宿の1階は、
誰のもの?

ホテルへ入る。

フロントで名前を伝え、
鍵を受け取り、客室へ向かう。

多くのホテルで1階は、
泊まる人が通過するための場所です。

けれど、カフェで朝食をとる近所の人、
パンを買って公園へ向かう人、
アートを見るために立ち寄る人がいれば、

ホテルの入口は、
宿泊者だけのものではなくなります。

泊まらない人へ場所をひらくことで、
ホテルは町の一部になれるのでしょうか。


6つの宿から、町と客室の間にある空間を見ていきます。

THE GROUND FLOOR AS A COMMON PLACE

泊まる人と、町で暮らす人が、
同じ場所を使う。

この記事でいう「1階」は、建物の階数だけを意味しません。

道路、公園、商店街など、町からホテルへ入ったとき、最初に触れる入口の層です。

コーヒーを飲む。パンを買う。本を開く。作品を見る。夜に音楽を聴く。

宿泊以外の目的があれば、
予約をしていない人もホテルへ入る理由が生まれます。


ただし、扉を開けておくだけで、異なる人が自然に交わるとは限りません。

画像は記事テーマをもとに作成したイメージビジュアルです。実際の建物、ロビー、カフェ、家具、作品、人物、周辺景観とは異なる場合があります。

EDITOR’S NOTE

カフェを置けば、
ホテルは町にひらかれるのか。

宿泊者以外が入れるカフェやレストランを設ければ、ホテルは外から利用しやすくなります。

けれど、実際の利用者が旅行者ばかりなら、開放的に見えても、ホテルの中だけで完結しているかもしれません。

反対に、人気店として混雑すれば、宿泊者が静かに休める場所を失うこともあります。

誰でも入れることと、
異なる人が心地よく共存できることは別。


入口のつくり、訪れる目的、客室との距離から、6つの宿を読み解きます。

FOUR PERSPECTIVES

町にひらかれた入口を読む、4つの視点

ENTRANCE|初めての人も入りやすいか

PURPOSE|宿泊以外に何をしに来るのか

MIX|旅行者と地域の人が同じ場所を使うか

BOUNDARY|にぎわいと客室の静けさをどう分けるか

01 / ART STORAGE

KAIKA TOKYO by THE SHARE HOTELS

ホテルの中に、
アートの裏側をひらく。

KAIKA TOKYOは、ホテルとアートストレージを組み合わせた施設です。

共用部には、ギャラリーなどが作品を公開保管するストレージが設けられ、通常は見えにくい作品の保管や管理の風景を見せています。

アートをロビーの装飾として飾るだけではなく、作品が展示へ向かう前後の状態まで、ホテルの中へ持ち込む。

館内のカフェを利用する人にも入口があることで、宿泊しなくてもホテルとアートの関係へ触れられます。

町へひらいているのは、椅子やテーブルだけではありません。現代アートを支える仕事そのものが、ホテルの共有空間へ現れています。

ENTRANCE|カフェとアートを目的に訪れられる

PURPOSE|作品を見る、アートの保管方法を知る

BOUNDARY|鑑賞できる場所と宿泊者空間を分ける

 

 

02 / ALL-DAY CAFE

Hotel Noum OSAKA

朝食から夜の一杯まで、
町の時間を受け入れる。

Hotel Noum OSAKAの1階にあるカフェラウンジは、宿泊者以外も利用できます。

朝は朝食とコーヒー。昼はランチや軽食。夕方からはワインやバーのメニュー。

ホテルのラウンジを、チェックイン後だけ使う場所にせず、一日の異なる時間に町から人を迎えています。

近所で朝食をとりたい人と、これから大阪を歩く旅行者。同じテーブルを使っていても、過ごしてきた時間と向かう場所は違います。

大きなイベントを開催しなくても、毎日の食事やコーヒーを通じて、ホテルと町の境界を薄くしている場所です。

ENTRANCE|宿泊者以外も使えるカフェラウンジ

PURPOSE|朝食、仕事の合間、夕方の一杯

QUESTION|日常利用と宿泊者の居場所を両立できるか

 

 

