財政悪化なくして、財政健全化なし!(資料用) | Tempo rubato

Tempo rubato

アニメーター・演出家 平松禎史のブログ

 

 

*このエントリーはデフレ脱却のための資料として作成しました。

 

…………………………………………………………

 

アメリカや欧州の先進国がはまり込んでいる経済停滞は、日本で最も顕著にあらわれていると言って良いでしょう。世界で類を見ない超長期デフレです。

 

アメリカの経済停滞について、中野剛志氏は『経済と国民 フリードリヒ・リストに学ぶ』第1章の結び近くでこう書いています。

 

アメリカでは、一九八〇年以降、経済自由主義が「新自由主義(市場原理主義)」という極端な姿となって台頭し、これに基づく政策ーー自由化、規制緩和、民営化などーーが実施されてきた。しかし、その新自由主義の三十年間、アメリカ経済は停滞していったのである。アメリカに追随して新自由主義を受容した日本もまた、長期停滞から抜け出せないでいる。

 

「規模の経済」が働かない。

自由化や規制緩和によって、生産拠点が海外移転したため工場労働者がサービス業へと傾斜していった。生産性の向上が起きにくい対人サービスの割合が増えたため経済成長が停滞した。

「短期主義」への傾斜。

長期的な技術開発や人材育成の投資を怠ること。大企業は内部留保を貯めつつも長期的な投資を怠り続けたため、経済成長が望み薄となっている。

…などなど、21世紀の経済停滞は、19世紀前半に活躍したリストのビジョンと理論の正しさを証明しているのです。

 

 

20年以上続けてきた政策群の根拠となっている固定観念は、自民党だけではなく野党もほとんど変わりありません。誰が総理であろうと、どの党が政権を握ろうと、「固定化された視点」からの開放なしには、現状維持(景気低迷、国民の貧困化、文化の崩壊)が続くのです。

 

 

まずは経済の基本中の基本、貨幣・通貨…お金のことを再確認しましょう。

 

中野剛志氏が自民党三期生の勉強会で行った講演の動画から、要所をスクリーンショットで抜き出して説明していきます。

 

 

まず、ブログやTwitterで数え切れないほど書いている「デフレ」です。

 

デフレとは何か

不動産バブル崩壊で負債を抱えた企業がコストカットにひた走り、所得減少や失業が増えた。税収減を補うために行われた消費税増税(’97年)で、消費が減少し、企業の収益がさらに減少し、売るための低価格化競争で物価が下落していった。物よりもお金の価値が上がってしまったため、「使うより貯めておいたほうが良い」というデフレマインドが長期固定化し、日本経済を衰退させている。

いまだにデフレだ。そう認識しなければ適切な政策を選ぶことはできません。

 

 

商品貨幣論(よくある誤解)

お金そのものに価値があるという誤解。物々交換からお金が生まれたという間違った通説から信じられてきた、息の長い根深い誤解です。

目に見えるお札やコインに価値があるとする考え方は感覚的に理解しやすいが、間違いである。

チューリップの球根や土地などお金に変えられるもの、いわゆる仮想通貨もその間違った考え方で価値があると信じられ、価格が上がったり下がったりする。

 

信用貨幣論(正解)

貨幣は負債の一形態。債務と債権の記録(三橋貴明氏)であって、そのものに価値があるわけではない。

 

通貨と租税

税金の支払いに使われた(古代の石のお金からはじまる)お金が、その機能を活用して売買にも使われるようになった。お金(現金と銀行預金)を発行できる国家権力が担保しているもので、経済力(生産力)も価値の根拠になる。

仮想通貨をすばらしい発明と賞賛する竹中平蔵氏やウォズニアック氏、東浩紀氏は、間違いである商品貨幣論にたってお金を見ている。

 

通貨を売買や投資のために使うには、税収より多く通貨を発行しておかねばならない。

なので、正常なのは財政赤字がある状態なのだ。

銀行は預かっている預金(昔風に言えば巨大な金庫におさめた札束とか)を原資に貸し出しをしているのではなく、貸出を行うことで銀行預金が生まれる。貸し手(銀行)が持っている資金量が貸し出しを制約しているのではなく、借り手の返済能力が制約となる。

 

たとえば、住宅のような高額な買い物を長期ローンでする場合、その人の銀行預金残高より高価でも(差がありすぎたり借入が多すぎると審査を通らないでしょうが)買うことができるのは、頭金を払え十分な所得など返済能力があると判断されることによる。もっと身近にたとえれば、現金ではなくクレジットカードで買い物ができるのもそうです。これはお金が債務と債権の記録であること、貸し出しによって通貨供給が増えることを意味しており、消費が増えることで物価が上がっていくことにもつながる。

さらに、量的緩和(金融緩和)をすると日銀の当座預金が増えるが、銀行はこれを貸し出せるわけではないので、日銀当座預金を積み増す量的緩和だけではデフレを脱却できないこと(5年続けてもコアコアで0.4%)の証明となる。

 

財政政策は金融政策

金融緩和で増やしたお金をそのまま民間が借りて使うことはできないが、財政拡大で増えたお金は使える(日銀当座預金が使える形になる)のです。

国債発行は貨幣発行です。国民経済を一巡して次年度の国債発行でチャラになるので、税で返す必要などありません。

国債発行に資金的制約はない(「日本に財政問題はない」!)のだ。

インフレ加熱が制約になるので、そこまでやらなければ良いだけだ。

 

財政赤字の拡大と削減

財政赤字を増やせば経済成長(所得増)し税収が増えて財政赤字が縮小する。財政健全化だ。

赤字を減らせば減らした分使えるお金が増えて黒字になるのではなく、結局は赤字が増える。

ということは…? 財政悪化なくして財政健全化なしってことになる。。。

 

橘玲氏の御意見(よくある御意見)

商品貨幣論にたってお金を見ている意見の代表的な例。竹中氏なども同じ間違いで、ほとんどの国民がお金を誤解していて、家計と国家財政を混同している。

ボクも貨幣を正しく理解するのに時間がかかったし、まだしっかり理解できてるとは言えないだろう。

 

この基本的な誤解のせいで、GDPは1995年以来、日本だけ成長が止まり、デフレに転落し、学術レベルが落ち、インフラ整備も遅滞し、もはや先進国とはいえない状況になっている。

お金の誤解は世界的な誤解だが、日本人は律儀なので「赤字は良くない!」と状況を勘案せずに緊縮財政をやりすぎているわけです。

 

まとめ

貨幣を誤解しているため、日本は20年以上経済政策を間違い続けている。

 

必要なのは…

 

…と(笑)、考え方を改めることなのだ。

 

 

中野剛志氏は、大著『富国と強兵』で上記の基本中の基本を、歴史的な事象や古今の学者の見解を分析して解説しています。

主観や想像でものを言っているわけではありませんよ。

 

言うまでもないことは、民主党政権や特定の政治家や財務省や特定のマスメディアを「敵」に設定して批判にいそしんでも、日本経済は改善しないのです。

 

「誰が」ではなく「中身」です。

 

 

「日本の未来を考える勉強会」ー貨幣と経済成長ー 中野剛志氏 (超人大陸)

 

 

富国と強兵 富国と強兵
3,888円
Amazon

 

 

 

 

 


人気ブログランキング