極楽浄土へ行けることば 上野 国立博物館 | 海をみていたい

海をみていたい

日常。思ったこと、メモがわりだったり、テンションあがって発信したかったり、観劇、観戦、鑑賞日記です。
濱田めぐみさん、町田樹さん、パナソニックワイルドナイツ好き、現在連日HIDEKIさんを思い出しています。
趣味は携帯写真。

ゴールデンウィーク中の大賑わいな上野でしたが、普段の国立博物館と同じような静けさで鑑賞出来ました。派手な出し物ではないからともいえそうですが、

だからこそやわらかくも深く感銘を受けました。

 

 
 
 
 

 

900年も昔の日常がどんなだったのか。

飢饉や災害、疾病に苦しむ世の中、その生活感を想像しても現実的にわかりません。

追い込められて日々の暮らしが立ち往かない、

文字すら読めない、学びも知らない時代背景、

育ちや環境などによって苦しみ、奪ってでも食べるものがほしいとか、

就きたくない職業とか、選べない不自由さ、

目先のことは明日以降ではなく、今、生きられるかどうか。

そんな多くの民たちが、生きるも地獄死ぬも地獄、自分にも極楽浄土へ行けるのでしょうか、

と、問うたら、

どんな答えが出るのでしょう。

倫理的に考える善悪で云えば、地獄行き。

でも、

苦しんでいる人たちに、

あなたでも、これを唱えたら極楽浄土へ行けますよ、

と教えてもらったら、

救済されたい、と。

 

伝わる法然さんのどっしりとして、柔らかな風貌から頼りにしたい、すがりたい人々の思いがあふれてくるように感じました。

 

特別展 法然と極楽浄土

 

 

特別展「法然と極楽浄土」/【京都会場】2024年10月8日(火)~12月1日(日) 京都国立博物館 平成知新館 (yomiuri.co.jp)

 

 

 

過去の様々な歴史から、より良い世の中へ改善されている、と思いたいのに、こんなにも心持ちがどんよりしているのは、なぜなのか。

生活の便利さなどはるかに進化していたり、全ての人が受けられる教育など本来なら今こそ現世が極楽になっているはず。

ですが、苦しさ、生き辛さ、先の見えない不安など心に抱える重い塊は拭えません。

わたしたちは欲深いんでしょうか。満足が出来ないものなんでしょうか。

答えはでませんが、時が経ても苦しさは無くならないんだと思います。

もちろん日々楽しいことにあふれかえっている瞬間も多々あり、

いま、十分しあわせなのですが。

 

 

昨今の美術展のチケット代金が映画よりも高くなっていて、

買う立場からすると何か付加価値を求めていて。

染五郎さんとお父さんの幸四郎さんが解説音声を務めていたからセット券を事前購入していた、という流れがあります。もともと以前から絵画鑑賞に解説は蛇足だったり勝手な解釈が苦手で不要なんですが、仏教やその時代背景など無神論者の自分には知らないままだと意味が分からない、伝わらないとむしろ解説付きが良いと選択。

音声には修復の専門家のお話も入っていたり、雅楽や沖縄の音楽も入っていて興味深いものでした。

 

 

国宝「綴織當麻曼陀羅」はどんなに目を凝らしても、ほぼ見えません。

事前に知識がなければ通り過ぎてしまうかも。

ただし、なんと表現したらいいのかわかりませんが、この前に立つと、ものすごい迫力があります。圧倒される何かがあるんです。巨大さからくるのか、おそらく色とりどりに完成していた当時のこの織物からじわじわ伝わってくるのか。

そして、この眼で判別出来ないこの巨大な描かれているものをどうにかして観たい、と夢中にさせてくれるのも解説のおかげかと。

 

これを模写したものが全国にも多数あるということで、会場内にもいくつか展示されていますので見えなかったところはこんな感じなのかと答え合わせはできます。

 

 

いよいよ、お迎えが来る早来迎図(国宝「阿弥陀二十五菩薩来迎図」鎌倉時代の制作、京都・知恩院)には雅楽が奏でられている様子が描かれているので、雅びな音楽を耳に鳴らしながら鑑賞しました。

通常は非公開だそうです。その貴重な現物をその修復にあたった絵師さんのコメントも録音されているので音声を聴きながら鑑賞できたことも楽しかったです。

鑑賞している最中の他人の無知なおしゃべりがものすごく嫌いで、耐えられないので音声ガイドのチャンネル番号を再度探したり、何回か再度押したりて録音されている解説や音楽で余計な雑音をイヤホンで遮断する効果もあります。

 

一昨年、比叡山や京都に行ってきたことと、

その前の年は奈良へ、それぞれ仏教美術をめぐってきたこと、

今と繋がっている自分の人生。

ただミュージカル遠征のついでとか、行きたくて旅しただけですが、

歩んできたことと、ふと、リンクします。

 

法然さんが教えを広め始めた頃、世の中では新興宗教だったはずですが、

後の徳川家康が菩提として芝の増上寺に大切に扱ったことから、時代とともに数ある仏教のひとつとして広まっていく様子がわかります。

 

 

東京の国立博物館での開催は終了していますが、

秋には京都、来年は九州での開催があります。京都は地の利で最も多い展示数になるそうです。いいなぁ。

いつでも行ける東京の国立博物館が大好きですが、いつか京都の国立博物館も行ってみたいです。今回はその時期、とても行けそうにありませんが京都の会期は、

前期2024年10月8日(火)~11月4日(月)

後期2024年11月6日(水)~12月1日(火)

だそうです。

 

 

香川県の法然寺にある仏涅槃群像が出張してきた部屋のこの箇所だけはスマホでの撮影が許可されていたので、私も撮ってみました。

厳しい修行をする比叡山とは真逆の南無阿弥陀仏さえ唱えれば、の新興宗教はそれまでの仏教界隈との軋轢を生み、実際に信徒たちの暴挙もあり、念仏の禁止が言い渡されてしまいます。法然上人が75歳で流刑された地が今の四国・香川。その丸亀から讃岐に入ったとされる上人は教えを説いてまわったので、しっかり浸透し、県内各地にゆかりの旧跡があるそうです。