03 / PARKSIDE ENTRANCE

sequence MIYASHITA PARK

ホテルと公園の間に、
中間地点をつくる。

sequence MIYASHITA PARKのカフェ&ラウンジ「VALLEY PARK STAND」は、宮下公園とホテルをつなぐ入口階にあります。

建物の表記では4階ですが、公園からホテルへ入る人にとっては、町と最初に接する「1階」のような場所です。

朝昼はカフェ、夜はパークサイドのバーとなり、ホテルはこの場所を旅行者と地域をつなぐビジターセンターとして位置づけています。

ホテルの中へ人を呼び込むというより、公園から続く場所にカフェを置き、どこからがホテルなのかを曖昧にする。

公園を歩く人と宿泊者が行き交う立地そのものが、ひらかれた入口をつくっています。

ENTRANCE|公園と同じ高さにあるカフェラウンジ

PURPOSE|休憩、待ち合わせ、渋谷を歩く起点

BOUNDARY|公園のにぎわいと客室を階で分ける

 

 

04 / BAKERY & PARK

THE KNOT TOKYO Shinjuku

パンを買うことが、
ホテルへ入る理由になる。

THE KNOT TOKYO Shinjukuの1階には、MORETHAN BAKERYとラウンジがあります。

焼きたてのパンを買うためなら、ホテルへ泊まる予定がなくても扉を開けやすい。

購入したパンをラウンジで食べることも、正面の新宿中央公園へ持っていくこともできます。

パン屋という日常的な目的が、ホテルの入口と公園をつないでいます。

一方で、人気のレストランやベーカリーが前面に出るほど、宿泊者にとってはロビーより飲食店に近く感じられるかもしれません。にぎわいと滞在の静けさをどう共存させるかも、このホテルの特徴です。

ENTRANCE|パン屋という分かりやすい入口

PURPOSE|パンを買う、食事をする、公園へ向かう

QUESTION|飲食店のにぎわいとホテルらしさをどう保つか

 

 

05 / NEIGHBORHOOD LOUNGE

HOTEL GRAPHY NEZU

旅行者と谷根千の日常を、
同じラウンジへ。

HOTEL GRAPHY NEZUの1階には、宿泊者以外も使えるカフェ&ラウンジがあります。

東京のガイドブックや地図が置かれ、これから町を歩く旅行者が行き先を考える場所にもなっています。

ホテルがあるのは、大型商業施設が並ぶ観光地ではなく、住宅、寺社、小さな店が続く谷根千の一角です。

近所からカフェへ来る人と、海外や国内から訪れた旅行者が、同じ場所でコーヒーや食事を楽しむ。

ただ人を混ぜるだけでなく、スタッフや地図を通して、ホテルの外にある町へ旅行者を送り出すことも、1階の役割になっています。

ENTRANCE|地域の人も利用できるカフェ

MIX|近所の日常と旅行者の滞在が重なる

OUTSIDE|地図や案内から谷根千の町へつなぐ

 

 

06 / COFFEE, BAR & MUSIC

CITAN Hostel

朝のコーヒーから、
地下の音楽まで。

CITANの1階入口には、宿泊者だけでなく近所の人も利用するBERTH COFFEEがあります。

地下にはバー&ダイニングがあり、食事や酒に加えて、DJやアーティストによる音楽を楽しむ夜もあります。

朝は町へひらかれたコーヒースタンド。夜は人が集まる地下ラウンジ。客室はその上階に置かれています。

異なる時間帯と目的を、一つの大きなロビーへ詰め込まず、建物の縦方向へ分けているのが特徴です。

にぎやかな交流を求める人も、眠る時間には客室へ戻れる。町にひらく場所と、宿泊者の居場所を、階によって調整しています。

ENTRANCE|1階のコーヒースタンド

PURPOSE|コーヒー、食事、酒、音楽

BOUNDARY|入口、地下ラウンジ、客室を縦に分ける

 

 

BETWEEN THE CITY AND THE GUEST ROOM

宿の1階は、
誰のもの?

作品を見る人。
朝食をとる人。
公園を歩く途中で休む人。

パンを買う人。
町の地図を開く人。
夜の音楽を聴きに来る人。

ホテルの入口に宿泊以外の目的があれば、
町の人も、扉を開けることができます。

けれど、必要なのは、
ただ誰でも入れる場所にすることではありません。

にぎわう場所と、静かに過ごす場所。
町にひらく場所と、宿泊者を守る場所。


その間にちょうどよい境界をつくることで、
ホテルの1階は、町と旅人が一時的に共有する場所になっていきます。

REFERENCE

記事作成にあたり、各ホテル、カフェ、ラウンジ、レストランの公式情報、および楽天トラベルの施設・予約情報を確認しています。

※掲載内容は2026年7月時点の公開情報をもとに構成しています。店舗、展示、営業時間、メニュー、イベント、設備、サービス、宿泊プランなどは変更される場合があります。最新情報は各施設の公式サイト・予約ページでご確認ください。

ホテルは、
何を循環させる?

