夕食は、
宿の中で食べなくてもいい?

一泊二食の旅館なら、
夕方には宿へ戻ります。

食事処へ向かい、
その土地の料理を味わう。

移動の心配もなく、
献立を考える必要もありません。

けれど、宿で夕食を用意しないことが、
町へ出る理由になる場合もあります。

暖簾の向こうにある居酒屋。
地元の人が通う定食屋。
夜だけ灯りがともる小さな料理店。

宿に泊まり、町で食べる。

6つの宿から、ホテルと地域の食堂の関係を見ていきます。

LET THE TOWN SERVE DINNER

夕食を用意しないことは、
サービスを減らすことなのか。

宿の中にレストランがなければ、旅行者は自分で食事処を探さなければなりません。

営業時間を調べ、空席を確認し、知らない夜道を歩く。満席や定休日で、思いどおりに食べられないこともあります。

一方で、宿がすべてを館内へ集めれば、旅行者が町の店へ入る機会は少なくなります。

食事を外へ委ねる代わりに、
宿は町へ出るための情報と安心を用意できるか。


食事をつくらない宿ではなく、町の食へつなぐ宿として読み解きます。

画像は記事テーマをもとに作成したイメージビジュアルです。実際の宿、飲食店、料理、町並み、人物、周辺景観とは異なる場合があります。

EDITOR’S NOTE

町へ出せば、
地域にお金が落ちるのか。

宿泊者が近所の店で食事をすれば、宿泊料金とは別のお金が地域へ動きます。

ただし、旅行者向けの人気店だけに人が集中すれば、町の食文化全体を支えることにはならないかもしれません。

店を一覧に載せるだけでなく、なぜその店をすすめるのか。店主や料理の背景まで伝えられるか。

宿が食事を手放したあと、
どこまで旅人の夜に伴走するのか。


案内、歩く距離、店との関係、帰り道から6つの宿を見ます。

FOUR PERSPECTIVES

町で食べる夜を読む、4つの視点

GUIDE|宿は店をどう選び、紹介するか

WALK|食事処まで、どんな町を歩くか

MONEY|宿泊者の支出が地域へ届くか

RETURN|食後、安心して宿へ戻れるか

01 / THE TOWN AS A RESTAURANT

hanare

ホテル自慢のレストランを、
谷中の町に置く。

hanareは、谷中の町全体を一つのホテルとして使う宿です。

レセプションはHAGISO、客室は路地の中、大浴場は町の銭湯。そして、ホテル自慢のレストランは、谷中にある飲食店だと考えます。

宿の建物に料理人や食事処を持たず、その代わりに、コンシェルジュが町の情報や利用の仕方を案内します。

食事をするために外へ出れば、路地の幅、店の灯り、夜の谷中に残る生活の気配まで、夕食の一部になります。

宿が町の飲食店を代用品として使うのではなく、町にすでにある日常をホテルの価値として位置づけている宿です。

GUIDE|コンシェルジュが谷中の過ごし方を案内

WALK|客室、銭湯、飲食店を路地でつなぐ

BOUNDARY|ホテルの食堂と町の店を分けない

 

 

02 / THE SHOPPING STREET AS A DINING ROOM

セカイホテル大阪布施
‐ Deep Osaka Experience

商店街の飲食店を、
本当の夕食会場にする。

セカイホテル大阪布施では、客室が商店街の中へ分散しています。

夕食はホテル内のレストランではなく、地元の人が普段から利用している海鮮居酒屋、鉄板料理店、寿司店などへ。

宿泊プランによっては町の飲食店での夕食が組み込まれ、宿のスタッフや地域の店が一緒に滞在をつくります。

観光客だけが集まる食事処ではなく、仕事帰りの人や常連客がいる店へ入るため、料理だけでなく大阪の日常に触れる時間になります。

ホテルが食堂を町へ委託するのではなく、商店街を巡ること自体を宿泊体験として設計している例です。

GUIDE|スタッフと周辺マップが店選びを支える

MONEY|宿泊料金とは別に、商店街の店へ支出が動く

MIX|常連客と旅行者が同じカウンターを使う

 

