オリジナル小説 【心にハングリー・ハートを】(第11回) | 《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

■好きな音楽、好きな映画、好きなサッカー、好きなモータースポーツなどをちりばめながら、気ままに小説(240作品)・作詞(506作品)を創作しています。ブログも創作も《Evergreen》な風景を描ければと思っています。

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『あの楽曲の中のフレーズで気になっている
♪Everybody's got a hungry heartと言う歌詞が
あってね。《誰もが満たされない心を持って
いる》そんな言葉をずっと引き摺って来ただ
けだよ』
『そんな歌詞があったかしら・・・』
そう呟きながら宣子は田口に背を向けた。

短いようで長かった宣子との再会だった。田口は自分が何を話したか、あまりはっきり思い出せないほど気が動転していた。確かな事は、宣子自身は田口など出る幕ないほど独りで素晴らしい人生を築き上げていた。芳雄についても、誰でもが通る過ぎる道筋にいるだけで何等心配することの無い内容の様に田口には思われた。

 それにしても芳雄が高校に入ってからサッカーをやり始めていたことは初耳だった。ひょっとして芳雄は田口がずっとサッカーに関わって生きて来た事を知っているのだろうか、宣子から芳雄がサッカーに夢中だと言う話を聞いた時から、ずっとその事が気になっていた。

今更芳雄に会う事など無いものとずっと考えていた時には全く思い浮かべることも無かったのに、ひょっとするとサッカーのことで田口にもとに芳雄が現れるかも知れないと思い始めてからずっと芳雄のことが気になって仕方なかった。

人の心なんてこれほどちょっとしたことで、大きく揺れ動くのかと改めて田口は思い知らされていた。芳雄と田口の接点の証と言えば、手元には芳雄が中学時代まで宣子が送ってくれていた手紙とスナップ写真しかなかった。田口の中に何処を捜してみても、芳雄を育てたと言う実感など一切無かった。

芳雄のことがどれほど気になっても、田口は自分から宣子に芳雄の近況を尋ねる事は無かった。折角自分の中から芳雄の存在を打ち消すことが出来たのに、たまの便りでも手にすれば芳雄への想いは募るばかりだった。だからこそ、芳雄を忘れるためにも、田口は接点を持たない年月を1年1年と積み重ねてきた。

会いたいと思う気持ちを打ち消すために、田口は敢えて芳雄の存在から遠ざかって行った。しかしそんなことは田口の身勝手な理屈以外の何ものでもなかった。少なくとも芳雄にとっては、田口のそんな想いなど分かり様も無かったに違いないことだった。

しかし芳雄がサッカーに夢中になっていると聞いた時、田口はもしその話を芳雄が高校時代や大学時代に聞いていたら何らかの接点が生まれていたかもしれないと思った。でも実際は田口の知らない所で、芳雄はサッカーボールを一生懸命追いかけ回していたのだった。

そんな時ならひょっとして芳雄に投げ掛ける事の出来た言葉もあったかもしれなかったが、23歳にもなった芳雄に今更田口にどんな言葉あると言うのだろう。確かに宣子にはいつでも芳雄からの相談には応じると答えたものの、そもそも今頃のこのこと父親の役割とでも言いたげに芳雄の前に出て行くことにあまり気乗りがしなかった。

年老いた田口が立派な大人になった芳雄の前に現れる事など、彼にとって負担にしかならないであろう。もともと芳雄の中に田口の存在など、全くもってあった事さえなかった。田口が芳雄と会えなくなってから、幾度となく芳雄にとって自分などいない方がいいと田口は思ったことがあった。

そんな田口が今頃芳雄の前に現れると言うことは、きっと彼にとって迷惑で或いは重荷と受け取られかねない状況になる恐れが十分にあった。田口自身は今までサッカーを通して、若い人たちと接触して来ていた。だからサッカーにスタッフとして関わろうとしている芳雄と、それなりにコミュニケーションをとる事は出来るかもしれない。

それにしても隼人君と言い芳雄と言い23歳と言う若さで、2人ともプレイヤーとしてではなく裏方としてサッカーに関わろうとしていることが気になっていた。

冷静に隼人君と芳雄を見定めてみると芳雄には会ってもいないのでよく分からないが、少なくとも隼人君については彼自身の中には現役プレイヤーとしての未練はないだろうかずっと気になっていた。学校等でのクラブ活動の範囲でサッカーをして来た芳雄が、選手としての自分の将来よりコーチ業に関心をもったとしても田口にはあまり無理なようには思えなかった。

だから芳雄には本当に自分がやりたいと思うのであれば、そこに向かって進んで行けばいいと話す積りでいた。それに比べて隼人君に関しては今の流れの中で、同じクラブのスタッフの後輩として受け入れることに積極的になれない田口自身がいた。

芳雄については待ちの姿勢でいいと思われるが隼人君については待ちの姿勢でいいのか、田口の中ではまだ結論は出ていなかった。芳雄のことについてそれなりの田口自身の回答が出たところで、田口は宣子のことを改めて振り返っていた。