ホテルでは、毎日たくさんの電気や水が使われます。

食材が運び込まれ、料理となり、使い終えた水や、食べられなかったものが外へ出ていきます。

タオル交換を減らす。
使い捨てのアメニティを置かない。

それも大切な選択です。

けれど、今回見たいのは、宿泊者からは見えにくい場所で、ホテルを動かす仕組みそのものがどう変わっているか。

電気をつくる。
水をもう一度使う。
食べたあとのものを、畑へ戻す。


オフグリッドだけに限らず、異なる規模と方法で環境負荷を減らす6つの宿を訪ねます。

BEYOND “ECO-FRIENDLY”

「環境にやさしい」で終わらせず、
宿を動かす仕組みに泊まる。

環境への配慮は、旅行者に見えるものだけではありません。

建物が必要とするエネルギーを減らす。地域の水や自然エネルギーを使う。厨房の生ごみを堆肥へ変える。

何を外から受け取り、何を減らし、何を生み出し、使ったあとにどこへ戻すのか。

その流れを見ると、ホテルの裏側にある環境への考え方が見えてきます。

4つの視点

INPUT|外部から何を受け取るか

REDUCE|何を使わないようにしたか

CREATE|ホテルの中で何を生み出すか

CIRCULATE|使ったあと、何をどこへ戻すか

画像は記事のテーマをもとに作成したイメージビジュアルです。実際の建物、設備、発電装置、客室、料理、農園、周辺景観とは異なる場合があります。

EDITOR’S NOTE

環境配慮は、
設備の多さだけで測れるのか。

太陽光パネルや発電設備は、ホテルの取り組みを分かりやすく見せてくれます。

一方で、最新設備がなくても、食材を無駄なく使い、清掃の回数を見直し、捨てるものを減らすことはできます。

小さな宿と大型ホテルでは、使う資源も、実現できる方法も異なります。

今回は「どのホテルが最も環境にいいか」ではなく、それぞれが自分たちの規模や土地に合わせ、どこから仕組みを変えているかを見ていきます。

01 / ZERO ENERGY

ITOMACHI HOTEL 0

電気をつくる前に、
必要なエネルギーを減らす。

愛媛県西条市にあるITOMACHI HOTEL 0は、日本初のゼロエネルギーホテルとしてつくられました。

ゼロエネルギーとは、電気をまったく使わないことではありません。

建物の断熱性や設備効率を高め、自然の光や風も利用しながら、まず必要なエネルギーを減らす。そのうえで再生可能エネルギーを生み出し、年間のエネルギー収支を実質ゼロへ近づけます。

環境配慮を後から加えた設備ではなく、建物の設計段階からホテルの使い方を組み直している点が特徴です。

旅行者は発電量を意識し続けなくても、客室で過ごすこと自体が、エネルギー使用を抑えた建物を支える選択になります。

REDUCE|建物が必要とするエネルギーを抑える

CREATE|再生可能エネルギーを生み出す

QUESTION|環境性能を、快適さを我慢させずに伝えられるか

 

02 / ISLAND ENERGY

八丈ビューホテル

発電した電気を、
島を巡る移動へつなぐ。

八丈ビューホテルの屋上には、太陽光発電と蓄電設備があります。

そこで生まれた電気は、館内で使われるだけでなく、宿泊者が利用できるEVカーシェアへも供給されています。

さらに、館内で供給する水の約95%には八丈富士の地下水を利用。太陽熱を使った温水設備や、地元食材を育てる温室にも取り組んでいます。

島のホテルでは、宿泊施設だけを省エネにしても、観光地を巡る移動には別のエネルギーが必要です。

ホテルでつくった電気を車へつなぎ、水や熱も島の環境から受け取ることで、滞在と移動を一つの仕組みとして考えています。

INPUT|八丈富士の地下水と太陽の光

CREATE|電気と温水を生み出す

CIRCULATE|発電した電気をEVでの島内移動へ

 