 

03 / A MAP FOR DINNER

OMO3浅草 by 星野リゾート

店を決める前に、
ホテルの地図を読む。

OMO3浅草には、スタッフが実際に歩き、飲食店や店の情報を集めた「ご近所マップ」があります。

老舗のどじょう料理、洋食、寿司、天ぷら、そばなど、浅草らしい店だけでなく、地元で愛される穴場も紹介されています。

ホテルが夕食を提供する代わりに、旅行者だけでは判断しにくい「どんな店か」「誰に合うか」を編集して渡します。

浅草は店の数が多い一方、観光客向けの情報も多く、選択肢の多さが迷いにつながる町です。

スタッフ自身が確かめた情報が、町へ出る直前の不安を減らし、ホテルの外にある夕食へ旅人を送り出します。

GUIDE|徒歩圏の店をスタッフが取材・更新

CHOICE|多すぎる選択肢を、旅人に合わせて編集

RETURN|夕食後も浅草の夜を歩いて宿へ戻る

 

04 / GOOD LOCAL FOOD

hotel around TAKAYAMA,
Ascend Hotel Collection

館内で食べることも、
町へ食べに出ることも選べる。

hotel around TAKAYAMAにはレストランがあり、飛騨の食材を使った夕食プランも用意されています。

それと同時に、ホテルは「GOOD LOCAL」を掲げ、町の定食屋、ソウルフード、カフェ、食べ歩きの情報を発信しています。

館内の食事を否定するのではなく、その日の気分に合わせて、ホテルと町のどちらで食べるかを選べる構造です。

有名な飛騨牛だけでなく、地元の人が日常的に通う店を紹介することで、高山の食を観光名物だけに限定しません。

宿が自分のレストランだけをすすめず、町の店も同じ「食との出会い」として扱う点に、地域の案内所としての役割が見えます。

GUIDE|地元スタッフが町の食と人を紹介

CHOICE|館内の夕食と町の夕食を選べる

DEPTH|名物だけでなく、日常の味へつなぐ

 

 

05 / DINNER WITH A NEIGHBOR

RITA 出雲平田

提携店の食事を、
宿泊プランの中へ組み込む。

RITA 出雲平田は、酒蔵や町家を再生した、木綿街道の分散型宿泊施設です。

夕食付きプランでは、宿の建物内ではなく、近隣の料理店まで歩いて向かいます。

地元の食材を使った料理と、木綿街道の酒蔵がつくる日本酒を組み合わせたペアリングディナーが、宿泊体験として設計されています。

単に近所のおすすめ店を紹介するのではなく、宿、料理店、酒蔵が役割を分担し、一つの夕食をつくります。

宿泊者が町の店へ出向くことで、木綿街道に残る醸造や商いの文化を、建物の見学ではなく食事として体験できます。

GUIDE|夕食の店を宿泊プランとして予約

RELATION|宿、料理店、酒蔵が一つの体験をつくる

WALK|古い町並みを歩いて食事処へ向かう

 

 

06 / NO RESTAURANT INSIDE

フェアフィールド・バイ・マリオット・
京都天橋立

レストランを置かず、
町へ食堂の役割を返す。

フェアフィールド・バイ・マリオットの道の駅ホテルには、原則として館内レストランがありません。

京都天橋立も、快適な客室と共用ラウンジを用意する一方、夕食は宮津市街の飲食店へ出かけます。

周辺には寿司、割烹、海鮮料理、居酒屋などがあり、ホテル側も近隣の飲食情報を案内しています。

館内ですべてを完結させないことで、旅行者の食費と滞在時間が、港町にある既存の店へ向かいます。

ただし、定休日や満席、閉店時間の影響も受けます。自由と引き換えに、旅人自身が町の営業時間に合わせる必要がある宿です。

REDUCE|館内の食事機能をシンプルにする

MONEY|夕食の支出を宮津の店へ動かす

CHECK|予約、定休日、帰りの時間を自分で整える

 

 

