藤井聡&木村盛世「ゼロコロナという病」こそ「ゼロコロナの病」である。 | Tempo rubato

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京都大学大学院の藤井聡教授と医師で作家の木村盛世の共著『ゼロコロナの病』という本がアマゾンでベストセラーになっています。

 

読んでいないので、本に対する感想は書きませんが、両氏、特に藤井教授の去年から一貫した発言を元に書いていきます。

 

まず、アマゾンにある紹介文はこちら。

 

《欧米に比べて日本は「さざ波」と発信し続けた元厚労省医系技官と、
「過剰自粛」を断罪し続けた元内閣官房参与が
コロナ禍の嘘と真実を炙り出す。》

 

見出しはこんな感じです。


《 こうして「なんか怖い」は作られた

【主な目次】
はじめに 藤井聡 「ゼロコロナという病」とは何か?
第1章 コロナ虚言・妄言・暴言
第2章 コロナ死か、 自粛死か
第3章 上から目線と専門バカ
第4章 『シン・ゴジラ』の世界
第5章 コロナでばれた日本
第6章 死を受け入れられない日本人
あとがき 木村盛世 羅針盤を持たない船 》

 

木村盛世氏は高橋洋一氏より前に「さざ波」だと言ってたんですね。こっちが先だぞと言いたいようです。

紹介文にはありませんが、藤井教授は高橋氏より前に、日本の感染状況は諸外国に比べれば「見えないくらい。流行してるとも言えない」と言っていた。

「コロナ脳」の言論人やマスメディアが大騒ぎしてコロナ禍を作り出したのだと主張してきた。

「コロナ(ウイルス)なんて飲んでも平気だ」とも言っていた。そんなものはないと思ってるからですよね。

 

結論から言えば、彼らこそが「コロナをないことにするゼロコロナ論者」なのです。

 

 

考えてみれば「ゼロコロナという病」は味わい深い書名ですね。

「〜〜という」は対象からの距離を示します。自分はその場におらず眺めている姿勢です。COVID-19災害の現場に自分は含まれない意識が表れている。

藤井教授の代表著書に「〈凡庸〉という悪魔」があります。新著はこれにあやかっているのでしょう。これも、自分は凡庸ではないという浅薄なエリート意識が表れていると思えてきます。

なのでボクは、このブログ記事のタイトルで「ゼロコロナという病」と「ゼロコロナの病」を区別しています。

藤井教授らこそ、コロナ禍を外部化(他人事に)して、ないことにする「ゼロコロナの病」ではないかと、考えるからです。

 

 

さて、ボクはCOVID-19災害がもたらした政治状況は、緊縮財政による超長期デフレ不況とこれを後押ししている新自由主義とよく似ていると考えています。

 

デフレ長期化との類似性を書いてみましょう。

 

デフレ編

現実の景気後退を直視しようとせず、なぜ景気後退したのかの原因を直視しようとせず、自分たちの間違いを認めず、基礎的な改善策である財政拡大から目をそらし、楽な道を選んだ。

政策転換しようとしない人たちに共通するのは、「デフレをないことにするゼロデフレ論」であり、デフレ不況長期化に都合の良い状況を作り出してしまったのです。

デフレ軽視は、一部のグローバリストに好都合です。デフレを軽視する連中が政府と癒着し、国民にはウソ・デマを吹聴してデフレ状況を長引かせているのです。

 

コロナ編

現実の感染拡大を直視しようとせず、なぜ感染拡大するのかの原因を直視しようとせず、自分たちの間違いを認めず、基礎的な改善策である財政拡大から目をそらし、楽な道を選んだ。

政策転換しようとしない人たちに共通するのは「コロナをないことにするゼロコロナ論」であり、感染状況の長期化に都合の良い状況を作り出してしまったのです。

コロナ軽視は、ウイルスにとって好都合です。コロナを軽視する連中が政府に進言し、国民にはウソ・デマを吹聴してコロナ状況を長引かせているのです。

 

ね。構造的に同じなのです。

 

現実を直視しない、間違いを認めない、てところがミソですね。

 

あと、新自由主義は国境や国籍を無きものにして広がり、制度や規制の甘いところを突いて拡大する。政治を使って規制を緩和させ市場競争のために民営化を促進する。拡大していく様はCOVID-19とよく似ています。

デフレとグローバリズムに対峙するなら、財政拡大と規制強化を抜きにできないところも、COVID-19対策とよく似ています。

 

 