03 / FOREST & ENERGY

軽井沢プリンスホテル イースト

森を眺めるだけでなく、
地域の資源として使う。

軽井沢プリンスホテル イーストを含むプリンスグランドリゾート軽井沢では、水力発電所を稼働させています。

また、製材時に生まれる木くずなどを圧縮したペレットを燃料にするストーブや、電気自動車、電気カートなども導入しています。

敷地内の倒木や伐採木、建物の解体で出た廃材は、テラス、館内のアート、ウッドチップ、体験プログラムの材料として再利用されています。

森林リゾートにとって、木々は宿泊者へ見せる景観である一方、手入れを続けなければ維持できない環境でもあります。

森から得るものを燃料や素材へ変えながら、リゾートの中へ戻す。景色と資源の間にある関係を考えさせる取り組みです。

INPUT|水、木材、森林から生まれる資源

CREATE|水力による電気

CIRCULATE|倒木や廃材を建築・アート・体験へ戻す

 

04 / URBAN CIRCULATION

ホテルニューオータニ(東京)

大量に使うホテルだからこそ、
大きな循環をつくれる。

数多くのレストランや宴会場を持つホテルニューオータニでは、厨房から毎日大量の食品残渣が出ます。

館内のコンポストプラントでは、それらを有機堆肥の原料へ変え、契約農家へ送り出しています。

農家で育てられた野菜や穀物の一部は、再びホテルの食材として使われ、庭園の肥料にも利用されます。

厨房排水を再生し、トイレや植物への散水に利用する中水設備もあります。

自然の中にある小さな宿だけでなく、都市の大型ホテルにも循環はつくれる。むしろ扱う食事と水の量が多いからこそ、仕組みを変えたときの影響も大きくなります。

REDUCE|食品残渣を廃棄物のまま終わらせない

CIRCULATE|堆肥、農作物、ホテルの食卓へ

CIRCULATE|厨房排水を散水やトイレ用水へ

 

 

05 / COMFORTABLE CHOICE

GOOD NATURE HOTEL KYOTO

捨てないことを、
我慢のように見せない。

GOOD NATURE HOTEL KYOTOでは、客室に使い捨ての歯ブラシ、ヘアブラシ、シェーバーを常備していません。

各フロアにウォーターサーバーを設置し、客室のタンブラーを使うことで、ペットボトルの使用も減らしています。

館内から出た食品残渣は堆肥化され、農家と連携した循環型農業へ。菓子づくりで出るカカオの皮は、お茶として客室へ戻ります。

建物はWELL認証とLEED認証を取得し、環境性能だけでなく、空気、光、睡眠、緑など、人が心地よく過ごせる環境も重視しています。

環境のためにサービスを減らすのではなく、捨てない選択そのものを、デザインと快適な滞在へ変えているホテルです。

REDUCE|使い捨て用品とペットボトルを減らす

CIRCULATE|食品残渣を農地へ戻す

CIRCULATE|カカオの皮を客室のお茶へ

 

06 / SMALL DAILY CHOICES

草津温泉 ホテルクアビオ

大きな設備がなくても、
食べ方から変えられる。

草津温泉のホテルクアビオでは、植物性の食材を中心としたフレンチマクロビ料理を提供しています。

マクロビオティックの考え方にある「一物全体」は、食材の一部だけでなく、皮や根なども含めて全体を生かそうとするものです。

野菜の端材をスープのだしに使い、残ったものをコンポストへ。食材をできるだけ皿の上で使い切り、使い終えたあとも土へ戻します。

連泊時には清掃を簡略化する選択肢もあり、水、洗剤、リネン交換に必要なエネルギーを抑えます。

発電設備の規模ではなく、毎日の調理と清掃を細かく見直す。宿の大きさにかかわらず始められる、生活に近い循環です。

REDUCE|食材をできるだけ使い切る

CIRCULATE|料理からコンポスト、土へ

REDUCE|連泊時の清掃やリネン交換を見直す

 

 

SIX DIFFERENT CYCLES

6つの宿、6つの変え方

ITOMACHI HOTEL 0
建物が使うエネルギーを減らし、年間収支をゼロへ近づける。

八丈ビューホテル
島の太陽と地下水を、宿泊と移動へつなぐ。

軽井沢プリンスホテル イースト
森と水を、電気、燃料、素材として生かす。

ホテルニューオータニ
大量の食と水を扱う都市ホテルの中に循環をつくる。

GOOD NATURE HOTEL KYOTO
捨てない選択を、心地よい滞在として見せる。

ホテルクアビオ
毎日の料理と清掃から、使うものを減らす。

WHAT HAPPENS BEHIND THE STAY

ホテルは、
何を循環させる?

