宿の1階は、
誰のもの?

ホテルへ入る。

フロントで名前を伝え、
鍵を受け取り、客室へ向かう。

多くのホテルで1階は、
泊まる人が通過するための場所です。

けれど、カフェで朝食をとる近所の人、
パンを買って公園へ向かう人、
アートを見るために立ち寄る人がいれば、

ホテルの入口は、
宿泊者だけのものではなくなります。

泊まらない人へ場所をひらくことで、
ホテルは町の一部になれるのでしょうか。


6つの宿から、町と客室の間にある空間を見ていきます。

THE GROUND FLOOR AS A COMMON PLACE

泊まる人と、町で暮らす人が、
同じ場所を使う。

この記事でいう「1階」は、建物の階数だけを意味しません。

道路、公園、商店街など、町からホテルへ入ったとき、最初に触れる入口の層です。

コーヒーを飲む。パンを買う。本を開く。作品を見る。夜に音楽を聴く。

宿泊以外の目的があれば、
予約をしていない人もホテルへ入る理由が生まれます。


ただし、扉を開けておくだけで、異なる人が自然に交わるとは限りません。

画像は記事テーマをもとに作成したイメージビジュアルです。実際の建物、ロビー、カフェ、家具、作品、人物、周辺景観とは異なる場合があります。

EDITOR’S NOTE

カフェを置けば、
ホテルは町にひらかれるのか。

宿泊者以外が入れるカフェやレストランを設ければ、ホテルは外から利用しやすくなります。

けれど、実際の利用者が旅行者ばかりなら、開放的に見えても、ホテルの中だけで完結しているかもしれません。

反対に、人気店として混雑すれば、宿泊者が静かに休める場所を失うこともあります。

誰でも入れることと、
異なる人が心地よく共存できることは別。


入口のつくり、訪れる目的、客室との距離から、6つの宿を読み解きます。

FOUR PERSPECTIVES

町にひらかれた入口を読む、4つの視点

ENTRANCE|初めての人も入りやすいか

PURPOSE|宿泊以外に何をしに来るのか

MIX|旅行者と地域の人が同じ場所を使うか

BOUNDARY|にぎわいと客室の静けさをどう分けるか

01 / ART STORAGE

KAIKA TOKYO by THE SHARE HOTELS

ホテルの中に、
アートの裏側をひらく。

KAIKA TOKYOは、ホテルとアートストレージを組み合わせた施設です。

共用部には、ギャラリーなどが作品を公開保管するストレージが設けられ、通常は見えにくい作品の保管や管理の風景を見せています。

アートをロビーの装飾として飾るだけではなく、作品が展示へ向かう前後の状態まで、ホテルの中へ持ち込む。

館内のカフェを利用する人にも入口があることで、宿泊しなくてもホテルとアートの関係へ触れられます。

町へひらいているのは、椅子やテーブルだけではありません。現代アートを支える仕事そのものが、ホテルの共有空間へ現れています。

ENTRANCE|カフェとアートを目的に訪れられる

PURPOSE|作品を見る、アートの保管方法を知る

BOUNDARY|鑑賞できる場所と宿泊者空間を分ける

 

 

02 / ALL-DAY CAFE

Hotel Noum OSAKA

朝食から夜の一杯まで、
町の時間を受け入れる。

Hotel Noum OSAKAの1階にあるカフェラウンジは、宿泊者以外も利用できます。

朝は朝食とコーヒー。昼はランチや軽食。夕方からはワインやバーのメニュー。

ホテルのラウンジを、チェックイン後だけ使う場所にせず、一日の異なる時間に町から人を迎えています。

近所で朝食をとりたい人と、これから大阪を歩く旅行者。同じテーブルを使っていても、過ごしてきた時間と向かう場所は違います。

大きなイベントを開催しなくても、毎日の食事やコーヒーを通じて、ホテルと町の境界を薄くしている場所です。

ENTRANCE|宿泊者以外も使えるカフェラウンジ

PURPOSE|朝食、仕事の合間、夕方の一杯

QUESTION|日常利用と宿泊者の居場所を両立できるか

 

 