藤井教授の5類格下げ論は、最近政府が打ち出した中等症以下の入院を削減するのと同じ方向です。政府に怒って見せてはいても、実際には足並みを揃えてコロナ状況悪化を手助けしている。

5類格下げ論も中等症以下の入院削減も、新自由主義的な考え方です。たとえば、不況で企業の人件費負担が上昇、雇用状況が悪化、など問題があったとします。新自由主義的な観念では、非正規雇用の規制緩和で受け入れを増やして解決しようとします。しましたよね。需要不足という基礎的な問題から目をそらし、賃金が安くて雇用しやすい(つまり解雇しやすい)非正規の緩和に向かった。

これは、感染症の扱いを緩和して受け入れられる病院を増やす、てのとぴったり符合します。

デフレ不況下で規制緩和を進めたせいで賃金低下が促進しデフレが悪化しました。

慢性的感染状況下で5類格下げすれば、かえって感染状況を悪化させ医療崩壊を招きます。

根本原因から目をそらして、ただ受け入れ先を増やせばよいという安直な発想では事態を悪化させるばかりでしょう。

 

藤井教授は、去年春頃、COVID-19災害は夏をすぎたら終わると考えていたのでしょう。そう思った人は多かったし、ボクもその程度で終わるかもと思った。

加えて藤井教授は、ネット番組や自身のメルマガ等で繰り返し「政府は財政拡大をやると思えない」と主張していた。これが藤井教授に疑問を持つきっかけになった。あきらめてどうする、と。

早期収束を見込んで、財政拡大をやろうとしない政府に代わって対策をひねり出したのが「新型コロナは風邪と変わらない。個々人の防疫で大丈夫だから、経済を回すべし」だった。

「早く免疫を獲得するためにどんどん感染したほうが良い」「基礎疾患のある高齢者のコロナ死は寿命」とも言った。しかし、高齢者の死亡が目立ってくると、高齢者だけ隔離して守れば良いと言い出した。ご都合主義の自己矛盾だ。

軽視できない感染症だと判明しても間違いを改めなかった。

極め付きが感染症の扱いを2類相当(現在の「新型インフルエンザ等」指定でも準じた規定がある)から5類に格下げる主張です。入院や隔離の基準が緩和され、報告義務も緩和され、自己負担が増える。つまり、国民に危機が及ぶ感染症ではないことにするのが5類格下げ論です。

ことここに至って「コロナをないことにするゼロコロナ論」が完成したのです。

 

新自由主義(経済学)と藤井教授の主張は、理性でコントロールできるという思い上がりで、共通しています。

 

+ + +

 

ところで、藤井教授が蛇蝎のごとく嫌う「ゼロコロナ」ですが、いつから言われているのでしょう。彼らが敵視するほど主流な考えになっているのでしょうか。

 

試しにググってみました。

まず、期間を去年2月1日から8月31日に絞って検索。

5ページ分ヒット。

ほとんどが絞り込み期間以外の語句がヒットしたもので、藤井教授らの「ゼロコロナという病」の紹介ページが多数出てきます(笑)

唯一と言ってよいのはこれくらいかな。

2020年4月16日の記事。

読めばわかりますが、政策や対策のことではなく、公衆衛生意識を高めるキャッチコピーの類です。

 

9月1日から12月31日で検索。6ページ分ヒット。

こちらも同様で、藤井教授の本が紛れて誤ヒットします。ほかにも最近の、木村盛世氏が「ゼロコロナ」は幻想であると書いたコラムも誤ヒットした(笑)

 

立憲民主党が「ゼロコロナ」を謳った記事がヒットしますが、これも今年2月以降のものが紛れたものです。

 

さて、今日までの今年分を検索すると、一気に10ページ以上分ヒットします。

ようやくリアルタイムな「ゼロコロナ」が出てきましたよ。

前述の通り、立憲民主党が「ゼロコロナ」を目指す政策を発表したからで、これについての論評が賛否両論たくさんヒットしました。正確には「zeroコロナ」です。

 

では立憲民主の「zeroコロナ」論を見てみましょう。

党が公表しているPDFファイルで、2021年2月21日作成、6月10日改訂版です。

 

 

最初に、「zeroコロナ≠ウイルスゼロ」とあります。つまり、SARS-CoV-2によるCOVID−19をゼロにするのではなく「感染拡大の繰り返しを防ぐことで、早期に通常に近い生活・経済活動を取り戻す戦略」である。

 

財政支援の増強も主張されています。

 

ワクチン接種の迅速な実施もある。

 

これが極論だという人、います?

