけますよ、きっと♪)

 

「未来へ、未来へ、君だけでゆけ」

 

 

 

 

 

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11月13日 衆議院第二議員会館にてインボイス制度開始から1月を経た被害報告、記者会見が行われました。

 

 

 

議論の中心になったのは、公正取引委員会によるインボイス制度をめぐる独占禁止法違反についての説明と質疑応答でしたが、非常に不安になる内容でした。

主催で反対活動をしているSTOP!インボイスが収集した事業者の声、税理士や司法書士、政治家が意見を述べました。

 

議論で述べられているように、中小企業やフリーランスだけでなく、経理を依頼される税理士も、相談を受ける公取ですら被害者なのです。

国力が失われ国際的なシェアを失っていけば官僚や政治家だって被害者になり得るのです。

誰にとっても良いことがない。

それが消費税でありインボイス制度なのです。

 

 

公正取引委員会(以下 公取)の説明と質疑応答ですが。役所として個別事例について具体的に答えられないのは理解できます。あまり具体的に述べてしまうとその言質を利用され、違法行為が取り締まれなくなる可能性があるからです。このあたりは警察など法執行機関が捜査中の事件について具体的に言えないのと同様だと思います。

しかし

安藤裕さんの質問で、公取は免税事業者であることを理由に取引停止や値下げの被害を受けても独禁法違反に問えないと答えるに至りました。

さらに

公取が独禁法に抵触した件数を述べた際、「インボイスだけではなく独禁法に関係するすべての事例」と何度か言っていたのが気になります。

つまり

インボイス制度による相談や違法事例を独禁法全体から区別する考えがないのではないかと。

となると、他の要因のものに埋もれてしまい、消費税とインボイスによる被害が見えなくなる可能性が高いと言えます。公取が全体の事例に埋もれさせてわからなくさせようと意図的にやっているのかはわかりませんが、消費税とインボイスによる被害を訴える側としては、疑念と不安しか持てませんよね。

 

似たような懸念として、景気動向や破綻・倒産・廃業事例を調査報告している信用調査会社においても、インボイスを破綻・倒産・廃業の原因として区別した調査をやらない懸念があげられる。

 

定期的に観察してる信用調査会社は帝国データバンク(TDB)と東京商工リサーチ(TSR)ですが、TDBは比較的全体状況の調査が主で、経営者や投資家の益になりそうな情報提供が多い。TSRは全体状況の他に破綻・倒産・廃業の要因別の調査などきめ細かさが特徴的で、一般読者が経済状態とその変化を観察するのにも有効です。

 

TSRは、人手不足による倒産廃業の調査、コロナ禍による倒産廃業の調査、コロナ救済策だったゼロゼロ融資の返済ができずに倒産した企業の調査、などなど要因別の調査を継続的にやっている。

インボイス制度開始後は2、3ヶ月もすれば「インボイス関連倒産・廃業」が調査対象になるだろうと予想しているのですが、公取がインボイスを区別してないとすると、信用調査会社の調査にも支障をきたすでしょう。事業者へのアンケートと役所のデータを引き合わせないと調査結果の信憑性に関わりそうだからです。

 

政府機関から公取や信用調査会社に「インボイスの弊害を調査・発表しないように」などと要請があるのかはわかりません。もしあったら大変なことです。圧力がなくても、調査しにくい環境が作られていればやりたくてもできなくなります。

被害の公正な調査ができず実態が見えないままズルズルと経過措置期間が切れ、その間にさらなる増税が準備され強行される。なし崩しに弱いところ小さいところから潰されていくのです。

被害が自分のとこに来てから声を上げても、しかしそれは遅すぎたとなります。

 

インボイス制度に関しては、「そもそも」をさかのぼって考える必要があり一般には理解しにくいものです。ボクの場合は、10年ほど前から経済を学び景気動向を観察してきた蓄積があるので「税は財源ではない」事実も驚きはしたものの、理解することができました。しかし、貨幣の仕組みについて考えたことがない(普通は考えませんよね)人たちには難しい話で、理解の前に敬遠されてしまいます。

普通に景気が良ければ、一般人が貨幣や財政の仕組みについて考える必要はないわけで、30年も不況を放置するどころか不況を深める政策ばかりやる政治に対抗するには、学ぶしかないのです。

