暦は10月、秋である。
なのにこの暑さはなんなんだろうっ!
残暑と呼べる暑さではない。こんな暑い時は「やっぱり山だねw」。
ということで、今回は熊本県の南部にある山江村の「やくし山」に決定。標高は999mとちょっと惜しい低山であるが、近くに「マロン岩峰」という岩山もあるので、セットで登るとちょうどよさそうだ。
~やくし山~
熊本県100名山の一つである。近くにある仰烏帽子岳と同じく福寿草の群落があることでこの山が知られている。
熊本市内からだと九州自動車道を利用して人吉ICから行くとすぐであるが、お金がもったいないので一般道を利用する。時間的には4時間近くかかってしまうが、朝早く出かければ3時間ほどで到着する予定である。
朝5時に出発、国道3号を南下し、八代で県道158号に入って一旦球磨川を渡り、国道219号で人吉市内に向かう。途中に道の駅坂本がちょうどよい休憩地点だ。
人吉市に入り、県道17号で万江川と九州自動車道沿いを北上する。
九州自動車道の下を何度かくぐり、ひたすら北上する。道は2車線で交通量も少ないので走りやすい。人吉から17kmほど進んだ水無出口という地区の交差点をまっすぐ進む。この先にも人家があるので道はそれほど悪くないが、車が1台通れるくらいの狭い道だ。
交差点から2kmほど進むと登山口に到着。表示などはないので見落とす可能性があるから事前にGoogleストリートビューあたりで確認しておくと良い。道の左側に駐車スペース(多分離合用のスペース)があるので、そこに駐車する。
熊本市内から何度か休憩を挟んで2時間40分で到着。計算上ではありえない時間だが、そこはあまり詮索しないように…。
と、その先が工事現場になっている。駐車スペースのところに工事現場用のプレハブ小屋もある。
「なんか…ここに停めてていいんだろうか…」
という罪悪感がうまれる…と、そこに工事関係の方と思われる車が到着する。
車を駐車したいとの旨を伝えると快く承諾していただいた。
ということで、予定通りここで準備を開始。
やくし山に向かって、山登り開始~!
登山口には作業用のモノレールが設置されていた。昨夜ネットで調べた時にはなかったのだが、最近設置されたのだろう。
モノレールのレールをまたいで登山道を進む。一旦モノレールと反対方向に急坂を登り始めるが、すぐにモノレールと並走するように進む。
モノレールのレール沿いを歩いても全く間違いではないが、その傾斜はとんでもないのでやっぱり登山道を進もう。
杉林の地形に騙されないように登山道を進む。ただ、沢に向かう道は草に覆われて見つけにくいし、沢に降りる道の一部は崩れており、注意して歩かないと沢に真っ逆さまに落ちてしまいそうだ。
危険極まりない道を降ると沢沿いの道となる。ここからの道はしばらくわかりやすい。しかし、沢を渡り始める頃からテープなどの目印がなくなっており、道も風水害の影響で道が崩れているので分かりづらい。とりあえず沢沿いを歩けば間違いないだろう。
沢を外れないように右往左往しながら進むと登り口を発見。人工林の中にもヒラヒラテープが見える。
道がわかって安心したのでここで一旦休憩する。
荷物を降ろしてタバコを吸ってると何やら動くものが…!
野犬だっ!…いや、待て…首輪が付いてるぞ…
かなり痩せ細っている。山に迷い込んだのか?それともはぐれて迷子になったのか?
とりあえず、噛まれないように岩の上から様子を伺っていると、こっちに興味はありそうだが、近寄るほどでもない。水を飲んで、しばらくすると沢を登って行った。
今年はよく野犬に遭遇するなぁ…。
気を取り直して出発、杉林の急勾配を登り始める。
勾配がかなりきついが、登山道はトラバースしているので少しずつ標高を稼いでいく。
かなりキツいぞ…道も狭いし、滑りでもしたら…
と、足元に気をつけながらゆっくりと登っていく。
フゥ…
と、一息ついた時だった。なんか後ろで荒い息遣いが聞こえる。
振り返ってみるとさっきの犬がついてきてるっ!