SIX WAYS TO EAT OUTSIDE THE HOTEL

町で食べる理由のつくり方

hanare|町の飲食店を、ホテル自慢のレストランと考える。

セカイホテル大阪布施|商店街の店を、実際の夕食会場にする。

OMO3浅草|スタッフが集めた情報で、店選びを支える。

hotel around TAKAYAMA|館内と町、二つの夕食を編集する。

RITA 出雲平田|提携店と酒蔵を、宿泊プランでつなぐ。

フェアフィールド京都天橋立|食堂を持たず、夕食を町へ委ねる。

DINNER BEGINS OUTSIDE THE DOOR

夕食は、
宿の中で食べなくてもいい?

宿を出て、
夜の町を歩く。

店を選び、暖簾をくぐり、
地元の人と同じ食堂へ入る。

その時間には、館内の夕食にはない不確かさがあります。

けれど宿が、店との関係や町の情報を丁寧に手渡せば、
その不確かさは、町へ踏み出す余白になります。

夕食を用意しないことは、
食事を手放すことではなく、
旅の食堂を町へ広げることかもしれません。

REFERENCE

記事作成にあたり、各宿泊施設、提携飲食店、周辺飲食情報、および楽天トラベルの施設・宿泊プラン情報を確認しています。

※掲載内容は2026年7月時点の公開情報をもとに構成しています。飲食店、提携先、夕食プラン、営業時間、定休日、料金、メニュー、予約条件などは変更される場合があります。夕食を町でとる場合は、事前予約と帰路を含めた最新情報をご確認ください。

温泉は、
宿の中だけにある?