インボイス反対派の人たちも、被害が自分たちだけでなく国民全体に及ぶものなのだと痛感して学び、悪政を正そうとしている。「いまさら」ではありません。学びましょう。

 

消費税は百害あって一利なしの制度ですから、廃止が妥当です。

 

 

さて

学ぶにはいろんな周辺事情、多種多様な情報を探る必要があります。簡単ではありません。時間もかかります。なので、信用できる専門家に学びながら自分でも調べて答え合わせをするのが効率的です。しかし、調べ直してみたら矛盾したことを言っていたり、好都合なデータしか用いていなかったり、そんな言論人は信用できません。信用に足る専門家や学者、政治家を探すのにも学びが必要です。

「この人は信用できる」から「この人を信じている自分」へと一体化するのは極めて危険です。

学んでいるうちに自分の考えが間違っていたことに気づくこともあります。自分の考えを正すのは難しい場合もありますが、仕方ありません。正さねば学びはそこで止まります。

生きている限り意識するとしないに関わらず、学んでいます。学ぶとは生きるのと同じくらい重要だと考えますので、学びをやめるのは死ぬも同然だろうと思うのです。

 

学びの重要性。

考えを提供する者と自分とを一体化させる危険性。

政治に物申すことを忌避するうちに手遅れになる。

これらについて、歴史のフルイにかけられた「ことば」から学んでいきましょう。

 

ポスト ケインジアンの経済学者ジョーン・ロビンソンは「マルクス主義経済学の検討」の中でこう述べています。

《経済学を学ぶ目的は、経済問題に対する受け売りの解答を得るためではなく、どのようにして経済学者に騙されるのを回避するかを学ぶことです。》

最後の部分だけが安易に引用されるので、例えばこのnote『「経済学者に騙されないため」に騙されないために』でも文脈全体から正しく読むよう推奨しています。和訳はこちらからお借りしました。

《要点は、「人々を騙そうとしてくる経済学者への対抗」にあるのではなく、どのような経済学者の主張も安易に賛同したり批判したりしてはいけない」ということにある》。主張の中身をしっかり検討し学ぶ必要があるのです。

 

「敵」を作り出して「敵」に依存する主体性の無さを自覚する。これです。(出典はボク)

 

印象的な一部だけが切り取られて流布される例で、このブログでも書いたことがあるのはニーメラー牧師のことばです。

一般には_自分とは無関係だからと何も言わなかった結果、自分に被害が及んだ時、自分を助ける人は誰もいなかった_とよく言われます。ボクはこの話に違和感があった。人々を助け導くはず牧師が「自分を助ける人は」などと言うのはおかしいんじゃないかと。調べた中で最も古く原典と思しきミルトン・マイヤーの著書に辿り着きました。

 

1908年シカゴ生まれのジャーナリスト、ミルトン・マイヤーが戦後ドイツで取材し記録した著書「彼らは自由だと思っていた _元ナチ党員十人の思想と行動_」です。まえがきの末尾には1954年12月25日とあります。

 

この第13章(p165)”しかしそれは遅すぎた”にニーメラー牧師のことばが紹介されています。

直接ではなく、言語学者の証言のなかにニーメラー牧師のエピソードが含まれる。なので、経済学におけるジョーンズのことばと同様に、この言語学者の証言全体から読み解く必要があります。

冒頭部分、少し長めに引用しましょう。

1933年のドイツ、政府と国民のギャップが広がる一方だったとして、こうつづきます。

《「このドイツでは、国民は少しづつ慣らされていきました。不意打ちを喰らわすような統治や、こっそり練られた決定の押し付けに、事態が複雑すぎるから、政府は国民に理解できない情報にもとづいて行動せねばならないのだとか、たとえ国民が理解できるとしても、事態はあまりにも危険だから、政府は国家の安全のために情報の公開はできないのだとか考えることに、国民は慣らされていたのです。しかも国民は、自分をヒトラーと一体化させ、彼を信じたからこそこのギャップは簡単に広がりました。」》

