taburogu -3ページ目

Losin'

自らの限界を超えたいと、予定表を文字で埋めてみた。削れるだけ時間を削り、三~四時間しか眠れない日々が続いた。風呂にもゆっくり入れない、本を読む時間すらない。積み重ねて来たものが壊れるかもしれない。そんなリスクを抱え、無理と承知で無理をしていた。

いったい何を手にしたかったのだろうか。何をするにも余裕がなく、見直す時間もなかった。一時のものを手にしてそれに喜んでた。一時のものでなければ喜んではいられなかった。そうしているうちに何を失ったかわからなくなるほど、大きな何かを失ってしまった気がする。

ただの文字だった予定を全て現実にした。寝坊を含め、遅刻は一度もしなかった。迫り来る時間を全て乗りこなした。だけど、なぜか悲しかった。現実が空想への扉を閉ざして行く。全てのものが灰色で、夢を見る前に目覚ましが鳴っていた。

永遠は誰のものだろうか。そんなことばっか思っていた。直接的すぎる思考が、永く遠い距離を強引に近くしようとする。ズルだって、理由を組み立てればズルじゃない。そうやって、普遍的なものを追い求めてしまった。永遠なんてつまらない。そんなことを忘れていた。

初めて夜更かしをした朝、夜の短さに驚愕した。今の悲しみはその時の悲しみに近い。振り返る場面、すれ違う人。手を出したらいけない世界。昇る朝日が街を照らすが、コンクリートは今日も冷たい。

ゲイのブログ検索サイト - ゲイログ  人気ブログランキング

見えない光

なぜか、新宿が変わっていないか心配だった。追いかけた光が今もあるのか確かめたかった。眠らない街に眠る光を、もう一度手にしてみたかった。それだから実際に新宿に行ってみることにした。だが、結局なにも見つけられなかった。もう光はなくなってしまったのだろうか。いや、違う。新宿は相も変わらず光で溢れていた。きっと変わってしまったのは自分。もうそんな光、欲しくなんてないのだ。

「会いたいんだ。」

電話を切っても、その声が右耳から離れない。今だって、離れることはない。たった一言が与えるこれだけの衝撃。いくら新宿を探したって、見つからないモノだと思う。今まで何を追い求めていたのだろうか。流行に流される安い感性が嫌いだった。けど、そんなこと言えたことだろうか。本当に欲しかったのは何なのだろうか。もしかしたら、かざりっけのない素直さ、少し強引な優しさだったんじゃないだろうか。

たまには比較対象を探してみるのも悪くない。慣れた関係、飽きた日常、本当の幸せはそんな中に隠されているから。台所の背中を見ながら俺は何を思っていたのだろうか。はやる気持ちが抑えきれずに、日常という地に足がつかない。だからって、待つ楽しみを知らなかったわけじゃない。だんだんとワンルームに、香ばしい匂いが広がっていく。本当の幸せにだって、気づけなかったわけじゃない。絡み合った糸がさらに絡み合ったところで、より太いものになるんじゃないかって。出来上がったパスタに、そんなこと考えていたんだ。

ゲイのブログ検索サイト - ゲイログ  人気ブログランキング

対岸の彼氏

溢れる人の中で、すれ違いに会釈しても気づかれることなかった。携帯電話を片手にずっと誰かを探してる。そっか。俺とは面識ないもんね。会釈しながら言った「お疲れさまです。」の一言が多すぎる人に消された。顔ぐらい知っていてくれても良いと思った。なんとなく、恥ずかしい思いでいっぱいだった。

いつからか自分の限界を知っていた気がする。なんだって理屈が先行して、出来ないことは出来ないと諦めた。安心したいから誰かに相談し、くれる優しい言葉に縋り続けた。気がついたらただ時が過ぎているだけで、得ているものは何もなかった。

「会うのも、顔を見るのも、嫌で嫌でたまらなかった。」

何度も会ってはいるから、知っていると思ってた。年も近く、同じ大学で、同じくゲイである彼。あか抜けていて、俺からはとても輝いて見えた彼。そんな彼にいつからか抱いていた劣等感。何も努力してなかったのに本当に勝手で、そんな自分にも憤りを覚えた。

多分、努力してない自分を見つめるのが嫌だったんだと思う。だけれど一枚隔てて、彼をずっと見てた。同じ世代、同じ環境、そして同じゲイ。恋愛感情抜きに、色々な話がしてみたかった。動き出す為の刺激がもらいたかった。そして、自分の限界を超えてみたかった。だけれど、そんなのはどれも後付けの理屈な気がする。本当はずっと、友達になりたかったんだ。

ゲイのブログ検索サイト - ゲイログ  人気ブログランキング