「倒産は増えていない。」では、何が増えている? | Tempo rubato

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アニメーター・演出家 平松禎史のブログ

「円安によって日本企業が外国から戻ってくる」
という話で、そうなれば良いと思いつつ実体はよくわからない。
「日本企業の倒産件数は増えていない」とも言われ、それならそれで良いのですが。

東京商工リサーチの調査
2013年「休廃業・解散企業動向」調査 年間倒産の2.6倍
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20140210_03.html

『2013年の休廃業・解散件数は2万8,943件で、過去10年で最多を記録した。2013年の倒産件数(1万855件)の2.6倍に達した。2013年の倒産は5年連続で前年を下回り、1991年以来22年ぶりに1万1,000件を割り込んだが、休廃業・解散は年々増加をたどり対照的な動きをみせた。中小企業金融円滑化法で倒産が抑制されている一方で、業績ジリ貧や後継者難などで事業継続を断念する企業が増えていることがわかった。』
『2013年の休廃業・解散は、2万8,943件(前年比4.0%増、前年2万7,825件)で、2年連続で前年を上回った。


倒産が減っているのは事実だが、その代わりに休廃業や解散する企業が増えている、と。
これだけでも衝撃的です。

デフレは、技術や文化を継承できなくる恐ろしい経済状況なのだ、ということがよくわかります。

さらに、倒産・休廃業・解散にも入らない
M&A…事業売却があるのでは?と調べてみました。

ググってみるとM&A支援のコンサル企業がいっぱい出てきます。
総じてここ数年の件数増加を誇らしげに載せています。
企業のサイトですから当然でしょうが、M&Aは増えているってことでしょうか。

こんなサイトが有りました。
http://blog.livedoor.jp/cachaca/tag/M%26A

このサイトでは、以下にリンクしたのれん代償却の不要化の効果に疑問を呈しています。
しかし、外国企業にとってどうなのかという観点では、サイトに載っているデータに整合性が出て来るように思います。

M&Aは関係する規制緩和によって1999年頃から増え始め2006年にピークを迎えます。
消費税増税でデフレに転落した影響もありそうです。
’11年まで減少が続いた後、増加へ転じて去年まで増え続けています。
買収額は1999年がピークで以降は現在まで減少傾向。
しかし、額の方は、「in-in」が減って「in-out」が増える傾向。
去年は「out-in」が増えています。

調べてみると
「in-in」は国内企業同士の買収。
「in-out」は国内企業が外国企業を買収。それが出来るのは0.3%の大企業でしょうね。
「out-in」は外国企業による国内企業の買収。

注目すべきは
「外国企業に買収される」ケースが増えた去年のデータです。

安倍政権の方針にはこのようなものがあります。
日経新聞の記事 「M&A、のれん代償却不要に 再編支援へ政府検討  会計基準見直し企業負担軽減」
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2404Z_W4A120C1MM8000/?dg=1


記事の最後には
『M&A助言のレコフ(東京・千代田)によると、13年に日本企業がかかわったM&A金額は8兆4597億円と、前年比29%減った。』
とありますが、M&A件数の増加と外国企業が買収した金額の増加を見ると、何が増えたのか分かるでしょう。

要するに、この傾向に則って、外国企業による日本企業買収「も」増やそうとしているわけですね。

日本企業、戻ってこれますか?

まとめると
・「倒産」件数は減ったものの「休廃業・解散」が増えている。
・外国企業に買収される件数は増える可能性が高いと懸念される。
ということですね。
何が増えているのか、かなり明確になりました。
う~~ん。「日本」は取り戻せるんだろうか?

それでも雇用が確保されればマシ、と考えるべきか。
外国企業になっていくのも仕方ない、自己責任だ、と見るべきか。

「景気回復」ってなんでしょうかね。

*Twitterのフォロワーさんから商工総合研究所のサイトと資料を教えて頂きました。

中小企業とM&A(PDF書類)
http://www.shokosoken.or.jp/chousa/youshi/25nen/25-3.pdf

外国企業によるM&Aが増えているのは確かですが、懸念すべき増加率なのかはまだ留保が必要ですね。
方向性としては良くないと思いますが。

中小・中堅企業における事業継承の実態調査
http://www.shokosoken.or.jp/chousa/youshi/26nen/you201402.htm

後継者に「息子・娘」を考えている事業者が約7割です。
一方で、事業売却に関心がある企業は15.1%。関心のない事業者は53.3%です。
しかし、不況が続き少子化が進むと事業継承が難しくなり、倒産しなくとも、休廃業・解散の増加は止まらず、M&Aの選択が増えていく懸念はありますね。
(*以降は19時50分追記)

このサイトによると
http://www.chusho.meti.go.jp/…/H18_h…/h18/html/i3230000.html
中小企業の場合は企業価値の評価が低くても従業員が路頭に迷わないことを第一にM&Aに応じる割合が高いようで、泣けてきます。

なんだか後ろ向きな分析ばかりで気が引けます。

前向きな話
中小企業(総企業の97%)に元気になってもらうには、国内の仕事・需要を創出することが第一でしょう。
そうすれば、外国へ出た企業も戻ってくるでしょうし、倒産だけでなく休廃業・解散する企業も減るでしょう。

財政出動で需要創出が可能です。
安倍政権の最初の予算10兆円で前政権での低迷状態から脱しかけました。
それ以前にも、ニューディール政策など積極財政が不況から脱却させた例があります。

自国建て通貨での国債発行…つまり「国の借金」で財政破綻することはあり得ません。
日本など先進国で「借金」を減らした国はないのです。減らそうとすれば衰退しますからね。
経済成長で税収が増えますから、いくら「借金」があっても大丈夫なわけですね。

家計感覚の「節約」「削減」「緊縮」による誤った国政がデフレを悪化させてきたことに気付く必要があります。
これは与野党関係ありませんし、マスコミも、多くの国民も間違った認識にハマり込んでいます。

この選挙で
財政出動での景気回復が浸透していくことを期待したいのですが
どこの党も「節約」「削減」「緊縮」なんですよね。
このマインドコントロールから抜け出すことを、景気回復への前向きな第一歩にしましょう。