翻訳調が少々理解しにくいのですが、言いたいことはわかりますよね。

第一次世界大戦での敗戦で莫大な戦後賠償を課せられた敗北感と不況で、アドルフ・ヒトラー率いるナチ党(国民社会主義ドイツ労働者党)は国民の支持を得、1933年に政権をとると全権委任法を可決させ、ナチ党以外の政党を禁止。一党独裁体制を作った。

国民の支持によりヒトラーとナチスは独裁を勝ち取ったわけですが、国民の求めるものとナチ党の方針はどんどん乖離していく(ギャップを広げる)ことになった。

考えを主張する者を信じることが自分のアイデンティティとなる一体化。極めて危険です。

 

最近のものでよく引用するのは、天体物理学者イーサン・シーゲルのことばです。

《「真実に近づきたいときほど、考えに対して懐疑的になるべき」》

一体化を避け、考えの内容をよく吟味しましょう。

 

 

国民が信じたからこそギャップが広がった。これが政治の恐ろしいところです。

現在の日本も同じでしょう。

「国の借金を増やしてはならない」「政府は赤字を増やしてはならない」「財政規律を守らねばならない」「消費税は社会保障財源だ」…大多数の政治家と国民が良かれと思ってこれらを信じている。

しかし、これは間違いでした。

政府の行動とその結果は国民が求めた景気回復とは真逆に進み、少子化は悪化しつづけ不況は深まる一方です。政府は決まって「景気は緩やかに回復」などと言って間違いを認めない。消費税については、これまで賛成する国民が過半数になっていた。理由は「社会保障の財源だから」です。しかし、消費税が導入当初の3倍になっても社会保障は改善されないどころか削減されている。景気は悪くなる一方。おかしいじゃないですか。

政策方針と結果のギャップは広がる一方です。

コロナ禍を経て政府の間違いに気づく人が増えました。貨幣や財政の仕組みを学び、間違いに気づく人も増えています。

 

一方で、ギャップに慣れてしまい、不況にも政府の説明にも慣れてしまった人たちはまだ多い。

自民党の支持率は、岸田内閣の支持率低下にともなって下がってましたが、最新の調査では37.7%で2ヶ月連続で上昇しています。選挙をやれば多少議席を減らしたとしても自民党政権は覆りません。

増税や負担増に、自分は困っていないとか関係ないとか、少なからず政権から恩恵を受けている著名人たちは「努力が足らない」「自己責任」と批判を跳ね除け自民党政権を保守している。日本にいる限りこの人たちもいづれは被害者になるのです。不況でも困らない富裕層まで被害を実感するようになったら、その時こそ手遅れです。

 

ヒトラー政権時代に抵抗しなかったことを痛切に後悔したひとりがニーメラー牧師だった。

弾圧は遠い分野であって自分には実害がないので行動しなかった。そのうちついに教会に被害が及んだので行動した。《しかし、それは遅すぎた》のです。

 

誰かに助けを求めたのではなく、「しかし、それは遅すぎた」と自戒した。

これがニーメラー牧師の締めくくりです。

 

間違いを自覚すること。これが重要なんですよね。

 

 

もう一度書きましょう。

 

学びの重要性。

考えを提供する者と自分とを一体化させる危険性。

政治に物申すことを忌避するうちに手遅れになる。

 

自分だけでなく、社会を世界を変えていくには、ひとりひとりが物事の内容をよく考えることが大切です。

考えるには学びが必要です。

知識や経験が十分でないのに「自分の頭で考える」のは不可能で、間違いの元になる。自分で考えたのだと自縄自縛に陥る危険性があります。これもよく使われることばですが注意が必要です。

「まだまだ学びが足らない」「自分は何もわかっていない」

常にここへ立ち返って考えるのです。

 

 

ひとりでも多くの人が取り返しのつかない被害を受けないようにするには、ひとりでも多くの人が自民党政権と、政権と同じようなことしか言わない野党に政策方針を改めるよう求めなければいけません。

悪い結果を出した方法は間違っているのです。正しましょう。

 

思想の右も左も関係ありません。

 

左右ではなく上下です。下の下である政治を上へ上へと引き上げる。

 

ただただ、間違いを正す。この一点につきます。

 

政治家を選んでいるのは有権者です。学びましょう。

 

 

 

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