電気をつくるホテル。
水をもう一度使うホテル。
食べたあとのものを畑へ戻すホテル。

方法も規模も、それぞれ違います。

大切なのは「環境にやさしい」という言葉ではなく、
使う前から、使ったあとまでの流れが変わっているか。

旅行者には見えにくいその仕組みも、
宿を選ぶ理由の一つになっていくのだと思います。

REFERENCE

記事作成にあたり、各ホテルの公式サイト、環境・サステナビリティ情報、および楽天トラベルの施設・予約情報を確認しています。

※掲載内容は2026年7月時点の公開情報をもとに構成しています。発電・蓄電設備、水利用、食材、清掃、アメニティ、認証、サービス、客室、宿泊プランなどは変更される場合があります。最新情報は各施設の公式サイト・予約ページでご確認ください。

 

道具と一緒に、
泊まる。

自転車で旅をするとき、
愛車はホテルの駐輪場へ。

サーフボードは車の中か、
宿の外にあるラックへ。

釣り竿や濡れたウェアは、
客室に持ち込まないよう気をつかう。

多くのホテルでは、旅の道具は、
眠る場所から少し離れたところに置かれます。

けれど、好きなことを目的に旅をする人にとって、
道具は単なる荷物ではありません。

傷をつけたくない自転車。
海へ向かう前に眺めていたいボード。
明日の朝、最初に手に取る釣り竿。

ホテルが道具の居場所をつくると、
趣味は観光の付け足しではなく、滞在の中心になります。

THE TOOL IS PART OF THE JOURNEY

荷物を預けるのではなく、
好きなことを客室まで連れていく。

「サイクリスト歓迎」「海が近い」「本が読める」と書かれた宿は、たくさんあります。

今回見るのは、趣味をイメージとして取り入れているかではなく、実際にその道具を使う人の動きまで考えられているか。

自転車を安全に運び込める廊下がある。
客室の壁に愛車を掛けられる。
サーフボードを玄関に置ける。
濡れたものを乾かせる。
釣り場から調理までがつながっている。

あるいは、本や音楽のように、
ホテル側が道具を選び、旅人へ手渡すこともあります。

道具の置き場所を見ると、
そのホテルが、どんな旅人の行動を想像しているかが見えてきます。

画像は記事テーマをもとに作成したイメージビジュアルです。実際の客室、建物、道具、設備、風景、人物とは異なる場合があります。

EDITOR’S NOTE

趣味を飾ることと、
趣味を支えることは違う。

壁に自転車の写真を飾り、サーフカルチャーを思わせる家具を置けば、趣味をテーマにしたホテルはつくれます。

けれど、実際に道具を持って訪れる人に必要なのは、雰囲気だけではありません。

入口の幅。床の汚れにくさ。保管場所。工具。洗濯や乾燥。早朝の出入り。道具を壊さずに運ぶ動線。

反対に、すべてを持参しなくても、宿で道具を借りられることで、初めて趣味へ踏み出せる人もいます。

その宿は、趣味を格好よく見せているだけか。
それとも、実際に好きなことへ向かう人を支えているか。


6つの宿を、道具と人との距離から見てみます。

THREE WAYS TO TRAVEL WITH TOOLS

道具と旅する、3つの方法

01

持ち込む

使い慣れた自転車やサーフボードを、自宅から旅先へ。その道具を安全に置けることが、宿選びの条件になります。

02

借りて使う

釣り竿や自転車を宿で借り、その土地で初めて使ってみる。道具が、知らなかった遊びへの入口になります。

03

選び、聴き、読む

本や音楽を、ホテルが選んで部屋へ置く。道具を所有するのではなく、その場所で新しく出会います。

SIX TOOLS, SIX STAYS

好きなことを旅の中心に置く、6つの宿

 
01 HOTEL CYCLE(ホテルサイクル)
02 BEB5土浦 by 星野リゾート
03 Tabist ペンション サードプレイス
04 あわかん〜釣りと家族の体験型旅館〜
05 ランプライトブックスホテル名古屋
06 ミュージックホテル コザ by コルディオプレミアム