浴衣に着替え、
手ぬぐいと部屋の鍵を持つ。

玄関で下駄を履き、
湯気の上がる町へ出る。

せっかく温泉旅館に泊まったのに、
なぜ宿の風呂ではなく、町の湯へ向かうのでしょう。

豪華な露天風呂や、
客室専用の温泉とは違う時間があります。

道を歩き、暖簾をくぐり、
地域の人が守る湯を借りる。


6つの宿を起点に、
客室の外まで続く温泉旅を見ていきます。

THE TOWN AS ONE LARGE BATHHOUSE

宿を出ることで、
温泉街が滞在の一部になる。

宿の中に大浴場、露天風呂、貸切風呂が揃っていれば、外へ出なくても温泉を十分に楽しめます。

それでも外湯のある町では、浴衣姿の旅行者が道を歩き、異なる湯を巡ります。

共同浴場を地域の人と使う町。宿泊者だけに渡される鍵で九つの湯を開ける町。旅館同士が露天風呂を共有する町。

温泉を一軒の宿へ囲い込まず、
町の中へ分けて置く。


その仕組みによって、道や商店、橋、夜の灯りまで、温泉体験の一部になっていきます。

画像は記事テーマをもとに作成したイメージビジュアルです。実際の温泉街、宿、浴場、建物、景観、人物とは異なる場合があります。

EDITOR’S NOTE

宿の風呂が充実するほど、
町を歩く理由は失われるのか。

外湯には、旅館の大浴場ほど整った設備がないこともあります。

湯が熱い。洗い場が少ない。石けんを使えない。営業時間や清掃時間がある。混雑していて、ゆっくり入れない。

けれど、その不便さは、そこが観光客だけのためにつくられた温泉ではないことの表れでもあります。

町の湯へ入ることは、
地域の日常へ少しだけ参加することなのか。


利用のルールや背景まで含めて、6つの温泉街を歩きます。

FOUR PERSPECTIVES

外湯を読む、4つの視点

KEY|誰が、どのように入れるのか

WALK|宿から湯まで、どんな町を歩くのか

RULE|地域の湯を借りるための作法

BOUNDARY|宿と温泉街の境界はどこにあるのか

01 / THE TOWN AS ONE RYOKAN

城崎温泉 西村屋ホテル招月庭

宿は客室。
外湯は、町の大浴場。

城崎温泉には、「まち全体が一つの大きな宿」という考え方があります。

駅は玄関、道は廊下、旅館は客室、外湯は大浴場。飲食店は食堂、土産物店は売店として、温泉街全体で旅行者を迎えます。

町には趣の異なる七つの外湯があり、浴衣と下駄で歩ける距離に点在しています。

西村屋ホテル招月庭にも大浴場や露天風呂があります。それでも、宿の温泉だけで滞在を終えず、川沿いの柳や橋、商店の灯りを眺めながら外湯へ向かう。

温泉が町へ分散しているからこそ、歩く時間そのものが、城崎に泊まる体験になります。

KEY|趣の異なる七つの外湯

WALK|浴衣と下駄で、川沿いの温泉街へ

BOUNDARY|道までを宿の廊下として考える

 

 

02 / BATHS KEPT BY THE VILLAGE

野沢温泉 常盤屋旅館

共同浴場を、
地域の人から借りて使う。

野沢温泉には、村内に十三の外湯があります。

これらは観光施設として一括運営されているのではなく、江戸時代から続く「湯仲間」と呼ばれる地域の人々によって管理されてきました。

旅行者にも開放されていますが、入口の賽銭箱へ維持管理のための寸志を入れ、地域の共同浴場を使わせてもらいます。

常盤屋旅館の隣には、野沢温泉を象徴する外湯「大湯」があります。旅館にも複数の自家源泉がありますが、外湯を巡れば、湯の温度や建物、地域との距離が少しずつ変わります。

観光客のために用意された湯へ入るのではなく、暮らしの中にある湯を借りる。その感覚が、野沢温泉の外湯巡りには残っています。

KEY|村内に点在する十三の共同浴場

RULE|湯仲間が守る湯へ、寸志を入れて入浴

QUESTION|旅行者は地域の湯をどう丁寧に使えるか

 

 

03 / NO BATH INSIDE

小石屋旅館

宿に温泉をつくらず、
町の九湯へ送り出す。

小石屋旅館の館内には、温泉も浴場もありません。

温泉街の宿としては、大きな欠点にも見えます。

けれど、渋温泉へ宿泊した人には、九つの外湯を開けるための鍵が渡されます。浴衣と下駄に着替え、石畳の町へ出て、それぞれ異なる源泉の湯を巡ります。

宿の中へ温泉を囲い込まないことで、旅行者は必ず町を歩くことになります。

温泉のない旅館は、サービスを減らした宿ではなく、渋温泉そのものを大浴場として使うための客室とも考えられます。

KEY|宿泊者だけが使える鍵で九湯を巡る

WALK|浴衣姿で石畳の温泉街へ

BOUNDARY|宿は眠る場所、温泉は町の中

 

 

04 / ONE ONSEN, MANY RYOKAN

黒川温泉 旅館 山河

一軒の風呂ではなく、
旅館どうしで温泉街をつくる。

黒川温泉の入湯手形では、約二十五軒の旅館の露天風呂から、好みの三カ所を選んで入浴できます。

一つの宿が大きな温浴施設をつくるのではなく、それぞれの旅館が持つ露天風呂を温泉街の共有資源としてひらく仕組みです。

入湯手形は1986年に始まり、2026年に四十周年を迎えました。

旅館 山河は温泉街の中心から少し離れた森の中にあり、二つの泉質を楽しめます。そこから別の旅館の風呂へ向かえば、森、川、露天風呂、宿の佇まいが一湯ごとに変わります。

宿同士が競いながら、同時に一つの温泉郷として協力する。その関係を、旅行者は手形を持って歩くことで体験します。

KEY|入湯手形で好きな三つの露天風呂へ

MIX|複数の旅館が、湯を温泉街へひらく

QUESTION|一軒の利益より地域全体を選べるか

 

 

 