ちょっとびっくりしたが、こんな山の中での出会いだ。
「よし、一緒に登るぞっ」
としばらく後ろをついてきてたが、私の足取りが遅すぎたのだろうか、先を歩くようになり、とうとうどっかに行ってしまった…。
まぁ…いいか…
ちなみにこのやくし山までの登山道、開けた場所がない。山頂までのほとんどを森の中を歩き続けることになる。
果てしなく続きそうな登り。下を見たらけっこう登ってきているのだが、先を見てもまだまだ勾配が続いており、心が折れそうだ。
山の標高と距離だけで判断して楽そうだったが、「やくし山」けっこう険しいぞ(汗)
30分かけてようやく尾根に取り次いだ。
ここでこの尾根は痩せ尾根で、 休憩。急勾配は終わったみたいだ。
ここから先は尾根を直線ぎみに登っていく。急とまではないが、ジワジワと太ももに負担がくる坂道だ。
痩せ尾根なので迷うことはない。急勾配を登り終えると平坦な稜線となる。
ここからは自然林だ。上は相変わらず開けていないが、木々の間から見える空は快晴だ。山頂からの景色を楽しみにがんばろ~w
しばらくは、なだらかな稜線をアップダウンしながら進む。
最後、ちょっとキツめの勾配を登り終えると林道と出合う。
ここはさすがに空が開けていて気持ちいい。一旦休憩しよう。
林道をまたいで、山道に入る。実は林道を進んだ方が楽にやくし山山頂に行けるのだが、せっかくの登山道、キツい思いをした分山頂での達成感もひとしおなのでここは登山道を進もう。
尾根から外れないように勾配を真っすぐに登っていく。最初の急斜面の疲労も手伝ってか、けっこうキツいな…
登り終えると少し平坦になり、アンテナ塔が立っている。
周りの木々の方が高くてアンテナが隠れてしまっているが、機能を果たしているんだろうか…
ここからしばらく平坦な道で、痩せた稜線を進む。
次のピークで木々の間からやくし山らしき山がやっと見えた。もうちょっとだ。
最後の比較的なだらかな登りを登り終えると山頂だ。はやる気持ちを抑えつつ、ゆっくりと進む…そして…
やくし山山頂に到着~
眺望は南側だけだが、天気がいいので周りの山々が美しい。
九州自動車道が眼下に見え、南東の方向に次の目的地「マロン岩峰」が見える。
地図だと近そうだったのだが、こうしてみるとけっこう遠いな…汗
思いのほか疲れていたので、少し長めに休憩しよう。バナナを食べて栄養補給。
さて、そろそろマロン岩峰に向かおうか。
登りの登山道から向かって90度くらいの方向に目印を発見、害獣ネット沿いに登山道を降る。
方向さえ間違わなければ降るだけで無事に林道と出合うはずだ。
林道を右に進むと広場のような場所があり、そこに道しるべ的な目印がある。ここがマロン岩峰への登り口だ。
写真にあるようにススキの中を突き進む。軽度の藪漕ぎだ。
ススキ原が終わるとゴツゴツした岩場の登り。足場が悪いので気をつけて登ろう。
この岩場のピークを過ぎたら尾根伝いにある害獣ネット沿いが登山道だ。
が、ここを素直に進むと藪漕ぎ地獄が待っている。そこでオススメは、少し尾根から左に外れての経路を進む。道があるわけではないので歩きやすいとまでは言えないが、藪漕ぎするよりマシだ。ただ、右手の尾根を見失わないようにしないと迷子になるかもしれないので、注意して進もう。
なんとか迷子にならずに進むと最後の急勾配が待ち構えている。
この、泣きたくなる勾配はやくし山登り始めの勾配に負けず劣らずの斜面なのに、道は明らかに真っすぐ登っている。人工林の中を上手いことトラバースして登ろうとするが、これがまた大変である。この前の千間山を思い出すな…汗
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ヘトヘトになりながらも、なんとかこの急勾配を登り終えるとマロン岩登峰へ続く稜線に取り次ぐ。
ここからは岩場の危険な稜線を進むことになるので注意してゆっくりと安全第一で進もう。
ひとつめのピークに上がると目的の「マロン岩峰」がすぐに見える。
あともう少しだ。
このピークとマロン岩峰を結ぶ稜線はかなり切り立った岩場である。
けっこう危険極まりない場所だな… なんか安全策があってもいいくらいだ。
最後の岩登り…
なぜか笑いが止まらない。ここまでの苦労が報われる瞬間まであと少し…
そして頂上到着~っ!!
おおっ!まさに岩場の先は頂上って感じだw
360度見渡せる絶景ポイントである。
↑パノラマ写真(クリックで拡大)
遠くは霧島連山や市房山、近くにはさっきまでいたやくし山の崩れた山肌も見える。
いやぁ~登ってきて良かったなぁ~w
久しぶりに満足感に浸れた。
写真を撮りまくって、景色を堪能して、とても地上では味わえない至福の時だ。
しかし、天気が良すぎて日差しが強い。あまり長居はできないな…
ちょっと戻って、日陰に入り、ちょっと遅めのお昼をとる。
10月に入ったとはいえ、まだまだ九州は暑いな…。
さて、そろそろ下山しよう。
下山ルートは登ってきたルートの逆順でいいのだが、できれば藪漕ぎは避けたい。
林道から登った岩山までは逆順で戻り、そこから登り口の林道ではなく、Yの字に分かれているもう一本の林道の方に下ってみた。
すると藪漕ぎすることなく林道に出る。そこから本線の林道に戻り、ここからはやくし山に戻ることなく林道を降る。
この林道を進むと最初の林道出合だった箇所までいい道を帰れる。
体も疲れているので復路はあまり体力を使わないようにこの林道を利用するとよい。
最初の林道出合からは登りと同じ急斜面をトラバースで降っていく。
長やぶ谷まで降って、そこから沢を奥へと進み「高鳥(たかと)岩」というのを見る予定だったが、けっこう予定時間をオーバーしてしまったのと、体力もかなり消耗していたので素直に帰ることにした。
沢を降って、登山口に無事戻って今回の山登りは終了~
今回登ったやくし山とマロン岩峰は、標高こそない低い山ではあるが、その登山道の複雑さや崩壊、加えて目印の少なさから初心者にはオススメできない。多分一年前の私なら迷子になった挙句、マロン岩峰には登頂できなかったのではなかろうか…。
ネットの情報も2~3年前の情報が最新であり、現在の状態は様変わりしている。また、ここ最近で登山道が自然災害などで崩壊していたり、草木でわかりづらくなっていたり、テープなどの目印も朽ち果てていたりで、決して整備が行き届いている状態ではない。
登る際は、しっかりと下調べをして、できれば上級者の同行の元で登るのをオススメする。
とはいえ、苦労して登った見返りは十分である。特にマロン岩峰からの景色は一度は見ておくべきだろう。
さて、帰りは高速を使ってさっさと帰ろっと…。
今回のルート(クリックで拡大)
そして今回の植物
おわり