03 / PARKSIDE ENTRANCE

sequence MIYASHITA PARK

ホテルと公園の間に、
中間地点をつくる。

sequence MIYASHITA PARKのカフェ&ラウンジ「VALLEY PARK STAND」は、宮下公園とホテルをつなぐ入口階にあります。

建物の表記では4階ですが、公園からホテルへ入る人にとっては、町と最初に接する「1階」のような場所です。

朝昼はカフェ、夜はパークサイドのバーとなり、ホテルはこの場所を旅行者と地域をつなぐビジターセンターとして位置づけています。

ホテルの中へ人を呼び込むというより、公園から続く場所にカフェを置き、どこからがホテルなのかを曖昧にする。

公園を歩く人と宿泊者が行き交う立地そのものが、ひらかれた入口をつくっています。

ENTRANCE|公園と同じ高さにあるカフェラウンジ

PURPOSE|休憩、待ち合わせ、渋谷を歩く起点

BOUNDARY|公園のにぎわいと客室を階で分ける

 

 

04 / BAKERY & PARK

THE KNOT TOKYO Shinjuku

パンを買うことが、
ホテルへ入る理由になる。

THE KNOT TOKYO Shinjukuの1階には、MORETHAN BAKERYとラウンジがあります。

焼きたてのパンを買うためなら、ホテルへ泊まる予定がなくても扉を開けやすい。

購入したパンをラウンジで食べることも、正面の新宿中央公園へ持っていくこともできます。

パン屋という日常的な目的が、ホテルの入口と公園をつないでいます。

一方で、人気のレストランやベーカリーが前面に出るほど、宿泊者にとってはロビーより飲食店に近く感じられるかもしれません。にぎわいと滞在の静けさをどう共存させるかも、このホテルの特徴です。

ENTRANCE|パン屋という分かりやすい入口

PURPOSE|パンを買う、食事をする、公園へ向かう

QUESTION|飲食店のにぎわいとホテルらしさをどう保つか

 

 

05 / NEIGHBORHOOD LOUNGE

HOTEL GRAPHY NEZU

旅行者と谷根千の日常を、
同じラウンジへ。

HOTEL GRAPHY NEZUの1階には、宿泊者以外も使えるカフェ&ラウンジがあります。

東京のガイドブックや地図が置かれ、これから町を歩く旅行者が行き先を考える場所にもなっています。

ホテルがあるのは、大型商業施設が並ぶ観光地ではなく、住宅、寺社、小さな店が続く谷根千の一角です。

近所からカフェへ来る人と、海外や国内から訪れた旅行者が、同じ場所でコーヒーや食事を楽しむ。

ただ人を混ぜるだけでなく、スタッフや地図を通して、ホテルの外にある町へ旅行者を送り出すことも、1階の役割になっています。

ENTRANCE|地域の人も利用できるカフェ

MIX|近所の日常と旅行者の滞在が重なる

OUTSIDE|地図や案内から谷根千の町へつなぐ

 

 

06 / COFFEE, BAR & MUSIC

CITAN Hostel

朝のコーヒーから、
地下の音楽まで。

CITANの1階入口には、宿泊者だけでなく近所の人も利用するBERTH COFFEEがあります。

地下にはバー&ダイニングがあり、食事や酒に加えて、DJやアーティストによる音楽を楽しむ夜もあります。

朝は町へひらかれたコーヒースタンド。夜は人が集まる地下ラウンジ。客室はその上階に置かれています。

異なる時間帯と目的を、一つの大きなロビーへ詰め込まず、建物の縦方向へ分けているのが特徴です。

にぎやかな交流を求める人も、眠る時間には客室へ戻れる。町にひらく場所と、宿泊者の居場所を、階によって調整しています。

ENTRANCE|1階のコーヒースタンド

PURPOSE|コーヒー、食事、酒、音楽

BOUNDARY|入口、地下ラウンジ、客室を縦に分ける

 

 

BETWEEN THE CITY AND THE GUEST ROOM

宿の1階は、
誰のもの?

作品を見る人。
朝食をとる人。
公園を歩く途中で休む人。

パンを買う人。
町の地図を開く人。
夜の音楽を聴きに来る人。

ホテルの入口に宿泊以外の目的があれば、
町の人も、扉を開けることができます。

けれど、必要なのは、
ただ誰でも入れる場所にすることではありません。

にぎわう場所と、静かに過ごす場所。
町にひらく場所と、宿泊者を守る場所。


その間にちょうどよい境界をつくることで、
ホテルの1階は、町と旅人が一時的に共有する場所になっていきます。

REFERENCE

記事作成にあたり、各ホテル、カフェ、ラウンジ、レストランの公式情報、および楽天トラベルの施設・予約情報を確認しています。

※掲載内容は2026年7月時点の公開情報をもとに構成しています。店舗、展示、営業時間、メニュー、イベント、設備、サービス、宿泊プランなどは変更される場合があります。最新情報は各施設の公式サイト・予約ページでご確認ください。