05 / THREE PUBLIC BATHHOUSES

道後温泉 大和屋本店

宿の大浴場と、
町の三つの湯を使い分ける。

大和屋本店は、道後温泉本館のすぐ隣に建つ温泉旅館です。

館内には数寄屋造りの大浴場がありますが、一歩外へ出れば、道後温泉本館、椿の湯、飛鳥乃湯泉という三つの公共浴場があります。

木造建築の歴史を感じる本館。地元の人にも親しまれる椿の湯。飛鳥時代の建築を現代的に読み替えた飛鳥乃湯泉。

使われている源泉だけでなく、建物、休憩方法、町との距離が異なります。

宿の湯で静かに休む時間と、商店街を歩いて公共浴場へ向かう時間。二つを使い分けることで、道後温泉の歴史が一軒の旅館だけではないことが見えてきます。

KEY|本館、椿の湯、飛鳥乃湯泉の三館

WALK|宿から商店街と公共浴場へ

CHOICE|歴史、日常、現代性の異なる湯屋を選ぶ

 

 

06 / THE ONSEN PILGRIMAGE

別府鉄輪温泉 山荘 神和苑

一泊では終わらない、
町じゅうの湯を集める旅。

別府八湯温泉道には、約百五十の温泉施設が参加しています。

参加施設へ入り、「スパポート」と呼ばれる帳面に入湯記念印を集める。八十八湯を巡れば、「温泉道名人」として認定されます。

一度の滞在で完成させるには多すぎる数です。

山荘 神和苑には客室温泉や大浴場がありますが、鉄輪の湯けむりを歩き、共同浴場や別府各地の湯を巡れば、宿の温泉とは異なる泉質や暮らしに出会えます。

温泉を楽しむだけでなく、印を集めながら何度も別府へ戻る。温泉道は、町全体を長い時間をかけて知るための仕組みでもあります。

KEY|約百五十湯が参加する温泉道

RULE|スパポートへ入湯記念印を集める

RETURN|八十八湯を目指し、何度も町へ戻る

 

 

SIX TOWNS, SIX WAYS TO BATHE

町の湯との関わり方は、それぞれ違う。

城崎温泉|町全体を一つの旅館として歩く。

野沢温泉|地域が守る共同浴場を借りる。

渋温泉|宿泊者の鍵で九つの湯を開ける。

黒川温泉|旅館同士が露天風呂を共有する。

道後温泉|性格の異なる三つの公共浴場を選ぶ。

別府八湯|印を集めながら、長い時間をかけて巡る。

THE BATH CONTINUES OUTSIDE

温泉は、
宿の中だけにある?

暖簾をくぐり、
宿の風呂へ入る。

それだけでも、温泉旅は完成します。

けれど、浴衣で町を歩けば、
橋や商店、夜の灯り、地域の暮らしまで、滞在の中へ入ってきます。

外湯へ入ることは、
温泉街の日常を少しだけ借りること。


便利さや豪華さだけでは測れない、
町と湯の関係を知る旅になります。

REFERENCE

記事作成にあたり、各温泉街、外湯、共同浴場、入湯手形、温泉道、宿泊施設の公式情報、および楽天トラベルの施設・予約情報を確認しています。

※掲載内容は2026年7月時点の公開情報をもとに構成しています。浴場数、営業時間、定休日、入浴条件、料金、利用できる施設、宿泊プランなどは変更される場合があります。外湯には地域独自の利用ルールがあります。最新情報を確認し、マナーを守ってご利用ください。

宿の1階は、
誰のもの?