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■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 中編集(原稿用紙90~100枚)1作250円


【1】Tシャツとピンクの万年筆
【2】リバプールの旅人
【3】あなたがネクタイ外したから、私もヒールを脱ぐわ
【4】僕のプレイリストはタイムカプセル
【5】鳴らない風鈴
【6】切り分けられた林檎
【7】キャロルキングを聴きながら
【8】真冬のストローハット
【9】5年目のバレンタインデー
【10】セイントバレンタインデーの奇跡
【12】街角のバレンタインデー
【13】瞳の中のバレンタインデー
【14】バレンタインデー・ラプソディ
【15】ラストチャンス・バレンタインデー
【16】奇跡を呼んだナレーション
【17】コーヒーチケット1冊分の恋
【18】ハッピーエンドまでの君と僕とのセオリー
【19】ブロークンハート・イヴ
【20】グッドミュージックが生まれる街
【21】聖マルタンの夏
【22】ノン・アップデート・メモリーズ
【23】グッドバイ色の街だから
【24】雨の中のオレンジ
【25】君がヒロインになる瞬間(とき)
【26】シャッター音がくれた奇跡
【27】眠れない夜はニルソンを聴きながら
【28】リベンバーミー
【29】フォーマイセルフ&フォーユアセルフ
【30】ジョナサンがいた風景
【31】ファイナル・コンサート
【32】気分はアウトオブデート
【33】それぞれのダイアリー  
【34】あの頃君は駆け抜けて逝った  
【35】ミュージシャンたちの恋物語
【36】サマークリスマス
【37】ジーンズのある風景
【38】ゲバ字の消えた夏
【39】高校3年生のネアンデルタール人
【40】アルバート・ドッグを吹く風
【41】ワーズワースそして教授と私の旅
【42】天窓から眺めるロンドンの街
【43】チェスターの空の下
【44】ウクレレの音が流れる夏
【45】私は夢見るシャンソン人形
【46】いつか観たジョンレノン
【47】あの日聴いた夢のカリフォルニア
【48】懐かしいね、ガントレ!
【49】神楽坂で聴くサウンドオブサイレンス
【50】キャロルキングをお寺で
【51】サウンドトラックはユーミンで
【52】ルート66へに誘われて
【53】俺たちのジュークボックス
【54】キックオフは、これから!
【55】タイムカプセルからビートルズ
【56】2人のランナウェイ
【57】もうラヴソングは唄えない
【58】遅れて来たラヴレター
【59】君にとどけボーントゥーラン
【60】母はクラプトンが大好き
【61】タイムアフタータイムなんて
【62】シャーリーンの唄ですよね
【63】気分はハロー・グッドバイ
【64】クロスロードとオヤジたち
【65】サザンカンフォートを抱えた娘
【66】あなたがトミーで私がジーナ
【67】ロールプレイング・ラヴをあなたと
【68】パンタロンじゃなくベルボトムさ!
【69】俺は根っからのランブリング・マン
【70】タイムタイムタイム~冬の散歩道
【71】俺のロード・ソングは、ウィリン
【72】アメリカ《名前のない馬》から始まった
【73】ツェッペリンに包まれて
【74】ロイ・ブキャナンの流れる家
【75】フォークソングが消えた日
【76】終わらないメロディ
【77】俺もお前もストレンジャー
【78】ジョニ・ミッチェルで聴きたいね
【79】今さら、ハートに火をつけて
【80】アフリカを聴きながら
【81】プロコル・ハルムが唄っている
【82】ゼーガーとエバンズが教えてくれた
【83】ビタースウィート・サンバを取り戻せ
【84】ティアーズ・イン・ヘヴンなんて
【85】俺たちはフール・オン・ザ・ヒル
【86】このリフに魅せられて
【87】さらば黄昏のレンガ路よ
【88】心にハングリー・ハートを
【89】いつもジャーニーが流れていた
【90】ジャニスと踊ろう
【91】俺は今でも25or6to4
【92】君に捧げるララバイ
【93】ジャニスが語りかけた夜
【94】キリング・ミー・ソフトリーをあなたに
【95】恋をするならシェイクスピアで
【96】ゲーテが教えてくれた愛のシーズン
【97】僕と君だけのファーザー・クリスマス
【98】恋する気分は、ヴェルレーヌから
【99】愛を語るならヴェッキオ橋で
【100】ショーシャンクの空が・・・
【101】ビーハイブ・ヘアの女(ひと)
【102】カセットから流れ出たメロディ
【103】オヤジたちのスタンドバイミー
【104】届かない、君へのラブソング
【105】マージー・ビートに魅せられて
【106】父のギターが残してくれたもの
【107】夜のパリ、それはラヴレターの香り
【108】閉ざされたままのギターケース
【109】雨の日には、グラント・グリーンでも
【110】ボースサイドナウが流れる喫茶店で
【111】恋のリフレイン
【112】ベイビーが流れていた季節
【113】フォロー・ミーに誘われて
【114】それでも、あなたにラヴソングを
【115】想い出のコンサート・チケット
【116】スターダストをあなたと
【117】ナローボートで素敵な恋を!
【118】ライトハウスで出逢った、あなたへ
【119】レモンの木の下で
【120】2度目のチャイルドフッドフレンド
【121】ミニシアターより愛を込めて
【122】あの時YESと言えていたなら
【123】ソリチュードに包まれて
【124】窓辺のロミオ&ジュリエット
【125】フラに恋する君に恋した僕
【126】ミルキーウェイで、さよならを
【127】コイントスで決めた恋
【128】二人の恋はメリーゴーランド
【129】スラッキー・ギターに魅せられて
【130】ソー・ファー・アウェイが流れる街
【131】メッセージノートのある喫茶店
【132】恋のワン・ウェイ・チケット
【133】ベルベッド色の恋
【134】神楽坂ラヴ・ストーリー
【135】すれ違いのスウィート・ハート
【136】リッスン・ツー・ザ・レイディオ
【137】夏のレムナント
【138】ダウンタウンボーイ
【139】中央フリーウェイ
【140】AVALON
【141】フォーカス
【142】Midnight Scarecrow
【143】セシルの週末
【144】街角のペシミスト
【145】ジャコビニ彗星の日
【146】ツバメのように
【147】ダイヤモンドダストが消えぬまに
【148】イチゴ白書をもう一度
【149】ベルベッドイースター