01 / BICYCLE IN THE ROOM

HOTEL CYCLE(ホテルサイクル)

広島・尾道 自転車 しまなみ海道

愛車を預けるのではなく、
客室まで連れていく。

尾道水道沿いの倉庫を再生したONOMICHI U2。その中にあるHOTEL CYCLEは、建物全体が自転車で旅をする人の動きを想定しています。

自転車に乗った状態でフロントへ入り、そのままチェックインする。

自転車は全客室へ持ち込むことができ、一部の客室には、自転車のハンドルを再利用したサイクルハンガーも備えられています。

パブリックスペースには工具を借りられるリペアスペースがあり、自宅から送った自転車の受取や、旅のあとに発送するサービスにも対応しています。

ここでは、自転車はホテルの外で使う乗り物ではありません。チェックインから眠る直前まで、滞在の中に入り込んでいます。

TOOL|道具

自分のロードバイクやクロスバイク。宿泊者向けのレンタサイクルを利用して、尾道から走り始めることもできます。

PLACE|道具の居場所

駐輪場ではなく客室内へ。高価な愛車を自分の目が届くところへ置いたまま休めます。

SUPPORT|支える設備

乗車したまま利用できる入口、リペアスペース、工具、自転車の受取や発送など、旅の前後までを支えます。

CHECK|予約前に

自転車を客室へ持ち込む場合は、事前に宿へ伝えておくと安心。レンタル車種、サイズ、利用時間、発送条件も確認したいところです。

 

02 / BICYCLE ON THE WALL

BEB5土浦 by 星野リゾート

茨城・土浦 サイクルルーム 駅直結

愛車を壁に掛け、
眺めながら休む。

BEB5土浦は、土浦駅の改札からすぐの場所にある、自転車フレンドリーなホテルです。

専用のサイクルルームでは、自転車を客室へ持ち込み、壁のラックへ掛けることができます。

ホテルへ着いたら自転車を見えない場所へ片づけるのではなく、客室の風景の一部にする。

館内にはスタンド、空気入れ、工具のほか、洗濯ネット、物干しハンガー、シューズ乾燥機など、走ったあとの衣類や靴を整えるための貸出品もあります。

HOTEL CYCLEが自転車旅のための複合施設なら、こちらは駅と客室をつなぎ、短い時間でも走り始めやすくする都市型の拠点です。

TOOL|道具

持参した自転車。気軽に走りたい場合は、周辺のレンタルサービスやE-bikeを利用する選択肢もあります。

PLACE|道具の居場所

サイクルルームの壁へディスプレイ。寝ているあいだも、愛車を客室の中へ置いておけます。

SUPPORT|支える設備

工具だけでなく、シューズやウェアを乾かし、翌日に備えるための貸出品が用意されています。

CHECK|予約前に

すべての客室がサイクルルームではありません。楽天の部屋タイプから「サイクルルーム」を指定して予約します。

 

TWO WAYS TO STAY WITH A BICYCLE

同じ自転車宿でも、支え方は違う。

どちらも愛車と泊まれる。
けれど、旅の入口と広がり方が異なります。

HOTEL CYCLE|施設全体で支える

チェックイン、整備、客室、レンタル、発送まで。自転車旅の工程を、一つの建物の中でつなぎます。

BEB5土浦|駅と客室をつなぐ

輪行から客室へ入り、霞ヶ浦へ走り出す。交通の結節点を、自転車の出発地点へ変えています。

03 / SURFBOARD BY THE DOOR

Tabist ペンション サードプレイス

千葉・一宮 サーフボード 東浪見海岸

海から戻り、
ボードを玄関へ置く。

千葉県一宮町にあるサードプレイスは、東浪見海岸から歩いて数分のペンションです。

海辺の宿であっても、大きなサーフボードをどこに置くかは、実際に持っていく人にとって重要な問題です。

メゾネットスウィートWestの玄関には、サーフボードを置ける専用ラックが設けられています。

海から戻ったあと、車へ積み直したり、寝室の壁へ立て掛けたりせず、生活空間の入口にボードの居場所をつくる。

小さな設備ですが、サーフィンを観光的なイメージではなく、朝夕の行動として想定していることが分かります。

TOOL|道具

自分のサーフボードやウェットスーツ。現地でボードなどを借りられる場合もあります。

PLACE|道具の居場所

対象客室の広い玄関にあるサーフボードラック。眠る場所と、砂や水分を持ち込む道具の間を分けています。

SUPPORT|支える立地

東浪見海岸へ徒歩で向かえる距離。車を動かさず、波や時間を見ながら海へ出られます。

CHECK|予約前に

サーフボードラックがあるのは特定の客室です。レンタル、ロッカー、飲食施設の営業状況も事前に確認してください。

 