ホテルへ入る。

フロントで名前を伝え、
鍵を受け取り、客室へ向かう。

多くのホテルで1階は、
泊まる人が通過するための場所です。

けれど、カフェで朝食をとる近所の人、
パンを買って公園へ向かう人、
アートを見るために立ち寄る人がいれば、

ホテルの入口は、
宿泊者だけのものではなくなります。

泊まらない人へ場所をひらくことで、
ホテルは町の一部になれるのでしょうか。


6つの宿から、町と客室の間にある空間を見ていきます。

THE GROUND FLOOR AS A COMMON PLACE

泊まる人と、町で暮らす人が、
同じ場所を使う。

この記事でいう「1階」は、建物の階数だけを意味しません。

道路、公園、商店街など、町からホテルへ入ったとき、最初に触れる入口の層です。

コーヒーを飲む。パンを買う。本を開く。作品を見る。夜に音楽を聴く。

宿泊以外の目的があれば、
予約をしていない人もホテルへ入る理由が生まれます。


ただし、扉を開けておくだけで、異なる人が自然に交わるとは限りません。

画像は記事テーマをもとに作成したイメージビジュアルです。実際の建物、ロビー、カフェ、家具、作品、人物、周辺景観とは異なる場合があります。

EDITOR’S NOTE

カフェを置けば、
ホテルは町にひらかれるのか。

宿泊者以外が入れるカフェやレストランを設ければ、ホテルは外から利用しやすくなります。

けれど、実際の利用者が旅行者ばかりなら、開放的に見えても、ホテルの中だけで完結しているかもしれません。

反対に、人気店として混雑すれば、宿泊者が静かに休める場所を失うこともあります。

誰でも入れることと、
異なる人が心地よく共存できることは別。


入口のつくり、訪れる目的、客室との距離から、6つの宿を読み解きます。

FOUR PERSPECTIVES

町にひらかれた入口を読む、4つの視点

ENTRANCE|初めての人も入りやすいか

PURPOSE|宿泊以外に何をしに来るのか

MIX|旅行者と地域の人が同じ場所を使うか

BOUNDARY|にぎわいと客室の静けさをどう分けるか

01 / ART STORAGE

KAIKA TOKYO by THE SHARE HOTELS

ホテルの中に、
アートの裏側をひらく。

KAIKA TOKYOは、ホテルとアートストレージを組み合わせた施設です。

共用部には、ギャラリーなどが作品を公開保管するストレージが設けられ、通常は見えにくい作品の保管や管理の風景を見せています。

アートをロビーの装飾として飾るだけではなく、作品が展示へ向かう前後の状態まで、ホテルの中へ持ち込む。

館内のカフェを利用する人にも入口があることで、宿泊しなくてもホテルとアートの関係へ触れられます。

町へひらいているのは、椅子やテーブルだけではありません。現代アートを支える仕事そのものが、ホテルの共有空間へ現れています。

ENTRANCE|カフェとアートを目的に訪れられる

PURPOSE|作品を見る、アートの保管方法を知る

BOUNDARY|鑑賞できる場所と宿泊者空間を分ける

 

 

02 / ALL-DAY CAFE

Hotel Noum OSAKA

朝食から夜の一杯まで、
町の時間を受け入れる。

Hotel Noum OSAKAの1階にあるカフェラウンジは、宿泊者以外も利用できます。

朝は朝食とコーヒー。昼はランチや軽食。夕方からはワインやバーのメニュー。

ホテルのラウンジを、チェックイン後だけ使う場所にせず、一日の異なる時間に町から人を迎えています。

近所で朝食をとりたい人と、これから大阪を歩く旅行者。同じテーブルを使っていても、過ごしてきた時間と向かう場所は違います。

大きなイベントを開催しなくても、毎日の食事やコーヒーを通じて、ホテルと町の境界を薄くしている場所です。

ENTRANCE|宿泊者以外も使えるカフェラウンジ

PURPOSE|朝食、仕事の合間、夕方の一杯

QUESTION|日常利用と宿泊者の居場所を両立できるか

 

 

03 / PARKSIDE ENTRANCE

sequence MIYASHITA PARK

ホテルと公園の間に、
中間地点をつくる。

sequence MIYASHITA PARKのカフェ&ラウンジ「VALLEY PARK STAND」は、宮下公園とホテルをつなぐ入口階にあります。

建物の表記では4階ですが、公園からホテルへ入る人にとっては、町と最初に接する「1階」のような場所です。

朝昼はカフェ、夜はパークサイドのバーとなり、ホテルはこの場所を旅行者と地域をつなぐビジターセンターとして位置づけています。

ホテルの中へ人を呼び込むというより、公園から続く場所にカフェを置き、どこからがホテルなのかを曖昧にする。

公園を歩く人と宿泊者が行き交う立地そのものが、ひらかれた入口をつくっています。

ENTRANCE|公園と同じ高さにあるカフェラウンジ

PURPOSE|休憩、待ち合わせ、渋谷を歩く起点

BOUNDARY|公園のにぎわいと客室を階で分ける

 