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■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 長編集(原稿用紙300枚~450枚)1作500円

【1】校内放送でビートルズ
【2】府立第14中~青春グラフィティ!
【3】そうだドルフィンへ行こう
【4】夜のグラフィティ
【5】もう一度聴いてみようかホテルカリフォルニア 
【6】今何故、500マイルも離れて
【7】坊っちゃん、フォーエバー
【8】ブローイングインザウィンドでも聴いてごらん
【9】木登り~タイムワープ


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■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 短編集(原稿用紙~50枚)1作100円

【1】夜空と波間の彼方に
【2】深大寺ラヴストーリー 
【3】ダブルレインボーの彼方に
【4】真冬のウインド・チャイム 
【5】ギターケースの中のラヴレター 
【6】横浜ロックンローラー 
【7】遅れて来たフラワーチルドレン 
【8】阿波人形浄瑠璃ラブソディ
【9】真っ赤なマニュキアの指先を見つめた夏
【10】君がいた街角
【11】聴かせてよ、あのリフを!
【12】ワイパーの向こうで消えた女性(ひと)
【13】さよなら、ミュージシャン
【14】ボーカルインストラクターの夢追い人
【15】写譜屋の恋物語
【16】スポットライト・グラフィティ
【17】リペアマン・ブルース
【18】歌えないラヴソング
【19】夢捨て人のハーモニー
【20】君の名前が消えたエンドロール
【21】ユア・シックスティーン
【22】ピアノのある喫茶店
【23】旅人からのリクエスト
【24】君への恋心をアップデート
【25】トラックドライバーの独り言
【26】サリンジャーを手にした君へ
【27】ハイタッチなんて似合わない
【28】君の知らないイエスタデイ
【29】君へ送るハートビート
【30】エルトンからの贈物
【31】君に聴かせたいメロディ
【32】31文字のラヴレター
【33】48時間のランナウェイ
【34】君が遺した風景だから
【35】恋のロングバケーション
【36】私の彼はトラベラー
【37】ミュージシャンからの恋文
【38】さよならグッドメモリー
【39】恋のスターティンググリッド
【40】横浜バイザシー
【41】冷たい雨が好きだから
【42】街角ピアノ物語
【43】キネマのある街
【44】本日限りが好きだから
【45】この曲にはフルートが必要だから
【46】テイク・ミー・アロング
【47】3年越しのデスティニー
【48】あの日の君の肖像画
【49】奇跡のハーモニー
【50】ポートレイトの君は誰なの?
【51】雪降る街でサヨナラを
【52】永遠のチャイルドフッド・フレンド
【53】ミルキーウェイって何色?
【54】フラガールのいた夏
【55】消えないグラフィティ
【56】ドルフィンに連れてって
【57】校内放送なんて聴かないよ
【58】ジュークボックスのある風景
【59】君と僕とのタイムカプセル
【60】ギターケースの中の青春
【61】フォークソングが流れていた季節
【62】サマー・オブ・ラブを知ってる?
【63】グッドバイブレーション
【64】レオンラッセルで聴きたいから
【65】何故君はキャロルキングが好きなの
【66】メッセージボードのある駅
【67】僕が反逆児だって?
【68】街角グラフィティ
【69】すれ違いのダイアリー
【70】永遠の噓だったなんて
【71】ジュークボックスが鳴り続けてる
【72】君が好きだったプレイリスト
【73】深夜放送ラプソディ
【74】マイ・ララバイ・ソング
【75】オブラディ・オブラダ
【76】ミュージック・メモリーの奇跡
【77】スティングが好きな君がいた
【78】ビーチボーイズが流れていた夏


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