04 / ROD, SEA & TABLE

あわかん〜釣りと家族の体験型旅館〜

兵庫・淡路島 釣り竿 釣った魚を食べる

釣り竿を借り、
魚が食卓へ届くまで。

あわかんは、敷地内に宿泊者向けのプライベート釣り場を持つ体験型旅館です。

釣り道具や餌を持参しなくても、宿で借りて海へ向かうことができます。

初心者が道具を扱うところから、魚が掛かったときの対応まで、スタッフに教えてもらえるのも特徴です。

釣れた魚は、条件や料金に応じて、刺身、煮付け、唐揚げ、塩焼きなどに調理してもらえます。

竿を借り、海へ糸を垂らし、釣果を食卓で味わう。道具、体験、食事が、一続きの滞在になっています。

TOOL|道具

釣り竿、仕掛け、餌、バケツなど。自分の道具を持っていない人も、宿から釣りを始められます。

PLACE|道具を使う場所

宿の敷地にあるプライベート釣り場。移動を挟まず、客室と海を行き来できます。

SUPPORT|道具の先にあるもの

釣り方の案内から釣果の調理まで。道具を貸すだけでなく、体験を食事へつなげます。

CHECK|予約前に

釣り場の利用時間、混雑時のルール、道具の貸出、魚の調理受付時間・料金・匹数には条件があります。宿泊日ごとの案内を確認してください。

 

BRING YOUR OWN OR BORROW ONE

自分の道具だから深まる旅。
借りるから始められる旅。

どちらが本格的かではなく、
道具との距離によって旅の始まり方が変わります。

持ち込む|自転車・サーフボード

使い慣れた道具と旅をする。宿には、運びやすさ、保管、洗濯、乾燥などの実用性が求められます。

借りる|釣り竿

荷物を増やさず、未経験の遊びへ入る。説明する人や、安全に試せる場所までが道具の一部になります。

05 / BOOK, LIGHT & CHAIR

ランプライトブックスホテル名古屋

愛知・名古屋 24時間の本屋とカフェ

本だけではなく、
読む姿勢まで用意する。

ランプライトブックスホテル名古屋の1階には、宿泊者が24時間利用できるBOOKS & CAFÉがあります。

本が並んでいるホテルは珍しくありません。

ここで特徴的なのは、本棚だけでなく、客室の照明や椅子まで「読む時間」を中心に整えられていることです。

客室には、明るさを調整できる照明、手元を照らすリーディングランプ、足を伸ばせるオットマン付きのソファがあります。

本はインテリアではなく、選び、運び、椅子へ座り、ページを開くための道具。その一連の動作が、滞在として設計されています。

TOOL|道具

本、リーディングランプ、オットマン付きソファ。自分の本を持参することも、館内で新しい本を選ぶこともできます。

PLACE|道具の居場所

1階のカフェ、本棚、客室のソファ、ベッドのそば。館内を移動しながら、読む場所を選べます。

SUPPORT|支える設備

夜遅くや早朝にも本へ手を伸ばせる環境と、身体を休めながら読める照明・家具があります。

CHECK|予約前に

客室はコンパクトで、浴室はシャワーのみのタイプがあります。本を読む環境と、水回りや部屋の広さの優先順位を確認したい宿です。

 