 

04 / BAKERY & PARK

THE KNOT TOKYO Shinjuku

パンを買うことが、
ホテルへ入る理由になる。

THE KNOT TOKYO Shinjukuの1階には、MORETHAN BAKERYとラウンジがあります。

焼きたてのパンを買うためなら、ホテルへ泊まる予定がなくても扉を開けやすい。

購入したパンをラウンジで食べることも、正面の新宿中央公園へ持っていくこともできます。

パン屋という日常的な目的が、ホテルの入口と公園をつないでいます。

一方で、人気のレストランやベーカリーが前面に出るほど、宿泊者にとってはロビーより飲食店に近く感じられるかもしれません。にぎわいと滞在の静けさをどう共存させるかも、このホテルの特徴です。

ENTRANCE|パン屋という分かりやすい入口

PURPOSE|パンを買う、食事をする、公園へ向かう

QUESTION|飲食店のにぎわいとホテルらしさをどう保つか

 

 

05 / NEIGHBORHOOD LOUNGE

HOTEL GRAPHY NEZU

旅行者と谷根千の日常を、
同じラウンジへ。

HOTEL GRAPHY NEZUの1階には、宿泊者以外も使えるカフェ&ラウンジがあります。

東京のガイドブックや地図が置かれ、これから町を歩く旅行者が行き先を考える場所にもなっています。

ホテルがあるのは、大型商業施設が並ぶ観光地ではなく、住宅、寺社、小さな店が続く谷根千の一角です。

近所からカフェへ来る人と、海外や国内から訪れた旅行者が、同じ場所でコーヒーや食事を楽しむ。

ただ人を混ぜるだけでなく、スタッフや地図を通して、ホテルの外にある町へ旅行者を送り出すことも、1階の役割になっています。

ENTRANCE|地域の人も利用できるカフェ

MIX|近所の日常と旅行者の滞在が重なる

OUTSIDE|地図や案内から谷根千の町へつなぐ

 

 

06 / COFFEE, BAR & MUSIC

CITAN Hostel

朝のコーヒーから、
地下の音楽まで。

CITANの1階入口には、宿泊者だけでなく近所の人も利用するBERTH COFFEEがあります。

地下にはバー&ダイニングがあり、食事や酒に加えて、DJやアーティストによる音楽を楽しむ夜もあります。

朝は町へひらかれたコーヒースタンド。夜は人が集まる地下ラウンジ。客室はその上階に置かれています。

異なる時間帯と目的を、一つの大きなロビーへ詰め込まず、建物の縦方向へ分けているのが特徴です。

にぎやかな交流を求める人も、眠る時間には客室へ戻れる。町にひらく場所と、宿泊者の居場所を、階によって調整しています。

ENTRANCE|1階のコーヒースタンド

PURPOSE|コーヒー、食事、酒、音楽

BOUNDARY|入口、地下ラウンジ、客室を縦に分ける

 

 

BETWEEN THE CITY AND THE GUEST ROOM

宿の1階は、
誰のもの?

作品を見る人。
朝食をとる人。
公園を歩く途中で休む人。

パンを買う人。
町の地図を開く人。
夜の音楽を聴きに来る人。

ホテルの入口に宿泊以外の目的があれば、
町の人も、扉を開けることができます。

けれど、必要なのは、
ただ誰でも入れる場所にすることではありません。

にぎわう場所と、静かに過ごす場所。
町にひらく場所と、宿泊者を守る場所。


その間にちょうどよい境界をつくることで、
ホテルの1階は、町と旅人が一時的に共有する場所になっていきます。

REFERENCE

記事作成にあたり、各ホテル、カフェ、ラウンジ、レストランの公式情報、および楽天トラベルの施設・予約情報を確認しています。

※掲載内容は2026年7月時点の公開情報をもとに構成しています。店舗、展示、営業時間、メニュー、イベント、設備、サービス、宿泊プランなどは変更される場合があります。最新情報は各施設の公式サイト・予約ページでご確認ください。