他のに台湾やオーストラリアの対策を手本にするともありますが、これも極論でしょうか。違いますよね。ただ、既に感染状況が慢性化した日本では難しくなっているだけで、不可能ではありません。ボクにしても、去年からずっと言ってきた方向性です。

 

それから、去年の記事検索では(藤井教授らの本が誤ヒットしたのを除けば)「ゼロコロナ」がほぼヒットしなかった理由もわかります。

今年になって「ゼロコロナ」が増えたのは、ワクチン摂取が始められる状況になったからです。

 

ところで、世間で「ゼロコロナ」を言ってる人っているんですか? 

「俺、ゼロコロナしちゃうぜ!」とか「私はまだゼロコロナできてないなあ」とか。

テレビを見ないのでわかりませんが、コメンテーターが「ゼロコロナが必要です」とかよく言ってるんですか?

どちらかと言えば、デフレと同様に、コロナ状況に慣れてしまったあきらめ感と政府の無能ぶりへの怒りが強いと思いますよ。藤井教授の功績かな?

 

閑話休題

 

立憲民主の「zeroコロナ」は、コロナをないことにするのではなく、財政支援を増強し、ワクチンで感染症の被害を軽減出来る環境を作りながら、徐々に平時に戻していく考え方です。

ただ、財政赤字の積み増しには慎重でしょうし、ロックダウン(制限措置)には触れません。全体的に中途半端だと思います。しかし、これまでの方針を改めよという方向性は良いと思う。

立憲民主とは違う方法を主張する人もいます。方法論は様々でしょう。しかし、感染症を危機と捉えた上で改善策を考える意識では共通するのです。

 

他の「ゼロコロナ」主張も実際には、ワクチン接種率の向上を前提にした「withコロナ」論であって、コロナを無きものにしようとする極論は、おそらく元々極論や陰謀論ばかり言うごく一部の人くらいでしょう。

 

 

おわかりでしょうか。

藤井教授らが言うような「ゼロコロナ論」は世間に定着してしないと言って良い。言ってもいないことを言っていると大声で批判するのを「藁人形論法」と言います。橋下徹氏もよく使う詭弁です。藤井教授はコロナ関係では去年から度々やっています。

 

COVID-19災害を軽減しようとする真面目な人々は、「COVID-19状況を危機と捉え」「感染拡大の繰り返しを防いで、通常の生活と経済活動に戻していく」ために、これまでの方針を改めること、を考えている。

 

主眼は、失敗を認めて改めること、です。

 

これが藤井教授らには徹底的に欠けている。

 

去年からの5類格下げ論が端的に示すように、藤井教授こそ「コロナをないことにするゼロコロナ論」の牽引者なのです。これ以上の極論があるだろうか。その結果は、今の日本の状況を見ればわかりますよね。

前回の「何をやっても無駄」感と同様に、藤井教授らの主張に疑問を持たないと、長期的に深刻な被害を招くことになります。具体的にはデフレ不況のさらなる長期化です。コロナ禍で財政拡大をあきらめた人が、どうしてデフレ脱却で財政拡大を主張できるんでしょう。ダブルスタンダードもいい加減にしてほしい。

 

 

自国通貨を発行でき、変動為替相場制で他国の通貨価値に縛られない日本に、財政問題はありません。

財政赤字とは国民の黒字のことです。

物価が低い日本は、世界最大で財政拡大できる国です。

財政拡大した分を国民が返す(増税する)必要などありません。

非常時には、直接の給付と補償を継続的に実行し、国民を守るのが大前提です。

極論ではなく当たり前の政策です。

 

COVID-19の拡大を危機と捉え、医療逼迫や経済被害を最小化するためにも、まず感染拡大そのものを防ぐ。ロックダウンが最も合理的です。

極論ではなく当たり前の政策です。

 

これ(特に後者)が極論に思えるのは、COVID-19を「風邪と変わらない大したことないものだ」と最初の時点で間違えたからです。去年2月なら仕方ない、しかし、軽視できない状況変化があったにもかかわらず間違いを認めずに改めなかった。デルタ株の流入でも改めないので、もう藤井教授が考えを改めることはないでしょう。

 

間違いを認めたくないがために、現実も論理も捻じ曲げようとする。

 

これぞ「ゼロコロナの病」なのです。

 

 

誰しも間違えることはあります。

社会状況を「〜〜という」などと、取澄まして外部化(他人事に)するのは止しましょう。

社会には自分も含まれます。どうしようもなく関わっているのです。

代表的人物から学んで、病に陥らないよう防ぎましょう。

 

 

 

 

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