06 / SOUND IN THE ROOM

ミュージックホテル コザ by コルディオプレミアム

沖縄・コザ 音楽・スピーカー ライブの町

音楽を聴く部屋から、
音楽の町へ出ていく。

ミュージックホテル コザは、ライブハウスや音楽施設が集まる沖縄市のコザにあります。

客室にはスピーカーとホテル独自のプレイリストが用意され、部屋ごとにROCK、R&B、SOCA、80’sなど異なる音楽のテーマが設けられています。

1階ロビーには、宿泊者が演奏できるピアノもあります。

音楽は客室を飾る言葉ではなく、実際に流し、聴き、演奏するものとして置かれています。

部屋で音を聴いたあと、コザ・ミュージックタウンやライブハウスへ歩く。ホテルのプレイリストと町の生音がつながる滞在です。

TOOL|道具

客室のスピーカー、オリジナルプレイリスト、ロビーのピアノ。自分のスマートフォンから好きな音を持ち込むこともできます。

PLACE|道具の居場所

スピーカーは全客室へ。ピアノは宿泊者が通るロビーへ置き、聴くことと演奏することを分けすぎません。

SUPPORT|町とのつながり

コザ・ミュージックタウンや周辺のライブハウスへ出かけ、客室の外にある音楽文化へ旅を広げられます。

CHECK|予約前に

ライブやイベントは日程によって異なります。周辺イベント、駐車場、深夜の移動、客室テーマを確認してから予約すると、滞在の輪郭がはっきりします。

 

WHERE DOES THE TOOL BELONG?

道具の居場所から、宿を選ぶ。

ホテルの豪華さではなく、
好きなものをどこへ置きたいかを考えます。

自転車を、ベッドのそばへ

HOTEL CYCLE/BEB5土浦 by 星野リゾート

サーフボードを、客室の入口へ

Tabist ペンション サードプレイス

釣り竿を、海と食卓の間へ

あわかん〜釣りと家族の体験型旅館〜

本を、椅子と灯りのそばへ

ランプライトブックスホテル名古屋

音を、客室と町の間へ

ミュージックホテル コザ by コルディオプレミアム

CHOOSE BY WHAT YOU WANT TO DO

旅先へ、何を連れていく?

しまなみ海道を、自分の愛車で走りたい

HOTEL CYCLE(ホテルサイクル)

輪行で土浦へ行き、霞ヶ浦を走りたい

BEB5土浦 by 星野リゾート

早朝の海へ、ボードを持って歩きたい

Tabist ペンション サードプレイス

道具を持たず、初めて釣りをしてみたい

あわかん〜釣りと家族の体験型旅館〜

夜更けまで、本と静かに過ごしたい

ランプライトブックスホテル名古屋

部屋で音を聴き、コザのライブへ出たい

ミュージックホテル コザ by コルディオプレミアム

CHECK 道具と泊まる前に確認したいこと
● 道具を持ち込める客室タイプと、事前連絡の必要性
● エレベーター、廊下、客室入口に道具が通るか
● ラック、鍵付き保管場所、工具、空気入れの有無
● 洗濯機、乾燥機、物干し、シューズ乾燥機の有無
● レンタル品のサイズ、料金、対象年齢、予約期限
● 海、釣り場、サイクリングコースまでの距離と早朝の出入り
● 天候、波、道路、釣り場、イベントなど当日の実施状況

TAKE WHAT YOU LOVE WITH YOU

道具と一緒に、
泊まる。

尾道と土浦では、
自転車を客室の中へ。

一宮では、
サーフボードを玄関へ。

淡路島では、
釣り竿を海と食卓の間へ。

名古屋では、
本を椅子と灯りのそばへ。

コザでは、
音を客室と町の間へ。

ホテルは、ベッドを置くだけの場所ではありません。

何を持ち込み、
何を借り、
どこへ置き、
翌朝どこへ出かけるのか。

その動きを支えることで、
ホテルは、好きなことを続けるための拠点になります。

道具を単なる荷物として扱わず、
旅人の大切な同行者として迎える。


そんな宿を選べば、旅の目的は、
名所をいくつ巡ったかではなく、
好きなことに、どれだけ深く入れたかへ変わります。

REFERENCE

記事作成にあたり、HOTEL CYCLE、BEB5土浦 by 星野リゾート、Tabist ペンション サードプレイス、あわかん、ランプライトブックスホテル名古屋、ミュージックホテル コザ、および各施設の公式情報・予約情報を確認しています。

※掲載内容は2026年7月時点の公開情報をもとに構成しています。客室、道具の持ち込み、レンタル、設備、釣り、調理、書籍、音響機器、イベント、飲食施設、サービス内容などは変更される場合があります。最新情報は各施設の公式サイト・予約ページでご確認ください。